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〔†hap↓〕
──そして再び、舞台はロット達が住む村「リィファ」へ戻る。「もう、私も19……か」 自室に戻ったロットは、ベッドに寝転がると写真立てを手に取った。 入っているのは、折り曲げられたのを無理に直したかのような跡が残る一枚の写真。ロットと青夢がまだ17歳だった、村がまだわいわいと栄えていた頃に撮ったものだ。春の真ん中、村の時計台の前で記した、懐かしい記憶。 この写真の中の二人は、まるで不幸と言うものを知らないかのように笑っているのに。「ホーウィス……懐かしいな……」 ホーウィス。かつて青夢が生まれ、二人が育った村。希望という意味の、ホープとウィッシュを掛け合わせてできた名の村。笑顔が絶えない、素晴らしい村だったというのに…… 「こんなにも簡単に……消えてしまうものなんだな」 何の前触れもなく、唐突に。多くの傘下を引きつれた魔王相手に、ホーウィスはいともあっけなく崩れ落ちた。村の警備なんてものは軟弱、ロット自身、警備員と名のつくものの、その力は魔王には到底及ばなかった。この孤児院の主、マックに助けてもらわなければどうなっていたかも分からないあの日。ロットは己の無力さを改めて思い知り、そして、強くなる事を決めた。 「くそっ……」 日々鍛錬を怠らず、強くなってきたつもりだったのに。その強さは、今朝のモグライスと言う奴の前にあっさりと、儚く崩れ去ったのだ。私はまだ未熟、そんな言葉が、ロットの脳裏でぐるぐると回る。「……ロット……?」 はっとした。あわてて起き上がると、わずかに開いたドアから覗く青夢の姿。「入って来なよ。覗き見なんて趣味悪いよ?」「しゅ、趣味なんかじゃないよ!?」 そう言いながら入ってくる青夢。分かってる、冗談だよとロットは笑った。「冗談にしてはひどいよ……。 それはそうと、大丈夫なの?」 青夢が「何が」大丈夫なのかを詳しく言わないとき、大抵は「気分が沈んでない?」と同じ意味を持つ。経験でそうわかるロットは、笑顔で答えた。「大丈夫、平気。ほら、朝食食べに行こう。動いてお腹減っちゃったよ」 青夢を促し部屋から出る。食堂へと続く廊下を歩きながら、ロットは青夢に、心の中で謝った。──ごめん、青夢。私、孤児院を出るよ。
〔ルンシィ↓〕
朝、これが最後の孤児院でする最後の仕事…そう思いつつポストの郵便受けを覗くとそこにはモグライスがいた。いたのである。縄で亀甲縛りのがんじがらめであった。「んぎょおおお!!!!!!」叫ぶモグライス。呆れてポストを閉じ、最後の朝食にロットは向かった。遡る事5時間前…「…で、とっとと帰れやカス。おめえがこんな腑抜けやってっから俺がわざわざこなきゃならねえんだっての!!分かるか??」ローションをぬったくってモグライスは薪の向こうの男に話しかけた。「私には使命がある!!」薪の向こうの男はまさしくマックであった。現役を離脱していたマックだったが、クリスタルの一件で天空城は途端に人手が足りなくなった。workinで求人広告を出してもなまじ天空にあるだけあって、なかなか人が集まらない。 「使命ィ????????」モグライスは首も上げずに枝で土にプリキュアの似顔絵を描いていた。「そうだ。ロットと青夢、彼女たちを無事に…」「無事に…何だ??あんなやつらとっとと俺のもんにさせろよ。俺がオーナーだったらアイツラよかテメエまんで首チョ ンパだぜ??18は熟女、18は熟女っと。」「19だ。」「わーたよわーたよ、熟女好みだから俺が甘い汁死ぬまで搾取してやんよ。」「そうじゃない!!」「じゃあなんだよ。」「俺はやつらの親になった気分…なんだ…だから結婚まで見届け…」「キャワイーーーーー子には旅をさせろwww言うじゃねwwwそうだおwwwクリスタルを破壊させる旅をさせればいいんじゃねwww俺天才wwうはww旅をした可愛い子は引き締まるwwwうほほーいww」 一人で話しを遮り、有頂天となったモグライスにとうとう頭に来てマックは縄でモグライスを縛りあげた。地図は未だにモグライスの手の中だ。「いい加減にしろ!!クリスタルを破壊すれば秩序が乱れ、世界は破滅の道にまっしぐ…」猿轡をモグライスにはめようとしたときモグライスは言った。「秩序ってなーんだ??」マックのとっさに出た手によって、モグライスは目の前が真っ暗となった。
〔青夢絵里↓〕
所代わり。ロットは朝食を前に――考えていた。必死に、懸命に。青夢について。「……何だかんだ言って、青夢とは一緒に生きてきたようなもんだしな……今更、さよなら私は孤児院を出て一人で修行と魔王撃退の旅に出ますっつっても納得しないだろうし。寂しくなるけど――何より青夢を危険な目にはあわせたくない」 今朝のこと。青夢がモグライスに襲われそうになった。その時ロット自身は――何処に居た?……これじゃあまるで、今朝の夢みたいじゃないか。『絵里、大丈夫か!? 怪我は、火傷は? すまない……私が不甲斐ないばかりに』『ううん、ロットのせいじゃないよ……ただ、ちょっと転んだだけで』情けない自分を、励まし、気遣ってくれた、友達。ロットはそして最終的に――そんな友達を巻き込まないことに決めた。「……おし。私は一人で、此処を出よう」「ロット、何処からでるのです?」「うわああああ青夢えええええ!?」「ちょっとロット、いささか五月蝿いです。今は朝食の時間ですよ? それで……何処から出る、と?」「あ、ああ、ちょっと新聞でもないかなあって! 私ポスト見てくるわ!」そしてロットは逃げるように、外へと走り、走り――ポストの前で苦しそうに呼吸。そこで、そういえば、と思う。あの逃げ足の速い変態……まだこん中に居るのか? とロットは思い、ポストを一瞥。 だが、そこから物音はしていない。ポストから逃げ出した形跡もないようである。「……ま、まさか、なあ」ロットが恐る恐るポストを開けると、中から零れ落ちるようにモグライスの屍――否、まだ生きているようだが。つまりは密室状態で空気が足りなくなったことでの、気絶だった。「ふ、ふひひ……」「いや……気絶じゃねえ! 起きてるじゃねえかこいつ――ん?」そしてロットは気付いた。モグライスの手に地図の様なものが握られていることを――。「何だ、これ」「何ですか、それ」「って、あ、青夢?!」いつの間に居たのか――振り返るとそこには何かを悟ったような青夢の顔。……ん? 悟った?そしてロットが持つ地図を見て、青夢は言う。「やっぱり、旅に出るのですか?」「……え」「そうなのでしたら、私も行きますよ? ロットの力になりたいのです」
〔★小久夜★↓〕
「駄目だって!絵里を危険な目にあわせたくないんだ。もう・・・あんな目に合わせたくないんだよ!」 『パーン!』 するどい音が鳴り響いた。青夢がロットの顔を思いっきりビンタしたのだ。「え、絵里・・・?」ロットが言うと、絵里は彼女らしからぬ大きな声を出して言った。 「バカにしないでください!危ないのはロットだって同じでしょう!私はロットと助け合って生きていくと、あのとき決めたんのに。私だって魔王に対する怒りは同じです。それなのに・・・私を置いていくんですか!?足手まといということですか?」 ロットは青夢の尋常でない怒りように内心タジタジだった。よくみると青夢は目に一杯涙をためている。ロットは考えを変えた。 「ごめん。青夢。私達はいつも一つだったね。うん。一緒に行こう。仇を取りに。」 すると、ポストの真下からモグライスが言った。「フヒッ!輝かしい友情だねぇ!そんなモノでシスコン魔王オーナーに勝てると思うのかァ!フッヒヒヒヒィ!それにしてもこのアングルなかなかナイスだぜぇ!おまぃら今日の下着は白か。ヒヒッ!。フガッ!」 「黙れ変態が。これでも食っておけ。」モグライスのへらす口に我慢できなくなったロットが口の中に足ごと靴を突っ込んだのだ。 「もがッ!ふぎぃぃぃぃ!」モグライスは声にならない声をあげて文句を言っているが二人とも聞いてはいない。 「絵里、やっぱり私達は一緒にいなければいけないんだ。絵里のお陰で目が覚めたよ。今夜、ここを出よう。マックに気付かれたら止められる。」 二人は決意を新たに、旅の出発へ向け志を同じくした。
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