メニュー
人気記事
そう、それもまた夢のお話。成人性夢喪失症候群。13歳以上の人間は例外なく、夢を見れなくなってしまう病。現実的な考えばかり優先し、待遇された国家が多くなり、人はそれに適応するように夢が見れなくなっていった。生きる上では何ら支障のない病―のはずだった。夢を見れなくなった人々が行く先は戦争、内戦など争いは絶えず腐敗した世界。誰も幸せを願わない、誰も幸福な世界を夢見ない、そんな人々が腐敗するのは当然だった。多くの血が流れ放置され、謎の病原菌が繁殖。いつしか世界は"魔物"と呼ばれる存在を生み出した。夢を見れない大人達はその現状から抜け出す事が出来なくなり、大人達は決断を強いられた。国家の政治をまだ幼い少年、少女に任せる事。特に、夢の中で自由自在に動き回れる子供達、脳内でのシミュレーションに長けている子供達に。その子供達を大人は、『 ユメビト 』と呼んだ。「しかし、大人たちの罪を償うにはまだまだかかりそうですね。」その少年は細い指で難しそうな本をめくりながら皮肉をこぼした。淹れられていく紅茶は、ゆらりゆらりと湯気をおどらせ消えていく。「申し訳御座いません。」細身の体の男の人はそう言い、淹れ終わった紅茶に砂糖を溶かす。「いいえ、何もシオンの事を言っているのではありませんよ。先代の狂った政治家達に言っているのです。」そう言って紅茶をすすり、また難しそうな本をめくる。「ルカ様、お国想いなのは大変分かりますが休まれてはいかがでしょう?」「私にとって睡眠は政治です。一度の睡眠でさえ無駄には出来ない。半端な知識のまま眠ってしまったら、ユメビト失格ですよ。」積み上げられた多くの本が、少年の一日を物語った。「シオン、騎士団の件はどうなりました?」読み終えたページの間にしおりを挟み閉じる。「ええ、魔物の駆除は順調のようです。幸い被害も出ていません。」「そうですか。しかし、あの小さな村まで襲うとは予想外でしたね。」中身が無くなったティーカップをあるべき場所まで戻し、溜め息を吐く。ここ最近、不可解な事ばかり起こり始めた。そう、あの日以来―。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。