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史無国 四」(2009/09/24 (木) 20:33:55) の最新版変更点

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史無国 四 数日後、ヴァンディール邸に、領主邸より使者が来た。 白い服を着ているから、任官か緊急伝令の使者である。 「エルムッド・ヴァンディール」 「……俺だ」 「直ちに領主邸まで出頭なされよ。公爵様より、任官の儀が行われるとのことである」 「……分かった、すぐ行く」 「この旨、しかと伝えた。では、私はこれで失礼する」 そう言うと、使者は領主邸とは真逆の方向へと駆けて行った。 どうやら、最初にヴァンディール邸に来たらしい。 フォンベルグ邸とエレナーデ邸より近いからであろうが。 「……ふう」 「兄上、どうかしたんですか」 「レイアンか。今から領主邸に行く」 「任官ですか?」 「……たぶんな」 エルムッドが自分の馬に荷を載せているとき、レイアンがやってきた。 その額には汗が浮かんでいる。 どうやらさっきまで、鍛錬をしていたようだ。 「剣の腕は上がったか?」 「まだまだです。姉上には、かろうじて勝てますが」 「……あれは、長得物だけが取り柄だからな」 そのレイノナは、と言うと、ティタルニアの武術指南所で鍛錬しているころだった。 何でも、シルクロードを通ってやってきた東方物の中に、『戟』なる武器があったからだ。 長得物と見て、レイノナは昨夜から泊まり込みでその『戟』を振るっていた。 「……じゃあ、レイアン。留守は任せた」 「はい、お任せ下さい!」 そう言ってエルムッドは、馬を駆けさせ始めた。 数十分後、領主邸の前に着いたエルムッドは、近衛兵に用件を話し、再びあの広い部屋に通された。 今度は三つ椅子が用意されており、エルムッドは一番右の椅子に腰をおろした。 と、数分もしないうちに誰かが入ってきた。 テレシスとセリックと思って振り返ったが、そこに居たのはクォリアスだった。 名前は知らないが、荘厳な雰囲気をした男を一人従えている。 「侯爵……ああ、様」 「ほっほ、良い良い。様何ぞ、付けんでもの。なんならおぬしの父君と同じように、クォリアス、と呼んでくれても構わんぞ?」 「いや、流石にそれは……父さんの名前を汚すわけにはいかない」 「ほっほっほ、流石は、レイムッドの子、じゃのう」 クォリアスはその豊かなひげを揺らしながら笑う。 そして、隣に居る男を一歩前に出した。 「エルは会うのは、初めてかの?」 「……そうだと思う」 「では、紹介しようかの。おぬしも世話になる事が有るやもしれんしのう」 「クォリアス様、紹介ぐらい、某で出来申す」 「ほっほ、そうじゃな」 男はエルムッドの前にやって来た。 「ランディール・フェルノリア、『公爵の智嚢』総帥である。 レイムッド、貴公の噂はかねがね聞き及んでいる。 以後、某の策謀に関わる事もあると思うが、その時は宜しく願い申す」 そう言って、手を差し伸べた。 エルムッドはこういう言葉で話されたことはなかったので、少々困惑したが、恐る恐る手を出した。 ランディールは、にっこりと笑って、力強く握った。 「さて、自己紹介も終わったことじゃ。任官の儀に入るぞ」 「……セリックとテレシスは?」 「個別に来てから行うのじゃよ。あれらの邸宅は、おぬしの邸宅より遠いでの」 そう言うとクォリアスは、書簡を一本取り出した。 「エルムッド、エルムッド、と……おお、あったあった。 ふむ、主は部隊新設、及びその部隊の軍長、であるな」 「……そうか、嬉しい事だ」 内心、予想していたことなのであまり驚きはしなかった。 しかし、一部隊の長である。 やはりどこか、嬉しいものだった。 「おお、ちなみに、副長はセリック、お付きの参軍はテレシスじゃ。相性を考えたら、必然とそうなるがの」 「テレセリノス・フォンベルグは、一時某の下で預かる。みっちりと、軍師とは何たるかを教示してやるつもりである」 クォリアスとランディールは、そう言った。 「そうじゃ、エルムッド。新設部隊は300名、騎兵は50名までとする。好きな兵を選ぶが良い」 「……エルノーの者だけか?」 「好きにするとよい、エルムッド。おぬしの部隊じゃ」 「……有難う御座います」 エルムッドは礼をし、そして退出した。 領主邸を後にしたエルムッドは、村の方向へと馬首を向けた。 「好きにせよ、と言われたからな……何事も、相性のいい者がいい」 エルムッドは、そう呟いた。 村に入ったエルムッドは、馬から降りて貸し厩舎へ馬を繋いだ。 そのままの足で何時も屯している、酒場へと入った。 [[史無国 伍]]へ

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