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病院」(2009/03/08 (日) 18:31:11) の最新版変更点

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【護る病人はある言葉を護られる見舞い人に要求する】 クルー・アポト二ティーが目覚めたのは、戦いが終わってからちょうど1日がたった時。 「・・・・・・・・・・」 ゆっくりと、意識を覚醒した。 すると、 天井と壁の白がまず眼に入る。 そして次に、病院独特の臭いが、ツンと鼻にくる。 生きているからこその、感覚と感触。 ・・・・生きている。 何故、生きている? 私は死んだはずでは・・・・? クルーはある病室の中で、そんなことをまず思った。 「・・・・彼は・・・・ファントはどうなったのでしょう・・・・それに、皆は・・・・」 彼の脳裏にはまるで走馬灯のように――次々と、仲間の顔が浮かんでいた。 愛すべき妹の笑顔。 口の悪い親友の怒鳴り顔。 それに――彼女の悲しむ顔。 それは、彼が一度人生を終えたときに、最後に見た光景。 「・・・・ティー」 自然と口から出た言葉は、思いのほか小さくて―― と。 「ん? 呼んだ?」 「――!?」 声のした方向を向けば案の定、茶髪を下ろしたティーが居たので、クルーは反射的に上体を起き上がらせる――が、腹に残るファントからの剣傷が痛み、思わず腹を押さえて呻いた。 「ちょっとクルー、無理はしないでってば! いくら生命の珠の力でも、完全に治すことはまだできていないんだから」 「う・・・・せ、生命の珠・・・・?」 確か、と。 彼は回想を始める。 タイニーとマニが協力してファントに生命の唄を歌わせたことまでは、覚えている。 そこで自分が死んだことも。 その後。 コアにその影響で異常をきたした場合。 その生命の珠に、コアを元通りに直すことを願う――はずだった。 しかし今、彼女は。 「ティー、もしかして・・・・私を生き返らせることに生命の珠を使いましたか?」 「うん、そうだけど」 即答。 まるで当然のように。 「それなら、皆は・・・・! 一体、何が起こったのですか、私が暢気に寝ている間!」 彼は大きな声で、焦燥の表情でティーに聞く。 「クルー、そんなに大声で言わなくても聞こえてるから――大丈夫、双方の世界も皆も、無事。まったくもって平和だよ、本当に、怖いくらい・・・・」 今までの戦いが嘘みたいに、此処は希望で溢れてる。 ティーはそして、クルーの黒髪を優しく撫でる。 「だけど、さ・・・・クルーの死と引き換えに世界が救われるのは、凄く嫌だったよ」 ティーは俯いて、静かに語り始める。 「クルーがこの世からいなくなる代わりに、この世が平和になったら私は・・・・きっとこの世界をものすごく憎く思う。アブソーやチェインが存在しているこの世界を好きなはずなのに・・・・!」 同時に、ティーの体は小さく震えだした――ポツリと、真っ白なシーツに染みが一点。二点。 クルーはそれをただ黙って見つめながら、歯がゆい気持ちになった。もしも傷が治っていたら、すぐさま彼は行動に移っていただろう。 ――抱きしめたい。 紳士で冷静な彼は珍しく、今までに無いくらいに、強くそう想った。 「ティー、顔を上げてください」 あやす様に優しく声を掛けると――クルーは自分の髪を撫でていた白い手を取る。 「私は、病院の中のベットで、こうして横になっています。死んでいません。貴方の目の前に居ます。だから、泣かないで」 ティーはゆっくりと、どこかぎこちなく顔を上げて、真っ直ぐにクルーの眼を見つめて、 「なら、クルー、もう一度言ってよ」 「何をです?」 「・・・・あんたの思う、ロマンチックな場面で言った言葉!」 赤面しながら言うティーを訝しげに見てから、クルーはその例の言葉を思い出し、 「私は、一回言うだけで勇気の底を尽いたのですが・・・・」 「いいから言え!」 「・・・・まったく、貴方という人は・・・・」 呆れたように、しかしこの上なく幸福そうな表情で――彼は、微笑む。 「ティー、あいし――」 と 「クルー、いるか?」 突然現れたのは、うす紫色の髪を持つ青年。 クルーは思わず驚いて、青年を見つめた後「どうしたんです?」と問う。 「いや。リビーがどこに居るか聞きたかっただけなんだが、邪魔したようだな」 「気にしないでください――おそらく、リビーは公園に居ますよ」 「・・・・やはり、そこだと思うか」 自嘲気味に笑って「じゃあな」と一言のこし、青年は白い部屋から消えた。 そして二人は向かい合い。 可笑しいように、笑う。 「ティー、愛してる」 「うん、ありがとう、クルー」 彼女が聞いた、愛の告白。 彼が求めた、ある言葉。 ティーはただ、一言。 「愛してる」
【護る病人はある言葉を護られる見舞い人に要求する】 クルー・アポト二ティーが目覚めたのは、戦いが終わってからちょうど1日がたった時。 「・・・・・・・・・・」 ゆっくりと、意識を覚醒した。 すると、 天井と壁の白がまず眼に入る。 そして次に、病院独特の臭いが、ツンと鼻にくる。 生きているからこその、感覚と感触。 ……生きている。 何故、生きている? 私は死んだはずでは・・・・? クルーはある病室の中で、そんなことをまず思った。 「・・・・彼は・・・・ファントはどうなったのでしょう・・・・それに、皆は・・・・」 彼の脳裏にはまるで走馬灯のように――次々と、仲間の顔が浮かんでいた。 愛すべき妹の笑顔。 口の悪い親友の怒鳴り顔。 それに――彼女の悲しむ顔。 それは、彼が一度人生を終えたときに、最後に見た光景。 「・・・・ティー」 自然と口から出た言葉は、思いのほか小さくて―― と。 「ん? 呼んだ?」 「――!?」 声のした方向を向けば案の定、茶髪を下ろしたティーが居たので、クルーは反射的に上体を起き上がらせる――が、腹に残るファントからの剣傷が痛み、思わず腹を押さえて呻いた。 「ちょっとクルー、無理はしないでってば! いくら生命の珠の力でも、完全に治すことはまだできていないんだから」 「う・・・・せ、生命の珠・・・・?」 確か、と。 彼は回想を始める。 タイニーとマニが協力してファントに生命の唄を歌わせたことまでは、覚えている。 そこで自分が死んだことも。 その後。 コアにその影響で異常をきたした場合。 その生命の珠に、コアを元通りに直すことを願う――はずだった。 しかし今、彼女は。 「ティー、もしかして・・・・私を生き返らせることに生命の珠を使いましたか?」 「うん、そうだけど」 即答。 まるで当然のように。 「それなら、皆は・・・・! 一体、何が起こったのですか、私が暢気に寝ている間!」 彼は大きな声で、焦燥の表情でティーに聞く。 「クルー、そんなに大声で言わなくても聞こえてるから――大丈夫、双方の世界も皆も、無事。まったくもって平和だよ、本当に、怖いくらい・・・・」 今までの戦いが嘘みたいに、此処は希望で溢れてる。 ティーはそして、クルーの黒髪を優しく撫でる。 「だけど、さ・・・・クルーの死と引き換えに世界が救われるのは、凄く嫌だったよ」 ティーは俯いて、静かに語り始める。 「クルーがこの世からいなくなる代わりに、この世が平和になったら私は・・・・きっとこの世界をものすごく憎く思う。アブソーやチェインが存在しているこの世界を好きなはずなのに・・・・!」 同時に、ティーの体は小さく震えだした――ポツリと、真っ白なシーツに染みが一点。二点。 クルーはそれをただ黙って見つめながら、歯がゆい気持ちになった。もしも傷が治っていたら、すぐさま彼は行動に移っていただろう。 ――抱きしめたい。 紳士で冷静な彼は珍しく、今までに無いくらいに、強くそう想った。 「ティー、顔を上げてください」 あやす様に優しく声を掛けると――クルーは自分の髪を撫でていた白い手を取る。 「私は、病院の中のベットで、こうして横になっています。死んでいません。貴方の目の前に居ます。だから、泣かないで」 ティーはゆっくりと、どこかぎこちなく顔を上げて、真っ直ぐにクルーの眼を見つめて、 「なら、クルー、もう一度言ってよ」 「何をです?」 「・・・・あんたの思う、ロマンチックな場面で言った言葉!」 赤面しながら言うティーを訝しげに見てから、クルーはその例の言葉を思い出し、 「私は、一回言うだけで勇気の底を尽いたのですが・・・・」 「いいから言え!」 「・・・・まったく、貴方という人は・・・・」 呆れたように、しかしこの上なく幸福そうな表情で――彼は、微笑む。 「ティー、あいし――」 と 「クルー、いるか?」 突然現れたのは、うす紫色の髪を持つ青年。 クルーは思わず驚いて、青年を見つめた後「どうしたんです?」と問う。 「いや。リビーがどこに居るか聞きたかっただけなんだが、邪魔したようだな」 「気にしないでください――おそらく、リビーは公園に居ますよ」 「・・・・やはり、そこだと思うか」 自嘲気味に笑って「じゃあな」と一言のこし、青年は白い部屋から消えた。 そして二人は向かい合い。 可笑しいように、笑う。 「ティー、愛してる」 「うん、ありがとう、クルー」 彼女が聞いた、愛の告白。 彼が求めた、ある言葉。 ティーはただ、一言。 「愛してる」

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