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第3幕」(2009/03/01 (日) 18:52:40) の最新版変更点

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人々が行き交う、名もない無法地帯の街。 活発な町並みの裏には、住む所を失った人間が犯罪を繰り返す汚れた世界が広がっている。 住宅街にある一軒家の前に、二人の少年少女が行き着いた。 そして一人の少年がうなだれながら呟く。   「・・・きちまった・・・。」 そう、彼は食欲に負けたのだ。 半ば強引に連れてこられ、最終的には自分から付いていく形になってしまったのだ。 「どーぞ?入って。」 そう言うと、少女は家の扉を開け少年を案内する。 「・・・座って。」 テーブルと椅子がある部屋へと案内された少年は、少女の言う通り木製の椅子に腰掛けた。 辺りを見渡せば、広い部屋に数枚の写真が飾られている。 「・・・お前、親は?」 幸せそうに写る三人の家族の写真を見て、少年が少女に問いかける。 「・・・殺されたわ。あなたが持ってる・・・疑心刀を狙う奴らにね。」 「・・・疑心刀?」 少年が少女に再び問いかける。 「・・・知らないの?」 持っていた荷物から食料を取り出し、少年が腰に携えている刀を指差した。 「・・・あなたが持ってる刀の事よ。それがどんな刀か・・・知らないで使ってたの?」 「・・・。」 疑心刀。 今まで刀の名前に興味を持たなかった少年にとって、初めて聞く名前だった。 「・・・見た所、かなり強い『憎しみ』が入ってるみたいだけど・・・。」 今はもう錆びれた刀を見て、少女が言う。 「知ってる・・・?疑心刀って、人間の強い感情が刀に入り込んだものなのよ?」 「・・・人間の感情?」 「うん、強い感情がそのまま刀に宿るの。・・・その人の命と引き換えにね・・・。」 「・・・!」 突然、少年が何かを確信したかのように自分の腰にある疑心刀を手に取った。 「・・・そう・・・か・・・。」 悲しい表情で、疑心刀を見つめる少年。 そして次第に、その表情が憎しみの表情に変わっていく。 「・・・どうしたの?」 「・・・十年前・・・。」 「・・・え?」 突然、口を開く少年に、少女が少し戸惑う。 「・・・十年前・・・、俺は親に捨てられた。・・・二歳上の姉と共に。」
その日は土砂降りだった。 人通りの少ない街の路地裏で、幼い二人の子供が横たわっていた。 一人の少女が、この大雨から守るように、目を閉じている少年に覆い被さっている。 少女の方も、目を閉じていてピクリとも動かない。 「・・・お姉ちゃん・・・。重いよ・・・。」 覆い被さる姉の重みに、少年が目を覚ます。 そして、少女に呟いた。 「・・・お姉・・・ちゃん・・・?」 いくら呼びかけても返事がない。 違和感を感じた少年が、力を振り絞り少女を抱き起こした。 「・・・ねぇ・・・ここどこ・・・?ねぇってば・・・。」 動かない。 体を揺さぶっても、大きな声で叫んでも。 「・・・起きて・・・起きてよ・・・。起きて!」 少年の目から涙が零れ落ちる。 そう・・・既に息絶えていた。 「・・・うああ・・・!」 二度と目を覚ます事はない。 そう悟った少年が、その場にうずくまる。 今までにない、大粒の涙を流しながら。 「・・・?」 突然、何かが光った。 少年がそれに気づき、息絶えた少女の横へと目を向ける。 そこにあった物は、黒く、不気味に光る刀だった。 「・・・何・・・これ・・・。」 不思議に思った少年が、黒く光る刀を手に取った。 「・・・うああ・・・うああ・・・うあああああああああああ!」 その瞬間、体の中に何かが入り込んだかのように、少年が叫び声をあげる。 徐々に、徐々に刀の輝きが増していき、そして次第に光が消えていく。 「・・・はぁ・・・はぁ・・・。」 光が消えた頃、少年の涙は消えていた。 そして、全てを把握したように刀を見つめる。 「・・・。」 強い、憎しみの目だった。 さっきまでの涙が嘘のように、消えていた。 少女の方に歩み寄り、今一度抱きしめる。 そして、無言のまま歩き出す。 心を埋め尽くす、憎悪。 今ここに、幼くして復讐を決意する少年が誕生した。 名を、セスタと言う・・・。

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