「ユメビト08話」(2009/03/01 (日) 13:48:42) の最新版変更点
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<p>「くそ…っ!」<br /><br />
彼はもう限界に達していた。<br />
いくら騎士団の最高位だとしても、<br />
これだけの量を相手するのは不可能だった。<br /><br />
剣も既に刃が欠け、使い物にならなかった。<br /><br />
「ここで負けるわけには…!」<br /><br />
彼には守るべきものがあった。<br />
その存在が、彼を身体を動かし続けさせた。<br /><br />
「危ない!」<br /><br />
彼は彼女を覆うようにかばった。<br />
狼の爪が背中に喰い込む。<br /><br />
その度、平気な顔をして彼女に見せるが、<br />
数え切れない傷が、彼の痛々しさを物語る。<br /><br />
「ごめん…なさい…。」<br /><br />
少女の頬に伝う滴が、彼の足元に落ちる。<br /><br /><br /><br />
どうして、何故だ。<br />
何故、僕等の邪魔する。<br /><br />
どうして、何故だ。<br />
何故、君に涙が流れる。<br /><br />
この手は何故、彼女一人守れないんだ。<br /><br /><br /><br />
「これを!」<br /><br />
聞き慣れない声。<br />
少年の胸元に向かい飛んでくる剣。<br /><br />
もう既に限界を迎えた身体を翻し、<br />
空中で捕まえ、一気に鞘を振り抜く。<br /><br />
その勢いのまま滑走し、流れるように切り裂いていく。<br /><br />
限界は確かに存在した。<br />
しかし、限界を超えた瞬間を目の前にして、もう限界など無かった。</p>
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