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エソラの美的空間」(2009/02/22 (日) 20:59:02) の最新版変更点

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そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 「………………」 お気に入りの白い枕買ったばかりの目覚まし時計そしてわたし。 それらの中心に堂々と、その人は暢気に眠っていた。 「……わたしは何をしている」 そうだよ。 わたしは何をしているの。 勝手に男の人を――しかも初対面のそれを、テリトリーというなの要塞(簡単に言うならば寝室)に入れてしまうなんて。 わたしらしくもない。 こんなのわたしではない。 わたしでないとしたら一体? 「んう……んあ?」 その人は、まず。 眼を開けることは勿論、ゆっくりと上体を起き上がらせて、眼を擦って、乱れた髪を軽く撫でて直し――目線の照準をわたしに。 「馬っ鹿野郎かお前は。オレ様のプラオベートルームに無断で入りやがって」 「…………はあ、すいません」 あまりにも。 そう、あまりにも非現実的な、又は非常識な言葉が飛び出してきたので、思わず素直に頷いてしまった。 「あの、此処、わたしの部屋なんですけど」 「知るかそんなこと、オレ様がプライベートルームだと宣言したところは例外なく全て、フォルテの私的空間と決まってんだ、当たり前だろう?」 「ふぉ、ふぉるて?」 容姿と、そして顔立ちからして日系だと思ってたんだけど……。 と、思いながらもわたしは聞きなれない名前をリピートする。 「ふぉるてじゃない、フォルテだ。ちゃんと発音しやがれ」 と。 そして唐突にベットから文字通り、ピョンと反動をつけて飛び上がると、わたしの前に音もなく着地し、ずんずんと、ただでさえ近い距離だったわたしとフォルテの間を近づけて――。 ひょい、と。 ……ひょい? 不思議に思って――上を見上げるとフォルテの顔、下を見ると床から離れた二本の足。 補足だが、わたしは猫ではない。 れっきとした人間だ。 「と、いうわけでだ。お前には即刻この部屋から出てもらう」 「い、意味が分かりません!」 もう本当にこんな馬鹿げた空間――フォルテの言葉を借りるならば、彼の何とか空間だろうか――出て行きたい、けど、やっぱりわたしは女。見ず知らずの男を自分の部屋には取り残しておきたくは無い。 「と、とにかく! わたしを部屋から出したら警察呼びますから――」 「うるせえ」 そして、彼は。 腕を下ろしてわたしを床に立たせると、キスをした。 前兆も予兆も、そして前置きさえないのに、わたしはあの口付けから逃げられただろうか。 どちらにしても出来なかっただろうけど。 唇が離れた。 呪縛から開放されたわたしは、まだ状況を飲み込めていない脳をフル回転させながら彼を見る。 「あ、何だよ? オレ様のキスが物足りなかったか?」 「…………あ」 よくよく見ると。 フォルテはなかなかお綺麗な顔を持っていらっしゃった御様子。 わたしは何故かキスをされたことよりも、そのことに頭がいってしまっていた。 「あ、って言われても分からねえよ……とりあえずお前、早くここから出――」 と。 彼が言い終わらないうちにわたしは。 彼の腕をめいいっぱいに引っ張って――お返しのキスをした。 今度はさきほどよりも短く、そして優しく。 ああ、こんなにも甘い一時なんて、何年ぶりだろう。 そして、フォルテを顔をうかがうと――意外にも驚いていて、わたしは何故かそれが可笑しくて、小さく笑う。 「……お、おいおいおい、まさかオレ様の唇を奪う女がいるとはな……お前、名前は何ていうんだ?」 「エソラ、絵を描くの絵に青い空と書いて、絵空」 「えそら、えそら……エソラな、分かった」 彼は何度も、まるで確認するようにわたしの名前を何度も何度も――。 「エソラ、お前は面白い。オレ様が今まで会ってきた女の中で一番だ」 すると、刹那。 部屋は一気に暗くなり――本来ベットがあるはずの位置に、立派なグランドピアノが在った。 否、現れた。 「エソラ、これは特別だぞ。お前のために即興で弾いてやる―― ――オレ様の音楽に酔いしれろ」 +++ そして、思ったんだ。 ああ、これが恋なんだ、と。 わたしは朝、フォルテもピアノも音楽も無い空間に、一人涙してした。

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