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―海神―




 その日も私は主の肩に座る。主はこの寒空の下、神姫センターの中にも入らずにただ自動販売機で購入したココアで暖を取っていた。
 11月の末のその日、天気予報が正しいとすればこの後雪が降るという。
 温暖化が進み、暖冬という言葉さえ使われなくなるくらい温かい冬が当たり前になった昨今、この時期にこの地域で雪が降るなんて。
 それ程に冷えるというのに、主はそれでも暖房の効いているであろう店内に入ろうとはしない。
 しかしその事についてなんら感慨を持たない自分は、やはり欠落しているんだと納得出来る。
 そしてそれを少しも悲しいと思わない事にも、違和感を覚えなかった。
 そこにある現象や、歴然とある事実に対して理解は出来ても、そこになんら感情を見出す事ができない。
 それは私が私であると定められた時からの性質。要するに仕様なのだ。
 MMSのヴァリエーションとして武装神姫が市場に出回る前段階で、試験用と銘打たれて製作されたいくつかの神姫が存在する。
 『武装神姫』の前身である『神姫』シリーズは、現在の武装神姫の素体のみを販売していたわけではない。
 元来『神姫』シリーズは戦闘遊戯用に作られたものではなかったのだ。だと言うのに『神姫』を使用したバトルが、それまで行われていた『GFF』や『SRW』などの影響を受け、派生的に生まれた。
 その状況を見て取り、EDEN―PLASTICSを含めた各神姫メーカーが戦闘に対応した『武装神姫』をシリーズ化したのだ。
 似て非なる存在『神姫』と『武装神姫』。その橋渡しとなる存在が『ジ・オリジン』とも称される試作品の数々である。
 プロトタイプ、またはテストタイプである『ジ・オリジン』の大多数は、現在発表されている製品版に劣るか、良くても同等のものでしかなく、それらは研究用や保存用として数体残されるのみでほとんどは廃棄処分されている。
 その中には現状のレギュレーションの枠から逸脱した、戦闘面においてずば抜けた能力を持つ『ジ・オリジン』が存在した。しかしそれはあまりに『バトル』重視で、感情面や情緒面での欠損が大きい機体であった。そういう意味では、やはり現行の『武装神姫』に大きく劣る。
当然それらは研究用として全て保管された。
 だが、そこに人が介入している時点で『絶対』外部に漏れることは無いと言い切れなくなるのが現実で。
 実際私は研究室にではなく、主の肩に座って、居る。

 主がその私用を済ませた帰り道。暗くなった夜空は厚い雲によって更に影を強める。
 主は先ほどの、あの男が行った行為に酷く腹を立てているらしく、不快感を隠そうともしない。ただ黙々と家路を急いでいた。
 あくまで私用での外出なので、家の車を用意していない。主は私事で家の権力を使用することを嫌悪していた。
 だからこの日も、主は私を肩に乗せたまま、夜の通りを歩いて帰る。
 私と主は平時より会話を楽しむという習慣はなかった。だから主の機嫌が損なわれていてまるで口を利こうとしなくても、主と私の間にある沈黙は普段となんら変わりが無いものとして認識される。
 ただ、不快感があまりに過ぎたのだろうか。常であれば避けて通る事の無いその暗い路地に、主は足を向けた。
「主、この道は安全とは言いかねます」
 警告。
 そのつもりで私は言葉を発したのだが、主は聞こえなかったのか、それとも無視しているのか、足を止めることをしなかった。
 私は再び同じ言葉を発しようと考え、そして止めた。主の決めた事に私が口を出すのはあまりに差し出がましい。
 長い一本道。人気も無く、そして街灯も疎らな道。
 そこで私はすぐに二度目の警告を口にしなかった失敗に気が付く。
 人が感じる事の出来ない深い影の、その闇の中で。
 生糸を引っかくようでそれでいて耳障りな音が。
 赤い光点を伴い辺りを侵略し始める。
 赤
 赤
 赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

 無数の赤い光点。そしてその薄明かりに晒され浮かび上がる、異形。
 赤い光点を伴ったその全てが、武装神姫。
 だがそれらの体はいびつに捻じ曲がり、四肢はその胴との接合を不完全とし、人とも、神姫のそれとも異なった挙動を行う。
 感情を実感できない私よりもその表情には意思を窺う事は出来ない。
 その虚ろで何も映さない瞳が赤く照る。
 本来カメラであるはずの神姫の瞳が、ライトのように光るなどありえない。
 間接部を無視して可動範囲を広げる事など不可能。
 砕けた関節を支えるのが、その先にある壊れた脚部であるなんて非現実的だ。
 ならば、今目の前にあるのは一体なんだ?
 私の思考はここで中断せざるを得なかった。
 武装神姫ではありえない速度で、赤い瞳の『ソレ』が主に近づく。
 リミッターを与えられた私は、そんな速度で動く事は出来ない。が、それでも主に襲い掛かる凶刃を受け止めることにどうにか成功した。
「くっ……!」
 あまりに強大すぎるその純粋な圧力に、私の腕が硬い音を響かせる。
 相対するソレの腕は、自らの力に耐えられず砕ける。
 砕けるのに、しかしそれでもそこにあった。
 データ上のウソが入り込む余地の無い、現実にある私の体は通常の武装神姫とは比べ物にならないくらいに頑強だ。だが、その頑強さを持ってしても同じ圧力をもう一度防ぐ事は不可能。
 対して赤い目をしたソレは、現実ではありえない不滅性を体現している。
 そんなの、勝負になるわけが無い。
 とるべき手段は一つしかなかった。
 その点、わが主は頭の回転が速い。背を向ける危険を冒すことにはなるが、すばやく踵を返すと全力で走り出す。私も主の行動に合わせ、追っ手が来る事を予測し向きを変えた。
 はたしてソレは予測通りに主と私を追う。
 明るい所に逃げることが出来れば、人が行き交う通りに出る事が出来れば、少なくともこの状況から脱する事が叶う。
 雪が、降り始めた。



 簡単に現状を打破させてくれる程には、甘くはなかった。
 主と私はことごとくを妨害され、邪魔を受け、そして誘導された。
 気がつけばそこは人気の完全に途絶えた公園。
 住宅地だけを経由し、これほどの敷地を誇る公園に到る事を私は知らなかった。
「……随分と、ベタな所に、追い込まれたわ、ね」
 ハァハァと肩で息をしながら、それでも茶化したように主は呟く。
 しんしんと雪の降るその広場で、主と私は完全に囲まれた。
 確認できるソレの数は九。多くは無いが、その能力を顧みれば決して少ない数ではない。
 確実に市販の武装神姫を破壊でき、そして主を殺す事のできる以上の数。
「万事休す、みたいね」
 半ば諦観めいたものが混じったようにも取れる主の言葉。
 だがもう半分は、間違いなく覚悟を決めた者が発する声音。
 私は武器を手にする。
「海神、コードF解除」
 主のその声で、その言葉で、私の中の枷が無くなっていくのを実感する。
 私が本来の私、『ジ・オリジン』の中でも特に戦闘に特化して開発された『欠陥品』に戻ってゆく。
 私がかつての力の全てをその手に戻した瞬間、二体のソレが主を、三体が私目掛けて襲い掛かる。
 刹那。
「スキル発動 夢想散華」
 戦闘特化型試作体である私は、武器の能力に頼ることなく刀剣の類であれば私固有のスキルを発動させる事が出来た。
 私は取り戻した本来の能力の全てを振るい、五体のソレを完膚なきまでに破壊する。
 その形が、一片すら判別できない程に。
 何のトリックだかは解らないが、形すら残らないほどに粉々にしてしまえば動きようもあるまい。
 事実、私が破壊した五体のソレが動く事はなかった。
 だが……
 だが、反抗もここまでだった。
 残りの四体をしとめるための力を、私は残してはいない。
 スキルを発動させるための力も、もう尽きてしまった。
「絶対、絶命ですか」
 主に習い、私も状況を簡潔に述べてみる。それでもしっかりと両の脚で地面を踏みしめる。
 残る四体は、ジリジリとした動きを必殺の確実さを伴う素早い攻撃へと転じさせた。
 四体が四体共に、わが主に向かう。
 私は何も考える事が出来なかった。こんな事は、初めての経験だ。
 そして何も考えていないのに、私の体は私の思考を置いたままに勝手に動く。
 私ではその四体相手にどうすることも出来ないというのに……
 最小限の力で主の膝の裏を蹴り、私は更に高く跳ぶ。主の体は突然加わった力に抗う事が出来ず、バランスを崩し膝から落ちる。
 ソレが標的としていた座標にはすでに主の頭は無い。
 しかし胸を標的としていたソレの前に、今は主の頭がある。
 思考した上での行動ですらなく、つまりは反撃の時機さえ計れない私は、それでも体の、今まで感じたことの無い『思い』の指示に従い、主とソレの間に自らの体を割り込ませた。
 時の経過が引き伸ばされる。
 目の前には驚いたような瞳の主の顔。
 背後を見ることは出来ないが、それでもセンサーが感じ取る、確実な死の象徴。
 迫る刃。
 私の目の高さにある主の顔。
 私の頭上で目標を失った赤い目をした神姫だったソレ。
 主に近づく見知らぬ少女。
 その少女共に現れた四枚の翼を持つ神姫。
 その人影と小さな天使が主を守るものだと認識できた時……
 わたしのこあが
 つ ら ぬ か れ た



 海神というその個体は完全にこの世界から失われた。
 だからこれから先の話はただの蛇足でしかない。



 小規模な爆発が四つ。
 あっという間だった。
 四枚の翼を持ったそのアーンヴァルは、ただレーザーソードを振るだけで残っていた四体のソレを破壊した。
 現実は何時の世でも簡単にフィクションに追いつく。
 だから実際にこんなご都合主義的な出来事が起こっても間違いではないし、まあたまには良いだろう。
 そういう意味では、現実も言うほど捨てたものではないらしい。
 海神のオーナーであった結城セツナは、あまりにも瞬間的に起きたそれらの事象に、それでも混乱することなく、自身を救ってくれた者に目を向ける。
果たしてそこにいたのは、夜の空よりなおも暗い、闇色の外套を身につけた小柄な影。声のトーンで何とか女性だと判別は出来たが、フードに覆われたその顔を覗う事は出来ない。
 四枚の翼を持つアーンヴァルが彼女の元へ戻ると、彼女はフードから顔を出した。
 顕になったその顔は、黒髪の15歳くらいの少女のものであった。瞳だけが青く輝き、日本人離れしていた。



 少女とその少女の神姫と、セツナの間に何があったのかはあえて記さない。
 当然その少女が何者であったか記す事も無い。
 なぜならこれはただの蛇足。
 必要なのは
 結城セツナの命が失われる事はなかった。
 という事実だけ。






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