神姫の構造材をプラスチックでないものにする
そういう案は最初からあった
当然、現状の人工皮膚も純粋な意味でのプラスチックではないが
様々な試行錯誤の末現在の形に纏まったのだ
例えばそれはこんな試行錯誤である
そういう案は最初からあった
当然、現状の人工皮膚も純粋な意味でのプラスチックではないが
様々な試行錯誤の末現在の形に纏まったのだ
例えばそれはこんな試行錯誤である
「無題を冠した未完の彫刻」
「駄目です、制御失敗。自壊しました」
若い白衣の男が、淡々と告げた
報告を受け取る男は、若くも見えるし老けても見えた
渋い表情で画面を見る
無残な姿になった神姫が映っていた
若い白衣の男が、淡々と告げた
報告を受け取る男は、若くも見えるし老けても見えた
渋い表情で画面を見る
無残な姿になった神姫が映っていた
構造材に自己修復能力と自己増殖能力を付与し、人体と同じように振舞わせる
そういうプランだった
だが、そのシステムの制御は困難を極めた
それでも何とか作り出したそのシステム、『G』は
バトルに臨み得る神姫にとって、非常に有用だった
当時、既に神姫に武装を施してバトルに従事させるということは行なわれていた
だが、その度に破損箇所を買い換えるのは面倒だったし、素材で解決出来るのならしてみようとしたのが彼らのグループだった
折りしも『武装神姫』のプランが本格的に始動していた
バトル向きに調整された武装神姫に、メンテナンスフリーの自己修復ボディ
まさにうってつけと言えた
副作用として、有機物的な特徴を持つ『システムG』は、神姫により人間に近い皮膚を与える事を可能たらしめた
だが、傷ついた体を修復しようとした時、どうしても必要以上に増殖し、宿主である神姫を破壊してしまう
既に十数体の神姫が犠牲になっていた
大手のスポンサーであった鶴畑コンツェルンも、そろそろ資金援助をやめようと動いていた
そういうプランだった
だが、そのシステムの制御は困難を極めた
それでも何とか作り出したそのシステム、『G』は
バトルに臨み得る神姫にとって、非常に有用だった
当時、既に神姫に武装を施してバトルに従事させるということは行なわれていた
だが、その度に破損箇所を買い換えるのは面倒だったし、素材で解決出来るのならしてみようとしたのが彼らのグループだった
折りしも『武装神姫』のプランが本格的に始動していた
バトル向きに調整された武装神姫に、メンテナンスフリーの自己修復ボディ
まさにうってつけと言えた
副作用として、有機物的な特徴を持つ『システムG』は、神姫により人間に近い皮膚を与える事を可能たらしめた
だが、傷ついた体を修復しようとした時、どうしても必要以上に増殖し、宿主である神姫を破壊してしまう
既に十数体の神姫が犠牲になっていた
大手のスポンサーであった鶴畑コンツェルンも、そろそろ資金援助をやめようと動いていた
「短絡的に過ぎる・・・このシステムが完成すれば、神姫ばかりではない、人間にも大きな利益があるというのに」
実の所、男の真の狙いはそこにあった
「神姫と人間の境界は脳だけ」にしてしまう事
それ自体は、神姫の開発当初から目指されていた一種の目標地点ではあった
神姫は身長15センチの人間であるべく
遥か古代からの人類の夢、人造人間の完成を目指して
様々な倫理的、技術的問題から身長15センチに決定されたが、男はどちらかというとそれには反対だった
完成した人造人間に人間の脳を移植する
それによってより良い肉体を手に入れ、人類それ自体がより進化する
少なくとも男はそう信じていたし、『システムG』を装備した神姫はその試金石になる筈だった
男は自分自身が人間を越えたかったのかもしれない
いずれにしても、現状の『システムG』のままでは、少なくとも人間に使用する事などとても出来なかった
開発チームも解体される時が近付き、資金援助の減少、チームの縮小等から、徐々にスタッフの士気も無くなり、気も緩みつつあった
そんな時期だった
暴走し、異常増殖した『G』の組織に、生物が触れると融合する性質が明らかになった
否、厳密に言えば、過失から、人間と『G』の強制接触が行なわれたのだ
結果は、恐るべきものだった
『G』と融合した人間は、禍々しい「なにか」に変貌し、暴れ狂ったのだ
しかも、そのスタッフは自らの意識を保ったまま、超細胞に取り込まれたのだ
結果そのスタッフは恐慌から暴挙に出たのだ
その事実を示すデータは残っていない
その日スタッフの一人の始末し損ねたぼやで、研究所は火に包まれたからだ
実の所、男の真の狙いはそこにあった
「神姫と人間の境界は脳だけ」にしてしまう事
それ自体は、神姫の開発当初から目指されていた一種の目標地点ではあった
神姫は身長15センチの人間であるべく
遥か古代からの人類の夢、人造人間の完成を目指して
様々な倫理的、技術的問題から身長15センチに決定されたが、男はどちらかというとそれには反対だった
完成した人造人間に人間の脳を移植する
それによってより良い肉体を手に入れ、人類それ自体がより進化する
少なくとも男はそう信じていたし、『システムG』を装備した神姫はその試金石になる筈だった
男は自分自身が人間を越えたかったのかもしれない
いずれにしても、現状の『システムG』のままでは、少なくとも人間に使用する事などとても出来なかった
開発チームも解体される時が近付き、資金援助の減少、チームの縮小等から、徐々にスタッフの士気も無くなり、気も緩みつつあった
そんな時期だった
暴走し、異常増殖した『G』の組織に、生物が触れると融合する性質が明らかになった
否、厳密に言えば、過失から、人間と『G』の強制接触が行なわれたのだ
結果は、恐るべきものだった
『G』と融合した人間は、禍々しい「なにか」に変貌し、暴れ狂ったのだ
しかも、そのスタッフは自らの意識を保ったまま、超細胞に取り込まれたのだ
結果そのスタッフは恐慌から暴挙に出たのだ
その事実を示すデータは残っていない
その日スタッフの一人の始末し損ねたぼやで、研究所は火に包まれたからだ
誰一人、生きている者の居る筈が無い程徹底的に、一切合財が炎の中に消えた
スタッフの遺体は、殆どが原形も留めず、パーツも足りなかった為、正確な人数を確認する事も適わなかった
研究所で使われていた、旧式の動力炉が、危険な可燃物質を含んでいたか何かだったのだろう
調査は深く為される事は無かった
だが、僅かに残ったものがある
部署が縮小されるに際して、他部署へ異動になった者の発言だ
曰く、「原型となる細胞質からクローン培養して、それを宿主神姫のAIの不随意領域で制御させていたんです・・・原型細胞がどこから入手されたのか、少なくとも私は知らないですね」
いずれにせよ、神姫に人間を越える肉の器を与えようとしたこの研究は頓挫し、神への道は遠ざかった
スタッフの遺体は、殆どが原形も留めず、パーツも足りなかった為、正確な人数を確認する事も適わなかった
研究所で使われていた、旧式の動力炉が、危険な可燃物質を含んでいたか何かだったのだろう
調査は深く為される事は無かった
だが、僅かに残ったものがある
部署が縮小されるに際して、他部署へ異動になった者の発言だ
曰く、「原型となる細胞質からクローン培養して、それを宿主神姫のAIの不随意領域で制御させていたんです・・・原型細胞がどこから入手されたのか、少なくとも私は知らないですね」
いずれにせよ、神姫に人間を越える肉の器を与えようとしたこの研究は頓挫し、神への道は遠ざかった