僕は、多くの戦士達を見てきた
彼ら彼女らに翼を与え、更なる空へと羽ばたかせて来た
だけど、結局後には空しさが残った
皆最後には堕ちてしまう
僕はでも、決まった場所を行ったり来たりしか出来ないから
結局また戦士を見つけて翼を与える
戦士から戦士へ
人から人へ
僕はかもめだった
僕に見込まれたものには、必ず栄光と死をもたらすけれど
彼ら彼女らに翼を与え、更なる空へと羽ばたかせて来た
だけど、結局後には空しさが残った
皆最後には堕ちてしまう
僕はでも、決まった場所を行ったり来たりしか出来ないから
結局また戦士を見つけて翼を与える
戦士から戦士へ
人から人へ
僕はかもめだった
僕に見込まれたものには、必ず栄光と死をもたらすけれど
"Я чайка"
今日も琥珀は剣を打つ
鳳凰杯に出展した時に、調子に乗って三本も四本も仕事を請けるたものだから、オーバーワークも甚だしい
此処の所工房(リフォームしたて)に篭り詰めで、私としては退屈極まりない
「あいつの所にまたお見舞いにでも行ってやろうかなぁ・・・」
はっ!!違う違う!か・・・っ勘違いしないでよ!別にあいつの事なんか何とも思って無いんだからね!単に暇で暇で仕方が無いからちょっと・・・あいつも大変だから行ってやろうかなーとか思っただけで、別に心配とかしてないんだから!本当なんだから!!
「何か随分盛り上がっているね・・・どうしたの?」
「ゔぁ!?こ・・・っ琥珀?何よぅ・・・出て来たんなら声掛けなさいよ、もう!!」
「何度も掛けたんだけど何か一人悶えてたからさ」
「・・・っ!!ええい!五月蝿いわね。あによ?今日はもうあがるの?」
「いや、流石にちょっと僕一人じゃ仕事が追いつかなくなったからさ・・・手伝って欲しいんだけど・・・駄目かな?」
「え・・・?良いの?アンタいっつも仕事中は見るなって言うじゃない」
「勿論見せられない部分の所は見せないよ・・・でも・・・こんな事頼めるのはエルギールだけだし」
顔から火が出そうになったのが、判った
実は私こと「花型MMSジルダリア」の『エルギール』は、私の今のオーナーたる神浦琥珀にでれでれなのだった(注1)
鳳凰杯に出展した時に、調子に乗って三本も四本も仕事を請けるたものだから、オーバーワークも甚だしい
此処の所工房(リフォームしたて)に篭り詰めで、私としては退屈極まりない
「あいつの所にまたお見舞いにでも行ってやろうかなぁ・・・」
はっ!!違う違う!か・・・っ勘違いしないでよ!別にあいつの事なんか何とも思って無いんだからね!単に暇で暇で仕方が無いからちょっと・・・あいつも大変だから行ってやろうかなーとか思っただけで、別に心配とかしてないんだから!本当なんだから!!
「何か随分盛り上がっているね・・・どうしたの?」
「ゔぁ!?こ・・・っ琥珀?何よぅ・・・出て来たんなら声掛けなさいよ、もう!!」
「何度も掛けたんだけど何か一人悶えてたからさ」
「・・・っ!!ええい!五月蝿いわね。あによ?今日はもうあがるの?」
「いや、流石にちょっと僕一人じゃ仕事が追いつかなくなったからさ・・・手伝って欲しいんだけど・・・駄目かな?」
「え・・・?良いの?アンタいっつも仕事中は見るなって言うじゃない」
「勿論見せられない部分の所は見せないよ・・・でも・・・こんな事頼めるのはエルギールだけだし」
顔から火が出そうになったのが、判った
実は私こと「花型MMSジルダリア」の『エルギール』は、私の今のオーナーたる神浦琥珀にでれでれなのだった(注1)
強大な火のマナと、金属の匂いが大気に満ちているのが判った
薄暗い部屋は、想像していたようなおどろおどろしい黒ミサ的な空間ではなく、ごく普通の、レトロな鍛冶部屋だった
そう、ごく普通・・・普通?
否、私が間違っていた・・・室内を派手な色の大蛇がのたくり、襟巻きの付いた蜥蜴が後ろ足で走り回り、巨大な陸亀がのそのそと這いずり回っていた
挙句体長50センチを越えるカメレオンと、武装神姫が上に乗るのに丁度よさげなサイズの水亀がその群れの中に加わっていた(注2)
「・・・てかコイツらここで飼ってたの!?しかも増えてるし!!」
「いいじゃない、爬虫類好きだよ」
「聞いてないわよ!!」
「突っ込みご苦労様」
「まさかと思うけど『手伝い』ってこの突っ込み役とかじゃ無いでしょうね?」
「?それもしてくれるならそれはそれでありがたいな」
「づぁ!?もしかして今の墓穴・・・?」
「そういう事だね・・・さ、こっち来て」
通された先には、既に形の打ち上がった武器が、ひぃふぅみぃ・・・六振りもあった
「注文された瞬間より明らかに増えてんじゃないの!こんなんで体壊したら洒落にならないじゃないの!!」
「心配してくれてありがとう・・・エルギールは優しいね・・・言われた通り、この作業が終わったら今日はもう寝る事にするよ」
微笑む琥珀・・・良く見るとその目の下には濃い隈が出来上がっている
普段無表情なだけに、こういう状況でこういう顔をされると言葉も出ない・・・(注3)
「・・・わっ私は何をすれば良いのよ?」
「晶の注文してきたやつだからそれなりに美観も整えておかないと笑われるだろう?だから今回はエングレービングとか飾りをいつもより細かくしようと思ってね・・・」
「・・・もしかして・・・その仕上げ私がやるの?」
「うん、エルギールは手先が器用だろ?だからいっそもうデザインから何から全部任せちゃおうかなぁって」
「あ・・・っあとの三本はどうするのよ・・・」
「こっち三つは・・・そうだね、この長剣だけは任せちゃおう」
「・・・・・・」
「じゃ、任せたから」
言いつつ、神姫サイズの工具と金箔、銀箔他様々な素材を私に渡して、本人は残り二振りの仕上げに取り掛かる・・・普段見せない集中した表情・・・不覚にもときめいた(注4)
(・・・っと、いけないいけない、私も集中、集中)
工房は見せてくれないが、琥珀の剣製に関わるのはこれが初めてではなかった
そも、完成したばかりの武器(流石にオーダーメイドは殆ど触らないが)をいつもテストしているのは私だったし、琥珀のデザインした透かし彫りとかで、細かい部分は私が彫っていた
それというのも、ここに来る前に、私はとあるプロジェクトに参加していた経歴があり、琥珀が私を入手した経緯もそのプロジェクトにあるからだ
薄暗い部屋は、想像していたようなおどろおどろしい黒ミサ的な空間ではなく、ごく普通の、レトロな鍛冶部屋だった
そう、ごく普通・・・普通?
否、私が間違っていた・・・室内を派手な色の大蛇がのたくり、襟巻きの付いた蜥蜴が後ろ足で走り回り、巨大な陸亀がのそのそと這いずり回っていた
挙句体長50センチを越えるカメレオンと、武装神姫が上に乗るのに丁度よさげなサイズの水亀がその群れの中に加わっていた(注2)
「・・・てかコイツらここで飼ってたの!?しかも増えてるし!!」
「いいじゃない、爬虫類好きだよ」
「聞いてないわよ!!」
「突っ込みご苦労様」
「まさかと思うけど『手伝い』ってこの突っ込み役とかじゃ無いでしょうね?」
「?それもしてくれるならそれはそれでありがたいな」
「づぁ!?もしかして今の墓穴・・・?」
「そういう事だね・・・さ、こっち来て」
通された先には、既に形の打ち上がった武器が、ひぃふぅみぃ・・・六振りもあった
「注文された瞬間より明らかに増えてんじゃないの!こんなんで体壊したら洒落にならないじゃないの!!」
「心配してくれてありがとう・・・エルギールは優しいね・・・言われた通り、この作業が終わったら今日はもう寝る事にするよ」
微笑む琥珀・・・良く見るとその目の下には濃い隈が出来上がっている
普段無表情なだけに、こういう状況でこういう顔をされると言葉も出ない・・・(注3)
「・・・わっ私は何をすれば良いのよ?」
「晶の注文してきたやつだからそれなりに美観も整えておかないと笑われるだろう?だから今回はエングレービングとか飾りをいつもより細かくしようと思ってね・・・」
「・・・もしかして・・・その仕上げ私がやるの?」
「うん、エルギールは手先が器用だろ?だからいっそもうデザインから何から全部任せちゃおうかなぁって」
「あ・・・っあとの三本はどうするのよ・・・」
「こっち三つは・・・そうだね、この長剣だけは任せちゃおう」
「・・・・・・」
「じゃ、任せたから」
言いつつ、神姫サイズの工具と金箔、銀箔他様々な素材を私に渡して、本人は残り二振りの仕上げに取り掛かる・・・普段見せない集中した表情・・・不覚にもときめいた(注4)
(・・・っと、いけないいけない、私も集中、集中)
工房は見せてくれないが、琥珀の剣製に関わるのはこれが初めてではなかった
そも、完成したばかりの武器(流石にオーダーメイドは殆ど触らないが)をいつもテストしているのは私だったし、琥珀のデザインした透かし彫りとかで、細かい部分は私が彫っていた
それというのも、ここに来る前に、私はとあるプロジェクトに参加していた経歴があり、琥珀が私を入手した経緯もそのプロジェクトにあるからだ
武装神姫の中には、あるものは踊りであったり、歌であったりといった、芸術的なセンスを磨く事に喜びを見出す者も存在する
だが、武装神姫の性質上、そういった能力を「ダウンロードして終わり」という風には出来ない
結局、先天的にそういった能力を持たない者は、磨くしかない
武装神姫にそういう技術を教える事が可能かどうか、研究している所は多数存在しており、私はそういった機関のひとつ・・・たしか高屋機関だか何だか言う所が主催していたと思う・・・で「ジルダリアの適性」を図る目的で絵画や彫刻の勉強をしていた事があった
彫金に興味があった私と、神姫用の武装を作っていた琥珀
当時の私の担当教官にコネのあった琥珀が、私を譲り受けたのはそういう経緯からだった
だが、武装神姫の性質上、そういった能力を「ダウンロードして終わり」という風には出来ない
結局、先天的にそういった能力を持たない者は、磨くしかない
武装神姫にそういう技術を教える事が可能かどうか、研究している所は多数存在しており、私はそういった機関のひとつ・・・たしか高屋機関だか何だか言う所が主催していたと思う・・・で「ジルダリアの適性」を図る目的で絵画や彫刻の勉強をしていた事があった
彫金に興味があった私と、神姫用の武装を作っていた琥珀
当時の私の担当教官にコネのあった琥珀が、私を譲り受けたのはそういう経緯からだった
「最初は合わなかったわねぇ」
よく作品のデザインと名称で揉めた
自慢出来る事ではないが、どうも琥珀のデザインする武器は地味に過ぎ、私の求めるものは実用性が無かった
さらに、ネーミングセンスが私には無い・・・というか、作品にタイトルを付けるのが面倒なので、ついテキトーな名前になってしまう・・・「無題」というのが一体いくつあるだろうか?
対する琥珀のネーミングセンスは独特に過ぎ、余り一般受けしそうもない代物だ・・・本人は「普通の人は買わないから良いんだよ」と言っているが
いずれも、私が少しずつバトルを知り、琥珀と打ち解けて行く事で少しずつ刷り合わせはされてきてはいるが
琥珀が私を見ている事を知覚した
「良いデザインが浮かぶ?」
「・・・そうね、まぁ見てなさいな」
私は工具と、白い染料を手に取った
よく作品のデザインと名称で揉めた
自慢出来る事ではないが、どうも琥珀のデザインする武器は地味に過ぎ、私の求めるものは実用性が無かった
さらに、ネーミングセンスが私には無い・・・というか、作品にタイトルを付けるのが面倒なので、ついテキトーな名前になってしまう・・・「無題」というのが一体いくつあるだろうか?
対する琥珀のネーミングセンスは独特に過ぎ、余り一般受けしそうもない代物だ・・・本人は「普通の人は買わないから良いんだよ」と言っているが
いずれも、私が少しずつバトルを知り、琥珀と打ち解けて行く事で少しずつ刷り合わせはされてきてはいるが
琥珀が私を見ている事を知覚した
「良いデザインが浮かぶ?」
「・・・そうね、まぁ見てなさいな」
私は工具と、白い染料を手に取った
蒼い鍔に白い唐草文様のコントラストが自信作の巨大なジャマダハル
紅色の柄に、黒曜石をあしらった銀色の王冠型ポンメルが眩しいショートソード
金冠が両端に嵌った黒い鈷杵には、ぱっと見には判らないが柄に蔦をイメージした模様を彫りこんでみた
刀身にルーン文字が刻まれたフォールスエッジの長剣には、蝙蝠の翼をイメージしたやや大袈裟な鍔を添えてみた(喋る魔剣だったらしく、あやしいボケに突っ込みを入れつつ彫り込んだ)
それぞれに、『閃牙(センガ)』『舞剣(マイヅル)』『魔奏(マソウ)』『空牙(クウガ)』という名を与えられた武器達
この四振りの仕上げは私の・・・ある意味に於いて最初の本格的な作品なのかも知れない
少し・・・否かなり誇らしかった
「・・・ねぇ琥珀・・・」
「琥珀・・・?」
座ったまま、真っ白になっている琥珀
「・・・・・・もう!人が折角気分出して一大決心を話そうとしたのに!空気読めないんだから!!」
うんしょ・・・とひざ掛けを肩から掛けてやり、小さく唇にキスをする
うん、眠っている間は可愛いものじゃない
「・・・う・・・」
「!!!!ちょっ!何でこのタイミングで起きてくんのよ!信じらんない!」
「もう一度・・・」
「え?」
「もう一度、してもらえるかな・・・キス」
かもめは、もう飛び去って久しかった
紅色の柄に、黒曜石をあしらった銀色の王冠型ポンメルが眩しいショートソード
金冠が両端に嵌った黒い鈷杵には、ぱっと見には判らないが柄に蔦をイメージした模様を彫りこんでみた
刀身にルーン文字が刻まれたフォールスエッジの長剣には、蝙蝠の翼をイメージしたやや大袈裟な鍔を添えてみた(喋る魔剣だったらしく、あやしいボケに突っ込みを入れつつ彫り込んだ)
それぞれに、『閃牙(センガ)』『舞剣(マイヅル)』『魔奏(マソウ)』『空牙(クウガ)』という名を与えられた武器達
この四振りの仕上げは私の・・・ある意味に於いて最初の本格的な作品なのかも知れない
少し・・・否かなり誇らしかった
「・・・ねぇ琥珀・・・」
「琥珀・・・?」
座ったまま、真っ白になっている琥珀
「・・・・・・もう!人が折角気分出して一大決心を話そうとしたのに!空気読めないんだから!!」
うんしょ・・・とひざ掛けを肩から掛けてやり、小さく唇にキスをする
うん、眠っている間は可愛いものじゃない
「・・・う・・・」
「!!!!ちょっ!何でこのタイミングで起きてくんのよ!信じらんない!」
「もう一度・・・」
「え?」
「もう一度、してもらえるかな・・・キス」
かもめは、もう飛び去って久しかった
剣は紅い花の誇り
注1:本人はバレていないと思っているのでそっとしておいてあげて下さい
注2:ボナパルト君とヴェートーベン君本人である
注3:大体いつもこの手口でいやらしい事を要求される
注4:今更何を
注1:本人はバレていないと思っているのでそっとしておいてあげて下さい
注2:ボナパルト君とヴェートーベン君本人である
注3:大体いつもこの手口でいやらしい事を要求される
注4:今更何を