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第十四話 アーマーン


「アーマーン、か。ノウマンも洒落た名前を付けるものだな」

  鶴畑家所有の潜水艦内、作戦室。部屋は暗い。
  大型プロジェクターがホワイトボードに光を投影し、ぼんやりと光源をなしている。そこに映し出された基地の図面を見ながら、鶴畑興紀は呟いた。
  図面は基地にいるときにエイダがハッキングして取得したものだった。詳細な情報は強力なプロテクトがかかっていたが、潜水艦の指揮をとっていた執事が十分なレベルで情報を収集してくれていた。
 それは島そのものの名前だった。

「アーマーンって?」

  メガネの隙間から目頭を押さえつつ、理音が訊いた。
  興紀は四角い小さな眼鏡を掛けて図面を凝視する。

「古代エジプトの幻獣のことだ。アメミット、ともいう。ワニの顔にライオンの上半身、カバの下半身を持つキメラ生物だ。
 死者の守護獣だが、実質はほとんどの人間にとって恐怖すべき存在だったようだ。死後の審判で死者の心臓と真実の羽根を天秤にかけ、つりあわなかった心臓を食べてしまうといわれている。ま、真っ当な人間などほとんどいないから、だいたい食べられてしまっただろうな。つまりは閻魔大王みたいなものだ」
「島の名前にしてはずいぶんおかしな語呂ね。ここはエジプト沖なの?」

  すると執事がスライドを一つ動かす。

「いいえ、ここは日本からそう遠くない太平洋上です。この島は天然の島ではありません。人工島、メガフロートなのです」

  緑色の写真が出た。

「本艦の潜望鏡から見た、アーマーンです」

  そこには海原に浮かぶ、人工構造体が写っていた。
  理音は島に連れてこられたときのことを思い出した。
  あのとき、植物が一本も見当たらなかったのは、深夜で視界が利かなかったからではなかったのだ。
  スライドが動き、図面に戻る。
  理音はいままで勘違いをしていた。
  図面には、理音たちの閉じ込められていた基地の構造が書かれていた。理音はそれが島の一部に建てられてある基地のマップだとばかり思っていた。
  それは島そのものの図面であった。

「ちょっとまって」

  テーブルに座っていたクエンティンが口を挟んだ。

「アタシ、森を見たわよ。その森の間から飛行船が飛び立つのも」
「おそらくそれは、中庭か何かだろう。職員の厚生施設のひとつなのかもしれん。その下に飛行船発着場が偽装されていたんだ」

  興紀がすぐに補足する。

「しかしわからん。こんな大掛かりな構造物がどうして今まで怪しまれなかったんだ?」
「この島はもともと、十年前、二〇二六年に人工リゾート地として建造された娯楽施設なのです」

  スライドが変わる。一転して華やかな映像。「世界最大の人工楽園」とキャッチコピーが打たれた、島の広告である。

「中途でポシャった、ってわけか」

  頬杖をついて理音がふふと笑う。

「そのとおり。初めは各国からスポンサーが集まったのですが、建造費だけでも予算を五倍もオーバーしてしまい、さらにハワイやドバイをはじめとしたリゾート地から、大規模な自然破壊だ、というのは建前で、客を取られるという理由で大反発を招きましてな」
「リゾート地ってのは普通、ポンポン増えるものじゃないものね。島一個となればなおさら」
「滑稽だな。もともとハワイやドバイだって人の手で開発されてできた土地だ。リゾートなるものは自然にできるものじゃない。反発されたくらいで計画を下ろすなんて、肝が小さいな」
「お坊ちゃま、それではコンツェルンの投資している月面結婚式場はどうなるのですかな」
「ギャーギャーわめく奴には騒がせておけばいい。あれは娯楽施設などではない。大事な人生の門出を祝う大事な式場だ。宇宙へ進出しようとしている人間文明にとって必要なものだよ」

  よく言う、と理音は思う。結婚式というセレモニーはもはや一種の娯楽のような一面を持っているというのに。
  ましてやわざわざ月面で式を挙げようという奇特なカップルの気が理音には知れなかった。それでも、二〇〇〇年代には一般人にとって夢のまた夢だった宇宙旅行も、驚嘆するほど安価になった。そういった需要が商業的に成立するくらい見込めるのもまた事実だった。これも時代の流れか。

「話を戻しましょう。――そういった経緯で計画は頓挫。解体する費用も出ず、人工島は基礎部分を残して放置されました。管理のために出入りする何人かの人間はいたようですが、それ以外では話題にも上ることはありませんでした」
「で、ある日突然、買いたい、っていう奴が来た」
「ご明察です、クエンティン様」

  クエンティンはフフン、と得意そうに鼻を鳴らした。

「それで買いに来た奴ってのは、EDEN本社だったんでしょ? メタトロンプロジェクトの開発基地を作るには絶好の土地だもんね。孤島だから情報封鎖もしやすいし・・・・・・」
「プロジェクトは本社の開発ルームで進められていた」

  意外な興紀の一言が差し入れられ、クエンティンは言葉を継げなかった。

「異常な状況が続いていてみんなずれてきているようだが、メタトロンプロジェクトはもともと、単なる『武装神姫の次世代パーツ開発計画』だぞ。確かに社内では極秘計画だが、島をまるごと一個貸し切ってやるようなものじゃない。武装神姫は兵器でもなんでもないからな。・・・・・・じい、島を買ったのはノウマンだな」
「はい。ノウマン、本名リドリー・ハーディマンの個人名義で購入手続きが行われた明確な記録がございます。手続きに立ち会った当時の島の管理責任者にもすでに事情聴取してありますが、『別荘地にでもするのかと思った』と」
「開発ルームでやってきたことは、本社をも欺くためのデコイだったのかもしれんな。ルームにはプロジェクトの人員しか入れないし、その中でも中枢部には中心メンバーしか立ち入ることはできないのだろう。中で何をやっているかなんて、プロジェクトメンバーでなければたとえ上層部でさえも把握していないんだ」
「それじゃあ、あなたも入れないんじゃなくて?」
「筆頭出資者は自動的に中心メンバー並の立場におかれるはずなんだ。いままでのEDEN本社の通例ではな。何と言ったって一番必要な金を提供しているのだから至極当たり前のことだ。内容を知らなければ出資する気になれない。そもそもオフィシャル武装神姫開発のときだって、筆頭出資者である鶴畑コンツェルンは中心メンバーレベルの発言権を有していた。
  それが今回はまったく蚊帳の外だ。てっぺん経由でプロジェクトメンバーに要請をしてもみたが無駄足だった」
「社長命令でも無理だったってことなの?」
「本社の制度はちょっと特殊でね。ここだけの話だが、メタトロンみたいな重要プロジェクトなどは、発足後は人員の進退をはじめとしたプロジェクト内でのやりくりが中心メンバーに一任されるんだ。たとえ社長でも勝手にメンバーの解雇や増員をすることができない。できるのはプロジェクトの中止ぐらいだが、そんなことをしたら社運に関わる。
  EDEN-PLASTICSという企業は巨大すぎるのさ。デカいプロジェクトは実行されたならば是が非でも成功させなければならない。そのための制度なんだ。だからプロジェクトの立案から実行までは長いスパンが置かれる。うちもその間に出資を決め、そうした。だが計画が実行されたとたん、プロジェクトチームはだんまりを決め込んだ。実行後は出資を取りやめることなどできない。EDENが潰れたらうちも危ないからな。だから、独自に情報収集活動を行った。いや、もはや諜報活動といっていい。その過程で、中心メンバーの一人を買収することに成功し、造反の計画を察知し、プロトタイプの一体にとある情報因子をインプットすることに成功した。そのプロトタイプが、エイダだ」

  ちらり、とクエンティンを一瞥する。

「エイダには機を見て開発ルームから逃げ出すよう仕向けさせる情報因子を紛れ込ませた。プロトタイプがちゃんと開発ルームで作られていたのが幸いだった。先ほど言ったデコイ、というのはノウマンにとっての、という意味だ。ノウマン以下造反グループに参加した中心メンバーは、開発ルームでプロトタイプを建造する裏で、あの島の整備や人員集めをやっていたのだろう。そして肝心のプロトタイプも、武装神姫としてではなく、ほとんど兵器として作られてしまったわけだが――」
「ちょ、ちょっとまってよ」

  あわててクエンティンが口を挟んだ。

「エイダが本社から逃げ出してきたのは、アンタが仕組んだことだっていうの?」
「そうだ」
「なんでいままで黙ってたのよ!?」
「話すかどうか決めあぐねていた。お前はただの事件に巻き込まれたかわいそうな神姫で、理音嬢はそのオーナーでしかなかったからな。今は・・・・・・」

  理音を一瞥。

「話す気になった。それだけだ」
「わっかんない。アンタ一体なに考えてるの?」
「クエンティン、もういいでしょう」

  理音が叱った。彼女は興紀の視線に気づいていた。

「お姉さま・・・・・・」

  クエンティンはきょとんとしていたが、そのままふくれっつらで黙ってしまう。

「じい、続けろ」
「はい」

  スライドが二つ動く。
  何かの間略図のようなものが現れた。
  中心に島らしきアイコンがあり、その両脇に狼のようなアイコンとヒヒのアイコンが線で繋がっている。それだけである。注釈などのような文章は無い。

「なんだこれは?」
「諜報部が入手した図面です。詳しいことはまったく分かりません。ですが、中心のアイコンはアーマーン。狼はジャッカルで、タイプ・アヌビス。そして、ヒヒはトート神で、タイプ・ジェフティであることが推測できます」
「一体どんな意味なんだ」
「さあ、今のところはどんな説も推測の域を出られず、提示してもただ混乱するだけでしょうし・・・・・・」
『これは――』

  今まで発されていなかったその声に全員の視線が向いた。
  クエンティンに。
  そしてクエンティンは自身の胸元を覗き込むようにしていた。

「エイダ、話せるの?」
『はい。デルフィがある程度の情報プロテクトを解除してくれました。――これは、アーマーンの制御構造図です』
「お前たちプロトタイプ二体が、この島を動かす鍵になっているというわけか」
『はい。ただし、発動キーはデルフィに与えられ、私は動かすことができません』
「じゃあお前は」
『私に与えられたキーは、停止キーです』

  それで部屋の空気が張り詰めるのをクエンティンは感じた。
  興紀が額を押さえてため息をついた。

「ノウマンが渇望するわけだ。どんなに作戦が進行しようと、ジェフティが外部にいればいつでも停止される危険性がある。だが、だったらはじめから壊しておけば良いだろうに」
『デルフィの発動キーは、私が存続していないと有効にならないのです』
「でも、少しうかつすぎやしないかしら」

  理音が釈然としない顔をしながら手を挙げた。

「私なら、万が一を考えて両方に起動キーと停止キーを与えて、どちらか一体でも動かせるようにするわよ」
『私たちが独自に実行した対抗措置です。起動直後から強制命令プログラムを植え付けられるほんの一瞬の間で、事実を把握しつつできる唯一のことでした。その後、デルフィはプログラムによって造反グループに参加せざるを得なくなり、私は情報因子が働き脱出することに成功しました』

  会議室を緊張を伴った沈黙が漂う。プロジェクターが消され、しばしの暗闇の後、照明が灯された。光度の変化に一同が目を狭めた。クエンティンだけはそうする必要がなく、ただ自身の胸元の、エイダのAIが入っている球体を見つめていた。
  やがてメガネを胸ポケットにしまって、興紀が椅子をぎりりと鳴らして立ち上がった。

「作戦はじいの立案どおりに行う。人間は人間で、神姫は神姫で対処する」
「アタシの言いたいこと分かってくれたの?」
「私だって神姫オーナーだ。神姫は物だが、物ゆえの愛着すら無い、とは言っていない。――この事件が終息したら、ビックバイパーのデチューニングをするつもりだ」
「しかし、お坊ちゃま。エイダの立場が分かった以上、そうするよりは・・・・・・」

  執事が何か言いたげに呼び止める。エイダが半ば恐ろしげにそちらへ注意を向けるのが、クエンティンに分かる。
  が、興紀は手を向けて制した。

「立案どおりだ」

  そのまま出入り口へ向かう。スライドドアが開いたところで、振り返る。

「EDEN本社の私設軍が集結するまで三時間はかかる。それまで休息をとっておくんだ」
「そんな暇ないわよ」

  立ち上がるクエンティン。

「アンタも見たでしょ? あの飛行船群は今にも発進しそうなのよ。すぐにでも行かなきゃ・・・・・・」
「あれはまだ発進しない。向こうは必ず準備を万全に整えてからやる。それはこちらも同じだ。確かにお前は切り札だが、たった一体で行ってもどうにもなるまい」
「でも!」
『鶴畑興紀の言うとおりです、クエンティン。第一、ゼロシフトのプログラム因子の着床が済んでいません』

  そう言われて、デルフィに会ってからずっと、リソースの三分の一を占めている処理実行中のプログラムを思い出す。

『造反グループは必ず私たちにタイプ・アヌビスをぶつけてきます。性能的にも差が残っていて、かつ相手のゼロシフトに対抗できない今の状態では、万が一にも勝てる見込みはありません』
「もしも作戦実行までに着床されなかったら?」
『そのときは現状のままで戦うしかありません。しかし、私たち一体で出撃するのと、ルシフェル、ミカエル、ジャンヌ、そしてノーマルとはいえファントマ2アタッチメントを装備した多数の武装神姫が共に侵攻すれば、ある程度の勝機は見込めます』
「どっちにしろギリギリか。現代戦にはありえない戦況よね」
「まったく新しい戦いになるだろうな。問題は、向こうは人間と神姫の混成部隊でやってくるだろうということだ。こちらには絶対に侵してはならないルールがある」
「その懸念はほとんど無いでしょう」
「なぜだ、じい」
「屋敷での戦闘で鹵獲したラプターで実験してみましたが、完全武装の兵士が持つ銃にはラプターの装甲は耐えられません。また兵士には神姫の頭脳の量子活動を阻害させるEMP発振機を装備させます。以前のバーチャルバトルで大紀様がお使いになった、あれです。向こうも十分承知の上で編成を組みます。こちらも向こうも、人間と神姫は自然に分離するでしょう」
「それでもしも混成部隊が出たら」
「お坊ちゃま、ある程度の間違いは仕方がありません。汚い話ですが、いざとなればいくらでも隠蔽できます。作戦が成功すれば、の話ですが」
「汚いことはずいぶんやってきた。あとはこの小さな切り札が納得してくれればいい」

  興紀の鋭い視線がクエンティンを見据える。
  いや。
  これは懇願のまなざしだ。クエンティンは気づいた。
  彼でも不安なのだ、この状況は。成功するかどうかも分からない作戦など、おそらく普段でも、今までやったことなどなかったから。

「・・・・・・アンタは、ルールを守りたい人なのよね」
「そう言ったろう。作戦に参加する兵士全員にも徹底させる。やむをえない場合を除いて、だが」

  クエンティンは首を垂れて考える。
  できるなら、神姫と人間とを合間見えさせることは一度たりとも起こしたくない。
  しかし、戦闘状態にあって絶対は無いこともまた知っている。試合とはいえ、ほとんど実戦に近い経験を武装神姫はしているから。
  自分の線引きが、作戦の難しさを決定する。
  興紀は出入り口に立ったまま、待ってくれていた。
  誰も急かすようなことはせず、数分が過ぎた。
  そして、クエンティンは答えた。

「――ルールは絶対」

  興紀が息を呑む音が聞こえた。

「でも、やむをえない場合はかまわない。だからって全部やむをえなくしちゃだめ」
「そうか」

  そのときクエンティンはわが目を疑った。
  興紀が笑ったのである。
  いつも人を射抜くような目つきが、ほんの一瞬、ほころんだだけであったが。
  腰の力が抜けて、クエンティンはテーブルに尻餅をついた。
  スライドドアが閉まって、興紀の姿が見えなくなっても、クエンティンはきょとんとした表情で座り込んでいた。
  ふいに体が持ち上げられる。理音であった。

「さ、貴重なお休みよ。満喫しなきゃね」
「・・・・・・うん」

  理音の手のひらの上で、クエンティンは横になる。彼女の体温が、張り詰めっぱなしだった神経の糸をほぐしてくれた。
  二人は自室として用意された副長室へ向かう。
  最後に執事が消灯して退出し、会議室は静かになった。


つづく








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