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 お兄さんが女装していて、憧れの人がその犯人で。
 おそらく最悪だろうファーストコンタクトから、十分後。
 私達は、エルゴ二階のバトルスペースにいた。
「静香さんがそんな人だって思いませんでした!」
 千喜さんもプシュケもあれからずっと腹を立てっぱなし。バトルの登録手続きを済ませるなり、静香の隣で戦闘準備の真っ最中だ。
 本当はもっと離れた席が良かったんだろうけど、春休み真っ只中のエルゴに筐体を選べる余裕なんかない。その事が彼女達の怒りに拍車をかけていたのは、たぶん間違いなかった。
「別にどう思っても勝手だけど、それを押し付けられる義理はないわねぇ」
 対する静香は状況を面白がってすらいる。多分、普通に千喜さんを案内するより、楽しんでるんじゃないだろうか。
 いずれにせよ貧乏くじを引いたのは、スペースの隅で抜け殻みたいになっている十貴だけ、っていうことだ。
「ココ。準備はいい?」
「ええ、まあ」
 装備はいつも通りの武装コート。さすがにここでフェザーを出すのは気が引けた。千喜さんもプシュケもバトル初心者だし、コートだけで決着はつくだろう。
「千喜ちゃんは大丈夫?」
「当たり前です!」
 ああ、まだ怒ってる。
「じゃ、行くわよー」
 そしてポッドのハッチが閉じて。
 私達は、バトルフィールドへと転送されていく。


魔女っ子神姫ドキドキハウリン

その21 後編



 バトルエリアはいつもの廃墟。半分から上が崩れたビルの中程に、彼女はふわりと浮かんでいる。
 プシュケの装備はジルダリアのデフォルト装備だった。買い物をする前にバトルになってしまったし、当然といえば当然だけど。
「容赦しませんわよ!」
 腕部装甲から伸びるブレードを構え、プシュケは高らかに言い放つ。
 背中のリングが浮遊装置になっているらしい。周囲の小さな羽根が時折角度を変えている所をみると、あれはスタビライザーの一種なんだろう。
「ええ。ココも本気で行きなさいよ」
「はぁ……」
 静香は戦う気満々のようだけれど、個人的にはどうするべきか迷っていた。私が負ければ、十貴もあの女装をしなくても済むわけで……。

-Ready-

 迷っている間に、戦闘開始のアラートが鳴り響く。慌てて思考を切り替え、戦闘モードへ移行。
 私の一瞬の隙をついて、空中のプシュケは一気に加速……
「……え?」
 する気配がない。
 こちらに近寄っては来てるけど、歩くよりちょっと速いくらいというか、何というか。
 あの浮遊装置、ホントに浮遊するだけらしい。
「プシュケ。その浮遊装置切って、歩いた方が速くないですか?」
「う、うるさいですわっ!」
 小さな羽根をカシャカシャと動かして、軌道修正。地面にゆっくりと降り立って、そのままダッシュ。
 うん。やっぱりそっちの方が三倍は速い。
 今度こそ接敵。
「はあああああっ!」
 突撃しながら、両腕のブレードからの刺突が来る。けど、背中のリングのおかげでバランスを取りきれないプシュケの動きは隙だらけ。
 新人らしい微笑ましい突撃を、最小限のステップでかわしたところに……。
「?」
 すれ違いざま、私の聴覚センサーに残るのは、カチカチというノイズのような音。
「どうしたの? ココ」
「いえ……別に」
 プシュケの頭辺りから聞こえてきた気がするけど、気のせいだろうか? 私の聴覚センサーに異常はないはずだけど。
「やああああっ!」
 踊るようなステップからの続けざまの斬撃も、大した速さではない。大振りはステップで避け、突き込みは右手の短剣で受け流す。
 当たらない攻撃に、プシュケの表情には軽い焦りの色が生まれていた。
 けど気になるのは、すれ違うたびに聞こえる、あのカチカチというノイズ。彼女の焦りを現しているように、徐々にその速さを増しつつある。
「プシュケ! アレルギーペタル!」
 外部からの千喜さんの声と共に、プシュケの右手に武装が呼び出された。
 現われたそれは、長剣か槍らしきもの。
「了解ですわ!」
 二叉に分かれた刀身を、軽く瓦礫に打ち付けて。
 再び来るのは、直線的な突き込みだ。
 サイドステップを一発仕掛け、スレスレで避けた瞬間。
「っ!?」
 私の膝が、ガクリと折れた。
 エラー警告。脚部動作不能。
「はああっ!」
「ちっ!」
 体勢を立て直す間もなく振りかざされるのは、プシュケの二叉の槍。
 慌てて大地に両手を打ち付け、その反動でペタルの斬撃を回避する。
「何だったの、今の……」
 既に足は正常に戻っていた。さっきのエラーログを検証すればいいんだろうけど、戦闘中にそんな隙があるわけがない。
 相手は初心者、ジャミングやハッキングといった『魔法』の類ではないはず。あの槍らしきものが犯人なんだろうけど……。
「システムに干渉する武器みたいね。油断すると、刺されるわよ」
「はい」
 少なくとも、距離を取って避けた方が良さそうだ。
 そう対策を決めた時。
 アレルギーペタルと呼ばれた槍は、ポリゴンの欠片となって姿を消していた。どうやらまたサイドボードに戻したらしい。
「マスター。プログラム展開、完了ですわ」
 それと同時、気が付いた。プシュケからずっと聞こえていた、カチカチという音が止まっていることに。
「ならプシュケ。ハイパーモード、起動!」
 その瞬間。
「ココ! 防御っ!」
 静香の言葉に反射的に突き出した左の短剣が、ポリゴンの欠片となって消滅する。
「ハイパーモード、ですか」
 刃を失った短剣を放り捨て、私はコートの裾から次の短剣を引き抜いた。
 浮遊リングの周囲を囲む八枚の小翼は、四対の大型のバインダーに変わっている。外見はそれだけの変化だけど……。
「だから本気で行けって言ったのに……」
 浮遊リングだけに頼った、さっきまでの緩慢な動きとは大違い。大きな動きを見せるバインダーに内蔵された推進器は、一瞬ごとにその角度を変え、縦横の軌道を叩き出す。
「遅いですよ、静香」
 鈍い音と共に砕け散った短剣を捨て、次を抜く。さっきまでは余裕でかわせていた両腕のブレードも、今の無茶苦茶な軌道と組み合わせれば脅威のひと言でしかない。
 二連の斬撃を何とか受け流せば、プシュケはいきなり急上昇。
 角度を変え続けるバインダーは……二枚足りない!?
「ココ、右!」
 バインダーの体当たりを流せたのは、静香の声があったから。
 さっきの斬撃の間にバインダーを外し、マスィーンズのように使ったらしい。このバインダー、分離させても使えるのか。
 アーンヴァルやツガル並みの空中機動に、私達のような遠隔武装。特殊効果を備えた近接装備は、紅緒やサイフォスの発展系だろう。
 四期モデルが今までの神姫の集大成っていうのも、あながち冗談じゃないらしい。
 って、感心してる場合じゃなかった。
 ポケットからワイヤーを取り出し、分離したバインダーを絡め取る。これで、二枚は無力化……。
「甘いですわっ!」
 ……本体もいたんだっけ。
 急降下してきたプシュケを避けるには、ワイヤーを手放すしかない。長剣でバインダーに絡んだワイヤーを断ち切れば、自由になったバインダーは再びプシュケの浮遊リングへ。
「ちょっとその武器、卑怯すぎませんか?」
 そこらの改造装備より、よっぽど強い。正直、これがデフォルト装備なんて無茶もいいとこだ。
 しばらく、下位リーグは荒れるだろうな……。
「あら。これ、AI搭載じゃないから……結構疲れるんですのよ?」
 はぁ、とため息を吐くプシュケの頬は、少しだけ朱い。
「それ、全部貴女自身で?」
「ええ。補助の演算ユニットを四つ付けて、何とか使ってますけれど」
 四つの髪飾りを親指で軽く叩き、プシュケは誇らしげに笑う。
 そうか。あれ、ただの飾りじゃなかったのか。多分、ティキの増加演算装置と似たようなことをしてるんだろう。
 ハイパーモード前に言っていたプログラム展開終了っていうのは、そういう意味か。
「あ。ちゃんと放熱はしてますもの。オーバーヒートを狙っても、無駄ですわよ?」
 ……そこまで姑息じゃないですけどね。
「ココ!」
 その時だ。
 静香の声が響き渡り、同時に私の眼前に青い大型バインダーが姿を現して。
「へっ!?」
 光学迷彩!? そんなバカな!
「……アレルギーペタル……っ」
 思わず見上げたプシュケの手にあるのは、先程の二叉の長槍だ。神姫の感覚を狂わせる、干渉槍。
 話をしている間に、足じゃなくて視覚に干渉して……?
「チェックメイト、ですわ」


 バインダーの一撃は、いつまで経っても来なかった。
「ココさぁ……」
 代わりに来たのは、呆れたような声と、大きな影。
「……え?」
 巨大な腕と、巨大な脚。
「悩むのはいいけど、敵ぶっ潰してから悩もうぜ?」
 それが、私に迫っていた二枚の大型バインダーを、真っ二つに叩き折っていた。
「ジル……それは?」
 いつものクレーンアームとショベルアームを備えた六本腕じゃない。腕の数は四本に減っていたけど、太さだけならストラーフのサブアームの四倍近い。
 それはさらなる重装甲とパワーファイトを突き詰めた、新たな異形の姿だった。
「試作中の新兵器だよ。鳳凰カップには、ちと間に合いそうにないけどね」
 ジルの言うとおり、装備の色はちぐはぐで、まだ塗装もされていない。本当は、店長に見てもらおうと思って持ってきたって所なんだろう。
「静香ぁ。役立たずはとっとと引き上げさせな。今日のコイツ、使えねえわ」
「あ……」
 苛ついたジルの声と共に、私の姿がポリゴンになって消えていく。静香が外部から、撤収命令を打ち込んだらしい。
「さぁて新人。やる気のないヤツは放っといて、第二ラウンドと行こうじゃないか」
 消えていく私に振り返ることもなく。ジルは相手だけを見据え、未塗装の巨大な拳を打ち合わせた。
「それともお嬢様は、やる気のないヤツに不意打ちかますしか出来ないか?」
 安い挑発だ。
 けど、プシュケはその言葉に露骨に表情を曇らせる。
「ふんっ。最初期モデルのロートルが何をおっしゃいますの?」
 残るバインダーを展開させ、機動を開始。
「上等じゃねえか。先輩への口の聞き方、キッチリ教えてやんぜ!」
 ジルの拳が振り上げられたところで。
 私はその世界から、姿を消した。


 小さな排気音を立てて、ハッチの蓋は開かれた。
「静香……すいません。油断しました」
「ジルの言うとおりよー。ココ」
 静香はディスプレイを眺め、頬杖を突いたまま。既に装備類は片付けられていて、後は私を回収すれば良いだけになっていた。
「はい。今後、気をつけます」
 春休みのエルゴは人も多い。私は反省もそこそこに静香の肩に乗り移り、筐体から離れることにする。
「で、どう? そっちは勝てそう?」
 静香が移ったのは、もちろん千喜さんのいる隣の筐体だ。
「アドバイスなんかいりませんからっ!」
「んー。あたしが少々アドバイスしたところで、ジルが負けるとか無いしなぁ……」
 実際、バトルフィールドはジルのワンサイドゲームだった。バインダーのトリッキーな動きも、アレルギーペタルの特殊効果も、『鋼帝』は圧倒的なパワーと重装甲で強引にねじ伏せ、打ち砕いていく。
 それは、目の前の敵全てに区別無く振るわれる力。ファーストだろうが、初心者だろうが、一切の手加減も一片の容赦もなく下される、無慈悲な暴力だ。
「……ファーストの『鋼帝』だから、ですか?」
「それもあるけど……。あの子、迷わないからね」
 ちなみに、十貴子はシートに着いているだけで、何の指示を送る様子もない。どうやらまだ落ち込んでいるらしい。
「……なんか、分かった気がします」
 プシュケのバインダーは残り三枚。装甲の薄い関節部にバインダーを打ち込もうとしているようだけど、関節部まで装甲で覆われたジルの腕には通用する気配もない。
 あ。また一枚、砕かれた。
「静香さん……お兄ちゃんとジルのこと、大好きなんですね」
「それも勘?」
 悪戯っぽい静香の問いに、千喜さんは初めて穏やかな声を返してくれた。
「はい。でも、好きだからいぢめるって、男の子の手口ですよ?」
「十貴子が女の子みたいに可愛いのがいけないのよ」
 否定はしませんけど、十貴が聞いたら泣きますよ、それ。まだ落ち込んでるみたいだし。
「……正直、あたしより可愛いのはどうかと思いました」
「今度、千喜ちゃんも十貴で遊ぶ?」
 いやいやいや。そんなことされたら、十貴ホントに立ち直れなくなりますから。
「あの、静香……千喜さん」
 それに、忘れてるかも知れないけど。
「何?」
「はい?」
「仲直りしたのはいいんですが、バトルはどうするんです?」
 バトルは、まだ続いてるんですよ?



 つまんねぇ。
 それが、あの花娘への感想だった。
 まあ、初心者相手だし、こんなもんだろうとは思ったけど……無限武装まで出したのは、さすがに大人気なかったかな。
「そんなの、エントリー前に気付こうよ……」
 うるさいな。どこかの狙撃手だって言ってるだろ?『有象無象の区別無く私の弾頭は許しはしないわ』ってな。
 あたしの鉄拳だって、有象無象の区別無く許しゃしないんだよ。
「まだですわっ!」
 ただ、相手もやる気だけはしっかり残ってた。バインダーは全損、装甲もボロボロで、腕から伸びたブレードも両方半ばから折れ曲がってる。左腕に至っては、胸の高さまでしか上がらないらしい。
 それでもなお、右手で剣を構えて立つ姿は……いいね、その闘志は尊敬に値する。
「おう。来い!」
 なら、こっちの出来る返礼はただ一つ。
 この鋼の拳を以て、全力で叩き潰す事だけだ。
 視界の隅に小さなアラームが鳴った気がしたけど、ココ辺りだろ。あえて無視。
 よたよたと迫り来るジルダリアに、あたしは右のサブアームを高く高く振りかざす。
「これで、終わりだっ!」
 それを、一気に叩き付けて。

 響き渡ったのは、鋼と鋼のぶつかり合う、鈍い音だった。



「……へ?」
 私は、フィールドの光景に目を疑った。
「……え」
「何……こいつ」
 静香も、千喜さんも、向こうの筐体では十貴さえもが呆然としてる。
 ジルの拳は、間違いなく振り下ろされていた。
 けど、プシュケには届いていない。
 プシュケの剣も、ジルに届いてはいない。
 受け、止められたんだ。
『彼』の鋼のハンマーに。
「ゴルドさん!」
 左のハンマーひとつでジルの巨大アームを受け止め、右手ではプシュケの長剣を無造作に掴んでいる。
 限りなくワンオフモデルに近い『彼』のオーナーを、私達が間違えるはずがない。
「何やってんだ、お前ら?」
 私達の位置から一番離れた筐体。千喜さんが最初に行きたかった席で、おじさまがゆっくりと立ち上がる。
「パパ!」
 そう。千喜さんと十貴の、お父さんだ。
 おじさまも戦闘はゴルドさんに任せるタイプなんだろう。指示を送る様子もないまま、こちらにやって来る。
「パパ……ねぇ」
「……何だよ。悪いかよ」
「いや、悪くはないけど……」
 千喜さんのその呼び方に、十貴はだいぶ抵抗があるらしい。
 まあ、多分、ここで静香が同じ呼び方をしたら、なんか一般とは別の関係と間違えられる気がしますしね。
「何か文句ある?」
「いや……ないけど、さ」
 二人から睨まれる十貴の様子に居たたまれなくなってフィールドに目をやれば、ジルがゴルドさんに一方的に押されてるのが見えた。
 いくら規格外品とはいえ、新装備のジル相手に一方的だなんて。強いにも程がある。同じMMSでありながら、神姫の公式大会にAHPが出られないわけだ。
「……なあ、ココ」
 そんな事を考えていると、おじさまが小声で私の名を呼んだ。
「……はい?」
「十貴子の正体、秘密になってるワケ?」
 一応、最初はその予定だったんですが。
「なんか、最初の三分くらいでバレちゃいました」
「やっぱなぁ……」
「やっぱり?」
 千喜さんに正体がバレるのは、おじさまにとって織り込み済だったって事?
「いや。こっちの話」
 なるほど。千喜さんは初めから、十貴が女装してる事を聞いてたってワケか。あの様子だと、おじさまがせがまれて話したか、うっかり口にしてしまったという所だろう。
「パパ! 今日はどうしたの?」
「いや、バトリングの新しいパーツが入ったから取りに来たんだが……上にお前らが来てるって聞いてな」
 やっぱり。
 十貴にはそうでもないけど、千喜さん相手だとだいぶ甘いみたい。
「そうなんだぁ」
 階段の方をちらりと見れば、凛奈さんがこっちを見てニヤニヤ笑ってた。そういえばお店に来たとき、店番はジェニーさんじゃなくて凛奈さんだったっけ。
「パパ、ねぇ……」
 呆れ顔の十貴を見上げていると、どうやらバトルも終わったらしい。もちろん、ゴルドさんの圧勝だ。
「離せゴルドさん! まだアイツとの決着、ついてねえぞ!」
「お離しなさいな! 無礼ですわよ! このヒゲ!」
「艦長。ミッションコンプリート」
 フル武装のジルを左肩に。ハイパーモードを解除したプシュケを右脇に抱えたゴルドさんは、暴れる二人を気にする様子もない。
「おーう。サンキュな、ゴルドさん」
「オーケー艦長」
 二人は不本意そうだったけど、少なくともマスター達は仲直りしている。さしあたりの所、これ以上私達が戦う理由はなくなったわけで。
「じゃ、下行くぞ。下。まだ買い物終わってないんだろ?」


 ジルとプシュケも、一応の……本当に一応の……仲直りをした。
 その様子を眺めながら、私は傍らに立つ大きな影の名を呼んだ。
「あの、ゴルドさん。質問なんですが」
 私の問いに、ゴルドさんは答えない。無口なのはいつものことだから、私は構わず言葉を続ける。
「……何であのバトル、ゴルドさんが乱入出来たんですか?」
 あの戦い、フリーバトルではなく、ランキングにポイントが加算される公式モードになっていたはず。ランキング登録を済ませている私やジルならともかく、公式バトルに参加できないゴルドさんが、乱入できるはずがないのに……。
「……」
 いつも通り、ゴルドさんからの答えはない。
「何か、秘密があるんですか?」
「ウホッ。いい神姫」
 そう呟くと、その男はボクの見ている目の前でツナギのホックをはずしはじめたのだ……!
「ちょっとゴルドさん、それセクハラですよ」
 いやちょっと勘弁してください。
「……オーケー」
 私に言われ、さすがのゴルドさんもその手を止める。
「ほらココ、行くわよ。買い物が終わったら、おじさまが夕飯に連れてってくれるって!」
「あ、はーい!」
 静香の呼ぶ声に。私はゴルドさんからの答えが聞けないまま、筐体を後にするのだった。





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