「・・・・・・何やってんだこんな所で」
喫茶店「LEN」のオープンカフェで、修也はコーヒーを運んできたかすみに聞いた。
喫茶店「LEN」のオープンカフェで、修也はコーヒーを運んできたかすみに聞いた。
さかのぼる事数時間前、かすみは轟号の中で目を覚ました。時計を見ると、まだ5時前である。
夜型人間の割には起きるのが早いかすみだが、今日はいささか早すぎた。眠っている人達を起こさないよう静かに、上着を羽織って外に出る。3月とはいえ、明け方はまだ寒い。
会場は、静まり返っていた。祭りの前の静けさ、とはよく言ったものだと思う。
昨日、研究所にこの大きなトレーラーが来た時は、さすがに驚いた。これが自分の働く場所だと知って、さらに驚いた。もっとも、相手側も自分の小ささに(かすみとしては不本意ながら)驚いていたのだが。
「・・・・・・別に、困ってはいないんですけど・・・・・・」
基本的に、あまり人と接する機会のない仕事をしている関係上、自分の体格を自覚することがなかなか難しく、たまに言われると
「・・・・・・ヘコみます」
誰もいないので、かすみは思いっきり溜息をついた。
夜型人間の割には起きるのが早いかすみだが、今日はいささか早すぎた。眠っている人達を起こさないよう静かに、上着を羽織って外に出る。3月とはいえ、明け方はまだ寒い。
会場は、静まり返っていた。祭りの前の静けさ、とはよく言ったものだと思う。
昨日、研究所にこの大きなトレーラーが来た時は、さすがに驚いた。これが自分の働く場所だと知って、さらに驚いた。もっとも、相手側も自分の小ささに(かすみとしては不本意ながら)驚いていたのだが。
「・・・・・・別に、困ってはいないんですけど・・・・・・」
基本的に、あまり人と接する機会のない仕事をしている関係上、自分の体格を自覚することがなかなか難しく、たまに言われると
「・・・・・・ヘコみます」
誰もいないので、かすみは思いっきり溜息をついた。
その後、開場までの時間で店の準備、ちょっとした研修とシフトの確認を経て、かすみのアルバイトは始まった。
それほど忙しいというわけではないが、決して客足が絶えることはない。仕事量としては、ちょうどいいと言ってよかった。舞姫と秋葉も、フライトユニットで飛びながら、接客をこなしている。
「青葉さん、休憩ですよ~」
そんな声が聞こえた。
「わかりました」
かすみも答えて、声の方向へ向かう。
「どうぞ」
「ありがとう、千空くん」
ウェイトレス姿の「少年」から差し出されたタオルを受け取って、一息ついた。
・・・・・・それにしても。
「・・・・・・可愛い、ですね」
「あ、あなたもそれを言いますか・・・・・・」
「いえいえ、そういう事じゃなくて」
実際問題として、ウェイトレス姿がやたら似合ってはいるのだが、
「男の子とか女の子とか関係無しに、可愛いですよ?」
「へ・・・・・・?」
そう言って、千空との距離を詰める。
「お持ち帰りしたくなるくらいに」
「え、いや、ちょ」
・・・・・・このくらいにしておこうか。
「・・・・・・冗談です。試合、頑張ってくださいね」
まあ、世の中この子のように男の子であるにもかかわらず可愛い人間もいるのだから、中学生並みに小さい自分がいてもいいのではないだろうか? そう考えると、不意に笑いが少し、こぼれた。
それほど忙しいというわけではないが、決して客足が絶えることはない。仕事量としては、ちょうどいいと言ってよかった。舞姫と秋葉も、フライトユニットで飛びながら、接客をこなしている。
「青葉さん、休憩ですよ~」
そんな声が聞こえた。
「わかりました」
かすみも答えて、声の方向へ向かう。
「どうぞ」
「ありがとう、千空くん」
ウェイトレス姿の「少年」から差し出されたタオルを受け取って、一息ついた。
・・・・・・それにしても。
「・・・・・・可愛い、ですね」
「あ、あなたもそれを言いますか・・・・・・」
「いえいえ、そういう事じゃなくて」
実際問題として、ウェイトレス姿がやたら似合ってはいるのだが、
「男の子とか女の子とか関係無しに、可愛いですよ?」
「へ・・・・・・?」
そう言って、千空との距離を詰める。
「お持ち帰りしたくなるくらいに」
「え、いや、ちょ」
・・・・・・このくらいにしておこうか。
「・・・・・・冗談です。試合、頑張ってくださいね」
まあ、世の中この子のように男の子であるにもかかわらず可愛い人間もいるのだから、中学生並みに小さい自分がいてもいいのではないだろうか? そう考えると、不意に笑いが少し、こぼれた。
そして休憩後、仕事をしていたら修也が来店したわけである。
「・・・・・・アルバイトですが?」
「いや、そりゃ見れば分かる」
仕事の傍ら、試合の情報はしっかり集めていた。修也とリュミエは、一回戦と二回戦を合計5.7秒で終わらせていることも知っている。
だから、言わない。
「どうぞごゆっくり。リュミエも、疲れてるでしょう?」
代わりに言うのは、まあ、力になるかどうか分からないが、とりあえずの労いと、
「・・・・・・見てますから、頑張ってください」
不器用な励まし。
「・・・・・・アルバイトですが?」
「いや、そりゃ見れば分かる」
仕事の傍ら、試合の情報はしっかり集めていた。修也とリュミエは、一回戦と二回戦を合計5.7秒で終わらせていることも知っている。
だから、言わない。
「どうぞごゆっくり。リュミエも、疲れてるでしょう?」
代わりに言うのは、まあ、力になるかどうか分からないが、とりあえずの労いと、
「・・・・・・見てますから、頑張ってください」
不器用な励まし。
「・・・・・・見てるから、か」
三回戦を速攻で終えた後、修也は呟いた。
「いよいよ、負けられなくなったかな」
「マスター、じゃあ」
その言葉に、リュミエが聞く。
「ああ。隠し玉、出番だ」
三回戦を速攻で終えた後、修也は呟いた。
「いよいよ、負けられなくなったかな」
「マスター、じゃあ」
その言葉に、リュミエが聞く。
「ああ。隠し玉、出番だ」
予選リーグ四回戦。これに勝てば、翌日の決勝リーグに進むことができる。
「いいな、リュミエ。こっちから指示はしない。来たら、使え」
「了解です」
本来なら、使わなくてもよい装備。修也は、サイドボードに収められた二つの武器を見る。万が一のための、リーサルウェポンだった。
そして試合が始まる。
「っち!」
初撃は、防がれた。相手は、大型化させたサブアームとレッグパーツを持つ悪魔型。巨大な腕が、ライトセイバーの刃を弾いた。
追い討ちのSTR6ミニガンの砲撃が来るが、リュミエはその推進力をもって、はるか彼方へ離脱する。
そのまま上昇、相手を中心に、螺旋軌道を描いて急降下。こうでもしないと、一直線に行ったのでは返り討ちにあうだけだ。
再びクロスレンジに入る。相手が、巨大なサブアームを自身の前で組み、防御姿勢をとる。
その瞬間。
リュミエはハンドガンを投げ捨てる。右手首にマウントされていたライトセーバーが消え、代わりに新たな装備が転送される。
後方に撃発装置を持つ槍。パイルバンカー。
『重い武装ができないなら、有効距離に入った瞬間に転送すればいい』
修也とリュミエが用意した、初撃が防がれた場合の対処法だった。
「はああああっ!!」
高圧のガスが、爆発的な速度で槍を突き出す。それは二段重ねのサブアームを容易く貫き、相手の悪魔型の胸部デッドポイントに達した。
予選Pグループ決勝進出者、上岡修也・リュミエ。
「いいな、リュミエ。こっちから指示はしない。来たら、使え」
「了解です」
本来なら、使わなくてもよい装備。修也は、サイドボードに収められた二つの武器を見る。万が一のための、リーサルウェポンだった。
そして試合が始まる。
「っち!」
初撃は、防がれた。相手は、大型化させたサブアームとレッグパーツを持つ悪魔型。巨大な腕が、ライトセイバーの刃を弾いた。
追い討ちのSTR6ミニガンの砲撃が来るが、リュミエはその推進力をもって、はるか彼方へ離脱する。
そのまま上昇、相手を中心に、螺旋軌道を描いて急降下。こうでもしないと、一直線に行ったのでは返り討ちにあうだけだ。
再びクロスレンジに入る。相手が、巨大なサブアームを自身の前で組み、防御姿勢をとる。
その瞬間。
リュミエはハンドガンを投げ捨てる。右手首にマウントされていたライトセーバーが消え、代わりに新たな装備が転送される。
後方に撃発装置を持つ槍。パイルバンカー。
『重い武装ができないなら、有効距離に入った瞬間に転送すればいい』
修也とリュミエが用意した、初撃が防がれた場合の対処法だった。
「はああああっ!!」
高圧のガスが、爆発的な速度で槍を突き出す。それは二段重ねのサブアームを容易く貫き、相手の悪魔型の胸部デッドポイントに達した。
予選Pグループ決勝進出者、上岡修也・リュミエ。
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