白鳥の乙女──あるいは予選その二(前編)
“鳳凰カップ”一日目も大分過ぎて、予選Hブロックも決勝戦の時。
ここに至るまでお昼休みの懸念通り、ファーストランカーとも一度は
戦火を交える事になった。でも“油断”もあり、ロッテお姉ちゃんは
ボク・槇野梓の想像以上に良く戦い、そしてここまで残れたんだよ。
準決勝、相手はスナイパー型のヴァッフェバニータイプだったかな?
ここに至るまでお昼休みの懸念通り、ファーストランカーとも一度は
戦火を交える事になった。でも“油断”もあり、ロッテお姉ちゃんは
ボク・槇野梓の想像以上に良く戦い、そしてここまで残れたんだよ。
準決勝、相手はスナイパー型のヴァッフェバニータイプだったかな?
『きゃあっ!?……く、精度が高いですの……このままじゃッ!』
『何処に隠れていますか、小鳥さん……さあ、出ていらっしゃい』
『何処に隠れていますか、小鳥さん……さあ、出ていらっしゃい』
場所はショッピングモール風の建物。遮蔽物を巧く利用した狙撃技能は
流石、ファーストランカーとも言うだけある精度と威力だったもんね。
勿論近~中距離気味の“フィオラ”及び“フェンリル”では、役不足。
近付く前に、どうしても敵のビームスナイパーライフルを破壊しないと
ロッテお姉ちゃんが蜂の巣にされるのは、明白だったんだよ……うん。
流石、ファーストランカーとも言うだけある精度と威力だったもんね。
勿論近~中距離気味の“フィオラ”及び“フェンリル”では、役不足。
近付く前に、どうしても敵のビームスナイパーライフルを破壊しないと
ロッテお姉ちゃんが蜂の巣にされるのは、明白だったんだよ……うん。
『……わたしを甘く見ないでほしいですの、ルー・フライさんッ!』
『──────ッ!?く、ビームスナイパーライフルがッ……?!』
『──────ッ!?く、ビームスナイパーライフルがッ……?!』
でも、そこで追いつめて圧勝しようとしなかった“ルー・フライ”さんの
“油断”、ボクらはそこに付け込めたんだよ……即ち、狙撃には狙撃っ!
“フィオラ”を潔く脱ぎ捨て“Heiliges Kleid”に戻った、お姉ちゃん。
その手にしっかりと握られていたのは、バスターライフル“ムラクモ”。
狙撃銃を兼ねたアサルトライフルと、アーンヴァルの火器管制システム。
複合武装の単体性能は低くても、センスに技能と“勇気”で補えるもん。
“油断”、ボクらはそこに付け込めたんだよ……即ち、狙撃には狙撃っ!
“フィオラ”を潔く脱ぎ捨て“Heiliges Kleid”に戻った、お姉ちゃん。
その手にしっかりと握られていたのは、バスターライフル“ムラクモ”。
狙撃銃を兼ねたアサルトライフルと、アーンヴァルの火器管制システム。
複合武装の単体性能は低くても、センスに技能と“勇気”で補えるもん。
『ファーストランカーでも、サード相手に油断してはいけませんの!』
『くッ……言わせておけばぁぁぁっ!?マスター、ミニガンをッ!!』
『くッ……言わせておけばぁぁぁっ!?マスター、ミニガンをッ!!』
“勇気”ある狙撃を受けた結果、ビームスナイパーライフルは爆散消失。
慌ててミニガンに換装するけど……怒りに判断力を奪われていたもんね。
だからそれが、“ルー・フライ”さんの唯一つの敗因となってしまった。
マスターの指示を苛立たしく待つ間に、“アサルトキャリバー”を使って
ロッテお姉ちゃんが急接近、背後から“ムラクモ”を押し当てたんだよ。
慌ててミニガンに換装するけど……怒りに判断力を奪われていたもんね。
だからそれが、“ルー・フライ”さんの唯一つの敗因となってしまった。
マスターの指示を苛立たしく待つ間に、“アサルトキャリバー”を使って
ロッテお姉ちゃんが急接近、背後から“ムラクモ”を押し当てたんだよ。
『今、ソードオフ・ショットガンの引き金に指を添えていますの……』
『ぐぅ……この距離でなら、バックパックごと粉砕出来るという訳ね』
『あっと、“ルー・フライ”のギブアップかー!?勝者、ロッテっ!』
『ぐぅ……この距離でなら、バックパックごと粉砕出来るという訳ね』
『あっと、“ルー・フライ”のギブアップかー!?勝者、ロッテっ!』
こんな不意を付く格好で、ファーストランカーから金星を上げたボクら。
でも流石に敵神姫の“油断”に付け込む戦い方は、もう出来ないんだよ。
だって、サードがファーストに勝つなんて番狂わせ……滅多にないもん。
それを“紛れ”で済ませてしまう人が、神姫の上位ランカーに多いなんて
楽観視が出来る程、ボクもロッテお姉ちゃんも自信家じゃないしね……?
でも流石に敵神姫の“油断”に付け込む戦い方は、もう出来ないんだよ。
だって、サードがファーストに勝つなんて番狂わせ……滅多にないもん。
それを“紛れ”で済ませてしまう人が、神姫の上位ランカーに多いなんて
楽観視が出来る程、ボクもロッテお姉ちゃんも自信家じゃないしね……?
「梓ちゃん……ぼーっとしてどうしましたの?充電終わりましたけど」
「ぅん?あ、ちょっと回想なんだよ。ここまでの分析をしながらね?」
「ならいいんですけど。次はいよいよ予選Hブロックの決勝ですの!」
「相手は“サンドワーム”のプル軍曹……軍曹までが、名前なのかな」
「ぅん?あ、ちょっと回想なんだよ。ここまでの分析をしながらね?」
「ならいいんですけど。次はいよいよ予選Hブロックの決勝ですの!」
「相手は“サンドワーム”のプル軍曹……軍曹までが、名前なのかな」
ここまで来ると戦術以外に、武装にも趣向を凝らした神姫が多いんだよ。
この“サンドワーム”もそんな一人らしくて、フォートブラッグタイプを
贅沢に改造した、“戦車の様な”戦い方をする神姫……だった筈だもん。
後発組に入るフォートブラッグで、しかもサードランカー。なのに……。
この“サンドワーム”もそんな一人らしくて、フォートブラッグタイプを
贅沢に改造した、“戦車の様な”戦い方をする神姫……だった筈だもん。
後発組に入るフォートブラッグで、しかもサードランカー。なのに……。
「やっぱり此処まで来られるのは、オーナーの腕と自身の才能ですの」
「そう思うのかな、ロッテちゃんも?……多分、これは強敵なんだよ」
「今まで以上に気を引き締めて、全力全開で戦いに赴きますのッ!!」
「うん。そろそろ時間かな……今回は最初から“フィオラ”抜きでね」
『さーぁ、いよいよ予選Hブロック決勝戦ですっ!両者、準備を!!』
「そう思うのかな、ロッテちゃんも?……多分、これは強敵なんだよ」
「今まで以上に気を引き締めて、全力全開で戦いに赴きますのッ!!」
「うん。そろそろ時間かな……今回は最初から“フィオラ”抜きでね」
『さーぁ、いよいよ予選Hブロック決勝戦ですっ!両者、準備を!!』
“Heiliges Kleid”姿のロッテお姉ちゃんをエントリーゲートに、更に
“SSS”をサイドボードにセットして、準備OK。幸い今まで一度も
使用されていない“SSS”だけど、今回からは使う事になるかもね。
指示を出すボクも気を引き締めて……開始の合図をじっと待つんだよ。
そして今度の舞台は……砂漠!?これはちょっと、相手に有利だもん。
“SSS”をサイドボードにセットして、準備OK。幸い今まで一度も
使用されていない“SSS”だけど、今回からは使う事になるかもね。
指示を出すボクも気を引き締めて……開始の合図をじっと待つんだよ。
そして今度の舞台は……砂漠!?これはちょっと、相手に有利だもん。
『ロッテ・ヴァーサス・プル軍曹ッ!!レディ──────ゴー!!』
「ん……う、わわっ!?いきなり酷い砂嵐ですの~!前が……え?」
「風切り音……長距離弾道飛行なんだよ、ロッテちゃん!?」
「ん……う、わわっ!?いきなり酷い砂嵐ですの~!前が……え?」
「風切り音……長距離弾道飛行なんだよ、ロッテちゃん!?」
砂嵐の中、恐らくはヘッドセットをしているボクとお姉ちゃんだけが
感じ取った異音。暴風を切り裂く様な甲高い悲鳴。それは間違いなく
フォートブラッグの主力兵器……“FB256 1.2mm滑腔砲”の徹甲弾!
“Heiliges Kleid”の移動装置“アサルトキャリバー”では、砂上を
移動する事は出来ない。だからそれは、一瞬の出来事だったんだよ!
感じ取った異音。暴風を切り裂く様な甲高い悲鳴。それは間違いなく
フォートブラッグの主力兵器……“FB256 1.2mm滑腔砲”の徹甲弾!
“Heiliges Kleid”の移動装置“アサルトキャリバー”では、砂上を
移動する事は出来ない。だからそれは、一瞬の出来事だったんだよ!
「きゃぁぁぁぁあーっ!!?」
「ロッテちゃんッ!?」
「……命中、手応え有り」
「ロッテちゃんッ!?」
「……命中、手応え有り」
黒い悪魔があっという間にロッテお姉ちゃんとの距離を詰め、そのまま
装甲メイド服を破砕……直後、盛大に爆裂!破片が周囲の砂に刺さる。
この光景は、皆がプル軍曹の勝利を確信する物だったんだよ……でも、
ボクはちゃんと聞いていたもん。そう、『Plug-out!』の電子音声を!
だからボクは黙って、サイドボードの起動コードを動作させるんだよ。
装甲メイド服を破砕……直後、盛大に爆裂!破片が周囲の砂に刺さる。
この光景は、皆がプル軍曹の勝利を確信する物だったんだよ……でも、
ボクはちゃんと聞いていたもん。そう、『Plug-out!』の電子音声を!
だからボクは黙って、サイドボードの起動コードを動作させるんだよ。
「……何故、勝利判定が降りないの」
「ロッテちゃん、東南東に3sm。“SSS”が降下するよ!」
『周囲を検分するんだ、まだ何かあるぞ!』
「……イェス、サー。まだ、生きているの?」
「ロッテちゃん、東南東に3sm。“SSS”が降下するよ!」
『周囲を検分するんだ、まだ何かあるぞ!』
「……イェス、サー。まだ、生きているの?」
──────最後まで諦めない。それが勝利への道なんだよ?