SHINKI/NEAR TO YOU
Phase01-2
Phase01-2
シュンにとってゼリスは初めての神姫だった。
もちろん神姫のオーナーになっていなくても、世間はまさに神姫ブーム。
興味の有無に関わらず情報は入ってくるし、ちょっと興味を持って調べればそれこそ山のように時事、伝聞があふれてくる。むしろ多種多様な情報を取捨選択する方が大変なくらいだ。
少なくともシュンたち今どきのティーンエイジャーにとって神姫とはそれくらい身近な存在だったし、すでに神姫を持ってる友人もクラスに何人もいる。
だからシュンも漠然と「神姫ってこんなんだろうなぁ」くらいのイメージは持っていた。
しかし、実際に神姫の――ゼリスのオーナーになってそうした想像はもろくも崩れ去った。
少なくとも彼女にはそうした一般的な価値観や想像は当てはまらない、その事を彼はゼリスと出会ってからのこの一週間というもの、痛感させられていた。
もちろん神姫のオーナーになっていなくても、世間はまさに神姫ブーム。
興味の有無に関わらず情報は入ってくるし、ちょっと興味を持って調べればそれこそ山のように時事、伝聞があふれてくる。むしろ多種多様な情報を取捨選択する方が大変なくらいだ。
少なくともシュンたち今どきのティーンエイジャーにとって神姫とはそれくらい身近な存在だったし、すでに神姫を持ってる友人もクラスに何人もいる。
だからシュンも漠然と「神姫ってこんなんだろうなぁ」くらいのイメージは持っていた。
しかし、実際に神姫の――ゼリスのオーナーになってそうした想像はもろくも崩れ去った。
少なくとも彼女にはそうした一般的な価値観や想像は当てはまらない、その事を彼はゼリスと出会ってからのこの一週間というもの、痛感させられていた。
「ごめ~ん、待った?」
考え込むシュンの思考をふいにさえぎる能天気に明るい声。
どうやら待ち人がようやく現れたらしい。
やれやれと頭を掻きつつ、嫌味のひとつでも言ってやろうかと顔を上げたところで彼の動きはハタと止まった。
「……どうかしたの?」
目の前にはシュンの幼馴染である伊吹舞(イブキ マイ)が立っていた。
今日の彼女はいつも見慣れた学校の制服姿ではなく、オシャレな私服姿だ。
見ればうっすらとメイクもしているし、髪も普段より念入りにセットされているみたいでさりげなくバレッタで止めたりしている。
なんというか……気合が入っていた。
「ふふん、どう?」
そんなシュンの様子に気がついたのか、伊吹はその場でくるりとターンするとポーズを決め、いたずらっぽい視線で彼を見つめ返してきた。悔しいがそうした仕草がばっちり決まってる。
「……あれだな。孫にも衣装ってヤツ」
「あ~、何それすっごい淡白な反応。少しは素直に褒めてくれてもいいんじゃない、シュっちゃん?」
「……その国籍不詳系のあだ名は、いい加減やめろ」
「もう~、せっかくの休日なんだからもっと明るく行こうよ! 明るくネッ?」
「……とか言いつつ関節取るな。つーかイタタタタ……痛いっつの」
「別にぃ? ただスキンシップしてる、だ・け・だ・よ?」
そう顔では笑いながら、伊吹はしっかり間接技を決めてくる。結構本気で抵抗しながらシュンは思う。
こいつはいつもこうだ。子供の頃からこの変にアクティヴな伊吹に何度泣かされたことか知れない。さっきの私服姿を見たときは新鮮味を覚えたものだが、やっぱり全然変わってない。
というか何だか怒ってないか?
助けを求めシュンは視線を巡らせる。その目とベンチに座るゼリスの視線とが合った。
ゼリスはしばし見詰め返した後、興味なしといった感じで再び本に視線を落とした。
無視かよ。
久しぶりにマジで落とされるかも知れない。
覚悟を決めるシュンに、救いの手――いや救いの声は意外なところから出てきた。
「むぎゅう……苦しいの~っ」
ハッと気付いて伊吹が手をパッと離す。
開放された拍子に尻餅をついたジーンズの尻を払い、シュンはこの場の救い主に声を掛けた。
「助かったよ。サンキュー、ワカナ」
伊吹の胸のあたりがもぞもぞ動き、ポケットから呼ばれた相手が顔を出した。
「はふぅ~、びっくりだよ~」
「ごめんワカナ。あなたがポケットにいることつい忘れてたわ」
伊吹の胸ポケットから出てきたのは彼女の神姫、猫型MMSのワカナだ。ワカナは頭のネコ耳をぴくぴくさせながら目を回している。
「舞ちゃんひどいよ~。ボクがぽけっとでお昼寝してるときに、カンセツワザはダメ~っ」
「ごめんごめん、次からは気をつけるから」
伊吹は自分の頭をポカリと叩きながら「てへっ」と舌を出す。本当に反省してるのか。
「むぅ~、ボクはゴキゲンナナメだよ~」
「そんなこと言わないで、後でワカナの好きなもの買ってあげるから」
ふくれっ面をしていたワカナがその伊吹の一言でパッと明るくなる。
「ほんとう? だから舞ちゃん大好きっ♪」
「あたしだって、ワカナのことダ~イ好きだよ♪」
そして伊吹はワカナを抱きしめ頬ずりする。ワカナも心底嬉しそうな表情。なんというか、よく連携の取れた神姫とオーナーだ。
考え込むシュンの思考をふいにさえぎる能天気に明るい声。
どうやら待ち人がようやく現れたらしい。
やれやれと頭を掻きつつ、嫌味のひとつでも言ってやろうかと顔を上げたところで彼の動きはハタと止まった。
「……どうかしたの?」
目の前にはシュンの幼馴染である伊吹舞(イブキ マイ)が立っていた。
今日の彼女はいつも見慣れた学校の制服姿ではなく、オシャレな私服姿だ。
見ればうっすらとメイクもしているし、髪も普段より念入りにセットされているみたいでさりげなくバレッタで止めたりしている。
なんというか……気合が入っていた。
「ふふん、どう?」
そんなシュンの様子に気がついたのか、伊吹はその場でくるりとターンするとポーズを決め、いたずらっぽい視線で彼を見つめ返してきた。悔しいがそうした仕草がばっちり決まってる。
「……あれだな。孫にも衣装ってヤツ」
「あ~、何それすっごい淡白な反応。少しは素直に褒めてくれてもいいんじゃない、シュっちゃん?」
「……その国籍不詳系のあだ名は、いい加減やめろ」
「もう~、せっかくの休日なんだからもっと明るく行こうよ! 明るくネッ?」
「……とか言いつつ関節取るな。つーかイタタタタ……痛いっつの」
「別にぃ? ただスキンシップしてる、だ・け・だ・よ?」
そう顔では笑いながら、伊吹はしっかり間接技を決めてくる。結構本気で抵抗しながらシュンは思う。
こいつはいつもこうだ。子供の頃からこの変にアクティヴな伊吹に何度泣かされたことか知れない。さっきの私服姿を見たときは新鮮味を覚えたものだが、やっぱり全然変わってない。
というか何だか怒ってないか?
助けを求めシュンは視線を巡らせる。その目とベンチに座るゼリスの視線とが合った。
ゼリスはしばし見詰め返した後、興味なしといった感じで再び本に視線を落とした。
無視かよ。
久しぶりにマジで落とされるかも知れない。
覚悟を決めるシュンに、救いの手――いや救いの声は意外なところから出てきた。
「むぎゅう……苦しいの~っ」
ハッと気付いて伊吹が手をパッと離す。
開放された拍子に尻餅をついたジーンズの尻を払い、シュンはこの場の救い主に声を掛けた。
「助かったよ。サンキュー、ワカナ」
伊吹の胸のあたりがもぞもぞ動き、ポケットから呼ばれた相手が顔を出した。
「はふぅ~、びっくりだよ~」
「ごめんワカナ。あなたがポケットにいることつい忘れてたわ」
伊吹の胸ポケットから出てきたのは彼女の神姫、猫型MMSのワカナだ。ワカナは頭のネコ耳をぴくぴくさせながら目を回している。
「舞ちゃんひどいよ~。ボクがぽけっとでお昼寝してるときに、カンセツワザはダメ~っ」
「ごめんごめん、次からは気をつけるから」
伊吹は自分の頭をポカリと叩きながら「てへっ」と舌を出す。本当に反省してるのか。
「むぅ~、ボクはゴキゲンナナメだよ~」
「そんなこと言わないで、後でワカナの好きなもの買ってあげるから」
ふくれっ面をしていたワカナがその伊吹の一言でパッと明るくなる。
「ほんとう? だから舞ちゃん大好きっ♪」
「あたしだって、ワカナのことダ~イ好きだよ♪」
そして伊吹はワカナを抱きしめ頬ずりする。ワカナも心底嬉しそうな表情。なんというか、よく連携の取れた神姫とオーナーだ。
シュンがやれやれといつも通りの幼馴染に呆れていると、この段階にいたってようやくゼリスも本を閉じ腰を上げた。
「全く……騒々しい方々ですね。これではおちおち本も読んでいられないではないですか」
「……嘘つけ、さっきまで完全に無視してたクセに」
シュンの指摘に聞こえない振りをしつつ、ゼリスはジャレ合うふたりと向き合う。
「初めまして。あなた方がシュンのご学友である舞さんと、そしてワカナさんですか?」
「そうだよ~ん。へえ~、あなたが噂のシュっちゃんの武装神姫かぁ」
「ゼリスと申します」
そうしてゼリスはぺこりとお辞儀をした。それを見た伊吹の表情がパッと輝く。
「よろしくね、ゼリス」
笑いかけながら伊吹は握手しようと手を差し出た。しかしゼリスは差し出された手を見つめてキョトンとしている。
「なんでしょうか?」
「何って、ゼリスちゃんはまだこういう習慣知らない? 握手よ、親愛の握手♪」
伊吹に言われゼリスはポツリ「なるほど」と呟く。
「まずは初歩的なスキンシップという訳ですね。舞さんは優れた神姫オーナーであると伺っています。これも今日一日の私たちのコミュニケーションを良好かつ円滑に行うためのファーストステップということですね」
ゼリスは納得顔で伊吹の手を握り返す。
「さすがです。これで今日の必要諸用品の購入も、成功が保障されたも同然ですね」
「え……えぇ、そうね……」
洋々と話しかけるゼリスと握手を交わした終えた伊吹は、シュンのかたわらに身を寄せるとささやいた。
「なんていうか……あんたの神姫ってカワイイけど変わった娘ね」
そのままくるっとゼリスに向き直った伊吹は「さあ、それじゃいざ出発。レッツラゴー!」と腕を振りながら、互いに挨拶をしているゼリスとワカナを連れ立って改札に向かう。
後に残されたシュンは空を見上げながら心の中で呟いた。
そんなの、僕が一番よく知ってるんだよ。
「全く……騒々しい方々ですね。これではおちおち本も読んでいられないではないですか」
「……嘘つけ、さっきまで完全に無視してたクセに」
シュンの指摘に聞こえない振りをしつつ、ゼリスはジャレ合うふたりと向き合う。
「初めまして。あなた方がシュンのご学友である舞さんと、そしてワカナさんですか?」
「そうだよ~ん。へえ~、あなたが噂のシュっちゃんの武装神姫かぁ」
「ゼリスと申します」
そうしてゼリスはぺこりとお辞儀をした。それを見た伊吹の表情がパッと輝く。
「よろしくね、ゼリス」
笑いかけながら伊吹は握手しようと手を差し出た。しかしゼリスは差し出された手を見つめてキョトンとしている。
「なんでしょうか?」
「何って、ゼリスちゃんはまだこういう習慣知らない? 握手よ、親愛の握手♪」
伊吹に言われゼリスはポツリ「なるほど」と呟く。
「まずは初歩的なスキンシップという訳ですね。舞さんは優れた神姫オーナーであると伺っています。これも今日一日の私たちのコミュニケーションを良好かつ円滑に行うためのファーストステップということですね」
ゼリスは納得顔で伊吹の手を握り返す。
「さすがです。これで今日の必要諸用品の購入も、成功が保障されたも同然ですね」
「え……えぇ、そうね……」
洋々と話しかけるゼリスと握手を交わした終えた伊吹は、シュンのかたわらに身を寄せるとささやいた。
「なんていうか……あんたの神姫ってカワイイけど変わった娘ね」
そのままくるっとゼリスに向き直った伊吹は「さあ、それじゃいざ出発。レッツラゴー!」と腕を振りながら、互いに挨拶をしているゼリスとワカナを連れ立って改札に向かう。
後に残されたシュンは空を見上げながら心の中で呟いた。
そんなの、僕が一番よく知ってるんだよ。