暗き過去に、深き眠りを(中編)
ポリゴンが寄せ集まり現出した戦いの舞台は、薄暗い鍾乳洞であった。
床面には水が張られ、一部は深くなっている。第五弾への配慮だろう。
従って今後は、水中戦闘を考慮した位置取りも重要となってくる訳だ。
そんな分析を始めていると、程なくバトルフィールドに双方が現れた。
既に戦闘を開始している様であり、銃撃音と金属音が交互に聞こえる。
銃を手にした兵士と、双振りの“ウィング”を手にしたアルマだった。
床面には水が張られ、一部は深くなっている。第五弾への配慮だろう。
従って今後は、水中戦闘を考慮した位置取りも重要となってくる訳だ。
そんな分析を始めていると、程なくバトルフィールドに双方が現れた。
既に戦闘を開始している様であり、銃撃音と金属音が交互に聞こえる。
銃を手にした兵士と、双振りの“ウィング”を手にしたアルマだった。
「……どうして、あんな人の為にまだ尽くすんですかッ!!」
「小官は、あの人の元に産まれその為に尽くすのが定めです」
「そんなの定めなんかじゃないです!……貴方の、意思をッ」
「問答は無用です、小官を倒したら……聞いてみましょうか」
「小官は、あの人の元に産まれその為に尽くすのが定めです」
「そんなの定めなんかじゃないです!……貴方の、意思をッ」
「問答は無用です、小官を倒したら……聞いてみましょうか」
相手である“かまきりん”は、フォートブラッグの先行発売品を
多数寄せ集め、魔改造を施した様な感じの神姫であった。脚部は
同型機特徴のフォールディング・マニピュレーターに換装され、
背部にはこれまた同機の象徴である、ロングキャノン砲が二門。
但し今は、専用のアサルトライフル二挺で戦っている様だった。
オリジナルのバックパックを背負い、彼女は鉛の雨を降らせる。
多数寄せ集め、魔改造を施した様な感じの神姫であった。脚部は
同型機特徴のフォールディング・マニピュレーターに換装され、
背部にはこれまた同機の象徴である、ロングキャノン砲が二門。
但し今は、専用のアサルトライフル二挺で戦っている様だった。
オリジナルのバックパックを背負い、彼女は鉛の雨を降らせる。
「……わかりました。なら“戦乙女”らしいやり方でッ」
「速い!?……ですが、そんな剣で銃の相手なんてッ」
「話を、聞いてもらうんですから……やあぁっ!!」
「……アルマお姉ちゃん、迷いがないんだよ」
「変形した……バカな、突っ込んでくる!」
「速い!?……ですが、そんな剣で銃の相手なんてッ」
「話を、聞いてもらうんですから……やあぁっ!!」
「……アルマお姉ちゃん、迷いがないんだよ」
「変形した……バカな、突っ込んでくる!」
対するアルマは、エントリーゲートに入っている武装姿ではなかった。
深紅のチャイナドレス……武装する前の姿を取っているのだ。そして、
両手には“ヨルムンガルド”。アルマはそれをツインナギナタに変形、
乱射する“かまきりん”の弾丸を、刃を旋回させて薙ぎ払い突進する。
完全な防御法でない故に服は破れるが、距離があっという間に詰まる!
深紅のチャイナドレス……武装する前の姿を取っているのだ。そして、
両手には“ヨルムンガルド”。アルマはそれをツインナギナタに変形、
乱射する“かまきりん”の弾丸を、刃を旋回させて薙ぎ払い突進する。
完全な防御法でない故に服は破れるが、距離があっという間に詰まる!
「そ、そんなッ……きゃああっ!?」
「ぷ、ぶひぃ!?“かまきりん”手加減するなっ!!」
「……イエス、マスター!!これでっ!!」
「マイスター、戦況は五分と五分……ですの?」
「有無。あのバックパックが気になるがな」
「ぷ、ぶひぃ!?“かまきりん”手加減するなっ!!」
「……イエス、マスター!!これでっ!!」
「マイスター、戦況は五分と五分……ですの?」
「有無。あのバックパックが気になるがな」
そして風を斬るが如くの一閃、二閃。相手の銃が無惨に引き裂かれた。
弾薬が爆ぜ小さな衝撃が起こり、お互い距離を取る。“かまきりん”は
それを見計らって背部のキャノンを展開、狙いを定めた。距離は20。
この体勢ならばアルマは負ける、観客と猪刈はそう確信しただろうな。
だからこそ“ヨルムンガルド”を投げ捨てたアルマに、皆驚いたのだ。
弾薬が爆ぜ小さな衝撃が起こり、お互い距離を取る。“かまきりん”は
それを見計らって背部のキャノンを展開、狙いを定めた。距離は20。
この体勢ならばアルマは負ける、観客と猪刈はそう確信しただろうな。
だからこそ“ヨルムンガルド”を投げ捨てたアルマに、皆驚いたのだ。
「この距離なら、何の装備もない貴方は粉々です」
「……そうですよね、やっぱり何もない様に見えますか?」
「なのに剣を投げ捨てるなんて、一体何を考えて……」
「えっと、まあ見ていて下さい……あたしの“変身”ッ!」
「……そうですよね、やっぱり何もない様に見えますか?」
「なのに剣を投げ捨てるなんて、一体何を考えて……」
「えっと、まあ見ていて下さい……あたしの“変身”ッ!」
彼女は徐に、私がこっそり託した“小粋な仕掛け”を起動させた。
それはゼンテックスマーズ社の遺産。私達の思想を体現する機能。
胸元に収まるルビーのペンダント、両耳に嵌った石榴石のピアス。
これらが比喩でなく“輝き始めた”。宝石の表面上に、びっしりと
命令文が映し出されているのだ。それと連動して背部のユニットが
明滅を開始し……アルマのペンダントから、電子音が響き渡った!
それはゼンテックスマーズ社の遺産。私達の思想を体現する機能。
胸元に収まるルビーのペンダント、両耳に嵌った石榴石のピアス。
これらが比喩でなく“輝き始めた”。宝石の表面上に、びっしりと
命令文が映し出されているのだ。それと連動して背部のユニットが
明滅を開始し……アルマのペンダントから、電子音が響き渡った!
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
0と1を結びしシグナルが幾重ものリングとなり、空間に広がる。
その内側に図面が浮かび上がり、僅かながら宙に浮くアルマの躯を
なぞる様に包む。程なくそれは適切な膨らみを持ち、立体となる。
直後一瞬で固定されたグリッドは、瞬きより速く実体化を遂げた。
即ちそれは、最初に着せた装甲服……“Heiliges Kleid”である!
その内側に図面が浮かび上がり、僅かながら宙に浮くアルマの躯を
なぞる様に包む。程なくそれは適切な膨らみを持ち、立体となる。
直後一瞬で固定されたグリッドは、瞬きより速く実体化を遂げた。
即ちそれは、最初に着せた装甲服……“Heiliges Kleid”である!
「そんな……武装の追加投入命令は出ていないのに、何故?!」
「ヴァーチャル空間だから、出来る事なんです……行きますよ!」
「な!?近付かせたり、しませんっ……ファイア!!」
「ヴァーチャル空間だから、出来る事なんです……行きますよ!」
「な!?近付かせたり、しませんっ……ファイア!!」
鍾乳洞に響く轟音。その瞬間“かまきりん”は、確かに砲を撃った。
だが、同時にアルマの腕にある三輪の歯車が回転……そして、殴打!
ギアの高速回転によってブレを抑え、砲弾へとフックを入れたのだ。
弾道は横に逸れて、アルマの肩アーマーを掠めつつ後方で爆裂した。
決してノーダメージではない物の、砲撃を確実に凌いだ瞬間だった。
だが、同時にアルマの腕にある三輪の歯車が回転……そして、殴打!
ギアの高速回転によってブレを抑え、砲弾へとフックを入れたのだ。
弾道は横に逸れて、アルマの肩アーマーを掠めつつ後方で爆裂した。
決してノーダメージではない物の、砲撃を確実に凌いだ瞬間だった。
「ひ、非常識です……あの砲撃をパンチで跳ね除けるなんて!?」
「……えっと、ストラーフタイプの特徴は、白兵戦にあるんですよ?」
「白兵戦……で、でもそれならマオチャオタイプの方が上手……」
「それは格闘戦。確かに徒手空拳だけなら一歩劣りますけどね」
「……えっと、ストラーフタイプの特徴は、白兵戦にあるんですよ?」
「白兵戦……で、でもそれならマオチャオタイプの方が上手……」
「それは格闘戦。確かに徒手空拳だけなら一歩劣りますけどね」
ストラーフタイプの真価は、至近距離を完全に制圧する事にある。
格闘能力の威力とキレ以外を求めるならば、決して引けはとらん!
加えて私が彼女の“Heiliges Kleid”に与えた武器は、弱点である
“格闘攻撃”自体の潜在能力を引き出す為の、鋼の拳だったのだ。
即ちCQBの範囲に於いて、今のアルマは最大の打撃力を備える!
格闘能力の威力とキレ以外を求めるならば、決して引けはとらん!
加えて私が彼女の“Heiliges Kleid”に与えた武器は、弱点である
“格闘攻撃”自体の潜在能力を引き出す為の、鋼の拳だったのだ。
即ちCQBの範囲に於いて、今のアルマは最大の打撃力を備える!
「ですがマイスターの手ほどきと、この拳があれば……!」
「ぶ、ぶひ!?近づけるな“かまきりん”!撃て撃てぇっ!!」
「無駄です……弾道は、見切りましたッ!!」
「ぶ、ぶひ!?近づけるな“かまきりん”!撃て撃てぇっ!!」
「無駄です……弾道は、見切りましたッ!!」
キャノンナックル……銘は“マサムネ”。ギア状の三連回転リングと
リボルバー炸薬震動システムにより、キレと破壊力を兼ね備えた拳。
更に共通装備品である、ローラーブレード“アサルトキャリバー”。
リボルバー炸薬震動システムにより、キレと破壊力を兼ね備えた拳。
更に共通装備品である、ローラーブレード“アサルトキャリバー”。
「は、疾いっ!?……きゃああああっ!?」
「キャノンは封じた、ここから行きますよッ……!!」
「うああっ!?きゃ、あううっ……ぐぅッ!」
「キャノンは封じた、ここから行きますよッ……!!」
「うああっ!?きゃ、あううっ……ぐぅッ!」
この二つを組み合わせれば、砲の内側へ飛び込み一撃を与えられる!
そしてその通り、アルマは弾を避けてキャノンの砲身を殴り付けた。
バレルがねじ曲がった状態で撃てば、当然砲弾は内部で誘爆するッ!
爆風と殴打に晒され、フォートブラッグの装甲が菓子の様に砕ける。
そしてその通り、アルマは弾を避けてキャノンの砲身を殴り付けた。
バレルがねじ曲がった状態で撃てば、当然砲弾は内部で誘爆するッ!
爆風と殴打に晒され、フォートブラッグの装甲が菓子の様に砕ける。
「ひ、ひぇ!?“かまきりん”、鎌だ鎌ッ!切り裂いちゃえ!」
「い、イエスマスター……アルマさん、小官は倒れていません!」
「まだ……やるんですか?え、えっ?あの、その装備……!?」
「やります。全力を尽くさねば、勝てない……う、ううッ!」
「ふぇ、えっ!?そんな、そんなのってひどい……!」
「い、イエスマスター……アルマさん、小官は倒れていません!」
「まだ……やるんですか?え、えっ?あの、その装備……!?」
「やります。全力を尽くさねば、勝てない……う、ううッ!」
「ふぇ、えっ!?そんな、そんなのってひどい……!」
劣勢に見えた“かまきりん”だが、彼女は奥の手を残していた様だ。
用途不明のバックパックからフォートブラッグの脚が六本迫り出し、
脚部を改造したと思しき鎌が二本、蟷螂の胴部まで出るではないか。
反対に、神姫素体はバックパックの外装部に覆い隠されてしまった。
用途不明のバックパックからフォートブラッグの脚が六本迫り出し、
脚部を改造したと思しき鎌が二本、蟷螂の胴部まで出るではないか。
反対に、神姫素体はバックパックの外装部に覆い隠されてしまった。
「Guaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
「きゃああっ!?ま、マイスター自慢の装甲ドレスが……!」
「あひゃひゃひゃ、オーダーメイドの自信作だぞ、もう無敵だっ!」
「きゃああっ!?ま、マイスター自慢の装甲ドレスが……!」
「あひゃひゃひゃ、オーダーメイドの自信作だぞ、もう無敵だっ!」
斯くしてその姿は、完全に鋼鉄の蟷螂と成り果てていた。
大きな鎌の一撃を受けて、特殊装甲材ですらも耐えられず
“Heiliges Kleid”に大きな亀裂が入る。猪刈め……!!
大きな鎌の一撃を受けて、特殊装甲材ですらも耐えられず
“Heiliges Kleid”に大きな亀裂が入る。猪刈め……!!
「……アルマ!“戦乙女”として、彼女の呪いを解き放て!!」
「はい!……“かまきりん”さん!今、出してあげますから」
「Urrrrrrrrrryyyyyyy……」
「はい!……“かまきりん”さん!今、出してあげますから」
「Urrrrrrrrrryyyyyyy……」
──────そして今、裏切りの翼が天に舞う。