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「ココ。真直堂はどうだった?」
 次の目的地にむけて歩きながら、静香は私にそう聞いてきた。
「びっくりしましたけど……面白かったです」
 静香がデザインした服を、まさか私と同じ神姫が量産しているとは思わなかった。最初はびっくりしたものの、ひと通りの紹介が終わった後は、おやつの時間に呼ばれたり、仕事の様子を見せてもらったり、楽しい時間を過ごすことが出来た。
 機会があれば、また行ってみたい、とも思う。
「そう。なら良かったわ」
 私の話を聞いて、静香はにこにこと笑っている。
 それからパーツショップらしき店を二軒ほど巡って、最後に辿り着いたのは神姫センターだった。
 七階建ての大きなビルは、中が全て神姫関連の施設になっているらしい。同じセンターでもよく行く駅前のセンターとは規模が違う。
「神姫バトルミュージアム・秋葉原店?」
 どうやら同じ秋葉原のセンターでも、公式の秋葉原神姫センターとは別モノらしい。というか、入口の自動ドアに見た覚えのあるロゴマークが入ってるんですが。
「静香。ここって、まさか」
「ええ」
 私の問いに、静香は事も無げに頷いた。
「鶴畑グループのセンター……」


魔女っ子神姫ドキドキハウリン

その16



 三階まではパーツや素体、関係書籍類のコーナー。神姫のバトルスペースは、四階から。
「へぇ……」
 エレベーターから降りた私の前に広がっていたのは、所狭しと置かれたバーチャル筐体の群れ……というわけではなかった。
 ここから見えるのは受付を兼ねたロビーと、真っ白な壁だけ。
 対戦筐体は低めのパーティションで区切られていて、中が見えないようになっているようだった。ちょうど、個室タイプのネットカフェのような感じだ。
 オープンスペースに筐体が並べて置いてある普通の神姫センターとは、随分と感じが違う。
「ここって……」
 トートバッグの中から辺りを見回していると、パーティションの向こうから舌打ちの音が聞こえてきた。
 ブースから出て来た人の表情はどことなく苛立っているようで、神姫の顔も塞ぎがちに見える。私達とすれ違っても、オーナーも神姫も挨拶一つない。
 エルゴなら、馴染みじゃなくても顔を合わせればお互いに挨拶くらいするのに……。
「……何だか、感じ悪いですね」
 ぽそりと呟いた私の言葉に、静香は苦笑い。
「ここの常連さんは、みんなプロを目指してるから。少しくらい殺気立つのも仕方ないかもね」
「へぇ……」
 正確には、神姫にプロ制度はない。けど、有名なプレイヤーになれば、神姫関連の研究施設から技術協力を依頼されたり、活動費を援助してくれるスポンサーが付くことがある。
 神姫が縁で研究施設に就職したという話も、珍しくはない。
 このセンターの母体は鶴畑グループだし、相応の実力を付ければ鶴畑が支援してくれる事もあるんだろう。
「折角だし、一戦していきましょうか。プロ候補が相手なら、色々と勉強になるかもよ?」


「すいませーん。ここって、対戦相手の斡旋ってしてもらえるんですか?」
「バトルマッチングですね。登録IDはお持ちですか?」
 受付のお姉さんは静香からバトルサービスの登録カードを受け取ると、PCに通してウィンドウを開く。
 いま対戦ブースを使っているプレイヤーの中から、近い戦績の選手を探してくれているらしい。静香に聞くと、この手の個人ブースが多い施設ではよくあるサービスなんだそうだ。
「……なんだあいつ」
 検索結果をぼんやりと待っていると、ロビーにたむろしている他の人達の声が聞こえてくる。
「あんな格好で、バカにしてんじゃねえの?」
 視線は、どうやら私達に向けられているらしい。
 そういえば彼らの連れた神姫達は、対戦台でもないのにバトル用の装備を付けたまま。私のように服を着ている子は一人もいない。
「……静香ぁ」
「んー?」
 受付のお姉さんからランクの近い対戦相手の一覧を見せてもらっている静香は、思いっきり上の空な相槌を寄越してくれた。
「なんか私達、浮いてません?」
 脱いだ方がいいのかな。
「気にすると禿げるわよ?」
 ……。
 まあ、静香だから。
 この手の視線を気にするようじゃ、いつもみたいな格好するわけないよね……。
 私がトートバッグから顔を出してため息をついていると、ロビーの向こうから五人組の集団がやって来るのが見えた。さっきこちらを見てボソボソ言っていたグループだ。
「ねえ。その人達、バトル希望? ランクは?」
 リーダーらしい先頭の少年の物言いは、随分と不躾なものだった。エルゴのお客さんにはいないタイプだ。
「セカンドだけど?」
 私はちょっとカチンと来たけど、それに何事もないように返せるのは流石です、静香。
「……へぇ。マジで?」
 後ろにいた小柄な子の言葉には、『その格好で?』という台詞が続くようだった。肩に乗っているアーンヴァルも、こちら小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
「セカンドならいいぜ。ランクも近いみたいだし、俺達が相手してやんよ」
「ゲンちゃん、本気かよ!」
 静香が見ていた対戦相手の一覧で、こちらのランクは把握したんだろう。ゲンちゃんと呼ばれたリーダーらしき少年は、取り巻きの言葉にヘラリと笑う。
「いいんじゃね? 一見さんにここのレベル教えてやるくらい」
「ああ。そういうことかぁ」
 四人の取り巻きはゲンちゃんの言葉に爆笑する。
 ああもう、なんかすごく感じ悪い。
 ヴェルちゃんやマイティちゃんが鶴畑グループとは関わりたくないって言ってたけど、彼女達の時もこんな感じだったんだろうか……。
「ならいいわ。良かったら、相手してくれるかしら?」
「ちょっと静香!」
 ここまでバカにされた連中と、わざわざバトルするんですか!?
「おい……」
 けど、私の叫んだ言葉に五人組は口をつぐんだ。
「……静香って、あの戸田静香か?」
 ゲンちゃんが、対戦相手一覧の表示されたディスプレイを見直して、静香の名前を確かめる。
「何とかハウリンの?」
「……」
 沈黙する一同。
 なんか有名みたいですよ、静香。
「……ちょっ! あのイロモノかよ!」
 …………。
「アレはないよなぁ、さすがに!」
 …………。
「どうするぅ? ゲンちゃん」
 …………。
「な、なあ、あんた」
 よっぽどツボに入ったんだろう。耳障りな笑い声を挟みながら、ゲンちゃんは静香の肩を掴もうとして……。
「何?」
 するりと身をかわされ、受付カウンターに手をしたたかに打ち付ける。
「俺達さ。興紀さんみたいにファーストに入って、一流のプロプレイヤーになりたいの」
 でもその痛みも、私達のおかしさの前には大したことがないらしい。後ろの四人も似たようなもので、ニヤニヤ笑いを隠そうともしない。
「へぇー」
 ……あ。
「だから、アンタ達みたいに神姫にカワイイ服着せて満足してるヌルいプレイヤーとは目指すところが違うわけ。分かる?」
 ゲンちゃんの言葉に、静香も笑顔を貼り付けたまま崩さない。
「俺達ってほら。真剣なバトル指向だからさ」
 …………。
 真剣なバトル、ですか。
 対する静香は笑顔のまま、軽く考える素振り。
「要するに、こんなカワイイ服着た神姫に負けたらプロを目指す手前恥ずかしいから、試合はキャンセルしたいってこと?」
「……ンだと!?」
 笑顔の挑発に、さすがの五人組も表情を変えた。
「ダイちゃん。やっちまおうぜ!」
 向こうの神姫達も気分を害したらしい。戦いたいとかやっつけましょうとかあんなイロモノにとか、それぞれ意気軒昂な様子。
 ……なるほどね。
「何ならバトルロイヤルでも構いませんよ? そっちの方が、手早く済むでしょう? ね、静香」
 私の口から出たのは、私自身にも予想外な言葉だった。
「そうねぇ」
 冷ややかな私の言葉に、静香も笑顔を崩さない。こういう時の美人って、なんかものすごく悪役っぽく見えますね。静香。
 それに何だか嬉しそうなのは、気のせいですか?
「ほら、向こうもいいって言ってるんだし。五人でやりゃ、一分もかかんないって!」
「おぅ。バトルロイヤルで相手してやるよ! オフラインでいいんだな?」


 割り振られたブースは、完全な個室だった。部屋の中には椅子とテーブル、バーチャル筐体が一つあるだけ。相手とはビル内に張り巡らされた専用ネットワーク経由で戦う事になるらしい。
 去年エルゴであった、空戦イベントの時のような感じだ。
「……静香」
 さっき真直堂で買ってもらった草色のジャケットを脱ぎながら、私は戦闘装備を準備している静香に声を掛ける。
「なぁに?」
 さっきの表情は挑発用の演技だったんだろう。今は軽く鼻歌なんか歌いながら、ご機嫌だ。
「真剣なバトルって、何でしょうね」
 静香の戦い方が不真面目なのは、否定しようと思わない。あの格好はイロモノに見えてもしょうがないはず。
 けど、真剣でないわけじゃあ、ないはずだ。
 そう。静香だって……。
 静香だって……。
 …………。
「さぁ。私より、ココのほうがよく知ってるんじゃないの? やりたかったんでしょ? 真剣なバトル」
 ……ええ。
 それはそうなんですが……。
「ほら。早く支度しないと、向こうが待ちくたびれちゃうわよ?」
 既にバーチャルシステムの接続は終わっていた。相手も最初から武装状態だったからか、準備は終わっているらしい。
「静香」
 私の中に、疑問というか、わだかまりのようなモノが渦巻いている。
 真剣なバトル。
 本気の戦い。
 それって……。
「何?」
 そのモヤモヤに答えを出すため、私は静香の名を呼んだ。
「あの服、持ってきてます?」
 私の言葉に、静香は思わず手を止める。
「あら。着ないんじゃなかったの?」
 静香は相変わらず笑顔のまま。
 けれど、さっきまでの挑発的な笑顔じゃない。いつもの悪戯っぽい優しい笑みに戻っている。
「正直さっきの連中には腹が立ちました。ここまでバカにされて、黙ってなんかいられません」
 あれがイロモノなのは否定しないけど。
 否定しないけど、かといってあんな言い方をされてさらりと流せるほど、私はAIが出来てない。
 そう。
 私は、怒っていたんだ。
「ココだっていつも嫌だ嫌だって言ってるじゃない」
「私や十貴は良いんです! でも静香をよく知らない連中があんなコト言うのは、我慢できません」
 そんな私の様子がおかしいんだろう。静香はくすくすと笑っている。
「だからって、あの格好しなくてもいいのよ?」
 そう言いながらもバッグから出してるのは、黒い戦闘用コート。なんだ、しっかり準備してるんじゃないですか。
「それを着てもあいつらより強いって見せつけてやります!」
「……後悔はしないわね?」
 何だか静香に上手く乗せられてる気もしたけど、ここで引き下がるほうが何だか負けたみたいで我慢できそうになかった。
 静香に笑われるのはいい。
 でも、あの連中に笑われるのは我慢できない。
「当たり前です!」
 そう叫び、私は戦闘用コートに袖を通す。



 戦闘エリアは戦い慣れた廃墟ステージ。
「ねえ、静香」
 転送された場所は、いきなり敵のど真ん中だった。
「なぁに?」
 敵は周囲の五機全て。ストラーフにヴァッフェバニー、マオチャオとサイフォス。小柄な取り巻きの肩にいたアーンヴァルは、上空を旋回している。
「久しぶりにこれ着ましたけど……」
 全員が私以上のフル装備。本気になればこちらを一瞬で殲滅できる勢いだ。
「結構本気だったんですね、静香」
「何が?」
 もぅ。とぼけちゃって。
 コートに装備されている武器は、ナイフが八本とライトセイバー二本。後はワイヤーロープが二巻き。ハンドガンがないのは……まあいいや。
 これだけあれば、十分だ。
「その格好で勝つ気なのか?」
 恐らくゲンちゃんの神姫だろう。指揮官らしいヴァッフェバニーは退がりながらそう呟いた。
 こちらが近接特化なのに気付いたんだろう。前衛はサイフォス達に任せる気らしい。
「なにせ静香の特製ですから。お釣りが来ますよ、きっと」
 私の言葉にバニーは右手を振り上げて。
「なら、死ねっ!」
 容赦なく突撃の指示を下す。


 最初に襲いかかってきたのは、ハリネズミのように重火器を装備したストラーフだった。ミサイルランチャーにガトリング、レーザーキャノン。サブアームにも身長ほどもある大剣を持たせ、こちらに向かってくる。
 もちろん逃げる気はない。むしろこちらから突撃した。
 一対大多数の場合、乱戦にすれば多数側は同士討ちの可能性が増える。そのうえ制圧火器を封じる事が出来るおまけ付きだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 力任せの斬撃は大振りで、隙だらけ。
 前の私と同じ。
 典型的な、装備に振り回されてるタイプだ。
 直撃すれば真っ二つになる事うけあいの縦斬りを、ストラーフの視界の外へワンステップでかわし……。
「掛かったな!」
 その先で私を待ちかまえていたのは、右サブアームに付けられたミニガンの銃口だった。私の背後に味方がいることも気にせず、甲高い音を立てて銃身が回転を始める。
「死ねぇっ!」
 いくら私のコートが防弾とはいえ、この至近距離で無事で済むはずがない。ステップで避ける暇もなく、銃身の基部がベルトリンクを吸い込んで。
「……どっちが」
 そのまま、爆発した。
「死角で敵が何をしているか、確かめてから撃ってくださいね?」
 銃口にナイフを差し込んでおけば、暴発するのは当たり前だ。コートの防御にモノを言わせて爆風の中をかいくぐり、吹き飛んだ右腕を踏み台にして接敵。跳び越えざまに相手の肩口に蹴りを叩き付ける。
「まず、一人っ!」
「な……っ!」
 ポリゴンの欠片となって消えていくストラーフに、周囲が息を飲むのが分かった。まあ普通、神姫の蹴り一発でフル装備のストラーフが負けるなんて思わない。
 素体部分にナイフをキックで蹴り込めば、致命傷くらい簡単に負わせられるんだけども……ね。
 けど、こっちも相手に合わせる気はない。次の相手を倒すべく、ダッシュを掛ける。
「フォーメーションを組め! ヤツをこっちに近付けさせるなっ!」
 さすがにリーダーの立ち直りは早い。上空からの砲撃とマシンガンでこちらを牽制しつつ、上手く距離を取ってくる。
 仕切り直しかな、これは。
「ココ、余裕なんかないわよ?」
 と、今度は援護の弾幕の隙を縫ってマオチャオとサイフォスが来た。
 マオチャオの右腕のドリルが唸りをあげて、私を貫こうと一気に間合を詰めてくる。サイフォスは右側で剣を構え、私の逃げ道を塞ぐ構え。
「やあああああっ!」
 私はマオチャオのドリルを寸前で避けて、手元のナイフで次の攻撃……サイフォスの長剣を受け流す。
 受け止める事は出来ない。動きを止めれば後方のバニーと上空のアーンヴァルのいい的になるだけだ。
「ぎにゃああああっ!」
 背中ではマオチャオの悲鳴。
 どうやら避け際にドリルに絡めておいた、ワイヤー付きナイフの直撃を食らったらしい。
 これで二人目。
「畜生っ!」
 サイフォスの斜め下からの斬撃を受け流して、さらに前進。重い一撃に砕け散ったナイフを投げ捨てる。
 近接戦じゃサイフォスには勝てる気がしない。武器の威力をさらに殺せる、零距離じゃないと。
 けど、そのサイフォスが大きくバックジャンプ。
「!?」
「ココっ!」
 その瞬間。
「っ!」
 全方位から、光学砲と誘導弾の洗礼が襲いかかる。



「ざまあみやがれっ!」
 爆風の中。
 レーザー光に引き裂かれていく黒いコートに、ゲンちゃんは快哉の声を上げた。
 周囲にいるのはチームのサイフォスとアーンヴァルだけではない。
 ストラーフにマオチャオ、ハウリン、ツガルに紅緒、ヴァッフェバニー。中には発売されたばかりの四期モデルまで混じっている。バトルロイヤルに乱入モードを追加して増援を得、それで一気にハウリンを袋だたきにしたのだ。
「ちょっと大人気なかったんじゃねえかぁ? ゲンちゃん」
 増援の一人から入る通信に、ゲンちゃんはバトルブースでゲラゲラと笑う。
「勝ちゃいいんだよ! 勝ちゃあ!」
 まずは勝ってこそだ。勝たなければ、何も得ることは出来ない。
 ……たとえどんな手を使ってでも。
 鶴畑興紀や大紀だって、そうして勝ち残ってきたはずだから。
「だよなあ。イロモノのクセ……に!?」
 そう言いかけたサイフォスの周囲に、何かがバラバラと落ちてきた。
 黒い握り拳大のそれは、
「手榴だ……」
 言い終わる前に炸裂。
 サイフォスは上空を舞う影の正体を確かめることなく、ポリゴンの欠片へと消えていく。



「静香が私に何をさせたいのか……答えが出ました」
 た、と廃墟の街に降りたって、私は静かに呟いた。
「何?」
 風になびくのは、柔らかな白いエプロンの付いた紺のスカート。
 左手にあるのは制圧用のマシンガン。
 右手にあるのは狙撃用のハンドガン。
 驚きで動きを止めている上空のアーンヴァルに、容赦なく二種類の鉛玉を叩き込む。
 これで四人目。
「私、わたしの思い通りにしていいんですね。この姿で」
 ようやく動き出した相手は随分と数が増えていた。二十体はいる……かな?
 まあ、夏の電脳空間やこの間のロードビヤーキーに比べたら、大した数じゃない。
「イロモノや不真面目は嫌じゃなかったの?」
「そりゃ嫌ですけど……静香、この格好でも本気で勝つ気だったんでしょ?」
 たくさんの武器を使って、戦い方を学んだ今ならよく分かる。この装備の組み合わせで、どれだけの戦い方が出来るかが。
「さあ、どうかなぁ?」
 メイド服をまとい、私は敵陣に向けて走り出す。
「まあいいです。答えが正しいか……これから見せますから」
 カートリッジリロード。
 先陣を切ったハウリンを撃ち抜いて、さらなる乱戦は始まった。


 相手は増援を呼んでいるのか、負けた後に再ログインしているのか、一向に数を減らす気配がない。十七体目を過ぎた辺りで面倒くさくなったので、数えるのもやめてしまった。
「ねえ、ココ」
 バニー装備のストラーフから奪ったブレードで紅緒の鎧を叩き斬った所で、静香からの通信が来る。
「今忙しいんですが!」
「じゃ、戦いながら聞き流して」
 ……まったくもぅ。こっちの都合なんかお構いなしなんだから。
「私ね、一つ失敗したことがあるの」
 レーザーライフルの先端が発光した刹那、ライフルの下に滑り込み、乱戦の中で放たれたレーザーから身をかわす。避けきれなかった敵が何体か消えていったけど、いちいち確認する気にもなれなかった。
「あなたって、最初からドキドキハウリンで出たでしょ? あれ、失敗だったと思うのよね」
 銃身をかち上げざまに、ライフルを持っていたサイフォスにショルダータックル。体勢を崩した相手の腰から剣を引き抜いて、そのまま横に薙ぎ払う。
「あれは非道かったと思います。武器のちゃんとした使い方、全然知りませんでしたから」
 斬撃の反動で体が泳ぐ。潔く剣を手放して体勢を整え、上から来た斧の一撃を大きくジャンプして回避。手放した剣が誰かに刺さってた気もするけど、これも放っておく。
「だから、ちゃんと使い方を勉強してもらったんだけどね」
「もうちょっと早くしてくれれば良かったのに」
 サイフォスの兜を蹴って方向転換しながら、足元にスカートから手榴弾を投下。炸裂の中に二体ほど巻き込まれたのを横目に、少し離れた戦域へと着地する。
「でも、楽しかったでしょ?」
「楽しくありませんよ。無駄に悩んじゃったじゃないですか」
「だからいいんじゃない」
 既に手持ちの武器はない。ハンドガンとマシンガンは弾切れで、セイバーはバッテリーが上がっている。ワイヤーもナイフも使い切ってしまった。
 残るは、手榴弾が一発だけ。
「最低ですよ、静香」
 落ちていたツガルのブレードを拾い上げて、手近な相手に斬りつける。どうやらその相手がブレードの持ち主だったらしく、両断と同時にブレードもポリゴンの欠片へと消えていく。
「あら。あんな無茶な武器を欲しがる子に言われたくないわねぇ」
「静香のワガママよりマシですよ」
 バックステップで紅緒の槍を避けきれず、スカートの端を持って行かれてしまう。
「ココの頑固者」
「静香の欲張り」
「バカ正直なんだから、もう」
 う……ライブラリから言葉が出てこない。
「え、S!」
「あなたがMだから、ちょうど良いでしょ?」
「う……」
 速攻で切り返さないでくださいよ。
「……そうね。ワガママで欲張りだから、可愛い服も神姫バトルも、全部一緒に楽しみたいの。真直堂やここみたいに、どちらかひとつなんて考えられない」
 ああ、なるほど。
 それが見せたかったんですね、静香。
 それは分かりましたけど……。
「振り回されるこっちの身にもなってください」
 静香の話に付き合っていたおかげで、また敵に囲まれてしまったじゃありませんか。
「貴女は私のモノだもの。悪いけど、諦めて」
「……ホントに最低ですよ、静香」
 相手もそろそろ乱戦に慣れて来たらしく、同士討ちをしないよう扇状に間合を詰めている。もちろん構えているのはミニガンからレーザーライフルまで、重火器のオンパレード。
 手段を選ばないとは、良く言ったものだ。
「それだけ良い装備を揃えてて、それ以上の装備を欲しがる欲張りに言われたくないわね」
「だって!」
 静香といるとこんな状況がちょくちょく来るから、そういう便利な武器が欲しくなるんですよ!
「……でもそういう欲張りな子って、好きよ?」
 ……もぅ。
「私も静香のこと、嫌いじゃありません。……疲れますけど」
 がちゃり、とマシンガンを構える音が響き渡る。
「刺激があっていいじゃない」
「……そう思うことにします」
 有りすぎるのも考え物ですが。
「そうだ、静香」
「なぁに?」
 そして、ゲンちゃんのバニーが右手をゆっくりと振り上げる。
「私に可愛い服着せて、神姫バトルを楽しむだけで満足なんですか?」
「……どういう意味?」
 バニーの顔に浮かぶのは、勝利を確信した笑みだ。
「ついでに、勝利ももぎ取ってみるっていうのは?」
 その言葉と共にスカートの裾からこぼれ落ちたのは、最後の手榴弾。
「いいわね。楽しそうだわ」
 それは私の足元に落ちると同時、戦場を今までとは比べものにならない閃光で覆い尽くした。


「勝ちに行くわよ、ココ!」
 光の中、静香の声が響き渡る。
「この格好で、ですか?」
 私の服はメイド服。持てる装備の全てを使い切った、限りなく戦闘力を持たない姿。
「まさか!」
 勝ち誇る声と同時に私の目の前に転送されてきたのは、長いバレルを備えた狙撃砲。
 砲にして棍。
 棍にして砲。
 ドキドキロッド。
 かつてこぼした弾速の遅さなど、今の私には気にもならない。弾が遅いなら、それなりの使い方をすればいいだけだ。
「……はい」
 今なら分かる。
 この装備ひとつに、どれだけのポテンシャルが秘められているのかが。
「なら、いい? ココ」
 静香の言葉に、軽く頷く。
 恥ずかしくないとは言わない。
 けど、私のやりたい事を貫いていいなら、静香のして欲しい事も貫かないと不公平だ。
「魔女っ子神姫ドキドキ☆ハウリン!」
 高らかな言葉と共にメイド服を脱ぎ捨てれば、ふわりとスカートが広がり、メイド服よりも細身のコスチュームが姿を見せる。
 閃光が収まっていく。
「ここに!」
 ならば、静香の願いを叶えるだけだ。
「はいぱぁぁっ! 降臨っ!」



「……ふぅ」
 周囲の敵反応、全て消失。
 別のエリアにも敵はいないようだ。新たな乱入プレイヤーを待つ待機時間が過ぎれば、バトルロイヤルは終わりを告げる。
 もう乱入する気力もないのか、ゲンちゃん達が再攻勢をかけてくる気配はない。
「お疲れさま、ココ」
 総撃墜数五十二機。もちろん、今までの最高連勝記録を軽く塗り替えていた。
 どれもこれも、静香の指示と……この装備のおかげだ。
「静香。宿題は……どうでした?」
「ふふっ。あなたが考え抜いて出した答えに、バツを付ける気なんて無いわよ」
「……はい」
 忘れていた。
 私のマスターは、そんな人だって。
「あ」
 その時だ。
 乱入警告が、視界の隅に現われたのは。
「あら。まだ行ける? ココ」
「余裕ですよ」
 ほとんどが近接戦だったから、ドキドキロッドの残弾は十分。仮にエウクランテが来たとしても、静香のサポートがあれば負ける気がしなかった。
 敵は空中。
 ポリゴンの欠片が像を結び、細かなディテールとテクスチャーが追加されて……。
「……え?」
 現われたのは、大型のコンテナを背負った巨大なアーンヴァルだった。右腕には大口径のビーム砲。左腕にある巨大なパーツは防御フィールド発生装置だろうか。
 でも、今ならどんな相手でも負ける気はしない。
 静香が一緒なら。
「そん……な……」
 ……え?
「……静香?」
「行けぇっ! ガブリエル!」
 戦場に響き渡るのはヒステリックな男の声と、視界全てを覆い尽くすミサイルの豪雨。
「嘘……まさか……っ!」
 慌てて走り出すけど、これだけの弾幕、回避しきれるわけがっ!
「静香!? 静香っ!」
 迎撃にドキドキロッドを斉射しても焼け石に水。しかも敵の本体に届いた砲弾も、左腕のフィールドで端から弾かれている。
「くっ!」
 左足にマイクロミサイルが着弾。たった一発で私の左足を吹き飛ばす。
「静香! 静香っ!」
 いくら私でも、足をやられては逃げようがなかった。
 次々と着弾するマイクロミサイルが、私の腕を、胴を、ロッドを、粉々に打ち砕いていく。
「そんな……どうして……っ!」
 静香からの指示はない。あのアーンヴァルが現われた時から、今まで見た事もないような混乱を見せている。
「静香! どうしたんですか! 静香っ!」
「トドメだ! ガブリエル!」
 そして、ガブリエルと呼ばれたアーンヴァルの巨大な粒子砲が、戦場に残された私の顔を吹き飛ばして……。
「花姫っ!」

 ……私は、その戦いに負けた。





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