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 短いアラームの音がして、私はクレードルから半身を起こした。瞳を閉じて、バッテリー容量と、今日の日付を確認する。
 バッテリーはフル充電。
 日付は、一年前から待っていたその日を指している。
 うん。間違いない。
「静香ぁぁっ!」
 全部きっちり確かめて、私はベッドに向けて大きくダイブした。翼を付けていない私の体はいつものように空を舞うことなく、大きな放物線を描いて静香の上に落下する。
 ぽす、という音がして、柔らかい布団が私の体を受け止めてくれた。
「起、き、て、く、だ、さ、い、静香ぁー」
 落ちた姿勢のまま布団の上をバタバタ泳いで、静香の顔が見える辺りまで進んでいく。静香のおっぱいあたりでそのままバタバタしていると、ようやく静香は起きてくれた。
「……どうしたの、姫」
 眠い目をこすりながら身を起こす。って、ちょっと、静香っ!
 私がおっぱいの辺りにいた事なんて気付いてもいない。私は引き上げられた布団の上をころころ転がって、静香の腰の辺りでぺたんと尻餅をつく。
 いつもならひどいって言うところだけど、今日はそんなことは気にもならない。
「ついにこの日が来ましたよっ!」
 だって、ずっと待っていた日が来たんだから。
 ようやく目が醒めたらしい静香も、私の言いたいことが分かったんだろう。生あくびをひとつして、ベッドサイドの時計を取り上げる。
「……まだセンターが開くまで、三時間もあるじゃない」
「だって、待ちきれないんですもん!」
 昨日の夜だって、本当は寝てなんかいられないくらいだったのに。バッテリーが保たないって分かってたから、諦めて寝たけれど。
「もう、しょうがないわねぇ」
 私の様子を見て、静香はくすくす笑ってる。
「支度は! 支度は出来てますかっ? 髪の支度、手伝いましょうかっ!?」
 クレードルの脇に戻って、手早くフライトユニットをセット。ふわりと浮かび上がって、そのまま鏡台へ飛んでいく。
「髪は後で良いわよ」
 じゃ、櫛は取ってこなくていいですね。
 ご飯の支度を先にした方がいいですか? 静香は朝はパン派でしたよね?
「先にご飯にしましょ。装備の方は、昨日の晩にちゃんと済ませてあるから心配しなくていいわよ」
「おおーっ!」
 もちろん、準備が万端なのは昨日の晩から知っていた。でも、気になって気になって気になって仕方がない。
 今日は、待ちに待った日だったから。
「中身は行ってからのお楽しみ。楽しみにしててね!」
 静香はにっこり笑うと、ベッドから降りて服を脱ぎ始める。
 ご飯の前に、着替えですねっ!
「はいっ!」
 まずは下着を取ってきたらいいですか? 静香っ!


魔女っ子神姫 マジカル☆アーンヴァル

~ドキドキハウリン外伝~

その7



 朝の支度をゆっくり済ませて。
 十貴にいつものとくしゅな格好をさせて、お姉ちゃん達とおしゃべりしながら歩いてくれば……。神姫センターに着いたのは、ちょうどセンターの開店時刻だった。
 そこは一年前、私達が初めて大会に参加したあのゲームセンターだ。このあたり唯一の神姫センターとして改装オープンしたのが半月ほど前のこと。今は一階が普通のゲームセンター、二階が神姫専門のバトルスペースになっている。
「これ……ですか?」
 その二階。
 休憩スペースのテーブルで、私は静香の準備してきた中身を確かめていた。
「そうよ。十貴が色々持ってたから」
 大口径のビームランチャーに手持ち式のミサイルポッド、防御用のビームシールドも出してある。
「……ありがとう。十貴、お姉ちゃん」
「ジルは使わないから、丁度良かったよ」
 どれも私達神姫の制式装備じゃない。GFFで使われているGFF規定の装備だ。昨日までなら、おしゃれや遊びには使えても、実戦では役に立たない物ばかりだったんだけど……。

 今日からは違う。

 そう。今日は、神姫バトルに新しいルールが追加される日。SRWやGFFの規格で作られたオリジナル装備が、神姫バトルに持ち込めるようになった日だ。
「花姫が得意なのは空中からの遠距離砲撃でしょ。このランチャーは威力が同じで軽いから、いつものレーザーライフルより使いやすいと思うんだ」
 そう言って、十貴がビームランチャーを渡してくれる。
 確かに、レーザーライフルは大きすぎて邪魔なことも多いから、小さくなった方が便利なんだけど……。
 そうじゃなくって。
「ねえ、あの……静香?」
 私の言葉に、静香はにっこり笑ってトートバッグから小さな箱を出してくれた。
「もちろん、忘れてないわよ。これでしょ?」
 ふたを開けた、その中に入っていたのは……。
「それっ! それですっ!」
 一年前、静香が大会用に作ってくれた、マジカル☆アーンヴァルのコスチューム。
 静香、やっぱり覚えててくれたんですね!
「当たり前じゃない。あたしの可愛い花姫が、やっと全国デビュー出来るのよ?」
 静香からドレスを受け取って、ぎゅっと抱きしめる。
 そう。今日からは、この服も私に力を貸してくれるんだ。
「静香! 私、がんばりますっ!」



 花姫がドレスに着替えている間に、静姉はボク達の方に寄ってきた。
「で、十貴は何か作ってきたの?」
 完成品があるかどうかを聞かずに、センターまで連行してくるのは勘弁して欲しい。
 まあ、作ってあるけどね。
「これだよ」
 ジルは既に武装し終わっていた。花姫みたいに細かい服を身につけるわけじゃないから、早いもんだ。
「……これは」
 ジルの背中に付いているのは、いつものサブアームだけじゃなかった。フック付きのワイヤーを仕込んだクレーンアームと、盾にも使える大型バケットを備えたショベルアームが追加してある。
 素体の腕にはマシンガン。四本の大型アームの死角は、この手持ち火器で補うことになる。
「あたしの趣味だよ。文句あるかい?」
 ストラーフタイプ全体の弱点である砲撃戦に対応する案もあったけど、結局はジルの得意な格闘戦を伸ばすことにしたんだ。五割増になった腕を使いこなすまでかなり時間がかかったけど、手間を掛けただけの意味はあると思う。
 後は実戦で経験を積めば、これからのスタイルは自ずと見えてくるはずだ。
「うわぁ……お姉ちゃん」
 ジルのその姿に、着替え終わった花姫も言葉を失っていた。
 いつもの四本腕も相当な異形だけど、その腕がさらに二本増えてるんだ。無理も……
「かっこいいですっ!」
 ……ノリ良いなぁ、花姫は。
「だろーっ!?」
 調子に乗ってショベルアームで花姫の背中叩いたりしないでよ? ジル。
「にしても、思い切ったわねぇ……」
「ジルはパワー戦がメインだからね。犬猫パッチで命中率は下がったけど、当たれば大きいから」
 ハウリン、マオチャオ、ヴァッフェバニー。
 第二期モデルの三体が出たとき、バトルシステムには回避率と近接戦のダメージ修正に大幅な調整が加えられていた。花姫の遠距離射撃やジルの大振りな一撃は当たりにくくなり、素早く正確な打撃・射撃を得意とする二期モデルの戦い方が戦場を席巻した。
 その時の調整を、発売時期に合わせて『犬猫パッチ』と呼ぶわけ。
 でも、第二期モデルが発売されてもう半年。ジルも花姫も犬猫パッチの対策はちゃんと出来ているし、今日のパッチで新しい力も出に入れた。
 これからは、ジルに今までみたいな悔しい思いをさせる気はない。
「じゃ、お互い頑張りましょうね」
「うん」
 そしてボクと静香は、別々の戦場へと向かう。



 フライトユニットが起動して、私の体はふわりと戦場に浮かび上がった。バトルフィールドの乾いた風が、スカートの裾をパタパタひるがえしているのが分かる。
「魔女っ子神姫マジカル☆アーンヴァル! 完全武装でここに、はいぱー☆降臨っ!」
 そう。私はこの服を着て、戦場に立っている。
「へへ……っ」
 見ている人はいないけど、自然と笑顔も浮かんでしまう。
「どう? 姫」
 レシーバーから静香の声が聞こえてきた。振り向けば、プレイヤーシートに座っている静香の姿がよく見える。
「静香! この服、似合ってる?」
 静香にもよく見えるように、くるりと一回転。フリルのたっぷり付いたスカートが、辺りに羽根みたいに広がる。
「もう。何回聞けば気が済むの……?」
 えーっと。七回目……だったっけ?
「でもでも、気になるんだもん」
「大丈夫。最強に可愛いわよ!」
 静香は私に向かって、にっこり笑ってVサインを出してくれた。もちろんこれも、七回目だ。
「えへへー」
 でも、何回やってもらっても嬉しいんだもん。後でもう一回聞こうかな。
「それで、変な感じはない? 他の装備はどう?」
「うん。いつもよりランチャーが軽いから、バランス調整だけ……他は大丈夫だよ」
 調整は戦いながら数値を取って、することになるだろう。ドレスも翼のミサイルランチャーも、他の装備やフライトユニットに干渉してる様子はなかった。
「ま、今日は慣らしだから、無理しないで行きましょう」
 やがて、戦闘開始のアラートが鳴る。
 相手の開始位置は戦場の一番むこう。ヴァッフェバニーっていうのは分かるけど、それ以上のデータはまだ流れてこない。
 相手も新装備の感覚がしっくり来ていないみたいで、ときどき牽制の弾を撃ちながら、ゆっくりと近寄ってくるだけだ。
 相手の得意な戦法は……。
「火器を使った中距離戦……っと!」
 慌ててロールを掛けた私の横を、小口径の弾丸が塊になって駆け抜けていった。
 バニーが持ってきた新装備は大型のガトリングガン。基本装備のミニガンの倍くらいの大きさがある。
 それにしても、危なかったぁ……倍くらい届くんじゃない? これ。
「姫、大丈夫?」
 ロールから体勢を戻して、ランチャーを撃ちながら距離を広げていく。あー、やっぱり反動も少ないなぁ。急旋回の時の重しには使えないけど、こうやって撃つぶんにはかなり使いやすいかも。これ。
 適当に距離を稼いでると、大型ガトリングガンの連射音が止まった。このあたりがあの武器の射程圏外みたい。
「うん。かすった……」
 一息ついたところで、静香に答えようとして。
「あーーーーっ!」
「姫っ!?」
 スカートに穴が空いてるっ!
 さっきの弾幕を避けたときだ!
「せっかく静香が作ってくれたのにっ!」
 機体を前へ。スラスターを全開に。
 相手へ向けて、加速する。
「ちょっと、姫!?」
 ガトリングガンなんか怖くない!
 もう、一発だって当たってやらないんだからっ!



「よそ見すんな! 十貴っ!」
「あ……うん」
 吐き捨てるようなジルの声に、ボクは慌ててディスプレイに視線を戻した。
 花姫がヴァッフェバニー相手に戦いを繰り広げている頃。ボクとジルも、とんでもない相手と戦っていた。
「何だ……こいつ!」
 ジルの爪が宙を掻く。その動きに連動してショベルアームが器用に動き、相手の回避ルートを塞いでいく。もちろん同時にステップを踏んで、相手の動きは完全に補足済。
 多関節のショベルアームは、大振りなサブアームの死角を的確にフォローしてくれる。二本のサブアームを避けきってもバケットが待ちかまえ、かといってバケットの動きに集中すれば二本のサブアームが襲いかかる、回避不能の二段構え。
 でも、三本の腕が連携した先、既にその場に相手はいない。
 相手がいるのはバトルフィールドのほぼ反対側。
 アームを繰り出すまでは、ジルのすぐ目の前にいたはずなのに……。
「ジル、相手をよく見て!」
 接敵したわずかな時間で確かめられたのは、素体サイズの神姫の影。ストラーフのレッグユニットも、アーンヴァルのフライトユニットも付けていなかった。
 この大きさであれだけのスピードを出せるなんて、一体どうやってるんだろう。
「来たよ! 距離3000!」
「わかってら!」
 砂煙を上げて疾走する……翼は見えなかったから、超低空飛行ではないはずだ……相手から、ふ、と砂煙が消える。
「あれは……」
 次瞬、爆発。
 さっきまでの倍以上の加速をまとい、そいつは弾丸よりも速くジルへと殺到する。
 軌道は直線。
 間が縮まるのは、一瞬だ。
「ハウリンタイプっ!?」
「この犬野郎っ!」
 三度目の接敵でジルが放ったのはクレーンアームのワイヤーだ。射出音が響くと同時に巻き上げて、ブームを横へと振り抜いた。
 びぃんと張り切ったワイヤーが横殴りの動きを得、ジルと相手の間、胸の高さに鋼の境界線を引く。
 絡み付くまでは期待してない。避けるだけでも、十分な隙が出来る。
 そして相手は、ワイヤーを跳び越えた。
「もらった!」
 翼のない相手に、空中機動は使えない!
 ジルのマシンガンが火を吹き、ショベルアームが叩き込まれた。
 これだけの機動力のある相手。装甲は薄いはず。
「でええいっ!」
 ショベルアームを放ってもなお、ジルは攻撃の手を緩めない。一気に踏み込み、サブアームの追撃を……
「……なにっ!?」
 打ち込めなかった。
「そんな……」
 ボクもプレイヤーシートのモニターを覗き込んだまま、呆然と呟くしかない。
 ジルの四本のアームには打撃による負荷が一切表示されていなかった。
 それはすなわち、ジルの攻撃が完全な不発に終わったという事。ショベルアームは当たらず、サブアームも放たれないまま。空を切った拳が大地に当たることすら、なかったんだ。
 相手がどこへ逃げたとしても、ジルは追撃を放てるように訓練を行ってきた。上下左右、空中に後ろ。もし懐に踏み込んで来たしても、マシンガンの餌食になるだけだ。
 その射撃音すら、ない。
 ということは。
「ジル! ショベルアームだ!」
「なっ!」
 果たしてヤツはそこにいた。
 死角になって気付かなかったんだ。
 伸ばしきったショベルアームの先端、バケットの上に腕組みをして立つその姿。
「そんなバカな……」
 ハウリンタイプの膝から上は完全な素体状態だった。唯一武装している脚部装甲も、ハウリンの基本装備に入っているもの。
「くっ……!」
 ボクの指示よりはるかに早く、ジルはショベルアームの上を狙ってクレーンアームが突き出した。
 けど、既に相手は空中だ。
 ショベルの先で軽くジャンプをし、クレーンアームの打ち込みを悠々と避けている。
「そこだぁっ!」
 でも、その動きこそがジルの狙い。
 回避不能なはずの空中へ、再びマシンガンの洗礼とサブアームの連打が叩き込まれる!



 休憩スペースに戻ってきたボクが見たのは、泣きじゃくっている花姫だった。
「花姫、どうしたの?」
 涙もろい子だけど、ここまで泣いているのは初めてだ。この一年、どれだけ悔しい負け方をした大会でも、こんなに泣いたことはなかったはずだけど……。
「せっかく、静香が作ってくれたのに……」
 静香が無言で広げたのは、ボロボロになった一着のドレス。それがマジカル☆アーンヴァルの衣装だと気付くまでに、少しだけ時間がかかった。
「……なるほどね」
 一年ものあいだ大切に持ってた服が一瞬でこんなになっちゃったら、大泣きするのも仕方ない。
「服なんてまた作れば良いんだから、気にしなくていいのに」
「そんなの、嫌だよぅ……」
 静姉が頭を撫でても、今は効果がないみたいだ。いつもなら、すぐ嬉しそうな顔をするのに。
「じゃ、これ着るのは大会の時だけにする? 練習の時は別の服、用意してあげるから」
 しゃくり上げながらも、こっくりと頷く花姫。
「そうだ。十貴はどうだった?」
 花姫が落ち着いたのをみて、静姉はボク達の戦果を聞いてきた。
「……どうもこうもねえよ」
 ジルはボクの肩に座ったまま、肩をすくめてみせる。
「すごいハウリンがいてね。今日はさっぱり」
 結局、ジルのあの攻撃は当たらなかった。気が付いたら後ろに回り込まれてて、とんでもない威力の蹴りを食らってTKO。
 どうやらあの脚部装甲、中身はかなり手の加えられた代物だったらしい。
「ああ、ちょうどあそこに映ってるの。あの子だよ」
 センターのバトル筐体の上には、戦闘中の神姫を映す大型モニターがぶら下がっている。
 例の脚部装甲にも慣れたのか。今は一直線に相手に突っ込んで、相手が反応するより早く蹴るか、無茶苦茶な軌道で相手のサイドに回り込んで蹴るか……とにかく蹴りに特化した超短期決戦を繰り広げている。
 まあ、あの装備じゃ、あの戦法以外をメインにするのはちょっと無理そうだけど。
「タケヨシ、タイムは!」
 勝利宣言を受けると同時、大型モニターから響くのはハウリン特有の凛とした声。
 ……ホントにタイムアタックしてたんだ。
「四十二秒だ、クウガ。それと俺の名前はタカヨシだ。いい加減マスターの名前くらい覚えろ」
「また二秒、世界を縮めた……」
「……聞けよオイ」
 マスターらしい男の人のツッコミに、周囲から笑いが漏れている。
「ねえ、ジル。神姫って、マスターの名前を間違うことってあるの?」
「さあ。おおかた滑舌悪くて、間違って覚えちまったとかそういうクチじゃね? ダディーナザーンとか」
「……何それ」
 たまにジルはボクの知らないネタを振ってくる。ライブラリから適当に拾ってくるんだと思うんだけど、そんなのに即座に反応できるのって、きっと父さんくらいだよ。
「高速格闘かぁ。パッチの恩恵を一番受けてる戦い方ね……」
 ボク達と違って、静姉の反応は冷ややかなもの。今までに出たパッチって回避率強化や高さ制限ばかりで、アーンヴァルの飛行能力が生かせる修正は出てないもんなぁ……。
 バトル開始直後は、バトル重視のユーザーにはアーンヴァルよりストラーフのほうが売れてたみたいだし。今じゃ『在庫様』なんて不名誉なあだ名もあるって聞く。
 もちろん、静姉や花姫にそんな事は聞かせられないけど。
「姫も、あんな奴らに負けないように頑張ろうね」
「……うん」
 ようやく泣きやんだ花姫も、静香の言葉に頷いてる。
 帰りに、ケーキでも買ってあげようかな。
「ま、泣きごと言っても始まらないわ。まずは装備を考えないと! そっからでしょ」
「そうだね」
 まずはそれから。
 手始めに、日暮さんの模型屋にでも寄って新しい装備のアイデアを考えよう。
「おう! 今度はあの一直線野郎をぶっとばす!」
 ジルも力強く腕を掲げる。
「ぶっとばーす!」
 花姫もジルを真似をして……。
 いや、花姫はそんな悪い言葉覚えちゃダメだよ?





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