・・・・・・行かなきゃいけないのかなあ。
夏休み初日、僕は起きてからずっと迷っていた。
昨日は梓に押し切られ、会う約束を取り付けられてしまったが、やはり気が乗らない。人とはあまり関わりたくないし。
その一方で、久しぶりに同年代の子と話せるという楽しみもあったし、学年内でも人気の梓と、「武装神姫」という秘密を共有している嬉しさも、あった。
・・・・・・どうしようかな。
「あの・・・・・・」
そんな具合で考えていると、ネロに声をかけられた。
「やはり迷惑ですし、断りの連絡を入れましょう」
最初は同意した。けれど、少し考えている内に、なんとなく、違う気がしてきた。
「・・・・・・そうやってまた、今までみたいに、あんなふうに生きていくの?」
あの時見た、ネロの姿を思い出す。
「ええ、慎一や他の方々に、迷惑をかけるわけには・・・・・・」
「そんなの認めない」
彼女の言葉を遮って、僕は言った。
「少なくとも、僕は迷惑だなんて思わない。それよりも、君があんな目に遭っていることの方が、僕には我慢できないよ」
「し、しかし・・・・・・」
いったい何が僕を衝き動かしたのか、とにかく僕はネロを説き伏せ、梓との待ち合わせ場所であるセンターへ向かった。
夏休み初日、僕は起きてからずっと迷っていた。
昨日は梓に押し切られ、会う約束を取り付けられてしまったが、やはり気が乗らない。人とはあまり関わりたくないし。
その一方で、久しぶりに同年代の子と話せるという楽しみもあったし、学年内でも人気の梓と、「武装神姫」という秘密を共有している嬉しさも、あった。
・・・・・・どうしようかな。
「あの・・・・・・」
そんな具合で考えていると、ネロに声をかけられた。
「やはり迷惑ですし、断りの連絡を入れましょう」
最初は同意した。けれど、少し考えている内に、なんとなく、違う気がしてきた。
「・・・・・・そうやってまた、今までみたいに、あんなふうに生きていくの?」
あの時見た、ネロの姿を思い出す。
「ええ、慎一や他の方々に、迷惑をかけるわけには・・・・・・」
「そんなの認めない」
彼女の言葉を遮って、僕は言った。
「少なくとも、僕は迷惑だなんて思わない。それよりも、君があんな目に遭っていることの方が、僕には我慢できないよ」
「し、しかし・・・・・・」
いったい何が僕を衝き動かしたのか、とにかく僕はネロを説き伏せ、梓との待ち合わせ場所であるセンターへ向かった。
「あ、おはよー、星野くん」
「う、うん。おはよう」
・・・・・・しかし、開店直後に待ち合わせというのはいかがなものか。
「紹介するね、この子はミナツキ」
「はじめまして。以後、お見知りおきを」
梓の肩の上で、猫型の神姫がぺこりとお辞儀をした。
「あ・・・・・・、こ、こちらこそ」
「ネロです。どうぞよろしく」
・・・・・・なんか調子狂うなあ。
とりあえず、出掛ける前にネロから聞いた話をいくつか、した。
彼女のメモリにはブロックがかかっており、人間でいう「記憶喪失」みたいな状態になっているらしい、ということ。
もともとのマスターが行方不明になったのが、半年前――僕はこの半年前という言葉に、奇妙な引っ掛かりを感じていた――ということ。
「ふうん・・・・・・。製造番号とか、登録ナンバーとかで、何かわからないかな?」
「うん、それも考えたんだけど・・・・・・」
身体に刻まれている製造番号は削れてしまっていたし、登録ナンバーも、彼女のアクセスコードがわからないから調べることができなかった。
「うーん・・・・・・」
梓が唸っていると、
「あれ? 梓ちゃん、珍しいね」
と、男性の声がした。
「あ、修也さん」
「う、うん。おはよう」
・・・・・・しかし、開店直後に待ち合わせというのはいかがなものか。
「紹介するね、この子はミナツキ」
「はじめまして。以後、お見知りおきを」
梓の肩の上で、猫型の神姫がぺこりとお辞儀をした。
「あ・・・・・・、こ、こちらこそ」
「ネロです。どうぞよろしく」
・・・・・・なんか調子狂うなあ。
とりあえず、出掛ける前にネロから聞いた話をいくつか、した。
彼女のメモリにはブロックがかかっており、人間でいう「記憶喪失」みたいな状態になっているらしい、ということ。
もともとのマスターが行方不明になったのが、半年前――僕はこの半年前という言葉に、奇妙な引っ掛かりを感じていた――ということ。
「ふうん・・・・・・。製造番号とか、登録ナンバーとかで、何かわからないかな?」
「うん、それも考えたんだけど・・・・・・」
身体に刻まれている製造番号は削れてしまっていたし、登録ナンバーも、彼女のアクセスコードがわからないから調べることができなかった。
「うーん・・・・・・」
梓が唸っていると、
「あれ? 梓ちゃん、珍しいね」
と、男性の声がした。
「あ、修也さん」
事情を聞いてくれたその男性――上岡修也さんは、梓の従兄らしい。
「なるほど・・・・・・。そりゃあちょっと、複雑な問題だな」
そう呟いて、修也さんは携帯電話を取り出すと、どこかに電話を掛けた。そして、
「よし、これでとりあえず、不法所持の問題はなんとかなる」
と言った。
「なるほど・・・・・・。そりゃあちょっと、複雑な問題だな」
そう呟いて、修也さんは携帯電話を取り出すと、どこかに電話を掛けた。そして、
「よし、これでとりあえず、不法所持の問題はなんとかなる」
と言った。
その夜。僕のパソコンに、一通の添付ファイル付きメールが届いた。差出人を確認すると、梓からだった。携帯を持っていない(というか持ちたくない)僕は、別れ際に彼女にパソコンのメールアドレスを教えておいたのだ。・・・・・・どちらかというと、教えさせられたと言った方がいいかも知れない。
「あれ・・・・・・?」
しかし読んでみると、文面は修也さんのものだった。
添付ファイルのプログラムを、ネロにインストールしろという内容。
当面、周りの目をごまかすための、偽造データとのことだった。
「ネロ、どうする?」
僕は聞いた。
「・・・・・・インストールします。それで少しでも、慎一達の負担が減るのでしたら」
「そんなこと・・・・・・、考えなくていいよ」
「・・・・・・すみません」
・・・・・・これは、所詮偽物でしかない。でも、今の僕とネロをつなぐ、たったひとつの綱のように思えた。
「あれ・・・・・・?」
しかし読んでみると、文面は修也さんのものだった。
添付ファイルのプログラムを、ネロにインストールしろという内容。
当面、周りの目をごまかすための、偽造データとのことだった。
「ネロ、どうする?」
僕は聞いた。
「・・・・・・インストールします。それで少しでも、慎一達の負担が減るのでしたら」
「そんなこと・・・・・・、考えなくていいよ」
「・・・・・・すみません」
・・・・・・これは、所詮偽物でしかない。でも、今の僕とネロをつなぐ、たったひとつの綱のように思えた。
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