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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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戦うことを忘れた武装神姫
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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双子神姫
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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ホワイトファング・ハウリングソウル
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 第二幕。上幕。


 ・・・。
 夜は明けるまでまだ少し・・・開店まではまだ数刻。
 雨が跳ね、闇に佇む一軒のお店。 シルバー&グラスアクセサリー専門ショップ『ムーン』。

 奥のアトリエからはリューター特有の甲高い音が僅かにだが聞こえている。防音が不完全なのではない。『彼女』に聞こえるように、少しだけ開けているのだから。
 遠い雨音と変わらない程の音。それが遠くに聞こえる、開店前の店の中で仄かな光がうつろっていた。
 『彼女』はキャッシャー台の上、そこにいる一体の神姫。

 ダークブルーとブラックという、シックなスーツカラーで身を包んだ人気の高い武装神姫、悪魔型MMSタイプ「ストラーフ」。彼女は丁寧な銀細工で周囲を装飾され、中央に良質クッションでのベッドが拵えられたクレイドルの上。膝を組み、手の中で悪魔型が頭部に装着する「角」を専用のウェスで丁寧に磨いていた。
 思いの他に早く目が『覚めて』しまった。そして未だ「音」は止んでいない。キャッシャーを兼ねるコンピュータに映されているテレビ画面をそれとなく眺めながら。時が流れるのに身を任す。

 派手な爆発。音量が絞られている為に聞こえるかどうかの轟音。
 光が飛びまわり、一瞬の隙を突いた猫型武装神姫のクローが片方の犬型武装神姫に命中する。悲鳴を上げる事も無く地面に叩きつけられる敗者。ハイライトと右上に表示されている。昨日の大会の内容らしい。
 その詳細な・・・とも言い難い内容をアナウンサーが嬉しそうに報じているらしい事が、字幕で解る。
 周囲に配された芸術性が高い銀細工が映し込む映像・・・一応は戦場とでも言うべきか?
 手を突き上げるは勝利者・・・。

 ふっと、そのストラーフは自分が座るクレイドルを見て、そのまま空に視線を這わせた。
「・・・・・・」
 何かを考えながらも、彼女は磨く手を止めない。

 『昨夜のオフィシャルバトルは・・・』
 テンプレート通りの話し方で結果を伝える優男。そのストラーフはしばしの間、その物憂げな赤い瞳に画面を落としていたが、やがて時計の針が指す方向に気付いて上体をゆっくりと起こした。
 ツインテールパーツの人気が圧倒的に高いため、最近では余り見かけない「角」パーツを馴れた手付きで装着する。彼女の自慢であるそれは、他のストラーフの物とは違う深い漆黒色、表面は硝子でコートされて、それも風景が写りこむぐらいに磨き上げられたハンドメイドの逸品。

 彼女の名前はヴィネット。その綺麗な角パーツの為に「角子さん」と常連の方から呼ばれる事もある。この店の『看板娘』である。



 彼女は卓上から、椅子を踏み石にして飛び降りる形で、たったの二歩で床に降り立つ。と、そのままアトリエの方に足を向けた。
 ほんの僅かに開けられている防音処理が施された扉。その隙間から滑り込んだとほぼ同時。響いていたリューターの音が止んだ。

 決して整頓されているとは言い難い、むしろ散らかっているアトリエの奥、作業机。
 後ろでくくる程に長いグレーの髪をした青年が、その眼鏡の奥の細い目をより一層細くして出来上がったばかりの作品をライトに照らしている。やがて、息をひとつ吐くと何やら頷きながら作品を机に置いた。
 その姿を見てヴィネットは安堵の笑みを浮かべると、声をかける。
「おはようございます。マスター。注文の品・・・完成したようですね」
 普通の武装神姫が発する声よりも、その声は明らかに大きく、明瞭で美しい。
 青年は、こちらに顔を向けて微笑み、眼鏡を直しながら応えた。
「Guten Morgen・・・ヴィネットさん。ご覧になりますか?」
「是非とも、拝見させていただきます」
 彼の名前はリカルド=ケンザキ。彼女のマスターにして、26歳でマエストロの名を持つ店長。

 ヴィネットはリカルドがしゃがむ様にして差し出した掌に身を乗せる。
 そのまま作業机の上に恭しく案内され、そこに置かれている銀製のティアラを見つけると、思わず小さな感嘆の声を上げた。

 中央から左右にかけて彫り込まれた繊細な飾り花。両翼には祝福を告げる天使が踊っている。土台そのものにも装飾が描かれ、美しい流線型のラインは、冠する花嫁の頭上を一層華やかに彩るであろう。

「・・・」
 嬉しそうに自分の身体より大きな芸術品を手で一度撫でると、ヴィネットは仕事を終えて髭が不精に伸びてしまったマスターに振り返った。
「お見事ですマスター。それで」
 眠そうに伸びをする彼に肩をすくませ。
「・・・本日はお店を臨時休業に致しましょうか。今日はバイトの方は来られませんし。二日ほど寝ていらっしゃらないでしょう?」
「えぇ、そうですね。すいません、データの処理等をお願いできますか?」
 ただでさえ眠そうな目をしているのに。今日ときたら・・・。
 口の中で笑いを抑えながらも。彼女は頷いた。
「それでは。そう手配致します。横になる前にシャワーだけは浴びて下さい」
 手元を照らすライトのスイッチをOFFにしながら言う事は言う。
「はい。解っています」
「そう仰いますが、三度に一度はお忘れですよね?」
「・・・参りました。注意いたします」
 苦笑を口元に浮かべながらリカルドがゆっくりと立ち上がるのに合わせ、ヴィネットは、その肩まで腕を伝って駆け上がった。
「おや? これは珍しい・・・肩までですか?」
 普段は頭まで駆け上る彼女にしては珍しい。
「気分です」
 さらりと流すが、少しだけ彼女の頬は紅潮している。
「・・・お疲れ様でした、マスター。あのティアラを冠する花嫁はきっと『幸せ』でしょう」
 そう言って、彼の頬にキスをする。
「ありがとうございます」
 嬉しそうに言う彼の横顔を見て、ヴィネットも我慢できずに笑った。



「・・・マスター?」

 ふっと。
 これまた決して整頓されているとは言えない、美術関連の本や雑誌が氾濫する寝室。シャワーを浴び終え、そこのベッドに横になろうとするリカルドに対し。
 ライトスイッチの所に立っているヴィネットは、思い出したように声をかけた。
「何でしょう?」
 外そうとしていた眼鏡を掛け直し、リカルドは問い返す。彼女は、先のクレイドルの上で浮かんだ言葉を口にした。
「私の後・・・私の他に。神姫を迎える予定はございますか?」
「・・・?」
 その質問の意図を捉えかねたのか。しばらく彼は沈黙していたが。
「今の所はありません。恐らくは迎えないのではないでしょうか?」
 そう。応える。普通の神姫ならば、その返答は喜ばしい事であろう。
 ・・・しかし、ヴィネットは暫し考え込むように首を捻った。
「どうしました? ヴィネットさん」
「いえ。・・・だとすれば、お願いがあるのですが」

 しっかり者の彼女が『お願い』とは珍しい。さて何か。リカルドはベッド上で起き上がって姿勢を直した。
「どうぞ」

「いつしか私の機能が・・・故障でも、『寿命』でも構いませんが、とにかく停止した後。当然今ある神姫関連の整備品・データファイル等は処分をお願い致します。マスターはただでさえ片づけが下手ですが。サイズがサイズだけに決して手間は取らないでしょう」

 ヴィネットが口にしたその言葉に。彼は眉をひそめ、顎に手をやった。
 それが不満のポーズに見えたのか、ヴィネットは多少語気を強めた。
「勿体無いなどとは言わないでくださいよ? それだからマスターは片付けられないのです。使わない、使えない物は処分。それが基本です」
「・・・」
 彼は答えず、小さく頷くのみ。
「さて。そこでご相談なのですが・・・」
 コホン、と。多少照れくさそうに一つ咳払いをして。
「マスターが・・・私の為に加工し、見事な装飾を施して下さいました専用クレイドル」
 私の為に。というのは非常に気が恥ずかしいのだが。事実彼が『ヴィネットさんの為に作りましたよ』と言って持ってきてくれた物だし・・・と彼女は自分を納得させる。
「あれだけはどうか、他の神姫にお譲りください。使用している自分で言うのも何なのですが、あれほど見事な物を私一代で終わらせるのは・・・勿体無いというか・・・その」
 そこで。ヴィネットはリカルドが何やら悩んでいる事に気付いた。左手で口を覆い、普段は眠そうな細い眼光を鋭くし。じっと地に視線を落としている。
 時折リカルドが見せる『集中している』表情だ。普段の彼しか知らない人ならば逃げ出すかもしれない。

 きょとんとして。彼女は問いかける。
「・・・マスター? どうされました?」
「いや・・・ヴィネットさんが。亡くなったら・・・ですか」
 こくり、と喉が鳴った。見慣れている彼女と言えども。この表情の彼には近づきがたい。
「・・・」
 かける声さえ見つからず。彼女は何らかを思案する主が声を発するのを待った。
 たっぷりと、数十秒はかかっただろうか。ゆっくりとリカルドは手を口元から外しながら顔を上げた。

「銀、いや・・・ガラス・・・」

「・・・は?」
 緊張の抜けたヴィネットの声を無視し、柔和な表情に戻ったリカルドはポン、と小気味良い音を立てて手で拍を鳴らす。
「そうですね。ヴィネットさんを購入した時の・・・ブリスターですか。あれにヴィネットさんを入れて、そのまま包めるほどのガラス細工の棺を作りましょう」

 その口から発せられた言葉は、彼女の想像を、遥か斜め上方に超えていた。
「当然外から見えるように透明度には最新の注意を払います。細工にしてもこのリカルド、全身全霊を持ってして見事な物を彫り上げましょう。恐らくは一年・・・いや、二年かかるかもしれません。しかし必ず完成させてみせましょう」
 にこにこと。心底嬉しそうに言うリカルドに、ヴィネットは開いた口を塞ぐ気力も無く声をかけてみる。
「あの・・・ま、マスター?」
「いえいえ。顔の部分は装飾を省くのでご安心を。外から見て歪む事が無いように」
 そんな事を気にもとめず、いや、一応は聞いているのか。とにかく質問を全く真意を汲まずに受け取ったリカルドは、ヴィネットの言葉を手で制して首を横に振った。
 自分の世界に入ってしまったのか。唖然としたままの彼女を無視するように、遠い目で天井を見上げる。
「・・・恐らく、私の代表作になるかもしれませんねぇ。完成すれば、多くの方に見て貰う為に店先に置くか・・・いえ、盗難が怖いので居間か玄関口ですね」
「えっと・・・」
「いや・・・いやいや? 私が日々、手元で見なくてはなりません。やはり寝室ですか・・・」
 この部屋の・・・どこに置くのだろう。壁にはデザイン画が氾濫する寝室をぐるりとヴィネットは見渡してみた。本棚は一杯であるし。ラックは全段が仕事等々の何やらでみっしりと埋まっている。
 いつ崩れてもおかしくない。自分にそれらが降り落ちる事を思い、少々ぞっとした。
「・・・それはおいおい考えるとして、いずれにしろ360度どの角度から見てもヴィネットさんの美しい姿が、そのまま、いえ。それ以上に美しく見えるようになっていなくては」
「あの、マスター・・・?」
 嬉しい事を言ってくれるはいいのですが。私はそのような・・・などとは当然言えるはずも無い。顔が火照るのを感じながら、ヴィネットはとりあえず手をぱたぱたさせる。
「何せ・・・」
 天に向けていた視線を真っ直ぐにヴィネットに向け、その姿を細い目に宿し。
 納得したように頷きながら優しくリカルドは笑いかけた。

「・・・。私の、素敵なパートナーですからね」

 何か言おうとして。しかし恥ずかしさやら何やらが心の中に洪水を起こし。
 その自分に放たれた素敵という言葉にどうしていいものか、ヴィネットは顔から首を真っ赤にして口を半開きにパクパクさせながら。
「・・・っ、マスター!」
 とりあえず。怒鳴ってみた。
 それも神姫とは到底思えぬ声量で。
「は、はい!」
 びくっと身体を引きながら、リカルドは情けなく返事をする。
「貴方は初期梱包のブリスターなんてまだ取ってあるんですかっ!」
「わ、これは失言を・・・」
 思わず両手で口を抑える主を、真紅の瞳で睨みつける。
「何ですってっ? いらない物は捨てろと、いつも言っているでしょう!?」
 あの、その。とか言いながらアタフタする主に尚も食って掛かる。
「それにガラスの棺と仰いましたが、どれほどの深さの彫刻を彫るおつもりですか! そのガラス屑は誰が処分するんですか!?」
「え? それはヴィネットさんがいつもデスククリーナーで・・・あ」
 やっぱりか。
 じりじりとベッドの上を後ずさるリカルドに対し、ことさらゆっくりとヴィネットは口を開く。
「マスタぁ・・・?」
 小さいながらも、他者を見下すようなあの視線がたまらない。という、そっちの嗜好の神姫ユーザーには人気があるストラーフタイプ特有の眼光。
「いや、それは」
 引き攣った笑顔を浮かべるしかないリカルド。
「そもそも私がいなくなったらの話です! この寝室をご覧なさい! 私が言わないと満足に掃除も出来ない方が何を言っているんですか!」
「す、すいません!」
「彫刻が埋まるくらいに埃まみれのガラスの棺なんて真っ平ごめんですよ! もう・・・」
 彼女は腰に両手をやり、彼から顔を逸らす。
 視線を地に向け、肩で一度溜息をした。
「・・・それならそれで、掃除が得意な奥様を迎える事が先決と。そう、お考え下さい。マスター」
「・・・善処致します」
 平伏するリカルドに目を向けず。
 ヴィネットは大きく大きく、わざと聞こえるように。もう一度長い溜息をついた。パチッと電気を手元で消す。

「・・・マスター?」
「はい?」
 その、僅かに朝の日差しの欠片が差し込む薄闇の中。
 自分は。
「・・・ありがとうございます」
 きっと。
 笑っていたのだ。
「・・・はい。おやすみなさい」
 彼もまた。



 店先に戻り、PCを起動させて休業日用のデータを呼び出す。
 ふと。気付き、彼女はキャッシャーの後ろにある出窓に飛び乗った。そろりとカーテンを開けて外を窺う。
 夜半から降り続いていた、雨が止んでいた。光が少しずつ夜を明けていく。

 彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて、彼が起きないように小さな声で朝を祝福する歌を歌い始めた。

 母から『受け継いだ』自慢の喉が、今日も震え美しい声を響かせる。リカルドの作品でもある角に僅かな朝の陽が照り返し、すみれ色の髪に遊ぶ。
 美しい声が紡ぐドイツ語。歌は流麗で静やかな流れに乗って店内に響いていく。ショーウィンドウに飾られたガラスや銀の装飾品が、歌に歓びのリフレインを被せる様に、差し込んだ光をきらきらと躍らせた。


 そう。

 十年後は・・・どうだろうか。
 二十年、三十年後・・・? とても一緒にいられるとは思えない。
 いつしか私の身体は壊れ、母のように死を迎え入れるときが来る。

 だけど。
 この目が貴方の、優しい姿を映さなくなったとしても。
 この耳に貴方の、柔らかな声が届かなくなったとしても。

 掃除好きの奥様が、相変わらず掃除をしない貴方に文句を言いながらも優しく埃をはたいてくれて。
 そして貴方の穏やかな視線が。見事なガラスの棺を通して私に届くのでしょう。

 私はきっと。その時も暖かな光に包まれている・・・。
 それは私の知らない未来。けど、私の『心』が信じる未来。

 笑いますか? そんな事を考えるとき。
 この胸がくすぐったくなるような『想い』を。

 ・・・私は、『幸せ』と呼ぶ事にしています。マスター。



 第二幕、下幕。






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