第零話「それは」「常」
「ぃさ~ん」
う、む…なんだこの甘酸っぱい感覚は…。
「にぃさ~ん!」
む、なんだこれはなんていうゲームだ。
「にぃさ~ん!起きてよぉ~!」
おいおい、最近のゲームでもこんな展開は見かけないぞ?王道か、王道という物か?しかしだなぁ、今はそれだけじゃ勝ち残れないぞ?最近は甘酸っぱ辛いのでないとだなぁ~。
「遅刻するよ~!」
仕方ない、ここはお決まりの台詞でも言っておこうか。
「うむ、あとゴフンッ!!」
言っておこう、まず始めに言っておこう。俺は確かに「後五分」と言うつもりだった。
そう、言うつもりだったんだ。だがなぁ、実際に出た単語は腹に衝撃をくらったせいで思わず出た「ゴフンッ!」というなんとも情けない単語だ。
って、さすがにこれでは起きて文句の一つも言わなければ男たるもの…というか主人公としてどうか。
よし言ってやろう。
「おい、一体何をするんだ!」
目を開け、ガバッと夏用布団を退かす。そう、今は夏。月で言うなら七月である。窓から降り注ぐ日の光が容赦なく俺に突き当たり、いやぁもう熱いよ。これだから夏ってやつは…。
って違うだろ。今大事なのは俺のレバーに朝っぱらから強烈なスパーキンを食らわしたやつに小言の一つでも言う事だろうが!
「おい、起こすのは良いがやり方が違うだろう?一般的にはだなぁ、「この~!」とか言って布団を剥いだり、知らんうちに布団の中に潜り込んでびっくりさせたり…」
ここまで言って俺は気がついた…何を寝ぼけているんだ俺は…見ると俺を覗き込むのは見知った少女…では断じてなく…
「ち、千空…」
凪千空、俺の…弟だった。って、まぁ待て千空、そんな変人を見る目で俺を見るな。いや確かにお前はだな、はっきり言って女にしか見えない。それこそどこのゲームだといわんばかりであって、お前のその全身からあふれ出る乙女のオーラというかなんというか。
「に、兄さん?」
「む、なんだ」
「えっと…こんな事言うのも何なんだけど…」
「なんだ」
「その…大丈夫?」
ガーン…分かる、分かるぞ俺には…その台詞の間には「頭」という単語が合体して「頭大丈夫?」となるんだろう?そうなんだろう!?
「あ、あぁ、寝ぼけていただけだ…」
「そ、そう…なら良いんだけど…」
こらまてこっちを見てくれ。兄さん悲しくなるじゃないか。…ってそうだ忘れていた…。
「おい千空」
「…え、何?」
「そういえば…よくも俺の鳩尾に強烈な一撃を叩き込んでくれたな?」
「あ、それは~…」
「おい、こっちを見ろ」
「僕じゃなくて…」
「オマエジャナイナラダレナンデスカ?」
「そこに…」
「む?」
千空がその細くてしなやかな指を指す。その方向を見ると。
「…あ」
「あ…じゃない」
そこには小さな人形が立っていた。15cmサイズのそれは俺のひざの上で仁王立ちしている。
「やっと気付いたな?」
「あぁ、やっと気付いたよ…」
そう、これはゲームとかじゃない。というか俺が主役なのかすら怪しい。なぜならこの話は、目の前にいるこの小さな人形、“武装神姫”の話なのだから。
ちなみにこの目の前にいる神姫は「弁慶」千空の神姫で、犬型らしい。
「弁慶、お前が俺に朝の一撃を」
「目、覚めた」
「あぁ…怒りがわくほどにな」
「でも兄さんが悪いんだからね~?」
と、千空が横槍でグサリ。ぐ、それを言われると確かに…。
「とにかく、もう朝ごはん出来てるんだからね?早く着替えて降りてきてよ?創さんはもう食べてるんだから」
「あ、あぁ」
そう言ってリビングに向かう千空。そして去り際に顔をドアからちょこっと出して
「急いでね!」
と笑顔で言う。お前なぁ、その笑顔反則だぞ?まったくお前が妹なら…。
「おい」
「!?っと」
「急ぐ!」
「はいはい、分かってますよ弁慶さんっと」
そこでやっと大地に立つ俺。それと共に弁慶も膝の上から床に降り立った。
「いいか、急げ」
と言うと弁慶も下に下りていった。
「あぁ…眠ぃなぁ」
さてと…仕方ないからさっさと準備するとしよう…。
そう、言うつもりだったんだ。だがなぁ、実際に出た単語は腹に衝撃をくらったせいで思わず出た「ゴフンッ!」というなんとも情けない単語だ。
って、さすがにこれでは起きて文句の一つも言わなければ男たるもの…というか主人公としてどうか。
よし言ってやろう。
「おい、一体何をするんだ!」
目を開け、ガバッと夏用布団を退かす。そう、今は夏。月で言うなら七月である。窓から降り注ぐ日の光が容赦なく俺に突き当たり、いやぁもう熱いよ。これだから夏ってやつは…。
って違うだろ。今大事なのは俺のレバーに朝っぱらから強烈なスパーキンを食らわしたやつに小言の一つでも言う事だろうが!
「おい、起こすのは良いがやり方が違うだろう?一般的にはだなぁ、「この~!」とか言って布団を剥いだり、知らんうちに布団の中に潜り込んでびっくりさせたり…」
ここまで言って俺は気がついた…何を寝ぼけているんだ俺は…見ると俺を覗き込むのは見知った少女…では断じてなく…
「ち、千空…」
凪千空、俺の…弟だった。って、まぁ待て千空、そんな変人を見る目で俺を見るな。いや確かにお前はだな、はっきり言って女にしか見えない。それこそどこのゲームだといわんばかりであって、お前のその全身からあふれ出る乙女のオーラというかなんというか。
「に、兄さん?」
「む、なんだ」
「えっと…こんな事言うのも何なんだけど…」
「なんだ」
「その…大丈夫?」
ガーン…分かる、分かるぞ俺には…その台詞の間には「頭」という単語が合体して「頭大丈夫?」となるんだろう?そうなんだろう!?
「あ、あぁ、寝ぼけていただけだ…」
「そ、そう…なら良いんだけど…」
こらまてこっちを見てくれ。兄さん悲しくなるじゃないか。…ってそうだ忘れていた…。
「おい千空」
「…え、何?」
「そういえば…よくも俺の鳩尾に強烈な一撃を叩き込んでくれたな?」
「あ、それは~…」
「おい、こっちを見ろ」
「僕じゃなくて…」
「オマエジャナイナラダレナンデスカ?」
「そこに…」
「む?」
千空がその細くてしなやかな指を指す。その方向を見ると。
「…あ」
「あ…じゃない」
そこには小さな人形が立っていた。15cmサイズのそれは俺のひざの上で仁王立ちしている。
「やっと気付いたな?」
「あぁ、やっと気付いたよ…」
そう、これはゲームとかじゃない。というか俺が主役なのかすら怪しい。なぜならこの話は、目の前にいるこの小さな人形、“武装神姫”の話なのだから。
ちなみにこの目の前にいる神姫は「弁慶」千空の神姫で、犬型らしい。
「弁慶、お前が俺に朝の一撃を」
「目、覚めた」
「あぁ…怒りがわくほどにな」
「でも兄さんが悪いんだからね~?」
と、千空が横槍でグサリ。ぐ、それを言われると確かに…。
「とにかく、もう朝ごはん出来てるんだからね?早く着替えて降りてきてよ?創さんはもう食べてるんだから」
「あ、あぁ」
そう言ってリビングに向かう千空。そして去り際に顔をドアからちょこっと出して
「急いでね!」
と笑顔で言う。お前なぁ、その笑顔反則だぞ?まったくお前が妹なら…。
「おい」
「!?っと」
「急ぐ!」
「はいはい、分かってますよ弁慶さんっと」
そこでやっと大地に立つ俺。それと共に弁慶も膝の上から床に降り立った。
「いいか、急げ」
と言うと弁慶も下に下りていった。
「あぁ…眠ぃなぁ」
さてと…仕方ないからさっさと準備するとしよう…。
それにしてもさっきから焼き魚の香ばしい匂いがするな。うむ、よきかなよきかな。
「おはよう、千晶君」
「おはよう御座います千晶さん」
リビングに入るといつもの挨拶。俺ももちろん返す。
「おはよう御座います創さん、ミーシャ」
創さんは俺の従兄弟に当たる。年はそこそこ離れているがそんなに離れてもいない。
そしてミーシャだが、彼女は人間じゃない。彼女は創さんの武装神姫だ。なのでこの家には武装神姫が二体いる事になる。これって結構凄いんじゃないか?だって神姫一体買うってのは最新型パソコンを一台丸々買うことと同じなんだぞ?
「あ、やっと降りてきたね?はい、どうぞ」
と千空がご飯を盛った茶碗を目の前に置いた。
「ん、ありがと」
「じゃ、いただきま~す」
「いただきます…と」
今日の朝飯はザ・日本の朝食といった感じ。といえば大体想像がつくだろう?
ぱくりと一口
「うむ、いつもの如く美味いな」
「やだなぁ兄さんってば」
「そういえば和食は久しぶりだったね」
創さんが言う。そうそう、まったくもって久しぶりだ。最近パンばかりだったからな。
「え、あ~そうか、兄さん好きだもんね~和食」
「むぐ、まぁな」
「何かあったんですか?」
「え、いやぁ特には。たまたまその…安かったから」
「「なるほど」」
我が家の家事担当は家計も考えておられるのだ。偉大な弟だなまったく。
『次のニュースです、先日起こった違法改造神姫による~』
TVから聞こえたニュースに反応する二人。まぁそりゃそうか…神姫のオーナーにとっては知っておかねばならないニュースだし。
とくに創さんはこの手の事件についての仕事をしているのでなおさらだ。
「減りませんね~神姫犯罪」
「うん、人は便利な物が現われると必ずといって良いほど悪用する人がいるから…」
「ひどい話だなぁ…」
「まぁ出来ることならすぐにでも捕まえたい所なんだけど」
「まずは警察が動かないことには…でしょ?」
「うん、その通り、下手には動けないのも事実」
「頼んだよ!ミーシャ!」
千空がミーシャにエールを送る。
「はい!一日でも早く多くの笑顔を取り戻すためにぃぃ!」
とガシッと拳を突き上げるミーシャ。
「おやおや、僕は置き去りかな?悲しいなぁ」
「え、あ、いや、そういうわけじゃ」
「ははは、わかっています。それに、確かに僕よりミーシャの方が頑張ってくれていますから」
「え、そんなぁマスターったら、恥ずかしいじゃないですかっ」
ぺちっと創さんの腕を叩くミーシャ。顔が赤くなっている。
「ははは、真実ですよ?ミーシャ」
「マスター…」
見つめ合う創さんとミーシャ…む、なんだこの甘酸っぱ辛い雰囲気は。
「オアツイネ~」
「きゃぁーみてるこっちがてれちゃう~」
からかう凪兄弟。
「こら、大人をからかわないで下さい?」
と笑いながら制す創さん。少し照れているのか?
「「は~い」」
と生返事で返す俺たちであった。
「おはよう、千晶君」
「おはよう御座います千晶さん」
リビングに入るといつもの挨拶。俺ももちろん返す。
「おはよう御座います創さん、ミーシャ」
創さんは俺の従兄弟に当たる。年はそこそこ離れているがそんなに離れてもいない。
そしてミーシャだが、彼女は人間じゃない。彼女は創さんの武装神姫だ。なのでこの家には武装神姫が二体いる事になる。これって結構凄いんじゃないか?だって神姫一体買うってのは最新型パソコンを一台丸々買うことと同じなんだぞ?
「あ、やっと降りてきたね?はい、どうぞ」
と千空がご飯を盛った茶碗を目の前に置いた。
「ん、ありがと」
「じゃ、いただきま~す」
「いただきます…と」
今日の朝飯はザ・日本の朝食といった感じ。といえば大体想像がつくだろう?
ぱくりと一口
「うむ、いつもの如く美味いな」
「やだなぁ兄さんってば」
「そういえば和食は久しぶりだったね」
創さんが言う。そうそう、まったくもって久しぶりだ。最近パンばかりだったからな。
「え、あ~そうか、兄さん好きだもんね~和食」
「むぐ、まぁな」
「何かあったんですか?」
「え、いやぁ特には。たまたまその…安かったから」
「「なるほど」」
我が家の家事担当は家計も考えておられるのだ。偉大な弟だなまったく。
『次のニュースです、先日起こった違法改造神姫による~』
TVから聞こえたニュースに反応する二人。まぁそりゃそうか…神姫のオーナーにとっては知っておかねばならないニュースだし。
とくに創さんはこの手の事件についての仕事をしているのでなおさらだ。
「減りませんね~神姫犯罪」
「うん、人は便利な物が現われると必ずといって良いほど悪用する人がいるから…」
「ひどい話だなぁ…」
「まぁ出来ることならすぐにでも捕まえたい所なんだけど」
「まずは警察が動かないことには…でしょ?」
「うん、その通り、下手には動けないのも事実」
「頼んだよ!ミーシャ!」
千空がミーシャにエールを送る。
「はい!一日でも早く多くの笑顔を取り戻すためにぃぃ!」
とガシッと拳を突き上げるミーシャ。
「おやおや、僕は置き去りかな?悲しいなぁ」
「え、あ、いや、そういうわけじゃ」
「ははは、わかっています。それに、確かに僕よりミーシャの方が頑張ってくれていますから」
「え、そんなぁマスターったら、恥ずかしいじゃないですかっ」
ぺちっと創さんの腕を叩くミーシャ。顔が赤くなっている。
「ははは、真実ですよ?ミーシャ」
「マスター…」
見つめ合う創さんとミーシャ…む、なんだこの甘酸っぱ辛い雰囲気は。
「オアツイネ~」
「きゃぁーみてるこっちがてれちゃう~」
からかう凪兄弟。
「こら、大人をからかわないで下さい?」
と笑いながら制す創さん。少し照れているのか?
「「は~い」」
と生返事で返す俺たちであった。
そんなこんなで朝食を済ませ、三人揃って玄関前。これから俺は専門学校にチャリで、千空もチャリで高校に、創さんは車だ。
「じゃ、行ってきます」
「行ってきます」
バタンと車のドアが閉まる。
「あ、そうだ」
千空がなにやら思い出したようで、ドアにノックする。
「ん?何かな?」
「今日の晩御飯はどうします?」
あぁ、なるほど。
「う~ん、まだ何時に帰れるかのめどは立ってないですね…」
「じゃあいつものように連絡で」
「ええ、分かりました、じゃあ、行ってきます。二人も気をつけて行ってきて下さい」
「うん」
「はい」
ブゥゥゥンと遠ざかって行く車を見送り、俺たちもそれぞれの学校へ向かう。
「じゃ、行ってくるね。兄さん」
「行ってくるぞ」
「おう、行ってこい」
「サボらないでよ?」
「サボらないよ」
「サボるな」
「だからサボらんて」
俺はどんだけ信用無いんだ?兄さんますます悲しいぞ。
「じゃ」
「ん」
千空の通う高校と俺の通う専門は反対方向だ。なのでここでお別れとなる。
小さくなる千空の背中を曲がり角で消えるのを確認して、俺も学校に向かうことにした。
「じゃ、行ってきます」
「行ってきます」
バタンと車のドアが閉まる。
「あ、そうだ」
千空がなにやら思い出したようで、ドアにノックする。
「ん?何かな?」
「今日の晩御飯はどうします?」
あぁ、なるほど。
「う~ん、まだ何時に帰れるかのめどは立ってないですね…」
「じゃあいつものように連絡で」
「ええ、分かりました、じゃあ、行ってきます。二人も気をつけて行ってきて下さい」
「うん」
「はい」
ブゥゥゥンと遠ざかって行く車を見送り、俺たちもそれぞれの学校へ向かう。
「じゃ、行ってくるね。兄さん」
「行ってくるぞ」
「おう、行ってこい」
「サボらないでよ?」
「サボらないよ」
「サボるな」
「だからサボらんて」
俺はどんだけ信用無いんだ?兄さんますます悲しいぞ。
「じゃ」
「ん」
千空の通う高校と俺の通う専門は反対方向だ。なのでここでお別れとなる。
小さくなる千空の背中を曲がり角で消えるのを確認して、俺も学校に向かうことにした。
「今日も良い朝ね~」
「はい、京都」
神姫オーナー御用達の某ホビーショップと同じ商店街にある喫茶店「LEN」
「おっはよ~!!」
「おはよう御座いますお二方」
「よ」
「おう!」
千空が通う超巨大学園「私立黒葉学園」
「あ、ちーちゃぁ~ん」
「おはよう御座います千空さん、弁慶」
いつもの朝、いつもの日常
「私はもうこの人達を信じたくない…です」
「人間なんてただの鍵。開けるためにしか必要ないわ」
「向かうは日本だ、晴明」
「はい。楽しみです!」
そして加わる日常、交わる関係
ここから始まる、すべてが始まる…。
そして続いてゆく。
「神姫…ねぇ~…」
「はい、京都」
神姫オーナー御用達の某ホビーショップと同じ商店街にある喫茶店「LEN」
「おっはよ~!!」
「おはよう御座いますお二方」
「よ」
「おう!」
千空が通う超巨大学園「私立黒葉学園」
「あ、ちーちゃぁ~ん」
「おはよう御座います千空さん、弁慶」
いつもの朝、いつもの日常
「私はもうこの人達を信じたくない…です」
「人間なんてただの鍵。開けるためにしか必要ないわ」
「向かうは日本だ、晴明」
「はい。楽しみです!」
そして加わる日常、交わる関係
ここから始まる、すべてが始まる…。
そして続いてゆく。
「神姫…ねぇ~…」
第零話「それは」「常」
完