戦うことを忘れた武装神姫 その7
・・・その6の続き・・・
神姫オーナーがよく来ることで名のしれた、T市のとある居酒屋。
情報交換の場でもあり、久遠もちょくちょく訪れている。
「・・・で。今日の相談なんだけど。」
カウンター席で、イオの手にしたぐい飲みに自らのコップから酒を分け注ぎながら、久遠が話を切りだした。
「実は神姫バトルする事になっちゃってね・・・」
「なんだ、そんな事か。やっちゃえばいいじゃないか。 あ、オヤジさん、唐揚げ一皿追加ね。」
と、バリバリ食べ物を注文してはモリモリ消費するDr.CTa。 彼女の神姫、沙羅とヴェルナも同様に、どんどん食べている。
「いやー、それがさぁ。M町のセンターのトップとやるんだよ。」
「ふーん。それで? ・・・おねーさーん、生中一杯追加おねがいしまーす。」
「それでって・・・。」
ため息ひとつ、久遠は手元の酒を飲み干すと、経緯をCTaに説明した。
情報交換の場でもあり、久遠もちょくちょく訪れている。
「・・・で。今日の相談なんだけど。」
カウンター席で、イオの手にしたぐい飲みに自らのコップから酒を分け注ぎながら、久遠が話を切りだした。
「実は神姫バトルする事になっちゃってね・・・」
「なんだ、そんな事か。やっちゃえばいいじゃないか。 あ、オヤジさん、唐揚げ一皿追加ね。」
と、バリバリ食べ物を注文してはモリモリ消費するDr.CTa。 彼女の神姫、沙羅とヴェルナも同様に、どんどん食べている。
「いやー、それがさぁ。M町のセンターのトップとやるんだよ。」
「ふーん。それで? ・・・おねーさーん、生中一杯追加おねがいしまーす。」
「それでって・・・。」
ため息ひとつ、久遠は手元の酒を飲み干すと、経緯をCTaに説明した。
・・・
それは、久遠がリゼを連れて、神姫関連の雑誌をM町のセンターへ買いに行った時の事だった。たまたまフィールドでは、草リーグの試合が開催中。。。
騎士子VS猫子、しかし猫子は戦い慣れていないのか、一方的な試合内容だった。半泣きの顔つきで防戦一方の猫子に、容赦ない攻撃を次々に加える騎士子。
やがて、研爪(ヤンチャオ)が跳ね飛ばされ、防壁(ファンビー)が粉砕され- 騎士子は、独特の形をした太刀-おそらく、オーナーが自作した物であろう-を振りかざし、追いつめられて戦意を喪失しきった猫子の右腕を-
斬り落とした。
盛り上がるギャラリー。フィールドのシールドが解除されると、まだ中学生くらいの猫子のオーナーの女の子は倒れて動かない猫子を拾い上げ、ごめんね、ごめんね・・・と、大粒の涙をこぼし、店の隅でしゃがみ込んでしまった。
一方の騎士子のオーナーと思しき人物は、勝って当たり前と言わんばかりの態度で、ギャラリーと歓談。
騎士子VS猫子、しかし猫子は戦い慣れていないのか、一方的な試合内容だった。半泣きの顔つきで防戦一方の猫子に、容赦ない攻撃を次々に加える騎士子。
やがて、研爪(ヤンチャオ)が跳ね飛ばされ、防壁(ファンビー)が粉砕され- 騎士子は、独特の形をした太刀-おそらく、オーナーが自作した物であろう-を振りかざし、追いつめられて戦意を喪失しきった猫子の右腕を-
斬り落とした。
盛り上がるギャラリー。フィールドのシールドが解除されると、まだ中学生くらいの猫子のオーナーの女の子は倒れて動かない猫子を拾い上げ、ごめんね、ごめんね・・・と、大粒の涙をこぼし、店の隅でしゃがみ込んでしまった。
一方の騎士子のオーナーと思しき人物は、勝って当たり前と言わんばかりの態度で、ギャラリーと歓談。
どうにも納得がいかない表情の久遠は、その場を離れ猫子のオーナーの元へ。
「・・・大丈夫。ウチのリゼが治せると思うよ。」
声をかけると一瞬警戒した猫子のオーナーだったが、久遠のボックスから出てきたリゼの姿に、泣くことを止めた。
「どもー。久遠にくきゅうレスキュー隊のリゼでーす。お怪我をした神姫はどの子かなぁ?」
妙に明るいノリで出てきたリゼは、いわゆるナースルック。手にはご丁寧に注射器とバインダー。
「・・・ということ。こう見えても結構な腕前を持っているから・・・。」
久遠はセンターのレンタル作業台を借り、まだ不信感を抱く女の子を後目にリゼと作業にかかる。
「どう?」
「うーん・・・やぁ、大したことは無さそうだよ。あたしは外傷を診ておくから、ヌシさんはクレイドル経由でデータ損傷のチェックをかけて。」
「ほいきた。」
久遠はCTaから貰った試作のクレイドル「さわやかしんさつしつ」を取り出すと、そこへ猫子を移動させ、診察台に寝かせた。
リゼは、白衣の下から次々に工具や補修パテ、タッチペン等々を取り出し、猫子の傷を瞬く間に修復。斬り落とされた腕も、久遠のストックパーツを用い見事に修復完了。 その間に久遠は、慣れた手つきでデータの検査。
それも数分で終わり・・・
「・・・大丈夫。ウチのリゼが治せると思うよ。」
声をかけると一瞬警戒した猫子のオーナーだったが、久遠のボックスから出てきたリゼの姿に、泣くことを止めた。
「どもー。久遠にくきゅうレスキュー隊のリゼでーす。お怪我をした神姫はどの子かなぁ?」
妙に明るいノリで出てきたリゼは、いわゆるナースルック。手にはご丁寧に注射器とバインダー。
「・・・ということ。こう見えても結構な腕前を持っているから・・・。」
久遠はセンターのレンタル作業台を借り、まだ不信感を抱く女の子を後目にリゼと作業にかかる。
「どう?」
「うーん・・・やぁ、大したことは無さそうだよ。あたしは外傷を診ておくから、ヌシさんはクレイドル経由でデータ損傷のチェックをかけて。」
「ほいきた。」
久遠はCTaから貰った試作のクレイドル「さわやかしんさつしつ」を取り出すと、そこへ猫子を移動させ、診察台に寝かせた。
リゼは、白衣の下から次々に工具や補修パテ、タッチペン等々を取り出し、猫子の傷を瞬く間に修復。斬り落とされた腕も、久遠のストックパーツを用い見事に修復完了。 その間に久遠は、慣れた手つきでデータの検査。
それも数分で終わり・・・
「はーい、お姉ちゃん。おまたせ〜。 破損部品も全部純正で補修したから、これで完璧、もとどおりだよー。 さぁ、再起動かけてあげて。」
女の子に、猫子をリゼが抱きかかえて手渡す。 マニュアル通りの手順で再起動をかける。
「・・・ふえ? あー、かえでちゃん・・・ にゃー!!!怖かったよ〜!!」
「ティナ・・・ごめんね、あたしがやってみたいって言ったばっかりに・・・」
「ううん、かえでちゃんの所為じゃないよ・・・わたしが弱かったから・・・」
わんわんと鳴く一人と一体の横で、冷静に状況判断の久遠。
「ふむ・・・きちんと再起動したねぇ。」
「そりゃそうさ。あたしが治したんだもの。どうやらデータも問題無いっぽいね。よかったよかった。」
と、リゼも満足そうな笑みを浮かべていた。・・・久遠が、クレイドルを片付け終わるころには、かえでと呼ばれた猫子・ティナのオーナーも、落ち着きを取り戻していた。
女の子に、猫子をリゼが抱きかかえて手渡す。 マニュアル通りの手順で再起動をかける。
「・・・ふえ? あー、かえでちゃん・・・ にゃー!!!怖かったよ〜!!」
「ティナ・・・ごめんね、あたしがやってみたいって言ったばっかりに・・・」
「ううん、かえでちゃんの所為じゃないよ・・・わたしが弱かったから・・・」
わんわんと鳴く一人と一体の横で、冷静に状況判断の久遠。
「ふむ・・・きちんと再起動したねぇ。」
「そりゃそうさ。あたしが治したんだもの。どうやらデータも問題無いっぽいね。よかったよかった。」
と、リゼも満足そうな笑みを浮かべていた。・・・久遠が、クレイドルを片付け終わるころには、かえでと呼ばれた猫子・ティナのオーナーも、落ち着きを取り戻していた。
「本当にありがとうございました。雑誌で読んで、対戦をしてみようとはじめてやってみたら、いきなりここで一番強い人とやることになってしまったんです。」
「私からも御礼を申し上げます。右腕どころか、身体の細かい傷の補修までしていただきまして・・・。」
深々と頭を下げるかえでとティナ。かえでは財布をごそごそ・・・と、その手を止める久遠。
「いや、そんなにしなくてもいいから・・・。 趣味の延長なんだから、タダでいいって。なぁ、リゼ。」
「そうそう。あたしだって、好きでやってることなんだし。ねー、ヌシさん。」
その二人の会話に、思わず笑みがこぼれるかえで。
「おぢさまとそのストラーフさん、仲がいいんですね。」
「お、おぢさまって・・・」
ちょっとガックリ来ている久遠の肩の上では、リゼが必死に笑いをこらえている。
「・・・しかし、最近のバトルもずいぶんと質が落ちたもんだ。」
ぼそっと久遠が呟くと、かえでが訊いてきた。
「そうなんですか? もっと激しい試合だったんですか?」
「ちがうちがう、その逆。最近の試合が殺伐としすぎているんだよ。 さっきの君たちの対戦だって・・・終了間際には、もうティナちゃん・・・だっけ?戦意喪失していたのに、トドメを刺してきたじゃないか。」
頷くかえでとティナ。久遠は続けた。
「俺が武装神姫をいじり始めたときなんて、それこそ礼に始まって礼に終わる、互いをいたわり尊敬する、のんびりとした感じだったんだけどね・・・。」
「私からも御礼を申し上げます。右腕どころか、身体の細かい傷の補修までしていただきまして・・・。」
深々と頭を下げるかえでとティナ。かえでは財布をごそごそ・・・と、その手を止める久遠。
「いや、そんなにしなくてもいいから・・・。 趣味の延長なんだから、タダでいいって。なぁ、リゼ。」
「そうそう。あたしだって、好きでやってることなんだし。ねー、ヌシさん。」
その二人の会話に、思わず笑みがこぼれるかえで。
「おぢさまとそのストラーフさん、仲がいいんですね。」
「お、おぢさまって・・・」
ちょっとガックリ来ている久遠の肩の上では、リゼが必死に笑いをこらえている。
「・・・しかし、最近のバトルもずいぶんと質が落ちたもんだ。」
ぼそっと久遠が呟くと、かえでが訊いてきた。
「そうなんですか? もっと激しい試合だったんですか?」
「ちがうちがう、その逆。最近の試合が殺伐としすぎているんだよ。 さっきの君たちの対戦だって・・・終了間際には、もうティナちゃん・・・だっけ?戦意喪失していたのに、トドメを刺してきたじゃないか。」
頷くかえでとティナ。久遠は続けた。
「俺が武装神姫をいじり始めたときなんて、それこそ礼に始まって礼に終わる、互いをいたわり尊敬する、のんびりとした感じだったんだけどね・・・。」
「そんなんじゃロクな武装神姫にならないっすよ。」
中途半端に太い声が、久遠達の後ろから響いてきた。振り返ると、そこには先の勝者-すなわちM町のトップ神姫使い-が立っていた。
中途半端に太い声が、久遠達の後ろから響いてきた。振り返ると、そこには先の勝者-すなわちM町のトップ神姫使い-が立っていた。
・・・>後編へ続くっ!!>・・・