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えむえむえす ~My marriage story~

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 空が、朱く染まっている。
 夕陽の赤じゃない。炎の赤だ。
 街が、燃えているんだ。

 にゃおおおおおおおん!

 その燃える街を切り裂くように、巨大なネコが咆吼する。
 でかいなんてもんじゃない。花屋敷の観覧車にじゃれつき、東京都庁で爪研ぎし、東京タワーにおしっこひっかけるような超巨大サイズだ。
「く……っ! 悪のKNK団めっ!」
 悪の秘密結社KNK団。それは、
 K……かわいい神姫に
 N……ネコミミを
 K……くっつけまくる
 団。
 ただそれだけのために世界征服を企む、悪の秘密組織だ。
「はーっはっはっは! この世界中の、全ての神姫はあたしのもんだーっ!」
 ネコの頭から響き渡る声。姿は見えないけど、声だけでそれが誰だかよく分かる。
「クイーン・ジルめ……っ!」
 KNK団のボス、神姫女王クイーンジル。神姫でありながら、全ての神姫にネコミミを付けること……そしてそのためなら世界を征服することさえ厭わない、悪の女王。
 彼女こそ、あたしの倒すべき敵だ。
 神姫にネコミミを付けることは否定しない。けど、全ての神姫に付けるなんてあんまりだ。
 イヌ耳だって、ウサミミだって、付ける自由はあるはずだから。
 そもそもヴァッフェバニーにネコミミを付けるなんて、邪道の極み。
「静香!」
 巨大ネコに向かう真っ直ぐな道を駆けるあたしの隣で、頼りになる声がした。
「遅いわよ、ココ」
 橋の欄干を快走するのは、全高十五センチの小さな機械の少女。けれど、彼女こそがあたしの一番大切なパートナーだ。
「早く命令をっ!」
「分かってる!」
 あたしの腕にはめられた、少し大きめの腕時計。文字盤を覆うフレームをくるりと半回転させれば、その内に秘められた機能が瞬時に露わになる。
 三本の多次元アンテナがすいと伸び、半透過型のガラスには戦況を示す立体画像が浮かび上がった。長針と短針が重なり合ってカチカチと動き、曜日窓の位置に現われた『準備完了』の位置で停止する。
「ハウマシン、ゴーッ!」
 曜日窓の表示が、『準備完了』から『出撃』へ。
「とうっ!」
 それと同時に、ココが橋の欄干から下の川へと飛び降りる。
 慌てはしない。
 既にそこには、万能戦闘機『ハウリンソル』が姿を現していたから。
 あたし自身も、橋のたもとに滞空する多次元戦闘機『ハウリンマーズ』に乗り込んだ。
 そのまま一気に飛翔、アフターバーナーを噴かすハウリンソルと並んで急上昇する。
「静香。『ハウリンルナ』、邂逅地点到着まであと十三秒です!」
 視界の隅には第三の味方、高機動爆撃機『ハウリンルナ』が加速を続けていた。
「一気にカタを付けるわよ! 創聖合体!」
 三機のハウリンマシンが一列に並び。
「ゴー!」
 三つの力が一つに重なり。
「ハウエリオン!」
 現われ出でるは鋼の巨神。
「来たか! ハウエリオンっ!」
 悪の女王クイーンジルを倒すべく、機械の天使は滅びの帝都に舞い降りるのだった。



「という、初夢を見た」
「……勘弁してください、静香」


魔女っ子神姫ドキドキハウリン

その12(前編)



「装備の強化?」
 むいたミカンを口に放り込みながら、静香は首を傾げた。
「はい」
 私も一房もらおうと思って手を伸ばすけど、分けられたミカンは目の前で静香にひょいと取り上げられる。
「静香」
 神姫の食事機能は、基本的にコミュニケーション用だ。試験的に有機物を分解してエネルギーに変える機能を付けたモデルもあるらしいが、一般的な神姫にはそこまでの機能はまだ付いていない。
 そんなわけで、いつもなら静香は私が何か食べるのを止めたりしないのだけれど。
「別に私、ミカン食べても平気なんですが……」
 そもそも、ミカンと相性が悪いのは、犬じゃなくて猫なんじゃ。
「はい、あーん」
 ……そっちですか。
「食べないの?」
 食べたいです。
「じゃ、あーん」
 そんな、嬉しそうにしないでくださいよ。
「……あーん」
 しぶしぶ、静香のつまみ上げたミカンの房に、ぱくりとかじりつく。
「一つの武器を使いこなす事の大事さは理解しているつもりです。けど、別のアプローチからの強化も考えてみたいんです」
 色々考えた末の結論だ。
 手持ちの武器で全てを切り抜ける戦い方もいいと思う。それは、この間の一件で納得済みだ。
 けれど、夏の事件で私の力となったのは魔法……広範囲攻撃プログラムの通称……だったし、作戦の中核となったのはねここのシューティングスターやジェニーさんのジェネシスだった。
 高機動高火力。静香は興味が無いようだけれど、その方向性での強化も考えてみてはいいのではないだろうか。
「ふぅん……」
 私の話を聞きながら、静香は小さな歯形のついたミカンの房をひょいと口に放り込んだ。
「そういえば、ココはあの手の大型装備を付けたこと、無かったわねぇ」
 二つめのミカンをむきながら、他人事のように呟く。
 ああ、このしゃべり方は、乗り気じゃない証拠だ。
「……まあ、やってみたらいいんじゃない?」
 誰が聞いても分かるほど投げ遣りにそう言って、静香は新しい房を口の中に放り込む。


 ストラーフのサブアームを基部にして、右腕にはレーザーライフル、左腕には吠莱壱式。バックパックには散弾粒子砲と、静香が年明け一番に買ってきたアーンヴァルの翼。
 機体各所に付けられたバインダーやスラスターの可動範囲を大きめに取ることで、高速な姿勢制御と一撃必殺の推進力の両立を図る。
 左右のバインダーには近接戦用の実体剣を二本ずつ組み込んで、近接戦に持ち込まれても大丈夫なよう工夫した。
 可変型万能武装ファンホアン。
 鳳凰の名を冠したそれが、私がその装備に与えた名前だった。
「……なるほどなぁ。だから、そんな重武装なわけかぁ」
 私の武装を見て、十貴はそんな感想を漏らす。
「新年早々悪いけど、相手してもらっていい?」
「そりゃ暇だし、構わないけど……」
 そう言いつつも、十貴の顔は何か言いたそうな表情を崩さないまま。おおかた、「それはボクの部屋に上がり込む前に言ってよね、静姉」とかそのあたりなんだろうけれど。
「ありがとうございます。ジル、十貴」
 その表情に気付かぬ振りで、私は頭を下げた。
 武装自体は大きいけれど、素体の運動力は殺さないように細心の注意を払ってある。礼はもちろん、普通の動きをするぶんには何の問題もなかった。
「でも、何もないのも面白みがないよなぁ」
 私達の様子を眺めていたジルが、ぽつりと呟く。
「面白み……ですか?」
 ジルの口からそんな言葉を聞いたのは、初めての事だった。このあいだ静香達と四人で二十四時間耐久ゲーム大会をしたときは、率先してゲームを選んでたくらいなのに。
「ちょっと、ジル」
「胸貸すのはいいけど、あたし達にもなんかメリットがないとなー」
 非難じみた十貴の声は聞こえないふりで、ジルはその言葉を重ねる。
「メリットねぇ……」
 静香もジルの珍しい態度に驚いているのか、思いつくものが無いらしい。そう呟いたまま、言葉を詰まらせる。
「そうだ、十貴。こないだ友達が貸してくれたってゲーム、あったよな。ほら、カバンの中のヤツ」
「ちょっとジル。何でその事を?」
 何だろう。また以前のDVDみたいなものなんだろうか。
「ほらあれ。なんとかリアル麻雀P18とかって」
 ああ。それ、静香がこの間楽しそうにやっていたような……。確か、麻雀に負けた女の子が、一枚ずつ服を脱いでいくゲームだったはず。
 ってことは、まさか。
「……ココが負けたら、あたしが一枚ずつ脱ぐって事?」
「静香っ!」
 ちょっとちょっと。それ、洒落になってないんですが。
「そうだな。その条件なら、引き受けても良いぜ?」
「いいわよ」
 ジルの出したとんでもない条件を、静香はあっさりと了承した。
「もちろん、ココが勝ったら十貴が脱ぐのよね?」
「ちょっと静姉?」
「当然!」
「ジルっ!?」
 あまりといえばあまりの展開に、十貴も悲鳴を上げる。
「よぅし、交渉成立だ。十貴、バーチャルバトルの準備しな」
 こうなったジルと静香は誰にも止められない。少なくとも、私と十貴は止めることが出来なかった。
 十貴のおじさまやあかねさんなら止められるんだろうけど、どちらも取材や仕事で半径十キロ以内にはいない。
 もっとも、あの二人なら面白がって止めはしないだろうけど。
「静香ぁ……」
「ココが負けなきゃいいのよ。そのための武装強化案なんでしょ?」
 そりゃ、そうなんですが……。
 いきなり、賭ける対象が厳しすぎませんか?



 静香の家からバーチャルファイト用のキット一式を持ってくる間に、ジルは戦闘準備を済ませていた。
「よっし! 本気で行くからな!」
 サブアームを振り上げ、力強く叫ぶ。
「……ジル?」
 そう言う割には、ジルの装備はシンプルなもの。
 無改造のサブアームに大型脚。手持ち武装はハンドガンとグレネードランチャー。フルストゥ系の曲刀が機体各所に取り付けてあるが、それだってごく普通のセッティングだ。
 要するに、デフォルト装備のストラーフそのもの。
「ジルって、公式武装主義……じゃなかったですよね?」
 普段のジルの戦闘装備は、クレーンアームにショベルバケット。脚にはキャタピラ、両腕はロケットパンチ内蔵の格闘腕と、公式武装主義とは限りなく遠いところにあったはず。
 しかも、空中戦を中心とした私の装備を知ってなお、追加のスラスターひとつ付けていない。
「んー? ああ、最近はそう言うんだっけ……? ハンデだよ、ハンデ」
「ハンデ、ですか」
 確かにジルは……普段の姿からは忘れそうになるけれど……れっきとしたファーストランカーだ。ようやくセカンドの上位に食い込めるようになった私では、本気の彼女と戦っても勝機は薄いだろう。
 でも、この装備差なら勝ち目はある。
「いいや。ついでにもう一つハンデをくれてやる」
「……はい?」
 接続の終わったバーチャルポッドに入りながら、ジルはぽつりと呟いた。
「神姫バトルが始まった頃のあたし達には、公式武装しかなかったんだぜ」



 転送された先は、一面の草原だった。
「草原フィールド、ですか……」
 市街地の次にメジャーなここは、見通しも広く、空中戦をするには有利なフィールドだ。
 今日の戦いはジルと私の練習戦。静香達は見守るだけで、戦闘の判断は私達自身ですることになる。
「ジルは……っと」
 戦闘開始時のジルとの距離は30000。
 ストラーフの大型脚で走ってくるより、こちらが上空に位置取る方が早……。
「よう」
「っ!」
 嘘っ!
 だって、ストラーフの速力は秒速2000が限度のはず。あと十秒は余裕が……っ!
 混乱する間に鈍い音がして、ジルのサブアームに右の翼が根本から持って行かれる。
「くぅっ!」
 ここは少しでも間合を取らなければ……その想いに体が答え、残された左のスラスターを全開に。人間ならば耐えられない急加速や無茶な方向転換も、神姫にとっては造作もない。
「甘いねぇ」
 対するジルは、地面スレスレの超低空を蹴り込み、走ると言うより『飛翔した』。
 大型脚の圧倒的な跳躍力は、秒速2000の壁などあっさりと突破する。
 けど、それでも私のスラスターの方が速い。サブアームの手刀を突き立てようとジルは左腕を引いたけど、この間合なら指先一つの差で逃げ切れるはず。
 当たらぬ左が、それでも放たれた。
「甘いって」
 それは私の胸元、紙一重の差で届かない。
「な……」
 はずだった。
 気が付いたとき。届かないはずの左サブアームは、私の胸元に手首まで食い込んでいる。
「そんな……」
 ジルは半ばまで伸ばした左腕を右腕で掴み、引き抜く動作で左腕根本のロックを解除したのだ。
 左肩の束縛を離れたサブアームは右手の延長、頑丈な槍となって、私の体を貫いた。
「まず、一枚」
 私の体は草原に散り。
 私は、一敗した。



「……ふぅ」
 二戦目は、一戦目の結果を踏まえてすぐに飛翔した。
「静香……」
 視界の隅に、静香側のノートPCから送られてくるマスターの映像を表示してみる。静香は朝と同じワンサイズ大きなセーター姿だったけど、カメラに映らない下半身からは、スカートが失われているはずだ。
 ぶかぶかセーターと下着は浪漫って、どういう趣味をしてるんだか。
「次は負けませんからね、ジル……」
 ジルとの距離も20000をキープ。ストラーフの射程外に滞空したまま、二門の主砲で仕留めることにする。
 相手も動く気配はない。
 牽制に一発ずつ打ち込んでみたけど、さすが歴戦の勇士。動じる気配すらなかった。
「ここは持久戦……かな」
 プロペラントの余裕は十分あるから、持久戦になっても大丈夫。怖いのは、無駄弾を打ちすぎて弾切れになることだ。
「赤外線センサ、起動」
 センサーのモードを切り替え、スタート地点から動く気配のないジルの様子を確かめる。こちらの燃料切れを待っているらしいが、ストラーフのサブユニットのエネルギー消費もかなりのもの。そのうえ発熱が大きいから、こちらから動きは丸見えだ。
 動いた瞬間の隙を狙って、砲撃を叩き込む事にする。
 20000の距離を置いたまま、互いに動きを停止。
 あちらも動かない。
 こちらも、動かない。
 戦闘時間は無制限。タイムオーバーは、無い。
「さて、どう動くか……きゃっ!?」
 その瞬間、私の滞空を司っていたエクステンドブースターが爆発した。
「えっ!?」
 バランスを崩し、きりもみをして地に堕ちる。
 同時に見た。
 足元に広がる草原に寝転ぶ姿を。
 全ての追加装備を外し、ハンドガン一丁を手にしただけのジルの姿を。
 え!? だって……ジルは、スタート地点から動いてないはず……。
「あたしが我慢比べ嫌いなの、知ってるだろ?」
 失われた機体の制御を必死で立て直そうとしたけど、ブースターの爆発で背中のスタビライザーもいくつか吹っ飛んだらしい。滅茶苦茶な軌道を描いて落ちた先は、ジルがいるはずのスタート地点。
「これ……っ!」
 そこにあったのは、地面に突き立った脚部パーツと、その上に器用に引っかけられたアームパーツ。
 補助バッテリーでモーターだけ回していたのか、熱センサーの表示は赤いまま。
「デコイ……」
 私がカカシに騙されている間に、ジルはこっそりと私の足元に来て……ブースターの噴射口に精密射撃を打ち込んだっていうの?
「ま、そゆこと」
 地面に叩き付けられた私の頭に銃口が突き付けられて。
「二枚目、っと」
 引き金を引く指には、一片の遠慮さえ無かった。



「静香ぁ……」
 ジルの強さは圧倒的だった。
 ゲリラ、トラップ、燃料切れ。空飛ぶ私を、ジルはあらゆる手段で叩き落とした。
 砲撃での乱打戦は弾切れになるまで見事に避けきられ、低空での高速戦を挑めばこれも返り討ち。ヤケ気味にサブアームでの地上戦重視に装備を組み替えてもみたけれど、もちろん勝てるはずがない。
「ま、良い勉強じゃない?」
 そんなわけで、既に私は四連敗。
 静香はジルご指名のキャミソールを脱ぎ、膝の上で丁寧に畳んでいる。
 残るはブラとショーツ、靴下だけ。
「……ジル。先に靴下じゃダメだったんですか?」
「靴下は最後まで残すもんだろ」
 そういうものなんだ……。
「そういうものよ」
 だから、人の考え読まないでくださいよ、静香。
「次はブラかなぁ?」
 いずれにせよ、もう後がない。
「ジル。次、お願いします」
 あられもない姿の静香を、これ以上脱がせるわけにはいかない。私はその決意と共に、ポッドに身を沈める。
「降参はする気無しか。さすがココ」
 そして、私はあっさりと二連敗した。



 ベッドの上には、外されたブラとショーツが丸まっていた。
「さーて。いよいよ次でラストかな」
 胸元に添えられた腕の下には、薄桃の乳首がその姿を露わにしている。
 重ね合わされた膝頭の奥では、秘やかな茂みが蛍光灯の光を浴びていた。
 静香に残された着衣は、厚手の靴下ただ一つ。
「ジル……もうやめようよ」
 視線をノートPCに逸らしたまま、困ったように呟くのは十貴だ。
 脱がされた静香本人はさして嫌そうでもないのに、むしろ喜ぶべき方が困り果てている。
「このおバカっ! 男はこうと決めたら最後までやるっ!」
 一番喜んでいるのは、ジルだったけど。
「ジルは女の子でしょ……」
「十貴は男だろっ!」
「都合の良いときだけ男扱いなんだから……」
 同情します、十貴。
 でも、それもここまで。
 もう本当に、後がない。
 どんな手段を使ってでも、勝つしかない。
「ジル。お願いします」
 ポッドの上に立つ私の姿に、ジルはほぅと感嘆の声を漏らす。
「……随分とスッキリしたな。ココ」
「はい」
 私の背中には、何の武装もなかった。
 ただ右手に、一本のライトセイバーを提げるだけ。
「どうやら、あの手の装備は私には早かったみたいです」
 ねここやジェニーのように使い込めば、あの大型武装も向いているのかもしれない。
 でも、今の私には不相応の装備だと、思う。
「上等。けど、こっちも静香を裸にするためだ。容赦はしねえぜ?」
 今日会った中で一番楽しそうな表情をして、ジルはポッドの中へと消える。
「はい!」
 そして、私も戦いの場へ。
 この戦いを、最後の一戦にしないために。



 バトルステージは廃墟。
 ジルとの距離は、最初と同じ30000だった。
「はぁぁっ!」
 アスファルトを蹴り、石ころを巻き上げて、ほんの数秒でジルと私は接敵する。
「くっ!」
 叩き込まれるサブアームを、私は紙一重の差ですり抜けた。
 サブアームは威力こそ高いけれど、そのぶん動きも大きい。巨大な増加装甲をまとっていた今までならその欠点は相殺されたけど、素体サイズになればその欠点はこちらの付け入る隙となる。
「それでっ!」
 ジルが足の踏み込みを切り替えた。
「勝ったと!」
 来る。
「……思わないでください」
 予想通り。
 短気なジルは、突きに使ったサブアームを引き戻すことなく横殴りの打撃に切り替えてくる。
 それも、今の私なら身を屈めるだけで回避できた。
「良い動きだ! 何か吹っ切れたね?」
 もちろん当たればお終いだ。ダメージを吸収してくれる追加装甲は無いのだから。
 けれどそれが、私に適度な緊張感と集中力を与えてくれる。
「はいっ!」
 振り上げられた足の一撃も、バックステップで軽く回避。三連の膝関節で十分なしなりを与えられた蹴り上げは、爪先の刃を差し引いても一撃必殺の威力を持っている。
「やあっ!」
 ジルの足が上がりきる直前、その関節部に最大出力のライトセイバーを突き込んだ。
 狙いは一番下の最も細い関節部。
「はああっ!」
 細身の槍ほどの太さを持った光刃が関節にぶち当たった瞬間、さらに踏み込み、セイバーの柄頭に肘打ちを叩き込んでやる。
 零距離での衝撃を得て即席のパイルバンカーと化したセイバーの貫通力に、さしもの重装脚も耐えきれない。
 貫き、徹す。
「……ちっ」
 巨大な右足の影にいるおかげでジルの手持ち火器はこちらに届かず、サブアームも狙いが定まらない。
 関節を貫いたセイバーを引き抜くような暇はないから、瞬時にレーザーを切り、落ちていく柄を明後日の方向に蹴り込んだ。
 べき。
 ジルがようやく右足を地に着けば。アスファルトを割る鈍い音と共に、自重で関節が砕け散る。
 これが草原なら、衝撃を大地が吸収してくれただろう。でも強固なアスファルトは、接地の衝撃をそのまま関節に跳ね返してくる。
「……なんだ。あんなもんに頼らなくても、十分強いじゃないか」
 超低空のジャンプで飛び離れ、私は地面を転がるセイバーの柄を拾いつつ間合を取り直した。
「おかげさまで」
 再び、セイバーの光刃を展開。
「こりゃ、バランス取れないねぇ」
 ジルは砕けた右足だけでなく、左足もパージする。
 本来の足で戦場に降り立ち、両のサブアームをゆっくりと構えた。
「行きます」
 無理をさせたせいか、セイバーの本体は半ば溶けかけていた。出力も下がり、光の刃が安定しない。
 多分、次で最後だ。
「来な」
 ジルが走る。
 私も走る。
 ストラーフの巨大なサブアームが振り抜かれ、その下を私はくぐり抜ける。
 次に来るのはもう一本の腕と……
「っ!」
 その腕に握られた、巨大なハンマー状の塊。
 パージされたストラーフの左足だ。
「そのくらいっ!」
 今まで散々受けてきたんだ。今度も何らかの奇襲が来ることは、とっくに予測済み。
 空気を震わせ迫り来る巨塊を踏み台にすれば、後に残るのはジル本体だけ。
「はぁぁぁぁっ!」
 この間合で火器は使えない。使えたとしても、致命傷には至らない。
 横殴りに叩き付けられたグレネードランチャーを左腕で殴りつけた。左手の甲が砕けた感触が伝わってきたけど、気にすることはない。
「これで私のっ!」
 光の刃がジルの胸元に吸い込まれて。
「……残念。引き分けだ」
 ごき。
 十分な手応えと同時に響き渡るのは鈍い音。
 それが、私の胴がサブアームのベアハッグで真っ二つにされた音だと気付いたのは……意識が闇に落ちる寸前の事だった。





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