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第十話 知性


  理音たちが乗せられたのは護送車ではなかった。
  完全に焦げて崩れ落ちた屋敷の裏庭に、軍用の最新式ティルトローター機が二機、鎮座している様を見たときは、職業上その方面のことをややかじったことのある理音は度肝を抜かれた。
  よくよく見れば自分達を連行する兵士達の装備も、造反グループという肩書きにしては先進国の一線級のものばかりで、それは何か、予想外に強大な後ろ盾が存在するのではないかということを予感させた。
  理音と鶴畑兄弟の四人は、機体中腹の、パネルで増設された雑居房のようなところに入れられた。雑居房といっても、ちゃんとゆったり座れる長椅子が対面して設置されてあり、真ん中にはテーブルがあった。トイレは別室として併設されている。
  目的地に着くには時間がかかるが、ぞんざいに扱うつもりは無いらしかった。
  理音は興紀と並んで腰かけ、その向かい側に彼の弟と妹、大紀と和美がさも不満そうな表情で座った。見張りは同室しなかった。
  ほどなくターボシャフトエンジンのうなりが大きくなり、一瞬ふわりと浮くような感覚の後、ティルトローターは発進した。車でなくわざわざこんな航空機を繰り出してくるということは、これでしか行けないところなのだろうと、理音はおぼろげながら思った。窓は無いから、外の様子をうかがうことはできなかった。

「どこに行くのかしらねえ」

  クエンティンの安否を頭の隅っこで考えながら、理音は重苦しい沈黙を我慢できずに言った。能天気な風を装って。実際少しそうだった。これからどこへ連れて行かれるのかは、行けば分かることだった。

「ずっとパジャマだから凍えちゃうわ」

  興紀は腕組み目をつぶって黙っていた。無駄な会話でエネルギーを消費したくないとでも言うようなだんまりだった。
  仕方なく、理音は興紀の興味の引きそうなことを言った。

「あのノウマンってやつ、神姫を知性体だと思っているみたいね」

  興紀がちらりと自分を見た。つかんだ、と理音は思った。

「でなければ、神姫に人権を与えようなんて言い出さないものね。・・・・・・ねえ」

  興紀の顔を覗き込む。

「ずいぶん身勝手なことだと思わない?」
「奴と同じ考えを持つ貴方が、身勝手だというのは面白いな」

  興紀が答えた。

「私だって、神姫にいつかは人権が与えられるべきだとは思っているわ。でも、いまは時期尚早でしょう。法整備や社会観念その他もろもろの必要事項が出来上がっていない。いま行動を起こして、たとえ実現できたとして、それに対するデメリットはあまりにも大きすぎる」

  最悪、莫大な数の人間が死ぬ、というのは考えすぎではないだろう、と理音は考えている。武装神姫はいまや全世界に存在している。それこそ人類に比肩しようかという数にまで膨れ上がろうとしていた。

「貴方はただの人権バカではなかったのだな」

  見直した、とでも言いたそうに、興紀は理音を見た。

「奴は、ノウマンはどうやら人権バカのようだ。人権バカが何の間違いか大きな力を持ってしまったからこんなことになった。後先のことも考えずに行動を起こすから、こんな乱暴なことになるんだ」

  部屋に盗聴器が仕掛けられているかもしれなかったが、それをまったく気にしない言い方だった。

「だが――」

  数拍、間を置いて、興紀は言った。

「奴の行動は、おそらく奴一人の独断的な行動ではない」
「どういうこと?」
「神姫自身も人権を認められたいと、少なからず思っているということだ」

  理音は心底驚いた。

「神姫が望んでこの造反に参加しているってこと?」
「そうじゃない。神姫のそういう考えを汲んで、奴は行動を起こした可能性があるということだ」
「まるで妖怪人間の主張みたい」

  理音は腰を据えなおして、聞く態勢をとった。

「自分は人間と同じだから、人権が欲しいということかしら」
「そうだ。――これは、私以外ではEDEN本社しか知らない問題だ。貴方も、お前達も」

  と、弟達の方を見る。

「絶対に他言無用だ。うっかり口を滑らしたなら、それこそ人権が保障できなくなる。どうせ造反組は周知の事実だ。ここで話したところで問題はあるまい。・・・・・・いいな?」

  いきなり重大なことを吹っかけられて、二人はおろおろしつつも、必死で首を縦に振った。
  そうして興紀は語りだした。

◆      ◆      ◆

  そもそも神姫は、ただのお手伝いロボットとして開発されたのではない。闘犬や闘鶏のように、戦わせるためだけに作られたのでもない。
  ――神姫は、現在可能な技術を惜しみなくつぎ込んで十五センチサイズの人間を作る、というコンセプトのもとに作られたんだ。

「つまり、自分は人間と同じだと神姫自身が考える、という問題は、想定済みだったってこと?」

  そう、開発の初期段階からそれは最重要懸案事項に組み込まれ、何よりも慎重に扱われてきた。神姫はあくまで神姫であり、人間ではない。勘違いしてはいけないというわけだ。
  私はそのコンセプトそのものがこの問題の原因だと考えている。人間として作られたのだから人間だと考え出すのは自然で、どう頑張っても完全には防ぎ切れん、そう思わないか。
  現在、自分は人間と同じか、それと似た存在なのではないかと考えている神姫は非常に多い。三十一年に神姫タイプが発売されてから、この問題に対する問い合わせの件数は年々増加している。
  だがそれでも、不具合などの報告に比べたら非常に微々たるものだ。なにせ、オーナーのほとんどは、それが神姫に当たり前に備わった機能だと思っているからな。そもそも問題だと認識できないのだ。これといった不都合も起こらない。

「非常に多いと言ったけれど、厳密には、どれくらいなの? その、自分が人間と同じだと考えている神姫は」

  これは私の推測だが、――ほぼ全ての神姫にその因子があると考えている。実際に発症している神姫に関しては、抜き取り検査で調べたところ、五割以上が該当した。検査内容は笑えるものだったが。なにせ人間のための精神鑑定をほとんど流用したものだったからな。
  ともかく、二体に一体が自分は人間だと思い込んでいるというわけだ。私のルシフェルもそうかもしれないし、貴方のクエンティンも発症しているのかもしれない。
  発症というのはナンセンスだ。そんな言葉は人間の感覚だし、そもそも人間だって「自分はどうして人間なのか」などと考える生き物だしな。十五センチサイズの神姫だって、そこは変わらないのだ。まあ、それと私たちオーナーが神姫をどう扱うのかは別問題だが。物として扱おうが、パートナーとして付き合おうが、それはオーナーの方の問題だ。
  ――話を戻そう。
  多くの神姫はこれについて思考しない。なぜそう思うのかを自分なりに分析し、折り合いをつけているのがほとんどだろう。人工知能基本三原則も大いに役立っている。これがあるから神姫はいわゆる、論理矛盾によるオーバーフローを起こさない。

  が、ごくまれに、三原則すらも突破し思考し続ける個体が現れることがある。

  人に危害を加えたり、脱走したり。神姫としてあるはずの無い行動をとる神姫がそれだ。多くは野良神姫になり、駆除される。そうでなくても悩み続け、記憶領域がいっぱいになって陽電子頭脳が壊死する。記憶の圧縮や、忘れる処理が追いつかなくなるんだ。

◆      ◆      ◆

「脅しで武器を突きつけるようなおふざけならまだ大丈夫だ。だがオーナーの頬をつねったり、はたいたりしたら問題になる。あまつさえ性行為にまで及んだ事例もあるらしい。オーナーからではなく、神姫から求めたそうだ。本来ならそういうことは無いはずなんだが。それに、EDEN本社の責任者の話だと、本を読むくせがついたら異常だそうだ。実際に危害を加えるほうが異常ではないかと私は思うんだが。・・・・・・どうした?」

  興紀が自分の様子をうかがっているのを、理音は気づかなかった。
  理音はクエンティンの今までの行動を思い出していた。
  あの子に叩き起こされたことは毎日のことだった。それが当たり前のことだと思っていた。
  あの子は本を読んでいた。本を読む趣味がついていた。自分からお金をもらって、買いに行ったりもしていた。店員は異常だとは思わなかったろう。神姫に買い物をさせるのは当たり前のことだった。そもそもそういったお手伝いのために神姫は作られたのだ。
  彼女が自分で選び、買ってきた本は、いまや理音自身の蔵書よりも多かった。

「クエンティンは本を読むわ。それも毎日一冊は読むの。漫画や小説から、誰も読まないような学術書まで」

  そう言われた興紀の目が見開いた。

「責任者が言っていた、本を読むくせをもつ個体というのは、クエンティンのことだったのか」
「圧縮記憶が容量を圧迫していたからって、容量増設を進められたわ」
「その増設の費用を、ほぼ全て本社が立て替えてくれただろう」
「ええ、そうよ。なぜ知ってるの?」
「本社の重役会議で取り上げられたからさ。本を読む個体は、いまのところ貴方のクエンティンしか見つかっていない。・・・・・・なんてことだ。そんな神姫に、メタトロンプロジェクトのプロトタイプが融合したのか」

  興紀はしばしあごに手を当てて思案していた。

「お嬢」

  真顔で理音を見る。

「何?」
「今のクエンティンは、非常に危うい存在だ。あれ自体にとっても、神姫にとっても。そして、人類にとっても、だ」


つづく





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