そのじゅうろく「僕らの上に雪が降る」
雪が降る
雪が舞う
雪が散る
真っ白い空
真っ白い大地
真っ白い世界
世界に僕はただ立っている
世界にいるのは僕と少女
世界に他に人はなく
白く降る
白く舞う
白く散る
雪が舞う
雪が散る
真っ白い空
真っ白い大地
真っ白い世界
世界に僕はただ立っている
世界にいるのは僕と少女
世界に他に人はなく
白く降る
白く舞う
白く散る
その少女はとても小さい
広くもない世界に埋もれそうに
それでも消えてなくならない
僕と少女は一緒にいるから
僕は少女を見る
少女は笑う
それは
ただの反応の
そのための反応でしかなかったとしても
僕はその笑みを見て笑う
広くもない世界に埋もれそうに
それでも消えてなくならない
僕と少女は一緒にいるから
僕は少女を見る
少女は笑う
それは
ただの反応の
そのための反応でしかなかったとしても
僕はその笑みを見て笑う
雪降る空
雪舞う大地
雪散る世界
僕らは小さく
あまりにも未熟で
今までの短い人生に誇れるものは少なく
ただそれだけの存在でしかないけど
空も大地も世界も白く
その尽くが一点も滲まない
ただ真っ白なままで
見据える先に色はなく
それでも
どうか
どうか僕らを
僕らを導いた人よ
これからの先は
僕ら二人で歩かせてください
目に映るこの先の世界を
まだ色付く前の世界を
僕らはあなたの手を離し
進むことを
どうか安らかに
祝福を
雪舞う大地
雪散る世界
僕らは小さく
あまりにも未熟で
今までの短い人生に誇れるものは少なく
ただそれだけの存在でしかないけど
空も大地も世界も白く
その尽くが一点も滲まない
ただ真っ白なままで
見据える先に色はなく
それでも
どうか
どうか僕らを
僕らを導いた人よ
これからの先は
僕ら二人で歩かせてください
目に映るこの先の世界を
まだ色付く前の世界を
僕らはあなたの手を離し
進むことを
どうか安らかに
祝福を
この先が
どのような道程なのか
僕らに知る術はないけれど
もしかしたら
それは道ですらなく
ただの白いだけの荒野かもしれなくとも
僕らは
お互いの手を取り
ゆっくりと
ゆっくりと
足跡を残そう
どのような道程なのか
僕らに知る術はないけれど
もしかしたら
それは道ですらなく
ただの白いだけの荒野かもしれなくとも
僕らは
お互いの手を取り
ゆっくりと
ゆっくりと
足跡を残そう
雪で埋まったこの大地は
何処までが本当に地続きなのかさえ判らないけれど
曲がりながら
迷いながら
間違えながら
それでも僕らは歩いていきます
何処までが本当に地続きなのかさえ判らないけれど
曲がりながら
迷いながら
間違えながら
それでも僕らは歩いていきます
だから
だから
ただ
さよならと
だから
ただ
さよならと
その日は朝から雪が降っていた。
記録的な大雪で学校は休校。
突然振ってわいた休日になんとなく時間をもてあまし、僕とティキは防寒対策を取って、白く染まった町を歩く事にした。
雪のせいかそれでも外は明るく、なのに車の音さえしないのがチョットした異空間を演出する。
初めて見る雪に、ティキははしゃぐ事も忘れ僕の肩の上で舞い散る雪に見入っていた。
立ち止まっては進み、進んでは立ち止まる。
そして完全に、足が止まった。
「マスタ」
小さく、小さく呟かれたティキの声。
「ティキにとって、『オーナー』だった人は二人いるのですよぉ」
「うん?」
「ティキはきっと、旦那さんの事を忘れる事は出来ないと思うのですよぉ」
「うん、そうだね」
「でも……」
ティキはそこで言葉を止める。
あたりを静寂が包む。
僕はティキの意図がわからないまでも、ティキが言葉を続けるのを待った。
「でも、ティキにとって、マスタはマスタだけですぅ」
そしてティキは僕の顔を見た。真摯な、その瞳で。
「だから、マスタはティキを置いてどっかに行かないで欲しいのですよぉ。ティキは、マスタがいなくなったら、きっと、旦那さんの時の様には出来ないですぅ」
その言葉に、僕は笑って「バカだなあ」という事は出来ない。
ティキも僕も、簡単に冗談めかして済ますことは出来ない。
だから僕もそのティキの思いに、やっぱり真剣な思いで答えるしかない。
「……僕はティキを置いて行ったりしない。僕達は出会ってまだそんなに長くはないけど…… 最初に約束したろ? 僕はこれから君と一緒の時間を過ごすよ。って」
「……………………」
何もいわないティキの頭をそっと撫で、僕は言葉を続ける。
「だから、もう一回約束するよ。僕はこれからの時間をティキと一緒に歩む」
それはただの口約束にしか過ぎないのかも知れないけれど。
それでも、多分に儀式めいていて。
そして、ティキは笑った。
それを見て僕も笑う。
そして僕らはどちらからともなく、真っ白い空を仰いだ。
静寂が優しく僕らを包み込む。
しばらくそうして二人で黙って空から舞い散る雪を見た後、僕らは再び歩き出した。
そのままセンターに向かう。
少し冷えた体を、温めよう。
記録的な大雪で学校は休校。
突然振ってわいた休日になんとなく時間をもてあまし、僕とティキは防寒対策を取って、白く染まった町を歩く事にした。
雪のせいかそれでも外は明るく、なのに車の音さえしないのがチョットした異空間を演出する。
初めて見る雪に、ティキははしゃぐ事も忘れ僕の肩の上で舞い散る雪に見入っていた。
立ち止まっては進み、進んでは立ち止まる。
そして完全に、足が止まった。
「マスタ」
小さく、小さく呟かれたティキの声。
「ティキにとって、『オーナー』だった人は二人いるのですよぉ」
「うん?」
「ティキはきっと、旦那さんの事を忘れる事は出来ないと思うのですよぉ」
「うん、そうだね」
「でも……」
ティキはそこで言葉を止める。
あたりを静寂が包む。
僕はティキの意図がわからないまでも、ティキが言葉を続けるのを待った。
「でも、ティキにとって、マスタはマスタだけですぅ」
そしてティキは僕の顔を見た。真摯な、その瞳で。
「だから、マスタはティキを置いてどっかに行かないで欲しいのですよぉ。ティキは、マスタがいなくなったら、きっと、旦那さんの時の様には出来ないですぅ」
その言葉に、僕は笑って「バカだなあ」という事は出来ない。
ティキも僕も、簡単に冗談めかして済ますことは出来ない。
だから僕もそのティキの思いに、やっぱり真剣な思いで答えるしかない。
「……僕はティキを置いて行ったりしない。僕達は出会ってまだそんなに長くはないけど…… 最初に約束したろ? 僕はこれから君と一緒の時間を過ごすよ。って」
「……………………」
何もいわないティキの頭をそっと撫で、僕は言葉を続ける。
「だから、もう一回約束するよ。僕はこれからの時間をティキと一緒に歩む」
それはただの口約束にしか過ぎないのかも知れないけれど。
それでも、多分に儀式めいていて。
そして、ティキは笑った。
それを見て僕も笑う。
そして僕らはどちらからともなく、真っ白い空を仰いだ。
静寂が優しく僕らを包み込む。
しばらくそうして二人で黙って空から舞い散る雪を見た後、僕らは再び歩き出した。
そのままセンターに向かう。
少し冷えた体を、温めよう。
そしてその日、ティキはセカンド昇級資格を手に入れた。