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  「なんでこうなったんだっけ?」
  「ご主人様のせいでは?」
  「そうだったか?」
  でもな~俺が何やったらうちの台所がこんなことになるんだ?
  “ドタバタドタバタドタバタ”と大騒動
  「ちょっとユーナ、お醤油とってよ」
  「ああ? 今、忙しいんだよ! 自分でとってくれよ」
  “ドタバタドタバタドタバタ”まだまだ止まない大騒動
  「手が離せないから言ってるんじゃんかぁ~!!」
  「だからってアタシにいうなよ…って! アネキ!! 火! 火ぃ!!」
  「え? うわぁ!! うわわわわぁぁ~!!」
  “ドタバタドタバタドタバタ”
  「…それにしても…何時になったら俺たちは飯にありつけるんだろうか…」
  “ドタバタドタバタドタバタ”
  「…なに第三者風な感想述べてるんですか。出来たとしてもそれで空腹を満たせるかどうか…」
  “ドタバタドタバタドタバタ”
  「アネキ! 足元気をつけ…」
  「う、うわわわわわぁぁぁぁ!」
  ミコの悲鳴と共に後ろでガラガラと雪崩くずれる音がする
  「あっちゃ~」
  とユーナの一言
  「…ゴメン、俺もそう思った;」
  確かにこのままにしてたらやばそうなんだが…でも全部俺のせいじゃないだろ?
  だって普通、たかが料理一つでここまで騒がしくなるなんて思ってもみないじゃないか
  二人とも仮にも女の子だろうに…
  「「仮にもとか言うな!!」」
  ユニゾンして心を読むんじゃありません!!
  って、あれ? なんか思い出したような気がする…
  とりあえず事の発端は今日の昼ごろだったっけな……


  今日も今日とて暇を持て余す俺たちは、日課にしている午前中のトレーニングを終えて居間にいた
  ゴレのやつが忠告らしきことを残していった件について気にはなっちゃいるが俺としてはこっちから動く気はない
  どうせむこうから仕掛けて来るんだろうし、ぶっちゃけ『あいつら』を探すのはめんどくさいからな~ ま、対策としてはノアたちのトレーニングには俺がナノロットを使って直接指導するようになった
  俺の勘を取り戻すのと重なって一石二鳥だしな
  「は~もうクタクタだよ~;」
  ソファーにボテっと突っ伏しながら言うミコ
  「ミコ、年頃の娘がはしたないぞ?」
  「く、クタクタなんてモンじゃねぇって…はぁ~~;」
  これまたバテバテのユーナはカーペットの上で大の字になっている
  だからお前も股ぐらい閉じろってば…
  「なんだよあれぐらいの模擬戦で…お前らだらしねえぞ?」
  「どこがあれくらいなんだよ~いつもの二倍ぐらいしんどかったって;」
  「んな事言ったって、ノアは最後までついてきてたぞ?」
  「ノアねぇと同じ次元で考えないでよぉ~;」
  ふ~む、たしかにノアの強さは飛び抜けてはいるし、経験の差もあるんだろうが…正直、こいつらとここまで違うもんなんだとは思わなかったなぁ
  俺としても全力でノアと模擬戦してたわけじゃないからよくわからんし、あいつはリーグ戦でもボロボロになるような負け方はしないもんな…なんにしてもノアの力はマスターの俺でさえ未知数ってところか
  「確かにノアと同じ次元で考えるのは酷かもな…」
  んで、噂のノアールさんはというと案の定ピンピンしてて、今はキッチンで昼飯の仕度をしている。ホント、働き者だねぇ
  「「むっ」」
  「ん?」
  なんだかお二人のお顔が険しくおなりになっているではありませんか?
  「…ご主人様! そこは否定するところでしょ~」
  ミコがズズイと顔を近づけながら俺の前へとにじり寄ってくる
  「な、なにいってんだよ。お前が言い出したんだろうが」
  今度は「む~」って感じに顔をしかめた
  「だからって普通は『そんなことないよ、ミコにだってノアより優れているところがきっとあるさ…』っていうところじゃない!!」
  …ミコさん? ひょっとしてもしかしてさっきのは俺のマネか?
  俺ってそんなのか?
  「優れているところって…例えば?」
  「え? え~と……」
  「リーグはノアの方が上位、勿論戦闘もノアの方が上ってこったな。学力は…ノアの方が博識だし。容姿的にはそもそもジャンルが違いすぎて比べられんし…でもまぁ…」
  話しているうちにノアはテーブルの上に昼飯を運んできている
  やっぱノアが凄いのはここだよな~
  「家事方面についてはノアの圧勝だろうな」
  「? 何の話ですか?」
  これについては年季の差でもあるんだが、ノアに比べてミコとユーナは家事ってもんに全く興味が無い。これは自信を持って言い切れるぞ
  「むぅ~」
  「でもまぁミコもユーナも、仮にも女の子なんだし、ノアばかりに頼らずに少しは…」
  「「仮にもとか言うな!!」」
  おわ! ビックリした~
  「な、なにそんなにムキになってんだよ」
  「私たちだって家事ぐらいできるもん!!」
  「そうだぜアニキ!! あんまりアタシ達を甘く見てくれるんじゃねぇ!」
  「さっきは同じ次元で考えるなって言ってただろ…」
  いったいどうして欲しいんだコイツらは…
  「それとコレとは話が違うよ!!」
  「じゃあ、ノアより美味いもの作れるのか?」
  「「へ?」」


  「でもその後『もちろんだよ!!』ってやけに自信満々に言ってなかったけ?」
  だからこうして夕飯は二人に任せてノアと二人でリビングでテレビを見ているんだが…めちゃめちゃ不安なんですけど
  「どう考えても意地になってしまっているのでは?」
  だから見かねて手伝いに行ったノアも追い帰されていつもの夕飯の時間になってもまだ俺たちは空腹のまま放置プレイなわけですか?
  つーかあいつら昼飯終わったあとから仕度してなかったっけ?
  …どこぞのこだわりシェフじゃあるまいし、何時間かけてんだよ…
  「しかも、なんか後ろから聞こえる音だけ聞いてたら食える物が出てくるかどうかも…」
  “バァァァン!!”…ビビッた!!
  「にゃぁぁぁぁあ!!?」
  「うわわわわぁぁ!!?」
  …なんか爆発したみたいだ
  「………………」
  「…………はぁ」
  「な、なにやってるのよユーナ!! 電子レンジ爆発させて!!」
  「だって…ゆで卵作ろうとしたら…」
  「卵は電子レンジに入れちゃダメなんだってば!ジョーシキでしょ!?」
  「う…あ、アタシだって少し勘違いすることぐらい…」
  「『いっつも』の間違いなんじゃないのぉ~」
  「あ、アネキには言われたくねぇぇぇぇ!!」
  “ドタバタドタバタドタバタ”また始まったよ…
  「…………」
  「原因はご主人様です。何が出てきても残さず食べてあげてください」
  俺を見捨てる気ですかノアールさん!?
  そりゃお前はいざとなったら自分で作るなり充電補給できるだろうが、俺にはあえて食えと仰るか!!?
  「…………はぁ、しゃ~ねぇなぁ……」
  俺はソファーを立ってキッチンへ向かう
  あいにく俺は自分からバットエンドのフラグを立てるようなマゾじゃねえんだ
  自分に危機が迫ってんならそれを防ぐために動くまでってな
  「その選択もバットエンドのフラグのような気がしますが…」
  なんかノアが後ろで言ってるがこの際、スルーの方向でいこう


  そこは戦場だった
  いやマジでなんの比喩も無しで戦場だった
  電子レンジからは煙が出ていて、壁にはコンロから中華料理店の厨房みたいな火柱が上がったようなあとがあって…なんか同じような光景を見たことがある気がする
  …橘家のセカンドインパクトだな
  「あーもう違うってば!」
  「何が違うんだよ! 隠し味ってここに書いてあるだろ!?」
  「そんなにいっぱい入れたら隠れて無いじゃん!!」
  「アネキだってさっき多いほうがいいって言ってただろうが!」
  阿鼻叫喚
  鍋の前でなにやらごちゃごちゃ言ってる二人と周りの光景を足したらそんな言葉が似合う気がして俺は頭痛がしてきて頭を抱えた
  「…なにをやっとるんだおまえらは」
  鍋の中を覗きながら二人に聞く
  この紫色のシチューみたいなモノはナンデスカ?
  「あ、アニキ…来ちゃダメって言ってるだろ!」
  「そ、そうだよ。待ちきれないのはわかるけど、もう少しだから」
  頬を赤くしながら振り向いて言う二人…
  状況が状況なら可愛く見えるかも知れんのだが…
  鍋の中とさっきまでのドタバタを聞いたらバットエンドどころか死亡フラグだったかなんて考えている俺
  「…一応聞くが…なんなんだ、そ、それは…」
  「「シーフードカレー」」
  「……死ー腐ー怒カレー?」
  「…なんか発音のニュアンスが違うのは気のせい?」
  「タコ入れたら紫になっちまってな、見た目的には少し悪いけど…」
  タコの赤みはカレールーに勝てるのか?
  ホントに紫色の原因はタコだけなのか?
  そもそも…
  「……味見はしたのか?」
  「ん~、そういえば…」
  「してないな」
  頼むからしてください
  今なら被害者は少ないから…(結構酷い)
  「あ、味見は料理を作る者としての責任だぞ? しといてほしいかな、あ、あはははは;」
  我ながら乾いた笑いしか出てこなくなっていた
  「それもそうだね…んじゃ…はい、ユーナ」
  ユーナに小皿を渡すミコ
  「え? いいのかアネキ…」
  「うん、なんだかんだいったってユーナも頑張ってくれたからね…ご褒美ってことでお先にどーぞw」
  「あ、アネキ…」
  なんかユーナは感動してる
  傍から見てれば微笑ましい姉妹愛だが、俺から見てたら身代わりにしているようにしか見えんな
  いやまぁミコには悪意はないんだろうが…
  「それじゃ…」
  “ぱく”っと小皿のうえのスープンを口に運ぶユーナ
  始めは口の中で味を確かめてたと思うんだが、顔色がみるみるうちに『死ー腐ー怒カレー』と同じような紫色に…その後のことは本人のプライバシーのためにカットさせていただく
  あれは人に言えたもんじゃないからなぁ……ご愁傷様


  「わ、渡っちゃならねえ…橋が…見えたぜ…」
  それが死地からの生還を遂げたユーナの一声だった
  「そ、そんなに美味しかったの? じゃあ私も…」
  「…やめとけってミコ。よく見てみろよ、ユーナ明らかに顔色悪いし、微かに震えてるだろ?」
  「え? だから震えるほど美味しいんじゃ…」
  だからってなんで顔色まで悪くなるんだよ
  「…大体お前ら、うちに来るまでに料理したことあるのか?」
  これはあくまで確認である。答えはわかってるんだよ? うん
  「「ない」」
  思った通りの返事をありがとう
  でもまぁ初めてって言うんなら根っからの料理下手ってこともなさそうだな…
  教えれば何とかなる…か?
  「…はぁ、わかった、本見て作ってもいまいち分からん所もあるだろうし、実際、お手本もなしじゃどうしょうもねえわな」
  「でもノアねぇの力を借りるのはイヤだからね!!」
  なにを意地になってるんだか…
  「べつに俺はノアにお手本頼もうなんて言ってねえだろ?」
  「……じゃあ誰をお手本にするのさ」
  「誰って…この家には四人しかいないじゃないか」
  「「……へ?」」


  20分後、うちの食卓の上にはやっとのこさ晩飯がならんでいた。無論、消去法で考えると残っているのは俺な訳で、この晩飯も俺が作ったことになる
  「「…………」」
  テーブルの上の料理を見つめて無言な二人
  「久しぶりですね、ご主人様の作ったご飯を食べるのは」
  さして驚きはしないノア
  「お前の料理がモノになってからはまかせっきりだったからな。少し味付けが変わってるかもしれないが…」
  献立はキッチンが滅茶苦茶だったこともあって残り物で簡単なお惣菜にした
  しかしお惣菜を侮ること無かれ
  簡単でいつも食べなれたものこそ料理人の腕の違いが出るものなのだよ
  うん
  「いいえ、私には変わったようには感じませんよ」
  「そうか? それにしても、よくもまぁそんな前の味覚えてるな」
  「ご主人様に作っていただいたものですから…」
  う…なんだか照れるな
  いつもに増してノアの優しげな微笑が可愛く見えるのは気のせいか?
  “カラン”と音がする
  音に気づいてミコの方を見るとテーブルの上に箸を落としてなんだか震えている
  「ミコ? どうした? 口に合わなかったか?」
  「ど………」
  「ど?」
  「どうしてご主人様まで料理できるのよ~~~!!!」
  驚いた俺は目を見開いて顔を近づけてきたミコにそう言われてキョトンとするしかなかった
  「どうしてっていわれてもな……」
  「しかも!! ノアねぇと変わらないぐらい美味しいし!!」
  「あ~そりゃなぁ。ノアに料理教えたのも俺だし」
  「「へ? …う、うええええええ!!??」」
  「元々俺は一人暮らしするつもりだったから、自炊できるように家をでるときに香憐ねぇから教わってたんだ。んでもノアがうちに来てからしばらくしてな、料理するってんでやらしてみれば…案の定キッチンは今日のお前らと同じように戦場と化していてな。あれは今日より凄かったぞw」
  「ご主人様はそういったことばかり覚えてるんですから…」
  「そ、それじゃ、姉さんも始めは…」
  「ああ、ノアもお前らと一緒のスタートだったんだよ。いまでこそクールで、聡明で、強くて、家事全般なんでもこいのノア御姉様も昔はそりゃ凄かったんだからなw だからお前らだって努力すればいつかはノアぐらい料理も上手くなれるし、強くもなれるさ」
  「そうですよ。あなたたちならきっとスグに私に追いつく…いいえ、追い抜いてしまいます」
  「……あ、ありがとう、ノアねぇ…」
  「姉さん…さんきゅ…な…」
  「ふふふ、いいんですよ。それよりほら、早く食べないとせっかくの料理が冷めてしまいますよ?」
  「うん!!」
  「おう!」
  ふぅ、なんとか一件落着ってところかな
  なんだかんだいってもあいつら姉妹は仲がいいからな
  ………ん?なんか大切なこと忘れているような……

  追記
  “ドタバタドタバタドタバタ”…おいおい
  「ご主人様! これでいいの~?」
  “ドタバタドタバタドタバタ”…なんでまた
  「アニキ! ちょっと来てくれよ」
  “ドタバタドタバタドタバタ”…デジャヴですか?
  「ちょ、ちょっとまてってば…」
  「上手くなるには練習あるのみでしょ? ほらほら早く~」
  そうだった、ノアの時もそうだったな…
  あの後さんざん料理の練習に徹夜で付き合わされて朝日がやたらと眩しかったのを思い出した…
  「こういうとこまで似なくても…少し休ませて…」
  「ほらほら、先生が休まないの!」
  「ま、まじかよぉ~」
  こいつら午前中にはバテバテじゃなかったのか?
  なんでこんなに元気なんだよ…
  「選んだ選択肢はハッピーエンドでしたか? ご主人様」
  ひ、人事だと思ってのどかに微笑みながら見守るな~~!!
                          続く

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