「これが……この世界」
スミレが呟く。
そこは現実と見紛うばかりの密度と精度を持つ、だが現実ではない世界。
彼女は降り立つ。
神姫だけに許された、彼女たちだけの世界に。
スミレが呟く。
そこは現実と見紛うばかりの密度と精度を持つ、だが現実ではない世界。
彼女は降り立つ。
神姫だけに許された、彼女たちだけの世界に。
第8話 『初陣』
「ええと……もう一度確認しておきますけど、お二人とも全くの初めてなんですよね?」
揃って歩きながら、白瀬の質問にこくこくと頷く周防とスミレ。
「それじゃ、家でのシュミレータの経験はありますか?」
今度は揃って首をふるふると左右に振る。
その返答に対して、白瀬はどうしたものかと首を傾げるものの。
「そうですね……ではいきなり実戦と言うのも酷ですし、まずはミッションモードでやってみましょうか」
「そんなのがあるんですか?」
「ええ。家庭用シュミレータの練習環境がない人や、他の人と競い合うのが嫌いなマスター用ですね。
ただ戦闘だけじゃなくて、アスレチック的な攻略ミッションもあったりして結構面白いんですよ」
「なるほど……それじゃスミレ、そうするか?」
「はいっ。頑張ります!」
耳元から元気の良い返事が返ってくる。
「……だそうです。やる気満々みたいですね」
「わかりました、それじゃ詳細は私に任せてください」
「お願いします。何から何までお世話になってしまって」
「いえいえ構いません。ところで今日は武装はお持ちではないですよね?
最近は瞬間装着システムも出てますけど、まだまだ高価で使ってる人は余り見かけませんし」
「……あ」
言われて初めて気づく周防。それ以前の段階のハードルが彼にとっては高すぎたとはいえ、間抜けな話ではある。
「……今から買ってきましょうかね」
これも男の甲斐性だと思い、やや力無くも応える周防。カードでボーナス払いをすれば大丈夫と自分に言い聞かせながら。
「あはは、大丈夫ですよ。神姫の基本装備なら貸し出してくれますから」
「兄さま無理しなくていいんですから。私にお金を使う必要なんてないんですよ。
私は、兄さまと一緒にいられるだけでいいんですから……」
そういってスミレは、何処か切ない笑顔を浮かべる。周防の心の天秤は、ある方向へと傾斜を深めた。
「よし、買ってくるよ。お前に借り物を着せるのは、俺が嫌だ。
これは俺の我侭なんだから、スミレは聞く必要なんてない。だから気にするな」
「兄さま……」
二人の視線が、交差する。
「全く……昔から我侭なんですから、兄さまは」
それは批難の形を取った謝意だった。
揃って歩きながら、白瀬の質問にこくこくと頷く周防とスミレ。
「それじゃ、家でのシュミレータの経験はありますか?」
今度は揃って首をふるふると左右に振る。
その返答に対して、白瀬はどうしたものかと首を傾げるものの。
「そうですね……ではいきなり実戦と言うのも酷ですし、まずはミッションモードでやってみましょうか」
「そんなのがあるんですか?」
「ええ。家庭用シュミレータの練習環境がない人や、他の人と競い合うのが嫌いなマスター用ですね。
ただ戦闘だけじゃなくて、アスレチック的な攻略ミッションもあったりして結構面白いんですよ」
「なるほど……それじゃスミレ、そうするか?」
「はいっ。頑張ります!」
耳元から元気の良い返事が返ってくる。
「……だそうです。やる気満々みたいですね」
「わかりました、それじゃ詳細は私に任せてください」
「お願いします。何から何までお世話になってしまって」
「いえいえ構いません。ところで今日は武装はお持ちではないですよね?
最近は瞬間装着システムも出てますけど、まだまだ高価で使ってる人は余り見かけませんし」
「……あ」
言われて初めて気づく周防。それ以前の段階のハードルが彼にとっては高すぎたとはいえ、間抜けな話ではある。
「……今から買ってきましょうかね」
これも男の甲斐性だと思い、やや力無くも応える周防。カードでボーナス払いをすれば大丈夫と自分に言い聞かせながら。
「あはは、大丈夫ですよ。神姫の基本装備なら貸し出してくれますから」
「兄さま無理しなくていいんですから。私にお金を使う必要なんてないんですよ。
私は、兄さまと一緒にいられるだけでいいんですから……」
そういってスミレは、何処か切ない笑顔を浮かべる。周防の心の天秤は、ある方向へと傾斜を深めた。
「よし、買ってくるよ。お前に借り物を着せるのは、俺が嫌だ。
これは俺の我侭なんだから、スミレは聞く必要なんてない。だから気にするな」
「兄さま……」
二人の視線が、交差する。
「全く……昔から我侭なんですから、兄さまは」
それは批難の形を取った謝意だった。
――それから半時程、周防の手元には先程よりも大き目の手提げ袋が幾つか増えていた。無論カード利用と引き換えに召喚された事は言うまでも無い。
「さてと……準備も整った事だし、早速始めようか」
「武装は別に登録したので、中で呼び出すだけで装着出来ますよ」
「はいっ」
順番待ちの間、白瀬に軽いレクチャーを受けた二人。
スミレはポッドにログイン。周防は慣れない手付きながらも初期入力を行っていく。
「結構設定があるな……」
「ええ、慣れてしまえばそんなに迷いませんけど。それとオプションの類は基本的にONにしておけば大丈夫ですよ。
今回は初期ミッションにしましょうか。出てくる敵を倒していけばクリア出来るシンプルなヤツですね」
「解りました。それじゃこんな所で……OKと」
入力を終え、スタートキーを押す周防。
次の瞬間、マシンが動き出し、スミレを幻想の世界へと誘っていくのであった。
「さてと……準備も整った事だし、早速始めようか」
「武装は別に登録したので、中で呼び出すだけで装着出来ますよ」
「はいっ」
順番待ちの間、白瀬に軽いレクチャーを受けた二人。
スミレはポッドにログイン。周防は慣れない手付きながらも初期入力を行っていく。
「結構設定があるな……」
「ええ、慣れてしまえばそんなに迷いませんけど。それとオプションの類は基本的にONにしておけば大丈夫ですよ。
今回は初期ミッションにしましょうか。出てくる敵を倒していけばクリア出来るシンプルなヤツですね」
「解りました。それじゃこんな所で……OKと」
入力を終え、スタートキーを押す周防。
次の瞬間、マシンが動き出し、スミレを幻想の世界へと誘っていくのであった。
「これが……この世界」
スミレの前に広がる光景。それはコロシアムと言われる円形闘技場だった。
但し古代ローマのような石造りではなく、素材は全て金属で、青白い照明に金属柱が冷たく輝き、いかにも未来的な雰囲気を演出している。
『スミレ、大丈夫そうか?』
周防の声が、スミレの聴覚を刺激する。
この空間に周防はいない。普段のように耳から入ってくる音ではなく、頭に直接響いてくる声にスミレは違和感を覚える。
『えーと、スミレちゃん聞こえてるみたいね。最初は慣らしという事で、武装は無しにしてありますから』
「はい、大丈夫です。もう始まっているんですか?」
言いながら彼女は自身の装備を確認する。
右手には陽光に透ける長剣が一振り、そして着慣れた藍色のボンデージスタイル。
『いや、もうすぐみたいだ。カウントが……』
周防の言葉に呼応するかのように、スミレの眼前に3体の顔の無い神姫『NAKED』がポリゴン粒子と共に出現。
同時に空中にカウントが表示される。
「あれを倒せばいいんですね。兄さま」
『そうみたいだな。……無理はするなよ。何かあったらすぐに戻って来い』
スミレは不適な笑みと共に、ゆっくりとした動作で剣を構える。その姿は初の実戦とは思えない程に洗練されていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫です。
私だってたまには、やれる所を見せてあげますから」
『……わかったよ。お前の強さを見せてくれ』
「はいっ」
直後。カウント0と同時に、NAKED達が突っ込んでくる。
「……見切れ、ますっ」
直線的で粗雑な敵の攻撃に対し、くるくるとステップを踏むような動きで回避。そして。
スミレの前に広がる光景。それはコロシアムと言われる円形闘技場だった。
但し古代ローマのような石造りではなく、素材は全て金属で、青白い照明に金属柱が冷たく輝き、いかにも未来的な雰囲気を演出している。
『スミレ、大丈夫そうか?』
周防の声が、スミレの聴覚を刺激する。
この空間に周防はいない。普段のように耳から入ってくる音ではなく、頭に直接響いてくる声にスミレは違和感を覚える。
『えーと、スミレちゃん聞こえてるみたいね。最初は慣らしという事で、武装は無しにしてありますから』
「はい、大丈夫です。もう始まっているんですか?」
言いながら彼女は自身の装備を確認する。
右手には陽光に透ける長剣が一振り、そして着慣れた藍色のボンデージスタイル。
『いや、もうすぐみたいだ。カウントが……』
周防の言葉に呼応するかのように、スミレの眼前に3体の顔の無い神姫『NAKED』がポリゴン粒子と共に出現。
同時に空中にカウントが表示される。
「あれを倒せばいいんですね。兄さま」
『そうみたいだな。……無理はするなよ。何かあったらすぐに戻って来い』
スミレは不適な笑みと共に、ゆっくりとした動作で剣を構える。その姿は初の実戦とは思えない程に洗練されていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫です。
私だってたまには、やれる所を見せてあげますから」
『……わかったよ。お前の強さを見せてくれ』
「はいっ」
直後。カウント0と同時に、NAKED達が突っ込んでくる。
「……見切れ、ますっ」
直線的で粗雑な敵の攻撃に対し、くるくるとステップを踏むような動きで回避。そして。
「――終わり、ましたっ」
呟いた、その瞬間。
交錯したNAKEDが全て、ドサリと力を失って崩れ落ちる。
『……え、ええーっ!!』
同時に白瀬の驚愕の声がフィールドに響き渡る。
『い……今の何ですかっ、見たこと無いですよ!』
「えぇと……乙女には秘密が多いんです♪
スミレは口に指をあて、可愛くウィンクをしてみせる。
『それにしても初めてでアレは……。周防さん、スミレちゃんに普段どんな事させてるんですか』
『いやぁ、それはまぁ……ははは』
勿論、アレな事です。などと周防が冗談を言える訳が無い。
冷え切った空間に、周防の乾いた笑いだけが響く。
「えぇと、それよりも今ので終わりですか? ちょっと呆気なさすぎると思うんですけども」
流れを断ち切るようにスミレは疑問を飛ばす。実際問題、開始されてまだ10秒もしないうちに戦闘が終了してしまっていた。
『んー……特に終了表示は出てないな。……なんだ、何か点滅してるな』
『あ、先生そのボタ……』
白瀬の制止が間に合わず、周防がぽち、とキーを押す。
その瞬間、空中に赤く浮かび上がる『WARNING』の文字と耳障りな警報音。
交錯したNAKEDが全て、ドサリと力を失って崩れ落ちる。
『……え、ええーっ!!』
同時に白瀬の驚愕の声がフィールドに響き渡る。
『い……今の何ですかっ、見たこと無いですよ!』
「えぇと……乙女には秘密が多いんです♪
スミレは口に指をあて、可愛くウィンクをしてみせる。
『それにしても初めてでアレは……。周防さん、スミレちゃんに普段どんな事させてるんですか』
『いやぁ、それはまぁ……ははは』
勿論、アレな事です。などと周防が冗談を言える訳が無い。
冷え切った空間に、周防の乾いた笑いだけが響く。
「えぇと、それよりも今ので終わりですか? ちょっと呆気なさすぎると思うんですけども」
流れを断ち切るようにスミレは疑問を飛ばす。実際問題、開始されてまだ10秒もしないうちに戦闘が終了してしまっていた。
『んー……特に終了表示は出てないな。……なんだ、何か点滅してるな』
『あ、先生そのボタ……』
白瀬の制止が間に合わず、周防がぽち、とキーを押す。
その瞬間、空中に赤く浮かび上がる『WARNING』の文字と耳障りな警報音。
「命知らずは、お前のようだな」
「!」
ハスキーな声がスミレの聴覚をダイレクトに刺激すると同時に、彼女の周囲で無数の閃光が炸裂する。
「な、何ですか貴方はっ!」
スミレが叫ぶ。その視線の先には、漆黒のボディに鋼鉄の翼を生やした神姫が仁王立ちで佇んでいた。
「何ですかも何も、アンタがケンカ売ってきたんだろう。アタシはそれを買っただけだ」
ニヤリと、好戦的な笑みを浮かべるその神姫。
「いってる意味がわかりません……けど、そこまで言われたら引き下がれません。尋常に勝負ですっ」
スミレは怯むことなく、相手に剣を突きつけて徹底抗戦の意思を示す。
『あれはストラーフ型……しかもあの装備、まさか上位ランカーの蓮ちゃんじゃ』
「フフ……アタシも結構有名になったようだな。だからと言って、遠慮はしない。――それに」
蓮と呼ばれた少女が、パチンと指を鳴らす。
「ッ! きゃぁっ!?」
瞬間、スミレは吹き飛ばされ、鋼の地面を勢いよくバウンドする。
「フン、興醒めだな。
2対1歓迎などと表示してあるので強敵かと思ったら、こんな奇襲一発でダウンするなどとは」
蓮の視線の先、スミレを挟んだ対角線上に居るのは、身の丈以上の対物ライフルを構えた重神姫。
「味気ないでありますなぁ」
狙撃用ゴーグルを待機位置に戻した少女は、にかっと人懐っこい笑顔を見せる。
「……おろ?」
その瞳が、驚きの色を見せる。
「……ぅ……ぁ――いた……い……」
視線の先の少女……スミレは苦悶の表情をありありと滲ませ、苦しそうに呻く。
「命中の瞬間、身体を捻って直撃を避けたか。その身のこなしは悪くない」
連は勝利者の足取りで、ゆっくりとスミレに近づいていく。
「しかし、それも終わりだ。――こんな軽装で喧嘩を売るとは、貴様もマスターも、愚者と言うべきだろうな」
「!」
蓮はその巨大な副腕で死神のように巨大な太刀を振りかざし、スミレの首元へ鋭く振り下ろす。
甲高い金属音が響き。そして、静寂。
「……ほぅ」
そこには、太刀の一撃を受け止めるスミレの姿があった。
「――兄さまの……」
「ん?」
「……兄さまへの、侮辱は……この、私が……許しませんっ」
穏やかな笑顔は既に霧散し、怒りの形相で蓮を睨みつける。
「その意気込みや良し。だけど」
交えた剣が出力の差でジリジリと押し込まれ、受け止めた長剣にもヒビが入り、零れ落ちた欠片がスミレの頬を掠めていく。
「2対1のこの状況……生かさないのは失礼ってもんよね」
少女は儀式のように腕をゆっくりと持ち上げ、再び指を鳴らす。
「……詰みだ」
パチンという微かな音は、戦場に響く銃撃音に掻き消される。
「(兄さまっ!)」
再び来るであろう衝撃に、スミレは身を硬くする。
「なっ、お前!」
だが、その瞬間は訪れなかった。
「!」
ハスキーな声がスミレの聴覚をダイレクトに刺激すると同時に、彼女の周囲で無数の閃光が炸裂する。
「な、何ですか貴方はっ!」
スミレが叫ぶ。その視線の先には、漆黒のボディに鋼鉄の翼を生やした神姫が仁王立ちで佇んでいた。
「何ですかも何も、アンタがケンカ売ってきたんだろう。アタシはそれを買っただけだ」
ニヤリと、好戦的な笑みを浮かべるその神姫。
「いってる意味がわかりません……けど、そこまで言われたら引き下がれません。尋常に勝負ですっ」
スミレは怯むことなく、相手に剣を突きつけて徹底抗戦の意思を示す。
『あれはストラーフ型……しかもあの装備、まさか上位ランカーの蓮ちゃんじゃ』
「フフ……アタシも結構有名になったようだな。だからと言って、遠慮はしない。――それに」
蓮と呼ばれた少女が、パチンと指を鳴らす。
「ッ! きゃぁっ!?」
瞬間、スミレは吹き飛ばされ、鋼の地面を勢いよくバウンドする。
「フン、興醒めだな。
2対1歓迎などと表示してあるので強敵かと思ったら、こんな奇襲一発でダウンするなどとは」
蓮の視線の先、スミレを挟んだ対角線上に居るのは、身の丈以上の対物ライフルを構えた重神姫。
「味気ないでありますなぁ」
狙撃用ゴーグルを待機位置に戻した少女は、にかっと人懐っこい笑顔を見せる。
「……おろ?」
その瞳が、驚きの色を見せる。
「……ぅ……ぁ――いた……い……」
視線の先の少女……スミレは苦悶の表情をありありと滲ませ、苦しそうに呻く。
「命中の瞬間、身体を捻って直撃を避けたか。その身のこなしは悪くない」
連は勝利者の足取りで、ゆっくりとスミレに近づいていく。
「しかし、それも終わりだ。――こんな軽装で喧嘩を売るとは、貴様もマスターも、愚者と言うべきだろうな」
「!」
蓮はその巨大な副腕で死神のように巨大な太刀を振りかざし、スミレの首元へ鋭く振り下ろす。
甲高い金属音が響き。そして、静寂。
「……ほぅ」
そこには、太刀の一撃を受け止めるスミレの姿があった。
「――兄さまの……」
「ん?」
「……兄さまへの、侮辱は……この、私が……許しませんっ」
穏やかな笑顔は既に霧散し、怒りの形相で蓮を睨みつける。
「その意気込みや良し。だけど」
交えた剣が出力の差でジリジリと押し込まれ、受け止めた長剣にもヒビが入り、零れ落ちた欠片がスミレの頬を掠めていく。
「2対1のこの状況……生かさないのは失礼ってもんよね」
少女は儀式のように腕をゆっくりと持ち上げ、再び指を鳴らす。
「……詰みだ」
パチンという微かな音は、戦場に響く銃撃音に掻き消される。
「(兄さまっ!)」
再び来るであろう衝撃に、スミレは身を硬くする。
「なっ、お前!」
だが、その瞬間は訪れなかった。
「……悪い、ね」
「え……」
スミレが見た光景。それは漆黒の騎士が、彼女の盾になった姿。
「貴様ノワール……! ――そうか、コイツは貴様の」
「関係……ない。
でも、ねーちゃが悲しむ……から」
先程と変わらないクロの口調。だがその言葉には、強い意思が宿っているようにスミレには感じられた。
「……キミも、そう……だよ、ね」
振り向いた仮面越しに、クロとスミレの視線が交錯する。
「キミの力……見せて、みて」
「――はい」
スミレはゆっくりと、しかし深く頷く。
「兄さまへの侮辱……泣いて謝っても許してあげませんから!」
そしてクロの出現に怯んだ蓮を、その翠玉色の瞳できつく見据える。
「何を言う。押し込まれているのは貴様だとわからないのかっ」
「それでも……私はっ」
二人の気迫を乗せて、互いの剣が激しい鍔迫り合いを演じる。
しかしクロの出現に気後れしていた蓮が、その圧倒的な出力でスミレを再び押し込みに掛かる。
『スミレ、一瞬でいいから隙を作ってコールするんだ。お前なら、きっと出来る!』
周防の声がスミレの聴覚を刺激する。それは彼女にとって、全ての力の根源。
「はいっ!」
彼女の闘志に呼応するように、クリアオレンジの刀身が内部から淡い輝きを帯びる。
「うおぉぉぉ!!!」
気迫一閃。
「何ィ!?」
二人の刀身が同時に砕け、蓮は一瞬の恐怖心からバックステップで距離を取る。
スミレが見た光景。それは漆黒の騎士が、彼女の盾になった姿。
「貴様ノワール……! ――そうか、コイツは貴様の」
「関係……ない。
でも、ねーちゃが悲しむ……から」
先程と変わらないクロの口調。だがその言葉には、強い意思が宿っているようにスミレには感じられた。
「……キミも、そう……だよ、ね」
振り向いた仮面越しに、クロとスミレの視線が交錯する。
「キミの力……見せて、みて」
「――はい」
スミレはゆっくりと、しかし深く頷く。
「兄さまへの侮辱……泣いて謝っても許してあげませんから!」
そしてクロの出現に怯んだ蓮を、その翠玉色の瞳できつく見据える。
「何を言う。押し込まれているのは貴様だとわからないのかっ」
「それでも……私はっ」
二人の気迫を乗せて、互いの剣が激しい鍔迫り合いを演じる。
しかしクロの出現に気後れしていた蓮が、その圧倒的な出力でスミレを再び押し込みに掛かる。
『スミレ、一瞬でいいから隙を作ってコールするんだ。お前なら、きっと出来る!』
周防の声がスミレの聴覚を刺激する。それは彼女にとって、全ての力の根源。
「はいっ!」
彼女の闘志に呼応するように、クリアオレンジの刀身が内部から淡い輝きを帯びる。
「うおぉぉぉ!!!」
気迫一閃。
「何ィ!?」
二人の刀身が同時に砕け、蓮は一瞬の恐怖心からバックステップで距離を取る。
「 Set up! 」
叫びと共にスミレの全身が光に包まれ、そして、集束する。
「チィ……」
状況を理解した蓮の表情が曇る。
スミレがその身に纏うは、全身を陽光に彩られた、蒼き戦乙女の甲冑。
「――コードネーム『青薔薇』装着完了……。周防スミレ、参ります!」
「チィ……」
状況を理解した蓮の表情が曇る。
スミレがその身に纏うは、全身を陽光に彩られた、蒼き戦乙女の甲冑。
「――コードネーム『青薔薇』装着完了……。周防スミレ、参ります!」