「……それじゃあ今日はこれまで。
明日から授業だから、今日配った教科書を忘れないように。
それでは、起立」
明日から授業だから、今日配った教科書を忘れないように。
それでは、起立」
その声でクラス全員が立ち上がる。
「礼」
先生の号令に合わせて、クラス全員がさようならと言う。
「あぁそうそう、図書室も開いてるから興味のある人は行ってみたらどう?
それじゃあ私は行くわね、さようなら」
それじゃあ私は行くわね、さようなら」
先生はそれだけ言うと、荷物をまとめてすぐに教室を出て行ってしまった。
登校初日はこれにて終了、ハヤテの周りはざわざわとしており、皆は高校での新しい友人層の開拓をしているようだ。
登校初日はこれにて終了、ハヤテの周りはざわざわとしており、皆は高校での新しい友人層の開拓をしているようだ。
「……さて」
だがハヤテは荷物をまとめ、すぐに教室を出た。
階段の所の広間に行き、周りに誰もいないことを確認するとバッグを開き、ナギと対面する。
階段の所の広間に行き、周りに誰もいないことを確認するとバッグを開き、ナギと対面する。
『終わったのか?』
「うん。
さあ、帰ろう」
『友達とかは作らないのか?』
「いいんだよ、友達なんて勝手にできるものだよ」
『そうか。
ならば近くの店に行こう、一緒にデータを受け取ろうじゃないか』
「そうだね……あ、そうだ。
その前にナギ、ちょっと付き合ってよ」
『え? 何だというのだ?』
「いいから」
「うん。
さあ、帰ろう」
『友達とかは作らないのか?』
「いいんだよ、友達なんて勝手にできるものだよ」
『そうか。
ならば近くの店に行こう、一緒にデータを受け取ろうじゃないか』
「そうだね……あ、そうだ。
その前にナギ、ちょっと付き合ってよ」
『え? 何だというのだ?』
「いいから」
ハヤテはそう言って階段を登る。
そして、先ほどと同じ場所にハヤテは来た。
そして、先ほどと同じ場所にハヤテは来た。
『……屋上?』
「うん、さっきは見られなかったでしょ?
だから、今度こそね」
『別に、私はそんな……』
「いいからいいから、ね」
「うん、さっきは見られなかったでしょ?
だから、今度こそね」
『別に、私はそんな……』
「いいからいいから、ね」
ハヤテは再び屋上の扉を開く。
今度は誰もいないようだ、それを確認するとハヤテは中辺りまで歩く。
今度は誰もいないようだ、それを確認するとハヤテは中辺りまで歩く。
「ほら見てみてよ」
ナギをポケットから出して右手のひらに乗せ、ナギに景色を見せた。
「ね?」
『別に、見たくなど……』
『別に、見たくなど……』
そう言いつつ、ナギは景色を見る。
ナギは無言であったが、表情からその心中がうかがえた。
どうやら気に言ってもらえたようである。
ナギは無言であったが、表情からその心中がうかがえた。
どうやら気に言ってもらえたようである。
「……どう?
少しは感動したんじゃない?」
『……べ、別に……そんなことは、だが……』
少しは感動したんじゃない?」
『……べ、別に……そんなことは、だが……』
ナギは振り返り……
『……その、悪くない気分だよ』
満面の笑顔でその言葉をハヤテに言った。
ハヤテはナギとここに来てよかったとその時に思った。
最もナギは勝手についてきただけであるのだが、それも手伝ってかハヤテは逆にもうナギとこの景色を見れないことが残念に思えた。
ハヤテはナギとここに来てよかったとその時に思った。
最もナギは勝手についてきただけであるのだが、それも手伝ってかハヤテは逆にもうナギとこの景色を見れないことが残念に思えた。
「……よかった、本当に」
だからナギとこの景色を、この高校の景色を見れたことを初めての思い出にしよう、そう思った。
『それじゃあ、そろそろどこかの店にでも寄って、データを受け取りに行こう。
……学校楽しめよ? 大事な期間なのだからな?』
「え、うん、もちろん……」
……学校楽しめよ? 大事な期間なのだからな?』
「え、うん、もちろん……」
ここで帰ったら、ナギとはもう学校に来れない。
ナギの性格からして、来たがることはないだろう。
自分も他の人に見つかるリスクを考えると、もうナギを連れて来たくはない。
そう考えると、もう少しだけここにいたいと思うハヤテだった。
……その時。
ナギの性格からして、来たがることはないだろう。
自分も他の人に見つかるリスクを考えると、もうナギを連れて来たくはない。
そう考えると、もう少しだけここにいたいと思うハヤテだった。
……その時。
(タタタタタッ!!!!)
「わっ!?」
銃声が聞こえる。
その音はおもちゃのように軽くはあったが、とても近くに聞こえた。
その音はおもちゃのように軽くはあったが、とても近くに聞こえた。
『な、なんなのだ!? なんなのだ!?』
『……侵入者発見』
『……侵入者発見』
何処からか、ナギの物ではない少女の声がする。
それと同じく、プロペラ音も聞こえた。
それと同じく、プロペラ音も聞こえた。
「ど、どこ!? 誰なの!?」
『……ここです』
『……ここです』
その声は少し上の方から聞こえた。
ハヤテは声のした方を見る、そこには……
ハヤテは声のした方を見る、そこには……
『……こんにちは』
ナギと同じくらいに小さい、黒髪の少女がいた。
「え、あ、こんにちは……」
『ハヤテ、挨拶している場合か!
コイツは私達に発砲してきたのだぞ!』
「でも、挨拶されちゃったし……それで、君は……」
『ハヤテ、挨拶している場合か!
コイツは私達に発砲してきたのだぞ!』
「でも、挨拶されちゃったし……それで、君は……」
ハヤテはその少女の関節部分を見る。
人形のような関節になっていることからして、この少女もナギと同じく神姫のようである。
人形のような関節になっていることからして、この少女もナギと同じく神姫のようである。
「君も多分……神姫なんだよね?」
『……はい、戦闘機型、飛鳥です』
『……はい、戦闘機型、飛鳥です』
戦闘機型、そんなのもあるのかとハヤテは思った。
『……神姫に関する知識は希薄……ですが、なるほど』
「え?」
『……失礼、何でもありません。
ともかく、あなた達を神姫バトルで拘束します』
「ど、どうしてそうなるの!?」
『……屋上への侵入は校則違反です』
「え……そうなの?」
『……という訳で拘束します』
「え、えええっ!?」
『応戦するというのならば、神姫を構えてください』
「し、神姫を?」
「え?」
『……失礼、何でもありません。
ともかく、あなた達を神姫バトルで拘束します』
「ど、どうしてそうなるの!?」
『……屋上への侵入は校則違反です』
「え……そうなの?」
『……という訳で拘束します』
「え、えええっ!?」
『応戦するというのならば、神姫を構えてください』
「し、神姫を?」
神姫、もちろんハヤテにはナギしかいない。
「よ、よし、ナギ!」
『な、おいふざけるな、何故私が!
戦って何の意味があるというのだ!』
「……確かに」
『な、おいふざけるな、何故私が!
戦って何の意味があるというのだ!』
「……確かに」
屋上に入っただけで校則違反なのだから、抵抗するとさらに罰が増えそうだ、とハヤテは考えた。
「ええと、大人しく投降します。
職員室に行けばいいですか?」
職員室に行けばいいですか?」
ハヤテは両手を挙げながら言う。
『え……』
それに対し少女はかなり意外そうな表情をした。
「どうしました?」
『……い、いえ、ええと……』
『……い、いえ、ええと……』
少女は考え込むそぶりを見せる。
そして少女は何かを思いついたように言った。
そして少女は何かを思いついたように言った。
『……と、投降した場合……
ええと、停学となりますが……』
「え、そうなの!?」
『そ、そこまで驚かれると……』
「じゃあ、抵抗した場合は?」
『ええと……わ、私に勝てば不問に付します?』
『そんなバカな話があるか!
付き合ってられん、帰るぞハヤテ!』
「そ、そうですよ、何で投降するって言ってるのに抵抗しなきゃいけないんですか!
灰原隊長なんですか? 降伏は無駄だ抵抗しろってことなんですか!?」
ええと、停学となりますが……』
「え、そうなの!?」
『そ、そこまで驚かれると……』
「じゃあ、抵抗した場合は?」
『ええと……わ、私に勝てば不問に付します?』
『そんなバカな話があるか!
付き合ってられん、帰るぞハヤテ!』
「そ、そうですよ、何で投降するって言ってるのに抵抗しなきゃいけないんですか!
灰原隊長なんですか? 降伏は無駄だ抵抗しろってことなんですか!?」
強気なナギにつられたのか、ハヤテも強気で口答えをする。
『そうだそうだ、それに私達は忙しいのだ。
今日も帰って二人でナイトメアパラダイスを進める予定だからな!』
「いや、それはもう20週はしたけどね……」
今日も帰って二人でナイトメアパラダイスを進める予定だからな!』
「いや、それはもう20週はしたけどね……」
とっくに全ルート制覇しているのである。
『……な、ならば問答無用です!』
「え、な、なんでそうなる……!」
「え、な、なんでそうなる……!」
ハヤテが言い終わる前に少女は構える、すると……
『はあっ!!』
そう言うと少女の身体が光に包まれる。
次の瞬間、その少女は巫女服をモチーフとしたような武装を身に纏っていた。
次の瞬間、その少女は巫女服をモチーフとしたような武装を身に纏っていた。
『……覚悟してください』
「……すごい」
「……すごい」
その姿に思わず驚くハヤテ。
「もしかして、ナギもあれできるの?」
期待の目を向けてナギに言う。
『ん……まあできるが……』
ナギは疲れた顔で言う。
『やっぱり、抵抗しなければダメなのか?』
「みたいだね……まあ確かにいきなり停学は嫌だけど……」
『……はぁ、わかったよ』
「みたいだね……まあ確かにいきなり停学は嫌だけど……」
『……はぁ、わかったよ』
ナギは少女に向けてそう言うと目を瞑り、だるそうに背伸びをして息を整えた。
『よく見ておくがいい!
武装ーーーーーー!!
神姫ーーーーーー!!』
武装ーーーーーー!!
神姫ーーーーーー!!』
目を開けてポーズをとり、ナギは高らかに叫ぶ。
すると桜花と同じようにナギは光で包まれ……
すると桜花と同じようにナギは光で包まれ……
『水が呼ぶ火が呼ぶ風が呼ぶ。
攻略情報キボンヌと私を呼ぶ!
武装神姫ナギ! ただいま参上なのだ!』
攻略情報キボンヌと私を呼ぶ!
武装神姫ナギ! ただいま参上なのだ!』
ナイトメアパラダイスと同じセリフで変身するナギ。
背中には白い二つの翼。
手に持つは白く、刃の部分はピンク色のハルバード、ファンシーな色のためか魔法少女の杖にも見える。
ピンク色のかわいらしい尻尾も生えて、足にはピンク色のプロテクターのような武装も装備されている。
その姿はまさにゲームの中の神姫ナギと同じ姿であり、変身したナギをハヤテはそれを「おぉ……」という目で見つめていた。
背中には白い二つの翼。
手に持つは白く、刃の部分はピンク色のハルバード、ファンシーな色のためか魔法少女の杖にも見える。
ピンク色のかわいらしい尻尾も生えて、足にはピンク色のプロテクターのような武装も装備されている。
その姿はまさにゲームの中の神姫ナギと同じ姿であり、変身したナギをハヤテはそれを「おぉ……」という目で見つめていた。
『どうだ!』
変身を終え、腕を組んでハヤテにドヤ顔を向けるナギ。
「すごい、すごいよ! だけど……」
『ん?』
「変身の時に一瞬裸になるんじゃないの……?」
『ん?』
「変身の時に一瞬裸になるんじゃないの……?」
ゲーム内で裸になるバンクが入るわけではないのだが、
主人公である「綾崎ハヤテ」に「変身の時に一瞬裸になるのは、はしたないですよ。」というセリフがある。
主人公である「綾崎ハヤテ」に「変身の時に一瞬裸になるのは、はしたないですよ。」というセリフがある。
『なっ、逆にどこを見ておるのだ!
それはゲームの中だけだぞ!』
それはゲームの中だけだぞ!』
そういうとナギはハヤテの眼前に飛び出し……
『ハヤテのバカ!』
「いたっ、痛いよナギ!」
「いたっ、痛いよナギ!」
ポカポカとハヤテを叩く。
もちろん小さいのでそんなにダメージはないが。
もちろん小さいのでそんなにダメージはないが。
「てて……
でも、動けるってことは武装が重くて歩けん、なんてことはないんだね?」
『ないよ。
あの生身の私なら無理だろうがな』
でも、動けるってことは武装が重くて歩けん、なんてことはないんだね?」
『ないよ。
あの生身の私なら無理だろうがな』
ゲーム内で戦闘時に毎回武装を纏うが毎回武装が重くて歩けん、という状態になるので結局毎回ハヤテ一人で戦うことに、というイベントが存在するのである。
「じゃあ、大丈夫だね……ナギってどんな風に戦えるの?」
『ん……そうだな。
大剣とナックルが得意だ、あと短銃も。
そしてそれ以外の飛び道具は苦手だな』
「へえ、意外……」
『確かに私らしくは無いかもな。
だが仕方ないことだ』
「え、どうして?」
『私の武装は言ってしまえば、夢魔型ヴァローナのリペイントなんだよ』
「……む、夢魔型?」
『あぁ、神姫に興味はないんだったな……
つまり、そういう神姫がいるのだ、見比べてみるといい』
『ヴァローナ型……』
『ん……そうだな。
大剣とナックルが得意だ、あと短銃も。
そしてそれ以外の飛び道具は苦手だな』
「へえ、意外……」
『確かに私らしくは無いかもな。
だが仕方ないことだ』
「え、どうして?」
『私の武装は言ってしまえば、夢魔型ヴァローナのリペイントなんだよ』
「……む、夢魔型?」
『あぁ、神姫に興味はないんだったな……
つまり、そういう神姫がいるのだ、見比べてみるといい』
『ヴァローナ型……』
ヴァローナ、という言葉を聞き、少女が会話に入る。
『……なるほど、その武装はどこかで見たと思ったら、ヴァローナでしたか。
私と同じ、FRONTLINE製の人気の高い神姫ですね』
私と同じ、FRONTLINE製の人気の高い神姫ですね』
FRONTLINE。ハヤテにとってはあまり聞きなれない言葉である。
「えっと、どこかの会社?」
『……神姫は各会社からさまざまな種類が出ていますから』
『……神姫は各会社からさまざまな種類が出ていますから』
それを聞いて納得したが、ハヤテにはそれとは別の疑問がまだ一つ残っていた。
「じゃあなんでFRONTLINE製の神姫のリペイントがコナミのゲームに付属してるの?」
『あぁ……それはまあ、外注というやつだ。
タイアップだからといって新たに武装をデザインするのもさせるのも面倒だし、AIだけ監修して後は外注したんだろう、安く済むからな』
「はぁ……」
『あぁ……それはまあ、外注というやつだ。
タイアップだからといって新たに武装をデザインするのもさせるのも面倒だし、AIだけ監修して後は外注したんだろう、安く済むからな』
「はぁ……」
確かにコナミがやりそうではある。
「でも、よくFRONTLINEさんは引き受けてくれたね?
FRONTLINEって事業内容は神姫がメインじゃないでしょ?」
『……コナミは武装神姫に関する全権限を握っていると一部で噂されているからな』
「えっ、コナミってただのゲーム会社じゃないの?」
『まあ、それは冗談だ。
……そんなことよりも、向こうはお待ちかねのようだぞ?』
『……再三で悪いですが、準備できましたか?
実戦なら、あなたはとっくに死んでいますよ?』
「あっ、ご、ごめんなさい」
FRONTLINEって事業内容は神姫がメインじゃないでしょ?」
『……コナミは武装神姫に関する全権限を握っていると一部で噂されているからな』
「えっ、コナミってただのゲーム会社じゃないの?」
『まあ、それは冗談だ。
……そんなことよりも、向こうはお待ちかねのようだぞ?』
『……再三で悪いですが、準備できましたか?
実戦なら、あなたはとっくに死んでいますよ?』
「あっ、ご、ごめんなさい」
実戦って……そう思いながらハヤテは言う。
「それじゃあ、今度こそ大丈夫です!」
そう言った後、ハヤテはナギの方を見る。
「大丈夫だよね、ナギ?」
『あぁ、早く終わらせて帰るぞ!』
『……わかりました、それでは参ります』
『あぁ、早く終わらせて帰るぞ!』
『……わかりました、それでは参ります』
「『『バトル!!』』」
『では、参ります!』
少女はどこからか銃を取り出した、彼女の得意武器の1つである。
『……かかってきてください!』
『いいだろう!私の武器はこれだ!
バトルスタッフ、三千院仕様!』
『いいだろう!私の武器はこれだ!
バトルスタッフ、三千院仕様!』
前述の杖にも見えるハルバードである。
『ゆくぞ!』
ナギは勇ましく切り込む。
原作ではほぼ確実に見られない構図であろう。
原作ではほぼ確実に見られない構図であろう。
『近づいてきましたか……ですが、甘いですね』
そう言うと、少女は高速で移動する。
『なっ、どこに……!?』
ナギはそのスピードに少女を見失ってしまった。
「ナギ、後ろ!」
『えっ!?』
『……もらいましたよ!』
『えっ!?』
『……もらいましたよ!』
少女はナギに向け、銃を乱射する。
『く!』
ナギはそれを回避、そしてすかさず少女へ突撃した。
『くらえぇえええええ!!!』
『……さっきより速い? ですが……』
『……さっきより速い? ですが……』
間一髪少女はそれをかわす、そして……
『はあっ!』
銃を鈍器として、ナギに向けて振り下ろした。
『負けるかぁ!』
ナギも負けじとバトルスタッフを思い切り振り回す。
『はっ!』
少女も銃でそれを防ぐ。
ハルバードと銃ではあるが、迫り合い状態になった。
ハルバードと銃ではあるが、迫り合い状態になった。
『……中々ですね。
戦闘経験はおありですか?』
『……ない。
ただ、早く終わらせて、ハヤテとゲームの続きをやりたいだけだ』
『……なるほど、ですが……』
戦闘経験はおありですか?』
『……ない。
ただ、早く終わらせて、ハヤテとゲームの続きをやりたいだけだ』
『……なるほど、ですが……』
少女はナギの武器を弾き、ナギがバランスを崩す。
『うおっ!?』
『気分だけで勝てるほど、バトルは甘くありませんよ!』
『気分だけで勝てるほど、バトルは甘くありませんよ!』
その隙を逃さず、少女は銃を構え、それを乱射した。
「ナギっ!?」
『くっ!』
『くっ!』
ナギは何発か受けてしまったものの、致命傷はかわすことに成功した。
態勢を立て直し、ハルバードを少女に向ける。
態勢を立て直し、ハルバードを少女に向ける。
「わ、わ、えっと、えっと……」
そのスピードについていけず、ただ見ているだけのハヤテ。
『何をしているハヤテ、指示を出すのだ!』
「そ、そんなこと言われても……えっと」
『ハヤテは場の全てが見えているだろう!
私に伝えてくれればいいのだ!』
「そ、そうか……えっと」
「そ、そんなこと言われても……えっと」
『ハヤテは場の全てが見えているだろう!
私に伝えてくれればいいのだ!』
「そ、そうか……えっと」
ハヤテは場を見る。
と言っても、現状何もない平地で二人が至近距離で白兵戦をしているだけである。
近い場所な分、かなり見応えはあるが。
と言っても、現状何もない平地で二人が至近距離で白兵戦をしているだけである。
近い場所な分、かなり見応えはあるが。
「……とりあえず、距離をとって!」
『ん、わかった!』
『ん、わかった!』
ナギは隙を見てバックステップを行った。
『とったぞ、それでどうするのだ?』
「……えっと、どうしよう」
『おい!?』
『……銃相手に距離を取ろうとするとは……
本当に素人のようですね!』
『え、うあっ!?』
「……えっと、どうしよう」
『おい!?』
『……銃相手に距離を取ろうとするとは……
本当に素人のようですね!』
『え、うあっ!?』
その隙を逃さない少女の銃弾が、ナギに命中する。
『ぐっ……』
「あぁ、ナギ!?」
『……命中確認。
あなた方の力はこんなものですか?』
『……く……おいハヤテ!
真面目に指示を出せ!』
「そ、そんなこと言われても……ひ、必殺技とかないの?」
『む……そういうの起動してから一度も使ったことないからな……』
『よそ見してる場合ですか!』
『うわっ!』
「あぁ、ナギ!?」
『……命中確認。
あなた方の力はこんなものですか?』
『……く……おいハヤテ!
真面目に指示を出せ!』
「そ、そんなこと言われても……ひ、必殺技とかないの?」
『む……そういうの起動してから一度も使ったことないからな……』
『よそ見してる場合ですか!』
『うわっ!』
ナギに再び銃弾が襲い掛かる。
「と、とにかく、ダメ元でやってみようよ!」
『わ、わかった……行くぞ!』
『わ、わかった……行くぞ!』
ナギはバトルスタッフを振りながらバックステップで距離をとり。
『行くぞ、必殺!
獅子座流星ぐーん!』
獅子座流星ぐーん!』
獅子座流星群、ナギの必殺技の1つである。
バトルスタッフを捨て、少女に超スピードで飛び掛り右ストレートを放つ。
バトルスタッフを捨て、少女に超スピードで飛び掛り右ストレートを放つ。
「わ、速いっ!?」
『ぐっ!?』
『ぐっ!?』
ナギの一撃が少女に入る。
いや、入ったかのように見えた。
いや、入ったかのように見えた。
『……驚きました』
間一髪、銃でガードしていたのである。
『な……!』
『相手が私でなかったら……あなた達の勝ちだったかもしれませんね!』
『相手が私でなかったら……あなた達の勝ちだったかもしれませんね!』
そう言い放ち、少女は銃でナギを弾いた。
『ぐあっ!?』
空中へ投げ出されるナギ。
そしてそれを待っていたかのように、少女は銃をナギに向けた。
そしてそれを待っていたかのように、少女は銃をナギに向けた。
『捉えた……もう逃がさない!!』
空中に飛ばされ、身動きが取れず、防御するためのバトルスタッフも投げてしまって使えないナギに、容赦ない銃弾の雨が襲い掛かる。
『うああああああああああっ!!』
「ナ、ナギーーーっ!!」
『……っ』
「ナ、ナギーーーっ!!」
『……っ』
どうやら弾切れを起こしたようで、銃の乱射が終わる。
そしてナギはちょうどハヤテの足元へ落ちたのだった。
そしてナギはちょうどハヤテの足元へ落ちたのだった。
『うあっ、う……』
「な、ナギ……」
『……さすがにもう動けないでしょう。
諦めて投降してはどうですか?』
『う……ハヤテ……』
「ナギ……」
「な、ナギ……」
『……さすがにもう動けないでしょう。
諦めて投降してはどうですか?』
『う……ハヤテ……』
「ナギ……」
傷つくナギ。
それを見るハヤテには一つの思考が現れていた。
それを見るハヤテには一つの思考が現れていた。
「もう十分……はじめてなのに頑張ったよ。
今回は負けを認めよう、停学にでもなんでもなるから、それで次に……」
『いやだ!』
今回は負けを認めよう、停学にでもなんでもなるから、それで次に……」
『いやだ!』
そう言って、ナギは立ち上がった。
『私はまだやるぞ!』
「でも……」
『お前が諦めてどうする!』
「え……」
『お前は「ハヤテ」に憧れたと言っていたな!
私の執事である「ハヤテ」なら、どんなピンチだって諦めたりしないぞ!
槍でも鉄砲でも、できそこないのカニ野郎ポンコツロボだろうと、何が相手でも、絶対に助けてくれるのだ!』
「あ……」
『お前も私の執事になったのなら、私を助けろ!
私を全力で助けてくれよ!』
「……そうだった」
「でも……」
『お前が諦めてどうする!』
「え……」
『お前は「ハヤテ」に憧れたと言っていたな!
私の執事である「ハヤテ」なら、どんなピンチだって諦めたりしないぞ!
槍でも鉄砲でも、できそこないのカニ野郎ポンコツロボだろうと、何が相手でも、絶対に助けてくれるのだ!』
「あ……」
『お前も私の執事になったのなら、私を助けろ!
私を全力で助けてくれよ!』
「……そうだった」
ハヤテが憧れる『ハヤテ』は。
ナギの執事である「ハヤテ」は。
絶対に何が相手でもお嬢様の期待に応え、何が何でもお嬢様をお助けする。
どんな無理難題にも応える。
絶対に諦めず、何をやらかしても、最後は最善の結果を出す。
ナギの執事である「ハヤテ」は。
絶対に何が相手でもお嬢様の期待に応え、何が何でもお嬢様をお助けする。
どんな無理難題にも応える。
絶対に諦めず、何をやらかしても、最後は最善の結果を出す。
「……わかったよ。
僕も、応えて見せる」
『……うむ。
それでいいのだ!』
『投降、しないのですね?』
「『!』」
『ならば……今度こそ止めです!』
僕も、応えて見せる」
『……うむ。
それでいいのだ!』
『投降、しないのですね?』
「『!』」
『ならば……今度こそ止めです!』
少女は銃を構え、ナギに向かって乱射した。
「ナギ!」
『うむ!』
『うむ!』
ナギはハヤテの考えを理解したのかバックステップで回避、再び距離をとった。
『……まだ動けるみたいですね。
ですが、銃相手に距離を取るのは愚策ですね、学ばなかったのですか?』
ですが、銃相手に距離を取るのは愚策ですね、学ばなかったのですか?』
少女は銃を構える。
『……遊びはお終いですよ!』
『ほう、私が過ちを再び犯すと思っていたのか?』
「……僕は、ナギを助けられるほどの身体能力はない」
『だったのなら』
「だったら、別の方法でナギを助けて見せる」
『それは、戦局が見えていないと言っているようなものだぞ!』
『ほう、私が過ちを再び犯すと思っていたのか?』
「……僕は、ナギを助けられるほどの身体能力はない」
『だったのなら』
「だったら、別の方法でナギを助けて見せる」
『それは、戦局が見えていないと言っているようなものだぞ!』
少女の銃撃をバックステップでかわしつつ、先ほど投げたバトルスタッフを足で蹴り上げ、拾い上げた。
『……しまった、バトルスタッフの落ちた場所に……!?』
意外そうな顔をする、指示をするマスターがいないせいか、場に気を配れていなかったようだ。
「ハヤテのごとくとは違う、ハヤテが戦うんじゃなくて、ナギが戦う。
だったら、ナギの気持ちを理解するハヤテの気持ちになるんじゃない」
だったら、ナギの気持ちを理解するハヤテの気持ちになるんじゃない」
『それに私のことは、ハヤテが助けてくれる』
「ハヤテじゃなくて、ナギの気持ちになる。
そうやって、ナギの思考を完全に理解すればいいんだ」
そうやって、ナギの思考を完全に理解すればいいんだ」
『残念だが、遊び相手になるのは』
「文字通り……」
『貴様のほうだ!』
「ナギの……ごとく!!」
「『行くぞ!』」
ナギは拾い上げたバトルスタッフを構え、少女に飛び掛かる。
『……っ!? 今までで一番速い……!?』
少女はナギの攻撃をギリギリでかわす。
さっきと逆転し、ナギが攻め、少女が守りの体制に入った。
さっきと逆転し、ナギが攻め、少女が守りの体制に入った。
『これは一体……?
……雰囲気が……変わった!?』
……雰囲気が……変わった!?』
少女は驚きの表情をする。
しかしハヤテとナギは完全にバトルに集中しており、相手が驚いている事に気づいてはいなかった。
しかしハヤテとナギは完全にバトルに集中しており、相手が驚いている事に気づいてはいなかった。
「48の殺人技と……」
『52のサブミッションを連続でかけ……』
『え……え?』
『52のサブミッションを連続でかけ……』
『え……え?』
『「地獄のローラーでお前をミンチにする!!」』
その台詞とともにナギは少女に再び飛び掛かった。
『なっ、速……! ぐっ!!』
今度はかわしきれず、ナギの一撃を銃で防御する。
『……さっきと……全く違う……!?』
「追撃だ!」
『おお!』
「追撃だ!」
『おお!』
ナギはバトルスタッフを刃のある方を右手に持ったまま、左手を使い中央で分割させる。
このバトルスタッフは組み立て式であり、分離できるのである。
このバトルスタッフは組み立て式であり、分離できるのである。
『隙だらけだぞっ!』
ナギは左手に持った、バトルスタッフの刃のない分割させた下部分を少女の脇腹に食らわせた。
『くっ!?』
『たあっ!』
『たあっ!』
少女の体勢が崩れ、防御が薄くなる。
『く……あっ……!!』
『はああっ!!』
『はああっ!!』
ナギは少女が防御に使っていたその銃を足場に高く跳ぶ。
その跳んだ高さは立っているハヤテの顔くらいである。
その跳んだ高さは立っているハヤテの顔くらいである。
『なっ……!?』
少女はナギが飛ぶときに両手に持ち防御していた銃に体重をかけられ、体勢を崩し仰向けに倒れる。
その眼には、太陽を背にして分割したバトルスタッフを両手に1つづつ持ち、自分に向かって真っすぐ降りてくるナギの姿が映っていた。
その眼には、太陽を背にして分割したバトルスタッフを両手に1つづつ持ち、自分に向かって真っすぐ降りてくるナギの姿が映っていた。
「これで……」
『止めだ!』
「『必殺・老人斬り!!』」
『止めだ!』
「『必殺・老人斬り!!』」
必殺老人斬り。
ナギの漫画に出てくるキャラクターの必殺技である。
ちなみにナギの画力が画力であったため、その技の全貌は不明。
ナギの漫画に出てくるキャラクターの必殺技である。
ちなみにナギの画力が画力であったため、その技の全貌は不明。
『くっ!!』
少女は目を瞑り、トドメの一撃を受ける瞬間を待つしかなかった。
しかし、どれだけ待っても少女に衝撃が来ることはなかった。
しかし、どれだけ待っても少女に衝撃が来ることはなかった。
『……?』
少女が目を開けると、バトルスタッフは少女の眼前で止まっていた。
『……私達の……』
「勝ち、だね」
『……』
「勝ち、だね」
『……』
少女は自らの敗北を悟り、ふぅ、とため息をついた。
『何故……トドメを刺さなかったのですか?
勿論、トドメを刺されたとしても壊れることはありませんが……』
「いやその、違ってると恥ずかしいんだけれども……」
勿論、トドメを刺されたとしても壊れることはありませんが……』
「いやその、違ってると恥ずかしいんだけれども……」
ハヤテは自分の頬を指でなでながら言う。
「応戦するならば~とか、投降した場合停学になる~とか。
なんだか、わざと僕達と戦おうとしてたように思えるんだよね」
『というか、言動も支離滅裂だったしな。
戦闘前には無理にでも戦おうとしていたかと思えば、
戦闘中には投降したらどうだとか言っていたし……』
「それに、神姫が校則違反を取り締まるのってなんかおかしい気がするし……」
『最初の射撃も、わざと外したのだろう?』
『……』
なんだか、わざと僕達と戦おうとしてたように思えるんだよね」
『というか、言動も支離滅裂だったしな。
戦闘前には無理にでも戦おうとしていたかと思えば、
戦闘中には投降したらどうだとか言っていたし……』
「それに、神姫が校則違反を取り締まるのってなんかおかしい気がするし……」
『最初の射撃も、わざと外したのだろう?』
『……』
少女は黙る。
図星のようであり、それを悟られたことに気付いたのか、少女は語り始めた。
図星のようであり、それを悟られたことに気付いたのか、少女は語り始めた。
『そこまで分かっているのならば……仕方ないですね』
そう言うと少女は後ろを向く。
『杏子 さん、もうお遊びはやめにしましょう』
「え、誰に向かって……?」
「え、誰に向かって……?」
少女の向く方には、屋上の入口しかない。
『……! ハヤテ!
上だ!』
「え?」
上だ!』
「え?」
ナギの言う通り、上を見る。
すると屋上入口の屋根の上に、人間の少女が腕を組んで立っていた。
茶髪をポニーテールにした、きりっとした目つきの鋭い少女である。
すると屋上入口の屋根の上に、人間の少女が腕を組んで立っていた。
茶髪をポニーテールにした、きりっとした目つきの鋭い少女である。
「……すまないな、二人共。
君達を試させてもらったよ」
「……」
君達を試させてもらったよ」
「……」
何でそんなところに?
ハヤテはそう思ったが、言うのをやめた。
ハヤテはそう思ったが、言うのをやめた。
『何故そんなところに立っているのだ?』
が、ナギはやめるという発想には至らなかったようである。
「おお、すまない」
その言葉と同時に、彼女は屋根から飛び降りる。
「え、ちょっ……」
ハヤテが止める間もなく、トン、という音を立てる床と彼女。
ハヤテの心配も露知らず、彼女は平然と着地した。
漫画的表現をすれば砂煙がそこら中に沢山舞っているであろう。
ハヤテの心配も露知らず、彼女は平然と着地した。
漫画的表現をすれば砂煙がそこら中に沢山舞っているであろう。
「話す時は、対等の高さで目を合わせるべきだな」
「……」
「……」
ハヤテは平然と着地したことに驚き、なにも言うことができなかった。
「見ていたぞ、今のバトル。
実に見事だった」
「あ、ええと、どうも……」
「すでに分かっているとは思うが、停学の話は全て嘘だ。
屋上に入る程度で停学になるなどはあり得ないさ」
「……ですよね、安心しました。
何となくわかってはいましたけど……でももし本当だったらどうしようかって思っちゃいましたよ」
「ははは、そんなバカな話は無いよ」
実に見事だった」
「あ、ええと、どうも……」
「すでに分かっているとは思うが、停学の話は全て嘘だ。
屋上に入る程度で停学になるなどはあり得ないさ」
「……ですよね、安心しました。
何となくわかってはいましたけど……でももし本当だったらどうしようかって思っちゃいましたよ」
「ははは、そんなバカな話は無いよ」
少女は笑いながらハヤテに告げる。
どうやら本当に全て仕組まれていたようである。
どうやら本当に全て仕組まれていたようである。
「桜花 も、疲れただろう。
休んでいていいぞ」
『……ありがとうございます』
休んでいていいぞ」
『……ありがとうございます』
桜花、それがこの少女の名前のようである。
『……少々失礼します』
桜花はペコリとお辞儀をした後、杏子の制服のポケットに潜った。
『……それにしても』
ポケットの中から勝者である二人を見上げる。
この時、少女の頭には少々疑問が浮かんでいたのである。
この時、少女の頭には少々疑問が浮かんでいたのである。
『……あんなに息の合った戦いが、最初からできるものなのでしょうか……?
いや、それどころか……』
いや、それどころか……』
桜花が深く思案を巡らせているのに気付かず、杏子はハヤテたち二人に対して話を続けていた。
「そこで、君たちに……
今のバトルの腕を見込んで話がある」
「えっ、僕達に……?」
『話……?』
「そうだ、君達でなければ頼めない」
今のバトルの腕を見込んで話がある」
「えっ、僕達に……?」
『話……?』
「そうだ、君達でなければ頼めない」
その少女は一拍置いて口を開く。
そしてその口から出た言葉が、この物語の始まりを告げる一言であった。
そしてその口から出た言葉が、この物語の始まりを告げる一言であった。
「生徒会に、入ってみないか?」
第1話
「ナギのごとく!」完
「ナギのごとく!」完
「私、生徒会長の補佐をしております、桜花と申します……」
ナギ『君も今日から、神姫マスターです!』