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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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武装神姫のリン
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「ここか」

 俺達がビーコンの信号を頼りに電車とバスを乗り継いでたどり着いたのは、港湾地域の貸倉庫街だ。
 この一帯は神姫ユーザーには【貧民街】(スラム)、ないし【無法地帯】(ロウレス)などと呼ばれている。
 由来は読んで字のごとく。無法バトルが行われる温床となっているのだ。
 とはいえ、無法と言ってもそれは日本の法律ではなく、飽くまでMMS管理機構の提示するオフィシャルルールに依るものでない、というだけもの。そのため警察は何かしらの被害届でもない限り動くことはできず、大体の被害者は裏バトルであることをわかっていて参加しているため、泣き寝入りすることになる。結果誰の手出しもできない状況が出来上がったわけだ。
 ――しかし、十二月ごろに、このあたりで違法神姫バトルをつぶしまくった謎のシスター型神姫がいたらしく、最近は最盛期ほど危険ではないらしい。もちろん、油断ができるほどではないが。

「もーいやー……一時間も歩くとか聞いてなーいー……歩くの疲れたー……幸人、おんぶー」
「死ね」
「ひっど!?」

 愛のボケをいちいち拾っている余裕などない。クズハの言が正しければ、下手をすると人死にが出かねないのだ。こいつはもっとその辺を自覚すべきだと思う。
 それとも、ファーストランカーって人として何か失くさなきゃなれないのだろうか。だったら俺は一生セカンドのままでいい。
 一方、クズハは。

「どうだい。エンノオヅヌの調子は」
「はい、快適です。これでバッテリーに負荷を与えずに済むんですね?」
「君の。もとい君たちの戦闘傾向を分析した結果。余剰電力をバッテリーにプールさせるよりはこちらの方がいいだろう」

 ヒルダの武装、【エンノオヅヌ】につけられた追加パーツを含めた最終調整を歩きながらしていた。
 なんでも、ヒルダは相手から吸電したあとそれをすぐ相手に返すような戦いを得意とするらしく、今までのようなバッテリーに電力を溜める方法だと、バッテリーがひどく劣化するそうだ。
 それを防ぐために、エンノオヅヌの後部に新しくパーツが取り付けられ、それからのびたワイヤーが、両肩に付けられたイーダ型純正エアロパーツを改造したコンデンサーに繋がっている。

「……お前ら、のんきだよな」

 ぼそっとしたつぶやきにクズハが反応する。

「何を言ってるんだ。君は」
「人死にが出るかもしれないって言ったのおまえだろ。なんでそんなのんきなんだよ」
「【カンダタ】が暴走していたら。少なくとも倉庫の一つぐらいはつぶれていると思う。静かだということは何も起きてない」

 もう終わったあとかもしれないが。という極悪な一言を残してクズハが歩き出したので、あわてて追う。愛がなにかうだうだ言っているようだが聞こえない。
 倉庫街の割と奥に入り、そのうちの一つの前で立ち止まる。クズハは持っていたタブレットPCを起動させる。

「間違いない。ここだ」
「……中に入って死体とご対面、なんてゴメンだぜ」
「それは保証しかねないな」

 おい、という俺のツッコミは無視して、クズハは倉庫の傍らにある作業員用の入り口を開けて中に入っていく。
 後を追うと、様々な機材やコンテナがおかれており、それらが取り囲むようにぽっかりとあいた空間があった。
――その中に、異物が一つ。一人、というべきか。
 その広い空間のど真ん中で、誰かが座りこんで作業をしていた。
 ……露骨に怪しい。

「おい、アンタ。何してんだここで」

 無遠慮に声をかけるのは得策でない気もしたが、この倉庫に遮蔽物なんて隅に積まれているコンテナ程度しかない。さっさと要件を済ませたいという気持ちも手伝った。
 声をかけられた人物はびくり、と肩をあげ、はじかれたように振り向く。
――地味な男だった。
 倉庫街よりかはオフィス街にいた方がしっくり来そうな、グレーのスーツを着たやや小柄な男だ。その前には、おそらくクズハの探しものであろうアタッシェケースがおかれている。
 ちらっと見た限りだが、なるほど。こちらが今持っているケースとやや似ている気はする。取り違えも起きそうだ。

「な、なんだい君たちは。どこから入った」

 質問に質問で返してくるあたり、よっぽど余裕がないらしい。
 俺は無言で後ろのドアを指差した。
 男は頭を抱えてぶつぶつつぶやきだす。「鍵をかけておくべきだった」とか、なんとか。

「どうやら。カンダタを起動させる前のようだね」
「……つまり、俺たちが――というか、ほぼ俺一人が危惧していた、人死にがでる可能性は今のところゼロだと?」
「そうだ。さっさと要件をすませてしまおう」

 クズハは一歩前に出て、俺に持たせていたアタッシェケースを受け取り、男に向かって突き出した。

「君が今開けようと奮闘しているアタッシェケースは、申し訳ないがボクのだ。おそらくだが、こちらが君のだよ」
「え……」

 男は眼を瞬かせてこちらを見、自分のいじっていたケースを見、そしてもう一度こちらを見る。
 そして頭をかき、ひきつった笑い――多分苦笑いしたいんだろうな――を浮かべながらこちらにやってきた。

「いやあ、取り違えてしまったようで申し訳ない。正しいパスワードを入れたはずなのに、開かなくてどうしたものかと思っていたんだ。それをこちらに返してもらえないだろうか」
「かまわない。こちらも自分のケースを探しに来ただけだからね」

 そしてケース同士を交換する。男は自分のケースに何かを入力するとそれを開き、中を見て安堵のため息をついた。

「いやあよかった。これで上に怒鳴られなくてすむよ」
「それは重畳。こちらも正しいケースが見つかってよかった」

 クズハも中を確認して、頷いていた。どうやらこれで任務完了と言ったところか。

「なーんだ、結局何もなかったんだね、つまんない」
「つまんないってお前。何もない方が平和でいいだろうが」

 ふてくされる愛を呆れながらたしなめる。
 そしてその背中を押しながら帰ろうと踵を返した。その時。

「……ところで。君は何故そんな代物をここに持ってきている?」
「「……は?」」

 俺と、男の両方から疑問の声が出た。

「そのケースの中身。申し訳ないが見せてもらった。あれはロボット用の特殊な思考AIルーチン。そうだね?」
「――っ」

 男の顔色がさっと変わる。俺はクズハが何かとんでもないことを暴露しようとしていることにようやく気がついた。

「ざっと眺めただけだけど。素晴らしい出来だった。あれは個人で作れるような代物ではない。間違いなくどこかの大きな企業のチームが作ったものだ。しかも極秘裏に」
「そんな明らかに極秘指定になるような物を。こんなうらぶれた倉庫街に持ってくる理由。……君は産業スパイだ。間違いなく」

 クズハの宣告。男の顔は真っ青を超えて既に白い。そしてヒルダが思い出した。

「――! マスター、そういえば今朝ニュースでやってたじゃないですか! 神姫用の新型思考ルーチンが開発されたって! あの人が持ってるの、もしかして――」
「失敗をしたな、使えない奴め」

 別の男の声が倉庫の中に響いた。次いで足音が響く。
 その方向を見やると、反対側の入り口から一人の男が入ってきていた。
 白いスーツを身にまとった、白人の男だ。

「も、申し訳ありません!」

 グレースーツの男が、腰を90度に曲げて、白人に謝罪する。どうやら、この男が取引の相手か何かのようだ。
 というか、産業スパイって……。

「外国が、日本の技術を狙ってくるとか、本当にあるんだな……」
「日本の手先の器用さは世界でもトップレベルさ。誰かが作った物をよりよく改良していくのは。日本人の国民性と言ってもいい」

 俺のつぶやきに、クズハが答えた。

「ふん、極東の黄色いサルなどそれしかできんのだ。そのゴミ溜めの中のわずかな原石を我々優良人種が拾い上げてやろうというのだからな、光栄に思え」

 …………あんだと?

「おい、クズハ。この外人、なんかとんでもなく失礼なことを言った気がするんだが」
「失礼も失礼。特級の侮辱だ。というか。未だに白人至上主義なんてものがあったことに。素直に驚く」

 流石のクズハも顔をしかめていた。昭和時代の漫画ぐらいでしか聞いたことねーぞ黄色いサルって。
 外国なんて縁もゆかりも無い俺ですら腹が立つ。こいつ、日本人にケンカを売りに来たのか?

「ねーねー、今あの人なんか言ったの?」

 前言撤回。弩級のゆとり世代がここにいたわ。
 世界が愛のように能天気だったら世界は平和かもしれない。
 いや、それは平和というかもはや混沌とか伏魔殿(パンデモニウム)……。

「き、君たち。ここで見たことはすぐに忘れて家に帰るんだ。いいね?」

 日本人の男がこちらを帰そうと促し、アッハイと危うく返事をしそうになるが……いやまて、別に帰ってもこちらには何の問題もないな。俺はクズハの探し物につきあっただけだし。世界にはいろんな人がいるんだなあという日本人的ノリで今回のことは片付けて――

「いや、この取引を見られたからにはただでは返せないな」

 白人に呼び止められる。俺はクズハと愛より一歩前に出た。

「黄色いサルと会話をしたいと思うとはずいぶんと酔狂だな、オッサン?」
「サルが人語を介するとは驚きだ、その苛立つ態度はその知能に免じて許してやる」

 あー。うん。流石に頭に血が上ってきたな。とはいえ逆上して相手のレベルに合わせてやるのも癪だ。

「――なるほど。白人至上主義と言ったけれど。訂正する。君はとんでもない狂信者のようだ」

 唐突に放たれたクズハの言葉に思わず振り向く。クズハは白人の胸元をじっと見つめているようだ。

「胸ポケットから見えているチェーンの先端。ついているのは鉤十字(ハーケンクロイツ)だ。公の場でそんなものを付けていて許されるのは。この国ぐらいだ」
「サルごときにこの紋章の価値がわかってたまるか。我らが総統(マインフューラー)が意思、末代まで受け継がねばならんのだ」

 なるほど、ナチズムってやつか。歴史から駆逐された思想が、まだ生きていたとは恐れ入るぜ。

「公に言えば袋叩きにされてもおかしくないけど。勝手に思っている分には問題ないから」
「そんなもんかねえ」
「日本でも、嫌われている宗教や思想はあっても。大っぴらに言わなければ生活していけるだろう?」

 それは道理。

「んーと、つまりあの外人はドイツ人で、日本の企業の技術を盗みに来たって事?」
「……愛、お前何にも考えてなさそうで時々正鵠を射るよな」
「あんたあたしの事馬鹿にしてるでしょ幸人」
「愛ちゃん馬鹿にされてもしょうがない頭してますよー?」

 リーヴェの声に白人は目を細めた。

「ほぅ、サルが神姫を持つのか。さて、どちらがオーナーかわかったものではないな」
「リーヴェが愛の本質的なマスターであることは誰の目にも明らかだが、こいつと他の神姫ユーザーを一緒くたにすんなクソ外人」

 中指立てて宣言してやったら、無言で愛に殴られた。いかんつい本音が。

「こい、ケーニヘン! やつらを包囲し、拘束しろ」
「ヤー!」

 白人の鞄から飛び出してきたのは一体の神姫だった。
 巨大な副碗に、神姫史上最大ともいえる滑空砲を持つ機体。フロントライン製戦車型MMS。FL802ムルメルティアだ。
 素体と副碗の接続部付近に、見慣れないパーツがある以外は、割とベーシックなアセンブリのようだ。
 海外製のパチモンが出てくると思ったら、意外と普通のが出てきたな。ケーニヘンってドイツ語っぽいが、一体どういう意味だろう。

「ドイツのティーガーⅡ戦車の別称にケーニヒスと言うのがある。おそらくに女性詩を合わせた造語じゃないかな」
「解説どうも。……オッサン、神姫1体で俺たち3人を捕まえるってのは、物理的に無理があるぜ」

 ヒルダが床におろしながら言う。愛もリーヴェも準備はOKのようだ。

「ならば、数を増やせばいいだけだ」

 白人がそういうとケーニヘンがさっと、休めの体勢を取って、叫んだ。

「全隊! 前へ!」

 白人の鞄から、新しい影が飛び出してきた。のっぺりとした顔に、なんの装甲も付いていない素体。ただのトレーニング用MMS素体のようだ。
 愛が鼻で笑う。

「ふふん、そんなのっぺらぼうがたかが1体増えたところで――」

 白人の鞄から、新たに二体の影が飛び出してきた。先ほどと同じ、MMS素体。

「――3体増えたところで――」

 さらに4体。いや、追加で5体。

「……えーっと、今何体――」

 6体。12体。24体――。

「――幸人ぉ、どうしよう……」
「……俺に助けを求めんなよファーストランカー」

 呆れた。ほんっとうに呆れたのは――白人が持っていたカバンからゆうに100体近いMMS素体が飛び出してきたことだ。
 数の暴力だとか、圧倒的戦力差だとか、そんなチャチなもんはどうでもよくなり、一体どういう風にそのケースに100体も収納していたのか、というどうでもいい思考に頭が回転し始める。
 なお、こういう現象を客観的にいって、現実逃避という。

「つーかそれ、全部プチマシーン扱いかよ……」

 こちらの携帯アプリに搭載された敵味方認識システムでは、素体のCSC部分に反応はない。つまりあれらは、適正な方法で動かされている素体ではないという事だ。

「驚いたかサルめ。これが我が最強の部隊、ゲシュペンスト・ヘレ(地獄の幽霊部隊)だ! その指示ははすべて我が愛機ケーニヘンによって統括され、しかも――脳波コントロールできる!」

……今コイツなんていった?

「神姫に脳波なんてものはないから。おそらくバックパックに搭載されているあの機器が電波を発信して素体のコントロールをしていると思う。」
「いやクズハ、俺が言いたいのはそこじゃなくてだな」
「あーもう、どうでもいいわよ。あれ全部ぶっ倒しちゃえばいいんでしょ?」

 どうやら愛は、考えることをやめたようだ。リーヴェも全スラスターをふかしてやる気十分のようである。

「マスター、いろいろと思うところがあるんでしょうけど、今は目の前の困難を突破しましょう! 考えることは後でもできます!」
「はぁ……そうだな、ヒルダ。よし、あのクソ外人の鼻をあかしてやるぞ」
「はい!」

 ヒルダがエアロヴァジュラを構え、リーヴェが副碗のジークリンデを一振りすると、相対するMMS素体達が一斉に各々の武器をこちらに向けてきた。
 彼我の戦力差は50倍。状況だけ見れば絶望的な突破作戦が幕をあけた。





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