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 第二十五話 「俺がメリーで私がアキラさんで 中編 ―女神様の憂鬱―」




 ※※※


 城ヶ崎玲子の仕事場兼住居は、横浜市内の小さなマンションの一室にある。
 六畳間ほどの部屋には、ベッド、パソコンラックと小さなテーブル、それから床中に散乱した電子機器のコードや、片づけられていない衣服。かなり雑多な印象を受ける。
「ふーふーふーん♪ ふぅーふぅーふーん♪」
 玲子は回転いすに座って、何やら上機嫌でキーボードを叩いていた。服装は薄い紫色のキャミソールにショーツという、少々刺激的というかだらしない恰好。パソコンにつながったクレイドルが時折赤く発光し、扇情的な陰影を浮かび上がらせる。
「……玲子、少しうるさいわ。静かにして頂戴」
 玲子の右手、ベッドの頭の方から声がかけられた。アテナが、玲子に図書館から借りてこさせた本の上にまたがって読んでいるのだった。彼女の周囲だけは性格を表すかのように綺麗に片付いており、アクセサリーを入れるような小箱や、神姫が座るチェアーがある。
「あら、ごめんなさいねアテナちゃん。文字媒体だと分かりづらかったかしら。読者の皆さんはリズムを口ずさんでみてね」
 明らかにふざけた調子の玲子に、アテナは警戒心を強めた。
「……どうかしたの?」
「いえいえ、別になんにもないわよぉ。……そういえばアテナちゃん、そろそろメンテナンスの時間じゃないかしら」
 わざとらしい玲子の様子に、アテナはさらに不信感を募らせる。試作型である彼女は、アキュート・ダイナミックス社に送信するデータの収集のため、普段から一日に何度かデータのバックアップや体の調子を見ている。が、今の玲子の様子ではおいそれと体を預けられない。
「遠慮しておくわ。今丁度面白いところなの」
「まぁまぁ、そう言わずにね? ほら、丹波主任からこのディスクを預かって来ててね、アナタにインストールして欲しいんですって」
 玲子はラックからCD‐ROMを取り上げると、ひらひらと左右に振って見せた。アテナは少しの間、玲子のにやついた表情を眺めていたが、やがてため息をついた。
「……本当にドクター丹波のものなの?」
「もちろんよぉ」
「……ハア。ならいいわ。その代わり、おかしなものだったらただじゃおかないから」
 アテナはゆっくりと、しかし軽やかな身のこなしでベッドから棚へと飛び移ると、クレイドルに横たわった。
「ん……」玲子がキーボードを叩く音と共にデータが流れ込み、アテナはしばらく意識を沈める。

 そして目を覚ました時……


「……はい、終わったわよ♪」
「ん、全く……異常『にゃ』んてどこにも『にゃ』いでしょう?」


 起き上がり、髪を掻き上げたアテナは、真っ赤な顔で噴き出すのをこらえている玲子を見た。
「ぷ!……く、く……!」
「? 玲子、にゃにを驚いているにょ……にょ? にゃっ、にゃに!?」
「あっはははははは!あーーっははははは!」
 椅子から転げ落ち、床をのた打ち回る玲子の反応に、アテナはようやく何が起こったのか理解できた。
「……玲子ッ!!」
「ひひ、あはははっあははは!」
「こんにゃことをして、ただで済むと思っているにょ!?」
「ぷはーっはははは! やばっ、これ反則……ぷくくっ、はははは!」
 おかしな語尾のせいで、怒っても全く迫力がない。まんまと嵌められたのだ。恐らくはあのCD―ROMに入っていたデータに違いない。
「一体私ににゃにをしたにょ!?」
「ひーっ、ひーっ……」
 喉をひきつらせながら玲子がパソコンの画面を指さす。アテナが目を凝らすと、画面には『自己責任』なる名前の何やら怪しげなサイトと、パッチを表すアイコンが表示されていた。
「これは!?」
「ひっ、ひっ、面白いパッチが揃ってるって、知り合いに紹介されてねぇ。ほらこれ、適用した神姫が『にゃ』ってしゃべるようになるんだって。あて、アテナちゃんに試したらどうなるかなって思って、新バージョンにラプティアスが対応してたから、使ってみたのよ。そしたら……あっははは!」
 玲子の説明を聞くたび、アテナの怒りがふつふつと煮えたぎる。「こんにゃ……こんにゃ屈辱……!」そして自分の言葉さえも、火に油を注ぐがごとく、怒りのボルテージを上げてゆく。
 今までも、覚えておくだけで記憶領域の無駄になるほど玲子にちょっかいを出されたり、迷惑をかけられては来たが、こんな辱めを受けるのは初めてだった。
「あっはは……『にゃ』って……『にゃ』だって! 可愛すぎるでしょもう……」
 床に転がる玲子は、静かにアテナが武装を転送し、まとったことに気づかなかった。
 いつまでも笑うのを止めない玲子に、ゆっくりと、しかしついにアテナの怒りが頂点に達したのだ。
「レぇイコぉぉぉーーーーーっっ!!」
 突然、怒号と共に背部のスラスターから暴風を放ち、部屋中の物を巻き上げる。雑誌や書類が、木の葉や小鳥のように宙を舞う。
「うわっぷ! ちょっとアテナ、アンタ何して……きゃああああっ!?」
 手を伸ばした玲子の顔面にチラシが張り付いた。アテナはそれをかわして、突風や紙束の中を突っ切り、勢いよく窓ガラスを砕いて外に飛び出した。あとを追うように、ごみ袋や下着の類が外に吸い上げられてゆく。
「あぁーーーっ! ちょっとアテナ、どこ行くのよーーーぅ!!」
 知ったことじゃない。遥か下から小さく聞こえた叫びに、心の中で舌打ちをした。




 ※※※




 噴水の縁にアテナと二人で腰かけて、話の一部始終を聞き終えた俺は、
「そして決めたわ……パッチを開発した神姫を見つけて解除法を聞きだす。そしてもうあの女のところには絶対に帰ってやら『にゃ』いって」
「ぷくく……」
 ……笑いをこらえるのに必死だった。
「ちょっとウェイトレス! 貴女(あにゃた)、今笑ったでしょう!」
「す、済まねえ。でも……くっくっくっ」
 アテナには申し訳ないが、その、普段のクールな表情で『にゃ』とかしゃべられると、ギャップが物凄いせいで笑いがこみ上げてきてしまう。
「はぁ……もういいわ。それより、貴女はどうしてこんにゃ場所に?」
「お、俺!? あ、いや私は」
「オーナーと喧嘩でもしたの?」
「失礼な! 誰がンなことするか!」
 言ってしまってから、『島津 輝』になってしまっていたことに気づく。
「おほ、おほほほ。私、そんなことしませんわ」
「そう。うらやましいわ、優しいオーナーのもとにいられて。……じゃあ、今夜はどうしてここに?」
「あー……や、その」
 どう説明したものか。とりあえず、当たり障りのない範囲で言葉を選ぶ。
「わ、私のマスターがですね、ここに住んでる猫型神姫に大切なものを取られてしまってですね。それを取り返しに来たって話なんです」
「猫!?」
 アテナが声を荒げた。
「私もそうにゃのよ。この、おかしにゃプログラムを作った神姫がこの公園に潜んでいるって情報を受けてね。何とか見つけ出して、解除する方法を吐かせようと思ったにょ」
「へ~、そうなんですかぁ」
 ……間違いない。あのカグラとか言う猫型の仕業だ。アイツの科学技術は一体なんなんだ。
 そんなことを考えていると、突然砂埃を含んだ風が勢いよく吹いた。「うわっ!」風はあっという間に駆け抜けていったが、俺もアテナも全身砂埃にまみれてしまった。
「ぺっ、ぺっ」
「……くっ、やっぱり外は埃っぽくて耐えられにゃいわ」
 アテナはバイザーを脱いで、頭を左右に振った。灰色の髪にちらほらと黄土色の砂粒がくっついているのが分かる。
「第一設備が整っていにゃさすぎるのよ。体を洗う場所も、石鹸もシャンプーも無いだなんて」
 ほこりを払いながら、アテナは言った。神姫用のシャンプーも石鹸も、神姫が普通に生活をする分には必ずしも必要が無いもので、だとするとこいつは普段からどんな生活を送っているんだろう。
「ああ、全く! ……仕方がにゃいけれど、これで我慢するしかにゃさそうだわ」
 そう言うとアテナは、俺の見ている前で次々に武装を解除し始めた。足から背中、胸へと、素体が露わになってゆく。
「なっ、ちょっ、お前、何してんの?」
「何って、ここで体を洗ってしまおうと思ったにょよ」
 アテナが指さす先には、月光を反射してゆらめく水面が。夜中だからか噴水自体は止まっているが、俺たちの足元にはまだ水が蓄えられていた。
「洗うって、ここでか?」
「そうよ。良ければ、貴女も一緒にいかが? ここで会ったのも何かの縁かも知れにゃいし、ここだけにょ話、一人でお風呂に入るって寂しいにょよ」
 呆気にとられる俺を尻目に、アテナの手が俺の武装を脱がしにかかった。



「あの、アテナさん、くすぐったいので自分で洗ってもよろしいでしょうか」
「あら、それだと背部や肩関節の隙間の汚れが落とせにゃいわ。手伝うから少しだけ待っていて」
 ……こりゃ一体どういうことだ。
 あろうことかあの全国ランカーの神姫、普段からお高くとまったアテナ嬢が、公園の噴水で俺の背中を流してやがる。
 これだけ聞いてうらやましいだとか、島津爆発しろとか思った武装紳士諸君よ、頼むから俺と交代して欲しい。
 アテナは武装を解除するのみならず、さらに素体の上に着ているインナースーツまで脱がしにかかった。恥ずかしいから辞退すると言い張ったが、ネットワークを検索した結果、この時間この辺りをうろつく人間はごく僅かだと、無理矢理に脱がされた。この神姫、常識があるのかないのか分からん。
 しかも体を洗う段階になると、タオルも何も用意していないから、アテナの手が背中をそのまま擦る結果になる。文句を言おうにも後ろを向けば俺と同じように裸のアテナ様がいらっしゃるわけで、悶々としたまま耐えるしかない。
 身をよじる度に、周りの水面がちゃぷちゃぷと音を立てる。
「それにしても綺麗な肌ね。石鹸はどこにょメーカーにょものを使っているにょかしら?」
「あ、あの、特にそういうのは使ってないです、ハイ」
「まあ! それじゃボディのツヤやコーティングが保てにゃいでしょう。……でも、それでこの美しさなら、オーナーにとても大切にされているにょね」
「ア、 アリガトウゴザイマス、オホメニアズカリコウエイデスアテナサン」
「あら、そんにゃに堅苦しくにゃくてもよくってよ。そんにゃ話し方じゃ、まるで私や玲子に言い寄ってくる男どもみたいだわ」スイマセン、あなたの目の前にいる神姫実は男なんです。
「アノ、アテナさんは男性がお嫌いなんデスカ?」
「え? そうね……どちらかといえば好きではないわ。特に、欲望をむき出しにした男の姿は見ているだけで虫唾が走るわね」
「アハハハー、デスヨネー」
 ダメだ、ここで正体がバレでもしたら間違いなく殺される。別に神姫の裸なんぞ見たってどうしようもないのだが、そんな言い訳をしたところで許されないだろう。
「ただ」
「?」アテナが口を開いた。
「強い男性は……ほら、覚えているかしら? あの夜の事件で、共に戦ったようにゃ、強く高潔な男性には、魅力を感じるわ」
「……へ、へへへっ、いや、そうか、へへへ」
「どうして貴女が笑うの?」
「いやあ、別に。なんだ、その、ハズカシイいな。へへっ、へへへ」
「おかしな神姫ね。……ふふっ、でもなんだか楽しい。こんな感覚、久しぶりだわ」
 アテナの手が止まった。思わず振り返ると、アテナは寂しげに微笑んでいた。その外側で、灰色の髪が、月光で縁どられて輝いている。
「昔はよく、こうして妹と二人で、おしゃべりしながら湯浴みをしたものだったわ」
「妹? お前、妹がいたのか?」俺はもはや口調を直すのも忘れて聞いた。
「ええ。喧嘩なんてしょっちゅうで、ひどい時には三日も口を聞かないこともあったけれど……それでも、……大切な、妹だった……」
 アテナの視線は、目の前の俺を通り越して、別の誰かを映し出しているようだった。
「……どうしたんだ?」
「ごめんにゃさい。こんなこと、貴女に話しても仕方がないわね。さ、もうそろそろ上がりましょうか」――――



「ニャーッハッハッハッハ!!」


「ッ!?」
 突如、聞き間違えもしない、あの特徴的な笑い声が響いた。
 見れば、俺たちのいる場所から数メートル先に、小さなビデオカメラが配置されている。
「なっ!?」
「……まさか」
 一転、アテナの瞳が剣呑に閃く。それを合図としたかのように、カメラの後方の草むらから、あのマオチャオがひょっこり現れた。
「いンや~、良いモノを撮らせてもらったにゃ。こりゃいくらで売れるかにゃ? BDの特典映像にするのもいいのにゃ。笑いが止まらないにゃよ」
「それはこっちの台詞だわ。私もようやく貴女に会えて笑いが抑えられにゃいの」
 アテナは口ではそう言いながらも、鋭い視線を外さない。
「貴女にょことは調べさせてもらったわ。怪しいサイトを運営し、違法なパッチを世間にばらまく貴女を野放しにはできない」
「ニャハハ、ハダカで凄んでも仕方がないのにゃ。そんにゃら、ワガハイを捕まえてみるといいのにゃ」
「上等だわ……行くわよ!」「えっ、俺も!? ちょっ、まっ」
 言うなり、アテナは脱いでいたはずのスーツと武装を一瞬にして転送、装備した。メリーの体はあんな最近出たばっかの便利システムなんぞ装備してないので、俺は悪戦苦闘しながらスーツを再び着る羽目になった。
「はぁぁあっ!!」土煙を上げ、アテナが地面スレスレをカグラめがけて一直線に飛行する。さながら黒い矢のようだ。
「ニャハハハ、ってえええちょっオマ待つにゃ、のおおおおおう!」
 その黒い矢は、もう少しでカグラにヒットするところだった。前面に構えたポールアックスが、大口を開けて笑ったカグラの顔の中心にすっぽり突き刺さったのだ。そのまま、アテナはカグラを後ろの木に叩きつけた。
「さあ、早く私を元に戻しなさい」
「タンマタンマにゃ! 変身中・詠唱中は攻撃しないって業界のルールを忘れたのかにゃ!?」
「知らにゃいわそんなもの。これ以上ふざけるにゃら舌を抜くわよ」
「コワッ!?」
 アテナと、顔面蒼白になったカグラのやり取りの間に、ようやく俺も着替えが終わった。申し訳程度に短銃ポルボロン・ビブラーターを構え、アテナの隣に立つ。
「こいつどうするんだ?」
「言うことを聞かにゃいようなら四肢を順番に破壊するわ」
「サラリとおっかないことを言うにゃ。あんまり人様のキャラで好き勝手すると後が怖いにゃよ」
「誰に向かってしゃべっているの」
「もうこうなったらワガハイも容赦しないのにゃ。奥の手を使わせてもらうにゃよ」
 カグラは、その場ですうっと息を吸い込むと、


「来るのにゃ!ワタナベ三号おぉぉぉーーーーーーうぅ!!」


 …と、アニメのキャラじみたポーズをとって叫んだ。
「はぁ?」
 アテナが呆れたため息をついた、その瞬間。

ズドォォム!!――と。

「のわぁぁっ!?」
「きゃああっ!?」
 恐ろしいほどの地響きとともに、俺たちの体が宙に浮いた。次いで、今まで街頭に照らされていたはずの地面に真っ黒な影が差した。
 見上げれば、
「な、なんじゃ……?」
 ヘンテコな、戦隊ヒーローのおもちゃのロボットとでも表現すればいいか、そんなメタリックな巨大ロボットが俺たちを見下ろしていた。
 いや、巨大なんてもんじゃねえ。魚屋の雅彦さんぐらいはあるんじゃないかと思えるほどでかい。その割に、頭にあたる部分が良く見えないが。
「ニャッハッハ!驚いたかにゃ。これぞおなじみワガハイの切り札、ギガントプチマスィーン『ワタナベ三号』なのにゃ!」ロボットの股間の真下で、カグラは背中をそらして呵呵大笑した。
「はあっ!?こんなバカでけーのがプチマスィーンだぁ!?」
「デカくともにゃんともプチマスィーンなのにゃ。さあワタナベ三号、ブチのめしてやるのにゃ!」
『ねぇ~こォ~』と低音ボイスで鳴き声をあげたデカブツは、両手を組み合わせて目にもとまらぬ速さで、ハンマーのごとく大地に振り下ろした。
「あっぶねぇ!」
「きゃっ!……この!」
 大変な衝撃が辺りを襲う。危うく回避した俺とアテナは横に転びながら体勢を立て直すが、その時にはもう、カグラはさっさとワタナベ三号の頭の横に逃げていた。
「今夜はこの辺にしといてやるにゃ。ワタナベ三号、『遺憾の意』にゃ」
「ねぇ~~こォ~~~!!」
 ひときわ大きな鳴き声を上げたワタナベ三号が、右の鉄拳を振りかぶる。
「やべぇ、逃げるぞアテナ!!……っどわあああああ!」
「えっ、ちょっと!……きゃあああああ!」
 俺がアテナの手を引っ張って連れ出すのと、背後から襲ってきた地響きと爆風に飲み込まれるのはほぼ同時だった。



 ※※※



人気のない公園に、ちょろちょろと水音が響く。
「全く、また髪にホコリがついたわ」
「文句言うなよ。あのまま突っ立ってたら汚れるどころじゃ済まなかったぞ」
 ぶつくさと文句や不平を言い合いつつ、俺たちは水飲み場の蛇口から流れる水で、頭や身体を洗っていた。
「しかし、あの戦力は想定外だったわね」
「あ~、そうだな」
 どっからどうやって出現したのかは未だ分からないが、確かなことはあの巨大ロボットがいる限りカグラに手出しするのは難しいということだ。
「あの猫型……次は逃がさにゃいわ……」
「分かったからそう熱くなるな。今日はこの辺にしとこうぜ」
 ギリギリと音を立てて拳を握りしめるアテナを諌め、思う。明日からまた神姫としての生活を送らねばならない。そう考えると気が滅入る。一度帰って寝れば気分も晴れるだろうか。
 帰る前にアテナに挨拶くらいするか……そう考えた時、視界の端に小さな白いものが映った。
「ん?」
 そいつは俺の視線に気づくと、ちょこちょこと植込みの陰に隠れた。
「なんだ?」
「そこの貴女、出てきにゃさい!」
 アテナがそいつの姿を目ざとく見つけ、鋭く警告した。白いものはビクッと体を震わせるような動作をした後、こっちを見た。
「……マオチャオ?」
 そいつはマオチャオ型の神姫だった。しかし、カグラとは違ってビクビクとおびえた表情でこっちを見ている。
 ふいに、そいつは背を向けて植込みの中に駆けだした。
「あっ!ちょっと待てお前!」
 慌てて後を追う。揺れる尻尾を見失わないようにして、がさごそと茂みの中を抜ける。光が見えたと思った瞬間そこに、

―――にゃあにゃあ。
―――にゃあにゃあ。

 ……おかしな光景が広がっていた。
「……なんじゃこりゃ」
「これ、全てマオチャオだというの?」
 茂みの中にぽっかりと空いた、広々とした空間に、何十匹というマオチャオが輪になって集まっている。何やら和気あいあいとした雰囲気だ。俺とアテナはあっけにとられて見ているばかり。
 だがそのうち一匹――さっき逃げ出した奴だ――が、ふと俺たちの姿を認めると、途端に大騒ぎになった。
「にゃっ! お、追って来たのかにゃ!」
「誰なのっ、誰なの!?」
「ぼ、ぼくたちは知らないですよ!?」
「なんで自分を見るんッスか!濡れ衣ッス!」
 よく見るとマオチャオだけでなく別の種類も混じってるみたいだが、マオチャオ集団はずざざっと音を立てる勢いで俺たちのいる反対の方向へ固まった。
「お前たち何者なのにゃ!」
「はぁ?いや、何もしねえから安心しろっての」
「質問に答えるにゃ!返答によってはただじゃおかないにゃ」
 ベタな脅し文句を口にしつつ、マオチャオ共が手に手に武器を構えた。ドリル、手甲、巨大肉球エトセトラ。さっき逃げた奴を先頭に、ここから俺たちを逃がすまいという殺気が伝わってくる。それに対して、俺の隣のアテナも、
「……へぇ、ただじゃおかない、ですって?」と、張り付いた笑みで大剣の先端を地面につけた。いや女神さん、さっきからマオチャオにイラついてるのは分かるけども、ちょいと脳筋すぎやしませんかね?
 仕方なしに徒手でファイティングポーズをとる俺。互いの陣営に一触即発の空気が流れる。

「そこまでにしておけよ、お前たち」

 ふと、声がかけられた。
「ん?」
 見上げる俺たちの上から、またもやマオチャオが一匹――いや、マオチャオに続いて、アルトレーネが降ってきた。
「ぺっぺっ。なにもあんな場所から出て行かなくたって良かったじゃないですか」
 体にまとわりつく木の葉を払いながら、着地したアルトレーネが言う。マオチャオの方は、俺たちにゆっくりと顔を向けた。右目には、なんと眼帯がついていた。
「すまない、アイツらが驚かせたようだな。俺の名はホムラだ」
 ホムラと名乗ったマオチャオは、落ち着いた態度で話し出した。驚いたことに、ホムラは体のあちこちに追加のパーツを着けている。
「なんだ?何かおかしかったか?」
「あ、いや、なんでも」
 慌ててとりつくろったが、動揺は隠せない。ホムラのパーツからはまるで、人間でいうギブスのような印象を受けるからだ。
「ふむ。……お前たちは?」
「ああ、俺はあき、じゃないメリー。こいつはアテナだ」
「! そうか、お前たちがカグラに……。すまない、俺の連れが迷惑をかけたな」
 目を大きく見開いたホムラは、深々とこうべを垂れた。
「お、おいおい。そりゃお前のすることじゃないぜ」
「そうですよ、後であのバカに謝らせればいいんです」
 横から、アルトレーネが口をはさんだ。本人は無意識だったのか、
「――あっ、申し訳ありません。まだ名乗ってなかったですよね。私はアマティです」このアルトレーネもおかしな部分があって、頭に『ネコミミ』がついていた。マオチャオなんかの耳とは大違いで、質感から、果ては『生え方』まで本物の猫そっくりだ。
思わず見とれていると、アマティは顔を赤らめた。
「あんまり見られると困ります。……それでその、カグラがご迷惑を」
「あー、もういいっつの。いや良くねえけど。それで、アンタらはカグラの仲間なのか?」
「仲間――というか。腐れ縁ってやつですかね」
「全くだな」
 アマティとホムラは同時に笑った。が、その笑い方は対照的だった。カグラの方からはどちらかというと、皮肉めいたものを感じる。
「ただ……あのバカ猫のこと、嫌いにはならないで下さいね」
 一転、アマティが寂しげに笑った。
「え?」
「彼女にも色々背負ってるものがあるんです。それが時々、イタズラとして外に噴出しちゃうだけなんです」
 それからすぐ元の調子に戻って、
「ま、アイツはマンションから落ようが何されようが死なないので。次会ったときはキツくとっちめちゃってください」
 アマティはたははと笑った。
 俺とアテナは思わず顔を見合わせた。



※※※


東の空が白々と明けはじめるころ、俺とアテナは公園の入り口まで戻って来ていた。
「結局、元に戻れなかったなぁ」
「いいえ、次は……次こそはあのマオチャオを捕まえて見せるわ」
 アテナは背後でメラメラとオーラを燃やしながら答えた。
「とか言って、さっきのアマティ?の話、気になってんじゃねーのか?」
「にゃっ!? にゃにゃ、何を言ってるのかしら?」
 猫語をしゃべりながらあたふたと両手をせわしなく動かす姿が、少しあざとい。
「っ……からかわないで頂戴。あんな話、聞いたからと言ってにゃんだというの。私はハンターよ、ハンターは感情に左右されたりはしないのだわっ」
「はいはい、分かったよ。今日はもう帰るぜ。なんだか体がだるいんだ」
 さっきから全身を虚脱感が包んでいる。すぐにでも横になって眠りたい気分だ。
「お前はどうするんだ? 良かったら家に来るか?」何の気なしに、アテナに声をかけた。
「……お言葉に甘えたいところだけれど、遠慮しておくわ。貴女のオーにゃーに迷惑はかけられないし、それに電池パックくらい、コアチップに登録したライセンスを見せれば顔パスで手に入るわ」
「……ずっりー」
 思わぬところで全国ランカーの特権というものを見せつけられた。うらやましい反面、メリーや雅にそんなことをされれば気が休まらないだろうなと思った。


※※※



それから二日、何事もなく時間が過ぎた。
俺もメリーも、少しづつ体の変化に慣れてきたところだ。今はこの体でしかできないことを楽しむ余裕さえ生まれている。
「よっ……と。へへっ、慣れりゃ楽なもんだ」
『何言ってンスか姐さん、ずっと俺らのこと使ってるじゃないスか』
「おっとそうだった。いけねえいけねえ」
 通学中ツクモに乗って、空中でターンを決める。ある程度ツクモの方でも動きを制御してくれるのでやりやすい。さすが俺と直也の設計した武装だ。
「ふふ、どうですアキ……んン、メリー。気分は?」
「サイコーだね。やっぱこうやって武装の体験ができるってのはいいもんだ」
『姉御、ずいぶん雰囲気変わりましたね。なんか男らしくて、アタイは好きですよ』
 こうやって軽口を叩きあいながら登校する。

 この後、恐ろしいことが起きるとも知らずにだ。


※※※



それは、既に大学構内で起こっていた。

「どういうことだ?」
 実験室で装置の修理をしていた三盥が、美香に向かって叫んだ。
「私にも分かりません。ただ、この説明書にはそう書いてあるんです」
 装置の後ろに取り付けられた配電盤の近くから、顔をのぞかせた美香は、消しゴム大の小さな紙の束を見せた。それには、小さな文字で次のように書いてあった。

『使用上の注意15・・・意識の交換が可能な上限はにゃにゃじゅうに時間にゃ。それ以上の連続使用は危険がともにゃうからおススメはしにゃいのにゃ。』

 文章の書き方からして明らかにカグラが書いたものだ。
「これは、一体? それに、危険ってどんな?」
「七十二時間!? まずいぞ美香、島津とメリーに実験をした時間から、あと四時間しかない!」
 そういって、三盥がコンパネの蓋を閉めた途端、装置の枕の上にある液晶が甲高い音を立てて輝いた。
「!? 隼人さん、装置が復旧しました!」
「なにっ!? どうなってんだ一体……。まあいい、直ったのならすぐに、って……」三盥の言葉は、液晶を覗き込んだと同時に途切れた。
「……なんだ、これは……」
 三盥が見たもの。それは、一昔前の携帯ゲームのような、白黒のドットで描かれた、大小二つの人型が重なった姿。頭部のすぐ右横に書かれた名前を見て、三盥は全てを悟った。


「……まずいぞ美香ッ! このままだと、二人の人格が融合する!」




 ※※※



 さて、授業が終わったところで、楽しい楽しい昼飯の時間だ。
 いつもの学食で、メンバーは俺、メリー、直也、アッシュ。
「や、だからよォ、アレをリアルタイムで見た時は叫ぶしかなかったぜ、『こんなサンタバルーン、mk2で押し返してやるっ!』ってな」
「はぁ、そうなんですか。元ネタが分かんねーからサッパリですが」
「お前も絶対見た方が良いって! なんなら今度貸すぜ、サザビーとの戦闘が最高に熱い」
 メリーは熱弁をふるう直也に辟易しつつ、うどんをすすっている。俺は特にすることもないので、ぐるりと学食の中を見渡していた。
 すると、嫌なものが目に入った。
「……おい、アッシュ」
「なんです? メリー殿。……ああ、アレですか」
 アッシュが鼻を鳴らした先には、黒い革ジャンと右腕のファイアパターンの入れ墨でキメた男が数人、丸テーブルを独占して爆笑していた。さらにテーブルの上には、ごてごてと改造した武装を装備したアーク型やイーダ型、さらに新型のジルリバーズ、エストリル型までいる。
 奴らは、その名も「オートバイ研究会『KING』」といい、表向きはバイク・神姫の整備やツーリングを目的とした同好会だが、実態はほとんどサークルの皮をかぶった暴走族のようなもんで、陰では「バイキン」なんてあだ名をつけられている連中だ。
 やっこさんたちはやがて談笑に飽きたと見えて、ぞろぞろと連れだって食堂から出て行こうとする。こっちのテーブルの横を通り過ぎる時、アーク型の一体と目が合ったから、思わず睨み返してやった。
「およしなさいメリー殿。相手にする価値もありません」
 アッシュが吐き捨てるように言った。奴らは野外で活動するサークルの活動場所を無断で使うことがあり、文化系サークルや関係者からは相当恨みを買っている。
 と、
「邪魔だデブ!」
と食堂の出入り口で声が上がったかと思うと、三人くらいの男が、突き飛ばされるような形で中に押し込まれてきた。
 俺は、そいつらの顔を見るなりハッとした。
「あたた……なんてこった」
「相も変わらず乱暴な奴らでゴザル」
「親父にもぶたれたことないのに!」
 そいつらは、俺が時々話をする神姫同好会のオタク連中だった。
「おいっ!平気か」
「ああ、誰かと思えばメリーちゃんか。どうしたんだい」
「イメチェンでもしたでゴザルか」
「も、森本の技術は化け物か?」
「イメチェンじゃねぇよ。それよりお前ら、バイキンと揉めてたろ。大丈夫だったか?」
「ああ、それなら平気だよ。……それよりも知ってるかい? メリーちゃん、実はね、バイキンの奴ら」
 次の言葉に、俺は戦慄した。



「城尊公園って知ってるだろう? なんでも奴ら、あそこに溜まってる野良神姫を『猫狩り』しに行くらしいよ」



~次回予告~

「な、なんなのにゃオマエたち!」

 蹂躙される城尊公園。

「こいつがいなくなると、元に戻れなくなっちまうからよ……」

「ヒャッハー!!」

 カグラたちを守るため、走れ輝。



「アキラさぁぁぁーーーーん!!!」

武装食堂に戻る





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