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SHINKI/NEAR TO YOU
Phase02-6



「やったか?」

 爆光に目を細めながら、嬉々としてアテナが状況を確認する。
 しかし、スクリーン上部に表示されたパラメータではゼリスたちのKO判定は出ていない。
「ふぇぇ……逃げられちゃったみたいですぅ」
「ふん、だとしても相手はダメージ負うとる。見つけ出して叩くだけや」
 オロオロ周囲を見回すリアナを、アテナが叱責する。
 その様子を眺めながら、ゼリスはやれやれと肩をすくめた。

「際どいタイミングでした……いわゆる〝間一髪〟というヤツですね」

「ゼリス、ダメージは……」
「損傷率40パーセント、まだ戦闘継続に支障はありません」
 煤けたポニーテールをはらいながらゼリスが告げる。同じように煤をかぶったワカナが、ふるふる身を震わせ埃を振り払う。
 ビーム着弾の瞬間。ゼリスたちは一気にその場を離脱し、今いる食器棚の影へ隠れたのだ。爆風を利用したまさにとっさの機転だった。……ただし、誘爆したミサイルによるダメージまで防ぐことはできなかったのだが。

「次、同じ攻撃を受けたらマズイわね……」

 伊吹が渋い顔で相手のシートを見つめる。
 双子は余裕の表情で神姫たちに指示を送り、隠れたゼリスたちを探している。このままでは発見されてしまうのも時間の問題だろう。
「どうする? 一か八か、こっちから先に突っ込むか?」
 隠れていてもいずれ見つかってしまう。なら、こちらから先に動いて接近戦に持ち込めば……あのミサイル攻撃を封じることもできるんじゃないだろうか?
「ダメよ。向こうも当然警戒してるだろうし、うかつに飛び出したら狙い撃ちにされちゃうわ」
 それもそうか。確かに相手はアテナがこちらの隠れ場所を探しつつ、リアナがいつでも攻撃できる態勢を取っていた。
 この状況で下手に飛び出したところで、ミサイルの餌食になるのがオチだろう。

 何か――何かこの状況を突破できる、打開策はないのか?

「シュッちゃん……私たちが囮になるわ」
 えっ、と思わず伊吹を見つめる。
「向こうも連続では攻撃できないはずよ。先にワカナが敵の前に出て攻撃を引き付けるから、相手がミサイルを撃ち尽くしたところを見計らってぜっちゃんがカウンターを決めてちょうだい」
 伊吹は強気に笑う。ワカナを見ると、彼女も真剣に頷いていた。
「……ならば、私が囮になってもいいはずです」
「カウンター攻撃なら、ぜっちゃんの方が向いてるわ。それに……こうなっちゃったのはあたしの責任だしね。強い参加者はいないから大丈夫って、ふたりをこの大会に誘ったのはあたし。だからここは、私たちに任せて♪」
 ゼリスに向かってウインクする伊吹。その姿を見ながら、シュンはまたあの感覚が込み上げてくるのを理解していた。

 ――僕は一体マスターとして何ができるんだ。
 ――ゼリスにとって、僕は必要無い存在なんじゃないか。

 結局、シュンはこの戦いで役に立てないのだろうか。
 さっきもそうだった。他のマスターたちが自分の神姫へ指示を送る中、シュンだけ何もできなかった。
 何がゼリスのマスターだ。満足に指示も出せない癖に。
 ただの凡人。役立たず。マスター失格。

 ……伊吹とワカナが羨ましい。

 今も囮になるという伊吹の悲壮な決意に、ワカナは反論もせずに、むしろ積極的に従っている。それはふたりが強い絆で結ばれているからだ。
 神姫を信頼しているマスター、マスターを信頼する神姫。
 それはシュンが憧れる、ゼリスと一緒に目指すべき姿のはずだ。

 ――その二人を囮にして……頼り切ったままでいていいのか?

「……いいわけないだろ」

 シュンの呟きに、伊吹がハッとして顔を上げる。
 そうだ、このままじゃ何も変わらないじゃないか!
「ワカナを囮にして反撃を狙うなんて、僕は嫌だ。何か他の作戦があるはずだ」

「私も賛成です。仲間を囮にするのは趣味ではありません」

 それにゼリスが同意する。彼女はそれから、ただジッと彼に期待の眼差しを向けてくる。
 今までシュンは、伊吹や由宇に比べて自分は平凡だと悩みながら、どこかでそれを言い訳にして逃げていたんじゃないだろうか。
 どうせ自分はゼリスの期待に応えることはできない、自分には無理だ――と。

 ――だとしたら、それはここで終わりだ。
 そうだ。力が足りないから役に立てない――ではない。
 今の自分がゼリスの役に立つ方法を、見つけ出せばいいだけの話なんだ。

「でも、別の作戦なんて考えてる時間はないわよ? あのミサイル攻撃を無効化できるような都合のいい方法でもあれば別だけど……」
 伊吹の言う通り時間はない。フィールド内を探索している相手はもうすぐ近くだ。
 バトルフィールドを見渡しながら、シュンは思考をフル回転させる。

 さあ、考えろ。

 なんでもいい、何かこの状況を打開するのに利用できるものはないか?
「あっ……」
 その時、シュンの目があるものを捉えた。その瞬間、目の前の情報と自分の中の知識が結合され、あるひとつのアイデアが浮かび上がる。

「あのミサイル攻撃……無効化できるかもしれない」

「シュン?」「シュッちゃん、何か思いついたの?」「ふにゃにゃ?」
 驚くゼリスたちに力強く頷く。
 他の作戦を考えている時間は無い。シュンは閃いたアイデアを急いでみんなに説明する。

「……なるほど。その発想はありませんでした」

「いけるかな?」
「おそらくは。このステージの再現性を考えても、成功する可能性は高いでしょう」
 ゼリスは感心しながらフィールドを見渡す。
 住宅のキッチンが忠実に再現された限定バトルフィールド。シュンの思いついたアイデアは、まさにこのフィールドだからこそできる方法だ。
「すごいシュッちゃん。よくこんな手を思いついたわね?」
「褒めるのは成功してからでいいよ。ぶっつけ本番でうまくいくかどう、かわからないんだから」
 シュンたちは手早く作戦の段取りを確認する。

 そのやり取りに、反対のシートに座る双子が怪訝そうな顔をする。
「なんやなんや。さっきからこそこそ、お兄さんたち往生際悪いで」
「それとも、負けた時の言い訳でも考えてるんか?」
 しびれを切らしたように文句を言ってくる金町兄弟。それにシュンはニッと笑い返す。

「そんなの決まってるだろう。ここからは……」
「私たちの反撃のターンです」

 シュンの台詞をゼリスが引き取る。と、同時に――ゼリスとワカナが揃って棚から飛び出した。



 ゼリスたちが身を潜めていた棚から一斉に飛び出し、別方向に走り出す。
 その光景をモニターで見つめながら、有馬由宇はギュッと胸元で手を握りしめた。

「お願い、オーラシオン。ゼリスを守って……」

 ゼリスに託した専用武装――天馬型オーラシオン。
 その名の通りにユウは"ORACION(祈り)"を捧げる。
 勝利の祈りを――



 二体が急に飛び出すのを見て、リアナは慌ててミサイルを放とうとする。
「ふぇぇっ……どっちを狙えばいいんですかぁ?」
「慌てるな、こっちを攪乱するつもりなんや! 無駄玉撃つ必要はないでっ」
 相方を静止しつつ、アテナは素早く状況を見る。
 マオチャオはシンクの方に、一方オリジナル武装の方は身を隠しつつ冷蔵庫に向かって移動している。

「マオチャオの方を先に倒すで! 奴を倒せばこの試合勝ちは決まりや!」
「白い奴はテキトーに牽制しとけばえい。後からふたり掛かりでボコってやるさいかいな!」

 弟――福太の飛ばす檄に、兄――笑太も同意する。
 双子からの指示を受け、アテナは嬉々としてマオチャオの方――ワカナを追いかける。
「強い相手から先に倒す、フッキーもわかっとるやん!」
 リアナが散発的にランチャーを発射しながらもう片方を牽制する。そのうちにアテナはステンレス張りのシンクにたどり着く。
「……捕まえたで。さあ、ウチと勝負しいや!」
「むぅ~、これでも食らえなの~!」
 いきなりワカナが近くに転がっていた銀のフォークを投げつけてきた。「わわっ!? 何すんねん!」
「やーい、悔しかったらここまでおいで~、なの~」
 驚くアテナに向かって、さらにワカナはあっかんべ~。
「むっか~! もう怒ったでこのドラ猫がっ!」
 アテナは手近にあった銀のナイフをつかむと、怒りに任せてそれを振り回す。
「え~~、そう言うキミはトラ猫でしょ~?」

「ウチは猫やないっ、寅やっちゅーねんっ!」

 アテナのテーブルナイフ攻撃を、ワカナは拾い直したフォークで受ける。
 ガキン、ガキン、と食器を使い繰り広げられる壮絶な殺陣(たて)に、会場中から笑いや声援が立て続けに起こる。


 冷蔵庫、その隣にある戸棚。
 その天板の上では、ゼリスが物陰に身を隠しつつ静か移動していた。
 ゼリスは遮蔽物――調味料の瓶や缶詰など――の影に隠れながら、棚の上をもくもくと進んでいく。
「…………」
 目的のモノはすぐに見つかった。
 フィールドの向こう側では、シンクの上でワカナとアテナが銀の食器で斬り合っている。
 派手に立ち回る二体に会場は釘付けになり、こちらの方には誰も関心を払っていない。狙い通り静かなものだった。
 不意に聞こえたガタッという音が、その静寂を破る。
 ゼリスが振り向くと、みかんの缶詰の向こうからリアナが姿を現した。
「はぁはぁ……やっと見つけましたよぉ」
「ふむ、わざわざ追いかけてくるとは予想外ですね」
「アナタがこそこそ隠れて走り回ってるからじゃないですかぁ~。速いしすぐ何かの後ろに隠れちゃうし、見つけるの大変だったんですよぉ? ……でも、これでやっと牽制攻撃ができますぅ」
 リアナはぜいぜい息をしながら、ガシャっとハンドガンとランチャーの狙いを定める。どうやらゼリスを標準に捉えようとしているうちに、ここまで追いかけてきたらしいが……
「あの……牽制目的なら、ここまで追いかけてくる必要はなかったのでは?」
「……え? えぇぇぇっ!? ふぇぇ~……た、確かにそうでしたぁ……」

「――えいっ」

 リアナが失敗に頭を抱える隙をついて、ゼリスは棚に積まれていた雑貨物の山を蹴り倒す。
 たちまちレトルト製品やらラップフィルムやらアルミフォイルなど――いろんな雑貨物の包装箱による雪崩が発生。

「わ、わあっ―――!? 何してるんですかぁぁぁ――!?」
「……では、そういうことで」

 リアナが倒れた雑貨物の雪崩に巻き込まれる。それを見ながらゼリスは片手で「ごめんね」のポーズを取ると、しれっとした顔で棚から飛び降りた。
 「た、助けてくださいぃぃぃ~(むぎゅぅ)」後ろでリアナが潰されるのを聞きながら、ゼリスはスタッと床に降り立つ。大して重くもない箱ばかりなのでせいぜい時間稼ぎくらいにしかならないだろうが、それで十分。
 居住まいを正すように襟元に手を当てながら、ゼリスは頭上を見上げる。

 すると丁度フォークを弾き飛ばされたワカナが、空中を繰る繰る回転しながら落ちてくるところだった。
「ふにゃあ……やられた~。アイツなかなかやるよ~っ!」
 ヘッドギアのネコ耳型センサーをぴくぴくさせながら、ワカナが大声でまくし立てる。それからこれ見よがしに「ああ~、ここままじゃマズいの~。ゼッタイゼツメイのピンチだよ~~~」とお手上げのポーズまでしてみせた。
「……ちょっとワザとらしいんじゃないか?」
「あはは……ワカナってこういう演技とか苦手だから……。でも、これくらいやった方が効果あるわよ」
 シュンに耳を寄せながら、伊吹がペロリと舌を出す。……まあ、ここまでは作戦通りなのだから問題ないか。
 そうこうしているうちにシンクからアテナが、続いて棚の上からリアナが床に降りてくる。
「ふう、何を企んでいるのか分かりませんがぁ~。もう逃がしませんよ?」
「せや、いいかげん堪忍しーや!」
 アテナが剣の切っ先を突きつけ、リアナのミサイルポッドが可動する。ゼリスたちも観念したように、それぞれ鉤爪とハンドガンを構えた。

 距離を置いて睨み合う二組の神姫たち――奇しくも序盤と似たような格好になった。

 それを見て金町兄弟がニヤリと笑う。
「これで終いやな。姉ちゃん、それに兄ちゃんも! 楽しませたもろたで~」
「残念やけどもうゲームセットやね。トドメや、リアナ! コンビネーションアタックで決めたれっ――!」
 双子のマスターの指示を受け、再び二体の神姫は前後に並ぶフォーメーションを組む。アテナが双剣を振りかぶる、その背後でリアナのミサイルポッドが火を噴いた。
 放たれた無数のミサイルが、一直線にゼリスたちを襲う。
 迫りくる弾幕の嵐に――しかし、ゼリスとワカナはただ立ち尽くすのみ。
 ――直後、立て続けに起こった爆発が二体の姿を飲み込んだ。

『リアナのミサイル攻撃がまたしても炸裂! ワカナ&ゼリスチームはこれで終わってしまうのか―――っ!?』

 司会者の絶叫。
 会場中の観客が固唾を飲んで試合の行く末を見守る中、少しずつ煙が晴れていく。
「はんっ。なんや、最後はあっけなかったな」
 すでに勝負はついたものと、双剣を納めようとしたアテナの動きがピタリと止まる。そのまま目の前の光景を信じられないといった顔で茫然と立ち尽くす。

「……なんやねん……それ?」

 煙が引いたフィールドに、キラキラと光を反射する破片が舞い散っている。その中からゼリスとワカナが平然と姿を現したのだ。
 それも、二体とも全くの無傷で。
 二体の無事な姿に、観客たちすら声援を送るのも忘れあっけに取られている。

「「なんやとぉぉぉっ!?」」

 我に返った金町兄弟が驚愕のハーモニーを奏でる中、アテナがハッとそれに気がついた。
「このキラキラ光っとるんは――まさか!?」
「ご明察……これは〝チャフ〟です」

「な、なんだってぇ―――!?(×4)」

 双子のマスターと神姫たちが揃って目を丸くする。

 〝チャフ〟――電波攪乱紙とは、レーダーやミサイルなどを無効化する防御兵器のことだ。空中にばら撒かれた〝チャフ〟は、電波を乱反射することで電波探査による索敵や誘導兵器を妨害する。原理は単純だが、ミサイルへの有効な防御手段として大昔から使われている技術である。

「……で、でも。アタナたちはそんなもの持っていなかったはずですよぉ?」
「そうですね……なので、現地調達させていただきました」
 リアナの疑問に答えるように、ゼリスは手ごろな大きさにカットされた銀色のアルミ箔を取り出してみせる。

「〝チャフ〟の正体はこれ――アルミフォイルです」

 「なんでそんなものが?」と不思議そうな双子たちに、続けてシュンが解説する。
「昔の〝チャフ〟は、アルミフォイルで作ってたのさ。アルミフォイルは料理にも保存にも使えるキッチンの必需品だからな、このステージにも箱があるのを見つけて、さっきゼリスに回収させてたんだよ」
 シュンの説明に頷きながら、ゼリスが引き取る。

「アルミ箔さえあれば、あとは簡単です。こうして必要な長さに切り刻んでやれば――」

 ゼリスが宙に放った一枚のアルミ箔を「うにゃにゃっ」とワカナが気合一閃、爪で細切れに切り裂く。二体の周囲に新たに生まれたアルミ箔片が、キラキラと舞った。

「――手作りチャフの完成、という訳です」

 ゼリスとワカナは得意げに胸を張る。
 種明かしを聞いても、金町兄弟と彼らの神姫はただあんぐりと口を開いているだけだった。
 その様子に伊吹の目が「キラ~ン☆」と輝く。
「さあ、これであなたたちのコンビネーションアタックは封じたわよ♪ ワカナ、どかんと反撃決めちゃいなさ――い!」
「あいあいさ~、なの~♪」
 颯爽とワカナが、棒立ちしたままの相手に向かって突撃。
「……ハッ!? あ、あかん! リアナ、ミサイル……はダメやからランチャー、ランチャーで迎撃や!」
「……えっ、えっ? は、はい。了解ですぅ」
 リアナは慌ててワカナにランチャーを向けるが、浮足立った砲撃は足止めにならず、やすやすと弾幕を突破されてしまう。
「ええいっ、やらせるかい!」
 額に青筋立てたアテナは大剣・朱天を引っ張り出すと、猛然とワカナに突進しながらそれを力任せに振り下ろす。
 しかし、その一瞬前にはすでに、ワカナは宙に身を躍らせていた。
 渾身の大上段が地に炸裂。爆弾のような衝撃。
 それを利用してさらに前方に大きく飛んだワカナは、リアナの懐へ潜り込む。

「――しもた!?」
「はい、その通り。戦闘中のよそ見は厳禁ですよ?」

 出し抜けに、ゼリスがアテナの眼前へと躍り出た。
 ワカナを壁に使ってアテナの死角に入りながら、一緒に突撃していたのだ。そうアテナが気づいた時には、すでに遅い。
 今のアテナの状態――中途半端に振り返った無防備な体勢、振り下ろしきった大剣。回避も防御もできない。完全に隙だらけ。

 ゼリスはその絶好のチャンスを逃がさない。

 オーラシオンの肩のスラスター・各所の補助スラスター・脚力をフルに使った全開機動。白い稲妻のようなスピードで、あっという間に相手に接近。スライディング気味に肉薄しながら、ほぼゼロ距離での射撃体勢。
 両手に構えたハンドガン――エスぺランサの二丁拳銃で全力射撃。フルオートで弾き出される銃弾はマシンピストルとしての連射機能をいかんなく発揮、全弾を相手に叩き込む。

 銃弾の雨をもろに浴びたアテナが吹っ飛ばされる。

 その向こう側では、慌てふためくリアナにワカナが容赦ない猛攻で襲い掛かる。

「スーパーねこキィィィ―――ックッ!!」

 トドメの一撃。ひっかき傷だらけのリアナが、こちらも高々と蹴り上げられる。

 宙を飛ぶ二体は、そのまま互いに空中で激突。ごちん!
 揉みくちゃになりながら、さらに戸棚に衝突。どごん!
 哀れ、戸棚の上から落下した雑貨物の下敷きに。どさどさどさ!

『決まった―――っ! 窮地から一転、ワカナ&ゼリスチームの怒涛の逆転クリティカルヒィィィット!! フィールドのオブジェクトを利用した見事な作戦、まさに頭脳プレーの勝利かぁ!?』

 興奮気味にまくしたてる司会者。
 金町兄弟の怒号と観客の歓声が交錯する。
 勝利を確信したシュンは「ふ~っ」とシートに倒れこもうしたが、

「……まだや、まだ終わらへんでぇぇぇ」

 熱狂の渦を割って響いた呪詛の叫びに、慌てて跳ね起きた。
 雑貨物の山を押しのけて、ぬっと巨大な影が立ち上がる。
 赤い兜の鬼面、巨大な腕、神姫の倍近いサイズの武装ロボット。

「真鬼王、見・参!!」

 寅型MMSティグリースと丑型MMSウィトゥルースの武装には合体できるという特性がある。そのロボット形態を真鬼王という。
 今、アテナの怒り応え、そのスーパーロボットが光臨した。
「ちょ……ちょっと、そんなの反則でしょ?」
「もう~~~! あきらめ悪すぎだよ~」
「く……勝ったと思ったのに。ゼリス、まだやれるか?」
「仕方ありません、やるしかないようですね」
 ゼリスが身構える。
 鬼神が双眼を光らせるその下で、搭乗するアテナが腕組みしながら不敵に笑う。
「さあ! こいつの力、みせたるで~」
 のそりと動き出す真鬼王。その巨体が放つ圧倒的な威圧感。

 ――ズシン!

 真鬼王が大地を揺るがしながら、大剣をゆっくりと振りかぶる。

「必殺! 真鬼王朱天ざ――」

 その時。
 戸棚の上に残っていた缶詰が、衝撃で天板から転がり落ちた。
 缶詰はそのまま、真鬼王の脳天を直撃。

「へっ?」

 直後、パリンと音がして合体が強制解除されてしまう。
 取り残されたアテナは「あれ?」と首を傾げたまま、缶詰の下敷きになった。
 その上に表示されるKOアイコン。

「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」

 予想外の出来事に、会場がシンと静まり返る。
 え~っと……いいの、これ?
 こほん、と司会者が咳払いひとつ。

『試合終了ぉぉぉっ! 勝ったのはワカナ&ゼリスチーム! マスター伊吹舞と有馬シュンがマヤノスプリングカップ・ジュニアトーナメントを見事優勝だぁぁぁ―――っ!!』

 会場が割れんばかりの拍手に包まれる。
「たはは……まあ勝てたんだから問題ないよな」
 拍手を受けながら苦笑いを浮かべるシュン。それを見てゼリスが肩をすくめる。
 ぶんぶん手を振って笑顔で会場に応えるワカナ。さらに伊吹が「やったー♪」と喜びもあらわにシュンに抱きつく。
 押し寄せる拍手と歓声の大波に、シュンは照れを誤魔化すように頭をかいた。
 その後ろでは、双子に駆け寄られながらアテナが自分を押しつぶす缶詰を見上げていた。

「……だからウチは、猫やないっちゅーねん」

 そのキャットフードの缶詰にビシッとツッコミを入れると、そのままアテナは気絶するのだった。
 ――お後がよろしいようで。







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