最強って何かね
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☢ CAUTION!! ☢
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☢ CAUTION!! ☢
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以下の御作品を愛読されている方は先に進むことをご遠慮ください。
武装食堂
キズナのキセキ
深み填りと這上姫
場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。
残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。
強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。
武装食堂
キズナのキセキ
深み填りと這上姫
場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。
残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。
強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。
ネタバレを含む場合があります。
また神姫や固有名称を(無断で)お借りしています。
登場はしません。
登場はしません。
尚、TVアニメ武装神姫 第11話「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」のネタバレを少し含んでいます。
茶室に集まった私とメル、コタマ姉さん、マシロ姉さんでアニメの次回予告まで見終えて、コタマ姉さんが大きなあくびをした時だった。
テレビを消したメルは唐突にこう問うた。
「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」
テレビを消したメルは唐突にこう問うた。
「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」
◆――――◆
「言うまでもないでしょう。一番は公式戦で優勝経験のあるアーンヴァル型アルテミスかストラーフ型のビクトリア(ヴィクトリア?)。二番は――名前は忘れましたが、あの世界二位(笑)のエウクランテでよいのではないですか」
「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」
「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」
メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。
強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。
アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。
といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。
あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。
「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」
「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」
「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」
眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。
「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」
「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」
メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。
強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。
アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。
といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。
あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。
「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」
「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」
「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」
眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。
◆――――◆
「まずは――そうですね。エル殿とメル殿は勘違いをしているようですが、『デウス・エクス・マキナ』という括りはあなた方が想像しているよりずっと意味の無い、名ばかりのものです」
「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。
「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」
無視したマシロ姉さんは続けた。
「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」
「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」
メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。
「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」
「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」
「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、
『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。
『大魔法少女』アリベ。
そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」
「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」
「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」
「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」
「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。
「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」
「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。
「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」
「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」
「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」
三人からの一斉攻撃を受けた。
言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。
「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」
「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」
「誰がタマちゃんかコラァ!」
私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。
「にゃにしやかんたてめへ!」
鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。
「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」
「死ねやぁ!」
コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった!
しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした!
コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた!
「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」
築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。
なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。
「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。
「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」
無視したマシロ姉さんは続けた。
「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」
「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」
メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。
「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」
「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」
「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、
『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。
『大魔法少女』アリベ。
そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」
「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」
「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」
「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」
「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。
「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」
「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。
「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」
「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」
「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」
三人からの一斉攻撃を受けた。
言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。
「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」
「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」
「誰がタマちゃんかコラァ!」
私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。
「にゃにしやかんたてめへ!」
鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。
「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」
「死ねやぁ!」
コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった!
しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした!
コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた!
「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」
築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。
なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。
◆――――◆
コタマ姉さんが落ち着いてから、マシロ姉さんは改めて言い直した。
「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」
「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」
「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」
「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」
「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」
「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」
「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」
「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」
「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。
まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。
透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。
「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」
「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」
「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」
床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。
部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。
「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」
私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。
コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。
レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。
マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。
コタマ姉さんが殺される。
制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。
そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。
「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」
アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。
「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」
「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」
「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」
「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」
「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」
「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」
「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」
「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」
「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。
まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。
透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。
「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」
「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」
「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」
床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。
部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。
「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」
私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。
コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。
レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。
マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。
コタマ姉さんが殺される。
制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。
そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。
「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」
アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。
緊張が解けた瞬間、武装した私たち三人が一斉にマシロ姉さんに襲いかかったのは言うまでもない。
◆――――◆
「寿命が縮まった……五年分くらい」
「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」
「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」
「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。
私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。
さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。
そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。
「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」
マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。
「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」
「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」
メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。
けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。
ああ哀れなりレラカムイ。
せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。
「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」
「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」
プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。
この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。
「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」
「矛盾? 何がですか?」
「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」
「いえ、ですからその前に……」
「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。
「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」
「「「誰のせいだ」」」
「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」
「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」
「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。
私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。
さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。
そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。
「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」
マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。
「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」
「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」
メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。
けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。
ああ哀れなりレラカムイ。
せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。
「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」
「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」
プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。
この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。
「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」
「矛盾? 何がですか?」
「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」
「いえ、ですからその前に……」
「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。
「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」
「「「誰のせいだ」」」
◆――――◆
「アタシが矛盾点? 意味わからん」
「では順を追って説明しましょう」
もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。
怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。
メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。
「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」
「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」
「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」
コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。
ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。
「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」
「それが何さ」
「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」
「レラカムイパンチ!」
コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。
「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」
「知らんよ。作者に訊け」
「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。
「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」
「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」
「あ、『矛盾』」
メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。
「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」
「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」
「クーフランパンチ!」
並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。
口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。
安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。
私は竹櫛家が恐ろしい。
「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」
「あー……うん、理解したよ」
メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。
パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。
「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」
立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。
ポツンと残された私とメル。
「ねえ、エル姉」
平坦な声でメルが問うた。
「結局のところさ、最強の神姫って誰?」
私に聞かれても困る。
けれど……。
「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」
「そだね。そうしとこう」
なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。
「では順を追って説明しましょう」
もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。
怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。
メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。
「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」
「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」
「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」
コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。
ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。
「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」
「それが何さ」
「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」
「レラカムイパンチ!」
コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。
「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」
「知らんよ。作者に訊け」
「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。
「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」
「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」
「あ、『矛盾』」
メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。
「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」
「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」
「クーフランパンチ!」
並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。
口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。
安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。
私は竹櫛家が恐ろしい。
「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」
「あー……うん、理解したよ」
メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。
パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。
「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」
立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。
ポツンと残された私とメル。
「ねえ、エル姉」
平坦な声でメルが問うた。
「結局のところさ、最強の神姫って誰?」
私に聞かれても困る。
けれど……。
「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」
「そだね。そうしとこう」
なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。
『最強』という言葉を気安く使ってはならない。
『15cm程度の死闘』の時事ネタ話の中で初めて事前に作文しました。
などという事はどうでもよくて、アニメの「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」なる予告を見て、修羅の国視点で考えてみました。
もうちょっと条件を絞ると、
もうちょっと条件を絞ると、
1.『デウス・エクス・マキナ』は、ばるかんさんの『京都六華仙』から発想をパク・・・お借りしている。すなわち強さはだいたい同等。
2.トミすけさんの『狂乱の聖女』対策内で多作品が同時にリンクしているため、最良の基準点になると期待する(という願望)。
3.主人公補正、ストーリー補正、愛の力補正、脇役補正、かませ犬補正、死亡フラグ補正 etc.・・・それら一切を排除。例えば、マシロはコタマに絶対負けない、コタマはエルメル姉妹に絶対負けない、Lv.100ミュウツーはLv.1キャタピーに絶対負けない、といった感じ。
4.他所様だからといって依怙贔屓しない(これ一番重要)。有名神姫のミスティを相手取ってもタマちゃんは意地でも勝つ。
温かい缶コーヒーを飲みつつ、これらの条件下で深く吟味した結果・・・結論を出すのは不可能ということが分かりました。
唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。
唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。
『ドールマスター』コタマを扱い頂いた作品は4つ。
そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。
そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。
3作品くらいならなんとか順位を決められるんじゃないか。そう思い上がることもせずに、あくまで修羅の国に基準を置いて1つずつブロックを積み上げていったのですが、積み上げクレーン役のコタマが矛盾を抱えていてはどうしようもありません。
また、『15cm程度の死闘』という異分子を除けばどうか? は自分の存在意義が無くなるので却下(旧掲示板を開く限り不可能だと見られますが)。
まことに遺憾なことです。
もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。
もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。
暫定的かつ勝手に最強となってしまったクーフラン型『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロの座を奪う神姫の登場にも期待したいところです。
ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。
ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。
それもこれも、ここまで読んで頂けた方が一人でもいらっしゃればの話ですが・・・。
ところでアニメの感想ですが、ヴァローナを愛でたい。
思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。
胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。
思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。
胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。