ざわざわ、ざわざわと、たくさんの音が交じり合った、その空間は異様だった。
あるところでは勝利の雄たけび、あるところでは敗者の怨嗟。
またあるところでは黄色い賞賛、またまたあるところでは、シリアスな議論。
合間に轟くは、火薬のはぜる音、鋼のうなる音、怒号、悲鳴。
あるところでは勝利の雄たけび、あるところでは敗者の怨嗟。
またあるところでは黄色い賞賛、またまたあるところでは、シリアスな議論。
合間に轟くは、火薬のはぜる音、鋼のうなる音、怒号、悲鳴。
ここは神姫センター。人の欲望渦巻く魔城……。
「マスター、ワケのわからないナレーションをいれて面白い?」
カバンから突っ込むは、凛とした声。私の神姫のタマさんである。
「ああんもう、なんかこうソレっぽいの入れたらそれっぽくなるかなーって」
なるわけないじゃないか、キミは本当にバカだな!などと再び言葉のカッターをいただく私。
タマはん、ホンマに容赦ないお方やでぇ……。
そんなわけで、私とタマさんは、通学途中の駅にあるセンターに来ている。
規模と人の入りは、平日とはいえ少なくはない、駅そのものが、別の路線への連絡駅になってるせいか、安定した集客があるらしい。
かくいう私もこの駅から別の路線に乗り換えて帰宅、あるいは通学するので、良く利用させてもらっている、ありがたや。
「それはともかく、学校帰りに一人で神姫センターって、女子高生的にはどうなんでしょうね」
「ゲーセン入り浸るよりかは多少マシなんじゃないか、タバコ臭くないし」
近場にあるゲーセンはタバコくさくていけない。この時勢、全面喫煙可ってなかなかないんじゃないかしらん。
さておき、何も漫才をしに、私たちはここにきたわけじゃない。いや、漫才は毎日してるけど。
「で、マスター、今日は何しにきたんだ」
「タマさんや。今日は新作の服があるらしいのでちょっとタマさんのファッションレパートリーを増やしに」
つまり、服を買いに来ただけなのだった。
なるわけないじゃないか、キミは本当にバカだな!などと再び言葉のカッターをいただく私。
タマはん、ホンマに容赦ないお方やでぇ……。
そんなわけで、私とタマさんは、通学途中の駅にあるセンターに来ている。
規模と人の入りは、平日とはいえ少なくはない、駅そのものが、別の路線への連絡駅になってるせいか、安定した集客があるらしい。
かくいう私もこの駅から別の路線に乗り換えて帰宅、あるいは通学するので、良く利用させてもらっている、ありがたや。
「それはともかく、学校帰りに一人で神姫センターって、女子高生的にはどうなんでしょうね」
「ゲーセン入り浸るよりかは多少マシなんじゃないか、タバコ臭くないし」
近場にあるゲーセンはタバコくさくていけない。この時勢、全面喫煙可ってなかなかないんじゃないかしらん。
さておき、何も漫才をしに、私たちはここにきたわけじゃない。いや、漫才は毎日してるけど。
「で、マスター、今日は何しにきたんだ」
「タマさんや。今日は新作の服があるらしいのでちょっとタマさんのファッションレパートリーを増やしに」
つまり、服を買いに来ただけなのだった。
ところ変わって、神姫用の服飾売り場。
タマさんは肩の上から服を眺める。
今回の新作は、アシンメトリーと銘打たれた逸品。
左右非対称の、斜めにカットされたスカートが特徴のドレス。
赤い生地に、黒のレースはちょっとアダルティな空気をかもし出す。
「いかがですかタマ先生。私的にはいい線いってるとおもうのですが、先生には」
コレを着たタマさんを思うかべる。おお、アダルティ、大人の女!
一方タマさん、ドレスへ視線を。お、ちょっと食いついたご様子。
「……ま、アリ、じゃないかな。キライじゃないよ」
むむ、先生的には50点より上に入った程度か、さすが、お眼鏡にかなうものはなかなかありませんのぅ。
しかし、スルーするのももったいないので、私はコレをお買い上げした。うふふ、財布が軽くなるわぁ……。
タマさんは肩の上から服を眺める。
今回の新作は、アシンメトリーと銘打たれた逸品。
左右非対称の、斜めにカットされたスカートが特徴のドレス。
赤い生地に、黒のレースはちょっとアダルティな空気をかもし出す。
「いかがですかタマ先生。私的にはいい線いってるとおもうのですが、先生には」
コレを着たタマさんを思うかべる。おお、アダルティ、大人の女!
一方タマさん、ドレスへ視線を。お、ちょっと食いついたご様子。
「……ま、アリ、じゃないかな。キライじゃないよ」
むむ、先生的には50点より上に入った程度か、さすが、お眼鏡にかなうものはなかなかありませんのぅ。
しかし、スルーするのももったいないので、私はコレをお買い上げした。うふふ、財布が軽くなるわぁ……。
「いやぁ、センターいいなぁ、ゲーセンじゃ武装の類はあってもこういう物は置いてないからねー」
ほくほくと小さな紙袋をカバンにつっこみつつ。懐の氷河期?知らねぇなぁ!
「あれはあれでキライじゃないけどね、私は。闘いの雰囲気は、好きだよ」
ううむ、タマさんはバトルスキーであるからな。武装神姫としては正しいメンタリティなのかもしれませんが。
ちょっと、タマさんに視線を落としてみる。ちらっ、ちらっ、と私を見る私の神姫。
「……じゃー、闘いの雰囲気もちょっと感じに行きますか?」
なんとなくを装ってささやいてみる。
「……マスターがそういうのであれば、やぶさかではないな。時間もないしいこうじゃないか」
いやぁわかりやすい。
ほくほくと小さな紙袋をカバンにつっこみつつ。懐の氷河期?知らねぇなぁ!
「あれはあれでキライじゃないけどね、私は。闘いの雰囲気は、好きだよ」
ううむ、タマさんはバトルスキーであるからな。武装神姫としては正しいメンタリティなのかもしれませんが。
ちょっと、タマさんに視線を落としてみる。ちらっ、ちらっ、と私を見る私の神姫。
「……じゃー、闘いの雰囲気もちょっと感じに行きますか?」
なんとなくを装ってささやいてみる。
「……マスターがそういうのであれば、やぶさかではないな。時間もないしいこうじゃないか」
いやぁわかりやすい。
そして、バトルブース。
とはいっても、そんな長いこと歩く距離でもなく、あっという間にご到着。
おーおー、賑わってる。わいのわいのと会話と、バトルのSEが飛び交う。
スクリーンに映ってるのは、アークとアルトレーネの闘い。
足に取り付けられたホイールを生かし、機敏に動き回るアーク。手には黒い無骨なアサルトライフル。
各所のコンデンサから得られる電力を生かして、低空から攻めるアルトレーネ。こちらは細身の片手剣。
武器こそ違うものの、他はすべて、初期から付属しているパーツのみ。ほぼ初期装備で立ち回るそのさまは、なんとなく美しい。
いいなー、こういうのあこがれちゃうなー。などと、私の感想。うん、時々、男に生まれればよかったなぁ、と思わなくもない。
あ、アルトレーネが勝った。決め手は近接戦闘の読み合い。
「……あの子と、戦りあって、みたいな」
ぽそりと聞こえた、静かだけど、感情のこもった声。ほんとにバトルスキーなんだから。
んじゃぁ、いっちょ準備しようかしらん。と、カバンから、紫色の布に包まれた、細長い何かをタマさんに。
「……もってきてたんだ」
「そりゃこういうところ来るんなら、タマさんは絶対1回は戦いたいなぁと思うところであるし、もってないとねぇ」
いまいち日本語になりきれない返事をしながら、私はよいしょ、とブース内の対戦スペースへ。
「あー、指名バトルだと時間と、向こうさんの名前わからないからランダムになっちゃうけどいいかなー?」
スクリーンに、神姫の名前とオーナー名も出てたはずなんだけど、私の記憶力は鶏なみなのだ!フハハハハハ!
「……まぁ、それくらいはしょうがないか。とり頭なのは今に始まったことじゃない」
……神姫に言われるのはクるわー。超クるわー。
とはいっても、そんな長いこと歩く距離でもなく、あっという間にご到着。
おーおー、賑わってる。わいのわいのと会話と、バトルのSEが飛び交う。
スクリーンに映ってるのは、アークとアルトレーネの闘い。
足に取り付けられたホイールを生かし、機敏に動き回るアーク。手には黒い無骨なアサルトライフル。
各所のコンデンサから得られる電力を生かして、低空から攻めるアルトレーネ。こちらは細身の片手剣。
武器こそ違うものの、他はすべて、初期から付属しているパーツのみ。ほぼ初期装備で立ち回るそのさまは、なんとなく美しい。
いいなー、こういうのあこがれちゃうなー。などと、私の感想。うん、時々、男に生まれればよかったなぁ、と思わなくもない。
あ、アルトレーネが勝った。決め手は近接戦闘の読み合い。
「……あの子と、戦りあって、みたいな」
ぽそりと聞こえた、静かだけど、感情のこもった声。ほんとにバトルスキーなんだから。
んじゃぁ、いっちょ準備しようかしらん。と、カバンから、紫色の布に包まれた、細長い何かをタマさんに。
「……もってきてたんだ」
「そりゃこういうところ来るんなら、タマさんは絶対1回は戦いたいなぁと思うところであるし、もってないとねぇ」
いまいち日本語になりきれない返事をしながら、私はよいしょ、とブース内の対戦スペースへ。
「あー、指名バトルだと時間と、向こうさんの名前わからないからランダムになっちゃうけどいいかなー?」
スクリーンに、神姫の名前とオーナー名も出てたはずなんだけど、私の記憶力は鶏なみなのだ!フハハハハハ!
「……まぁ、それくらいはしょうがないか。とり頭なのは今に始まったことじゃない」
……神姫に言われるのはクるわー。超クるわー。
空は、焼けた赤い色と、日が落ちた藍色の境界ができている。
雲の作る影と、赤い輝く太陽。ひどくキレイな光景。
空気は湿気と熱気を含んで、あまり心地いいものじゃないけど、この空を見てると、なんとなくラクになる気分。
「夕方の空が綺麗やねぇ……」
ああ、なんか清々しくすらなってきた、さぁ帰ろう。ごはんも準備しなきゃいけないし!
雲の作る影と、赤い輝く太陽。ひどくキレイな光景。
空気は湿気と熱気を含んで、あまり心地いいものじゃないけど、この空を見てると、なんとなくラクになる気分。
「夕方の空が綺麗やねぇ……」
ああ、なんか清々しくすらなってきた、さぁ帰ろう。ごはんも準備しなきゃいけないし!
「……負けてここまで清々しいオーナーも珍しい気がするね。私も大概だけど」
ええ、負けました。先ほどから始めたバトルは、私たちの負けでございました。
何せ、装備は刀一本で、後は服のみ。相手からすりゃもう、ナメてんのかてめぇといわんばかりの有様。
いや、そこそこいいとこまでいったんだけどね?
「まま、そういわないで。縛りプレイで負けはよくあることさぁ。タマさんのがんばりはけなす気ないし」
刀一本でどこまで戦えるのか。そんな縛りプレイというか、ルールというか、そういうものを定めている私たち。
何せ、装備は刀一本で、後は服のみ。相手からすりゃもう、ナメてんのかてめぇといわんばかりの有様。
いや、そこそこいいとこまでいったんだけどね?
「まま、そういわないで。縛りプレイで負けはよくあることさぁ。タマさんのがんばりはけなす気ないし」
刀一本でどこまで戦えるのか。そんな縛りプレイというか、ルールというか、そういうものを定めている私たち。
勝率は高くない。そりゃそうだ、空は飛べない、走れはするけど、推進装置を積んだ神姫ほど早く動けない。
身体には衣服ひとつ、あたれば致命傷。武器は刀だけ、遠距離でガン攻めされたら完封。
うん、完璧だ、勝てねーな!
身体には衣服ひとつ、あたれば致命傷。武器は刀だけ、遠距離でガン攻めされたら完封。
うん、完璧だ、勝てねーな!
「ま、私もまだまだというところだね、飛び道具ごときでこのていたらく。精進が足りないな」
ふん、と鼻息ひとつのタマさん。あなた、時々ストラーフなのが間違いな気がしますよ。紅緒さんの生まれ変わりじゃありませんこと?
おかげで向上心と努力はすごいんだけど。ちなみに、この縛りを決めたのはタマさん本人です。パネェ。
おかげで向上心と努力はすごいんだけど。ちなみに、この縛りを決めたのはタマさん本人です。パネェ。
「んじゃー帰ろうか。今夜は餃子にするぜー、包んじゃうぜー」
「じゃあ私はキャベツ刻みでも手伝おうか。刀の修練にちょうどいいし」
「……よ、よろこんでいいのカナ?」
「じゃあ私はキャベツ刻みでも手伝おうか。刀の修練にちょうどいいし」
「……よ、よろこんでいいのカナ?」
帰宅後、キャベツを前にするタマさんは、ひどくシュールな図であったと、こっそり付け加えておこう。