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えむえむえす ~My marriage story~

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這いよる影、迫る白



 私は暗い部屋の中で目が覚めた。私の部屋はここまで暗かったっけ? と思ったら、カーテンが閉まったままだった。
 私はベッドから起き上がろうとして、出来なかった。体が異常に重く、起き上がる気力すら沸いて来ない。
 そして、なによりこの胸の内の空虚感。大切な何かを失ってしまったかのような、そんな風穴。なのに、その大切な何かが思い出せない。
 まるで昔に戻ったかのようだった。あの日、華凛が遊びにやって来てくれるまでの、引きこもって何も寄せ付けなかった自分に。

(これは……夢だ……)

 もう私は変わったんだ。―――と出会い、沢山の人と触れ合って変わったんだ。
 じゃあ、今目の前に広がる光景は何?
 大切な何かは?
 頭の中に霞がかかり、次第にぼんやりとしてくる。消えかける意識の中、大切な何かの名前が――。




8月1日(月)

「シリアっ!!!」
「は、はいっ!?」

 ベッドから跳ね起きると、そこはいつもの明るい自分の部屋だった。カーテンの開いた窓から明るい陽射しが差し込み、そして、机の上にはシリアがいた。

「ど、どうしたの樹羽……ずいぶんうなされてたけど……」

 シリアが心配そうにこちらにやって来た。小さな体でうまくベッド脇のテーブルにまで登ってくる。

「すごい汗……大丈夫?」

 自分も額に手を当ててみて、今までにないほどの汗が出ていることに気が付いた。よくみれば、パジャマも汗で濡れている。
 原因は、紛れもなくあの悪夢のせいだ。嫌な夢ほど覚えているもので、今でも頭の中に鮮明に覚えていた。
 私は無言でシリアを手の上に招いた。シリアも無言で乗ってきてくれる。神姫の僅かな重みが、掌にのしかかった。

「シリアは、私の側からいなくなったりしないよね……?」

 ふとそんな言葉が漏れた。シリアはなんだかよくわからないような顔をしていたが、その顔がふっと微笑んだ。

「大丈夫だよ。私は絶対に樹羽の側から離れたりしない」
「本当に本当?」
「本当に本当」
「なら、よかった」

 シリアのお陰で、私は安心出来た。そうだ、あれはただの夢に過ぎないんだ。過ぎない……はずなのに……。

(どうして……こんなに不安になるの?)

 前言撤回、やっぱり不安は残っている。それは、どうあっても拭いきれるものではなかった。
 胸の内から何かが込みあげてくる。それは言い様のない不安と恐怖。気付けば私は泣いていた。込みあげるそれを押し殺すように。

「み、樹羽っ!? 大丈夫!? お腹痛いの!? それとも頭!? えぇと119!?」

 突然の出来事でシリアがパニックになっている。落ち着かせないと。笑って、大丈夫って言わないといけない。
 なのに、涙はどんどん溢れてきて、もう自分でも止められそうになかった。
 その時、白いハンカチが目に止まった。私の物じゃない。じゃあ、これは……。

「一日ぶりに見たら酷い顔してるじゃない。ほら、これで顔拭いて」
「華凛……?」

 顔をあげると親友の顔がそこにあった。またいつものようにノック無しで入ってきたらしい。
 しかし、何故だか華凛の姿が霞んで見えた。きっと涙のせいだろう。私はハンカチを受け取り、涙を拭いた。もう一度見てみると、華凛はちゃんとそこにいた。

「華凛、もう大丈夫なの?」
「一日寝たら元気になったわ。それより、今は樹羽の方が心配ね」

 そう言って笑う華凛には一昨日のような倦怠感や疲れは見えなかった。本当に元気になったようだ。
 シリアをテーブルに戻し、私はベッドに腰かける。華凛はそのまま立っていた。
 そこで私は華凛の服装に注意がいった。以前のようなタンクトップに短パンではなく、動きやすい洋服にジーンズ、おまけに靴下までちゃんと履いている。華凛は暑いのが苦手で、いつも涼しげな格好をしていた。今日のはまるで、どこかショッピングへと出向く格好のようだ。

「華凛、どこか出掛けてきたの?」
「これから行くのよ、樹羽と二人で」

 またゲームセンターだろうか? だったら、こんなに気合いの入った格好をしなくてもいいはずだ。
 私が困惑していると、華凛は満面の笑みで言った。

「今日は、樹羽と遊びに行こうと思ってさ」
「遊び?」
「そ、毎日毎日バトルばっかりじゃ疲れちゃうでしょ? だから息抜きもかねて、ね?」

 華凛の言っていることはもっともだ。息抜きは必要であり、だから遊びに行こうと言うのは何も間違ってはいない。
 だが、そうやって提案する華凛には、どこか焦りの色が見えたような気がしたのだ。

「……わかった。行くよ」
「ありがとう、あたしは外で待ってるわね」

 そう言って、華凛は部屋から出ていった。私はクローゼットの中から淡いブルーのブラウスにスカートを出した。あまり着る機会はなかったが、まあ今日ぐらいはいいだろう。
 着ては見たが、ちょっと自信がなかった。鏡を見ても、似合ってるのかわからない。

「どうかな、シリア」
「すっごく可愛いよ! 大丈夫! 自信持って行っていいよ!」

 と、シリアから称賛の限りを送られる。そうか、大丈夫なのか。なら、これで行くとしよう。
 私は最後にいつものポーチを腰にひっさげ、そこにシリアを入れた。ゲームセンターには行かないだろうけど、どうせならシリアも一緒の方がいい。
 私は自分の部屋の扉を開けた。その先には華凛が待ってくれている。
 なのに、暗い影はいつまでも消えることはなかった。



 朝になり、あたしは目が覚めた。この間のように昼でした、なんてことにはなっていない。ただし、日付は予想した通りだったが。
 枕元のアナログ時計の文字盤には、デジタル表記で日付と気温と湿度が表示されている。この際気温や湿度は関係ない。問題は、日付だ。
 8月1日(月)
 あたしが眠ったのは7月30日。つまり丸一日寝ていたことになる。これについては、あたしが寝る時に大体予想がついていた。

(今日でラスト、か)

 少な過ぎる時間の中で、樹羽はどれだけ成長できただろう。多分大丈夫だとは思う。シリアもついていたし、神姫バトルを通じていろんな人と触れ合ってきたのだ。これで進歩していない訳がない。
 さて、問題は今日だ。このまま何もしないで終わるのか、最後くらい樹羽と遊ぶのか。

(本当なら、何もしないのがベストよね)

 そう、それが一番良い選択肢だ。しかし、いくらなんでもそれではあたしが満足出来ない。

(まったく、つくづくわがままね、あたし)

 あたしは洋服の入っているタンスの中から、今まであまり着ていなかった服を引っ張りだした。スカートも考えたが、ここはジーンズで。靴を履いていくのだから、裸足ではまずいだろう。
 あっと言う間に出かける支度が整った。ショルダーバックに財布やらハンカチやら携帯を詰め込む。
 あとは、樹羽のところへ行くだけだ。
 あたしは最後にもう一度部屋を眺めた。この部屋とも、今日でさよならなんだし。
 その時、机の上のある物に目がいった。あたしアレ出しておいたっけ? 一昨日出した記憶はないが、まあ、別にいいだろう。

「……今日、そっちに行くからね、リンディ」

 今はもういないクレイドルの主に向かって、あたしはそう呟いた。



 華凛は私の姿を確認すると、何も言わずに玄関まで降りていった。普通なら、ここで何か一言二言あってもいいと思うのだが、やっぱりまだ本調子じゃないのだろうか?
 玄関まで来て、華凛はふいにこんなことを言った。

「あ、そうだ。悪いんだけど、今日は樹羽と二人きりで遊びたいの」

 それはつまり、シリアを抜いた二人だけで、と言う意味なのだろう。その言葉に、私はかなりの違和感を覚えた。いつもの華凛なら、シリアがいることぐらい許容してくれそうなのに、今日は二人きりが良いと言う。
 この華凛は本当に私が知る華凛だろうか、と一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すぐに捨てた。そんなことは有り得ない。その代わりに、私は華凛に理由を聞いた。

「どうして? シリアも一緒の方が楽しいよ?」
「あたしだってそう思うわ。でも、お願い。今日だけは、あたしのわがままを聞いて欲しいの」

 そう懇願する華凛からは、必死さが伝わってきた。何故そこまで頼むのかはわからないが、華凛の想いを無下にする訳にもいかない。しかし、シリアを一人にして自分だけ遊びに行くと言うのも憚られる。心の中に葛藤が生じる。私はどちらを選択すればいいのだろう。

「樹羽、私はいいよ。華凛さんと二人で楽しんできて!」
「シリア……」

 シリアは自らポーチから出ると、靴箱の上に着地した。

「その代わり、私の分までちゃんと楽しんできてね!」

 シリアはそう言って笑う。小さなその姿は、とても立派に、逞しく見えた。
 私はシリアの気遣いに甘えることにした。本当なら、三人で行きたいのだが、華凛が二人きりがいいと言うから仕方がない。
 だが、私はまた今朝の暗い影を思い出してしまった。またあの恐怖がこみあげてくる。帰ってきたら、シリアがいなくなってしまったりしないだろうかと、たまらなく心配になる。

「一つだけ、約束して」
「何?」

 だから私は、約束をする。
 シリアなら、ちゃんと守ってくれる。

「私が帰ってきたら、ちゃんと、おかえりって言ってくれる?」

 それはとても簡単な約束。当たり前に行われるべき事。
 だからこそ、約束したかった。

「うん、約束する。樹羽が帰ってきたら、ちゃんとおかえりって言ってあげる」
「約束、だからね?」
「うん。だから、行ってらっしゃい」

 小さな笑顔に見送られ、私と華凛は家を出た。
 家の扉が閉まるまでシリアはちゃんと笑っていた。



「ごめんね、わがままでさ……」
「ううん、大丈夫。たまには、華凛と二人だけって言うのも良いと思う」

 シリアが抜けたポーチの隙間が少し寂しいが、今日だけは我慢しよう。

「ありがとう。シリアのことなら心配しなくても大丈夫よ」

 華凛は私の手を握りながら言った。

「だって……シリアは、これからもずっと会えるから……」
「華凛……?」
「何でもないよ、行こっ!」

 何か言っていたがうまく聞き取れなかった。華凛はそのまま私の手を引いて歩いていく。私は遅れないように頑張ってついていくことで精一杯だった。








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