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 初めて見るフィールドだ。木々が生い茂り、一見森林かと思ったが、よく見れば至る場所に人工物が露出し、廃墟よりももっと荒廃感が出た感じ。フィールド情報を見て、ようやくこのフィールドの正体がわかった。
 『廃墟(未来)』らしい。人がいなくなった街の未来はこうなるようだ。ただのジャングルにしか見えないが。
 問題は、空にまで草木が生い茂り、まともに飛べそうな場所が限られてしまうことだ。
 相手は地を駆けるマオチャオ。こちらは空を行くエウクランテ。なるほど、ここは完璧に敵のアウェーと言う訳か。

(武装は、大剣が一本にパイルバンカーが二つ。ナックルが一つと、それに……追加のエネルギーパック9個?)
(エネルギーパック?)

 情報にはそれしか載っていない。一体何のエネルギーパックだろう。見た感じ、相手の武装にもエネルギーパックを使うようなものはない。もしかして、パイルバンカーのものだろうか?

(とにかく、まともに戦える場所を探して。危険だけど、それ以外ないから)

 フィールド全体を見てみると、中央に大きな円形の噴水公園があった。ここなら大きな木は近くにないから、飛んで戦うことが出来る。こちらがそこでしか戦えないことは向こうもわかるだろうから、相手もそこへ向かうだろう。移動速度は向こうが上。待ち伏せを食らう可能性は十分ある。

(十分警戒していかないと)
(そうだね……始まるよ)

 スクリーンに表示される文字が明滅する。そして、バトルが始まることを告げた。

『Ready…Go!』

 翼を広げ、ふわりと浮かび上がる。高速で動けないにしろ、走るよりは断然速い。頭の中のマップには、広場までの道筋がカーナビよろしく示してあった。フィールド中央の広場だけあって、開始位置からは少し遠い。ビルの上を飛んでいけば速いだろうが、木々が天井のようになっているからまず無理だろう。

(いっそ火炎放射機で焼き払うと言うのは?)
(私達まで逃げられなくなるからねそれ)

 もちろん冗談ではあるが、こうも鬱陶しくては思わざるを得ない。
 なんとか広場の前までやってこれた。建物だった物の陰から広場を覗くと、広場の中央に狐色をした物体がいることに気が付いた。なるほど、彼は攻めるよりも受けることを選んだようだ。
 この広場はフィールド中央にあることから東西南北どこからでも出入りすることが出来る。よって一つの入り口に張り込むことは、こちらのスタート地点を考慮した上で二分の一の確率でしか待ち伏せできない。中央で待っていた方が確実なのだ。距離は30s、広場に障害物になりそうな植物はない。飛べば5秒はかかる。

(……とにかくボレアスで行ってみる)
(了解)

 バイザーを下ろし、ボレアスと片目だけを建物の陰から覗かせる。相手に気付かれた様子はない。ターゲットサイトに従って銃口の向きを微調整する。慎重に息を整え、止める。後は人指し指に力を込めるだけ。

(……今っ!)

 僅かなエネルギーチャージの後、それはそのまま帯となって相手へと伸びた。ボレアスはスピードランチャー。エネルギーチャージも早ければ弾速も速い。普通ならば気付いてから反応することは難しい。
 あくまで、気付いてからはの話だが。
 着弾を確認、爆煙が上がった。だが、相手のHPに変化はない。防がれたのだ。

(向こう、気付いてたね)
(みたい)

 レーダーの範囲を広げておいたのだろう。当たる寸前で防いだのだ。
 煙がはれると、そこにはマオチャオの純正装備であるナックル兼シールドになる防壁(ファンビー)を構えた相手の姿があった。

(どうするの?)
(私達に近接攻撃以外の選択肢があるだろうか)
(ストームはダメなの?)
(それは……もう遅いっ、エウロス!)

 相手の姿が消え、ジャミングがかかる。左は壁、視界にはいない。つまり相手は後ろか、もしくは……

(上っ!)

 ふっと影が差したことと、けたたましいブースターの音でわかった。両手のエウロスを真上に掲げる。それと相手の大剣が振り下ろされるのは、ほぼ同時だった。

「ぐっ!?」

 予想を遥かに上回る力がのしかかる。大剣を重力に任せて振り下ろしただけではここまで強力にはならないはずなのに。
 両腕にかかる圧力をなんとか左に流す。大剣が地面に勢いよく落ちる。その隙をついて私は真後ろに離脱。この時初めて、私は大剣とやかましいブースターの音の正体を知った。
 相手が持っている大剣は、いやにごつく、鍔には何か長方形の物を入れられるスロットの様な物になっている。巨大な刀身は両刃だが、今まさに現在進行系で地面にめり込んでいるのとは逆の刃が縦に開き、そこからごうごうと火を吹いているように見える。ブースターだ。
 今理解した。あのエネルギーパックはこの大剣のブースターの燃料だったのだ。さしずめ、ブースターブレードとでも呼ぼうか。
 広場へと待避し、双方ともに睨み合う。相手は地面から刃を抜き、今度は斜めに突き刺した。かなり重そうである。目測2mはあるだろう。一々両手を使って動かさないとならないようだ。

「さすが先輩です。あの一撃を受け止めるなんて」

 マオチャオのボイスで朱野くんが話しかけてくる。私はそれに対して警戒を緩めずに答えた。

「勘」
「そうですか。でも、次は受けきれませんよ」

 そう言って剣を地面から抜くと、ブースターを起動させながらこちらに走って来た。その背中には、アーンヴァルMK.2のリアパーツが出現している。瞬発力を高めてあると言うわけか。それに、あれなら空中でも戦える。
 だが私はブースターを使いながらも空へ行かなかった。ちょっとした作戦のためだ。
 相手は容赦なく大剣を振るってくる。猛スピードで目の前をかすめていくそれに内心ひやひやしながらかわし続けた。幸い早いだけで単調な攻めだったため、軌道を見切るのに苦労はない。
 だが如何せん早さが早さであり、刃が流れるように、時には体自体を捻りながら繰り出されている。そのため、大剣が止まることなく動き続けているが故に隙がない。
 だが、隙はできる。予備のエネルギーパックがある以上、大剣のブースターには限りがある。それが隙となるはずなのだ。
 しかし、その隙も最小限で済まされることを私は知らない。

「なっ……」

 一際大きく踏み込まれ、私もそれに比例するように後ろへ大きく待避する。大振りの上段。ブースターが切れると同時に振り下ろされた刃は、慣性を乗せたまま地面にめり込んだ。その瞬間、鍔に当たる部分から長方形の箱が自動排出される。

(っ!)

 それを決して見逃さず、私はエウロスを構えて突進する。狙うはエネルギーパックが収まるスロット。そこさえ破壊すればこの大剣は巨大な鉄屑と化す。だからそこを狙うことは必然と言えた。ブースターを入れてエウロスを突き出す。
 だが相手もそれを読んで行動してくる。次の瞬間には相手の体が真上に跳ねた。同時に柄も持ち上がる。それと平行して、相手はスロットにエネルギーパックを叩き込んだ。僅かな時間で大剣のブースターは息を吹き返す。ゴウッと音を立て、相手は空中で一回転した。
 前へと進む体は急に止められない。むしろ止まればそのまま振り下ろされる刃に真っ二つにされるだろう。
 だから私は加速した。本能的に自分からブースターを入れる。相手の真下を滑り抜けるような低空飛行。間一髪で避けられたようだ。後ろで凄まじい速度で刃が通り抜ける。そのまま右に回転し、相手を見る。すでに次の攻撃の体勢に入っていた。
 私は仰向けのまま飛び続ける。シリアがスラスターの角度調整とブースターを担当し、私が体の姿勢制御をする。実は恐ろしく難しく、練習の時では何度も失敗していたのだが、何故か実践になると思うようにうまくいくのだ。
 再び激しい攻めが始まる。それをなんとかかわしながら、私はシリアに一つの指示をしていた。

(残り、10秒……)

 そのカウントを頼りに、私はタイミングを合わせた。一見すると相手の攻めに押されているように見えるかもしれないが、これは誘いだ。

(……3)

 大剣をかわした際に、右足が崩れる。いや、崩したように見せて曲げる。体勢もそれに連られて低くなる。

(……2)

 それを期と見て相手は大剣を真上から振り下ろす。
 それを待っていた。

(……1)

 曲げていた膝をバネのように伸ばす。シリアのブースターと合わさり、地面を滑るように動く。
 相手の大剣を中心に弧を描くように。
 相手が大剣を動かそうとする。だが、もう遅い。

(……0!)

 刃から出ていたブースターが切れ、スロットから空になったエネルギーパックが飛び出す。それに気付いた相手の表情が歪む。
 そう、ブースターの使用できる時間は限られている。一つのエネルギーパックで30秒しか持たないようだ。正確な時間がわからなかったため、最初のエネルギー切れのタイムから計算しなければならなかった。そのためある意味賭けだったが、シリアに30秒数えさせたのは正解だったらしい。結果オーライだ。
 地面に落ちる大剣のスロットに狙いを定める。相手も再び同じ方法で回避しようとするが、何もかも遅い。

「はぁっ!!」

 右手のエウロスでスロットを突き刺す。スロットは小さくスパークを起こし、煙をあげた。

「くっ!」

 その時点で相手は大剣を諦め、後ろに引いた。持ち手を失った大剣は音を立てて地面に落ちる。
 これでまず大剣は無効化出来た。後は、正体不明のパイルバンカーだけだ。
 相手はそこで構えている。私も相手の出方を見る形で構えを取った。



 ブースターブレードを無力化された和也は喜んでいた。正確には楽しんでいたと言った方が良い。

(やっぱり強いな、先輩)

 仲間内では無類の強さ――というより勢いを持つ彼は、これまで大剣を破壊されることは希だった。大概その前に撃墜されるか、タイムアップまで粘られるかの二択だったためである。
 それが真っ向から破られたのは久しぶりなのだ。

(ハオ、久しぶりにアレやるよ)
(アレを使う度にマオチャオは猫だと言いたくなるのだ)

 そのとき、フィールドに地響きが走った。それはこのフィールドのギミックが起動するときの音だった。和也からしてみれば、この上なくピッタリのタイミングだった。
 噴水の真下から巨大な木が現れ、たちどころに広場を埋める大木となったのだ。どんどんと大木が伸びる中、和也は木の枝の中に入っていた。
 これがこのフィールドのギミック。広場に大木が出現する代わりに道に生えていた樹木が少なくなると言うもの。これは両者ともにメリットがあった。
 樹羽は翼を広げて道を飛ぶことが出来るようになる。そして和也はと言えば……

(さ、行くよハオ)
(気は進まないけど、しょうがないのだ)

 マオチャオの両腕に黒い巨大な鉄甲があらわれる。マオチャオの体半分程もあるそれは、元は腕に直接装備するタイプのパイルバンカーであったのだが、杭の部分がナックルに変わっている。正式名は、破城鎚式強化鉄甲。

(ハオ、羽は任せたよ)
(マタタビジェル、忘れないで欲しいのだ)

 できれば忘れていて欲しかったと和也は思った。



 突如としてアスファルトを掻き分けるように現れた大樹に対する私たちの判断は早かった。即座にその場を離れ、広場の南の入り口まで待避する。そこまで来て、フィールド全体の変化に気が付いた。
 大樹が出現したと同時に、フィールド全域に満ちていた草木がほとんどなくなったのだ。おそらく、これがこのフィールドのギミック。通常の廃墟とは違い、フィールドの障害物が変化するとは、中々に斬新だと思う。今まで戦ってきたフィールドでは、風が吹いたり霧が出たり、その程度だった。だがフィールドの形が変わるギミックは今までにない。
 何にせよ、これで通路で戦えるようになったのは事実。いや、あの厄介な天井のような木まで無くなっているのだ。ならば、こちらの行動範囲はフィールド全域と考えていい。

(やりやすくなった)
(この大樹がまた元に戻らなければね)

 シリアの言葉が一瞬わからなかったが、すぐな理解した。つまりシリアはこの広場の大樹がなくなり、それと反比例するように再びフィールドに木々が生えるのではないかと心配しているようだ。
 だが、どうやら今考えいる暇はないようなので、そうなったらそうなった時で考えることにしよう。
 大樹から何か黒い影が落ちてきた。それは姿を消していた相手の姿だと認識するのにコンマ数秒かかった。先程と違い、両腕に巨大な漆黒の鉄甲が装着されていたからだ。
 本来杭があるべき場所には同色の鉄の拳がある。あれがデータにあったパイルバンカーらしい。
 さらに驚くべきは、鉄甲の末尾にはロケットのようなブースターがついている。それに付随する形で、先程の大剣と同じようなスロットがその裏側にあった。
 ……4つも。
 両腕にあるため、全部で8つ。一つで30秒持つから、一回で2分。残り時間的に交換不要で戦えるようだ。

(後ろに引きながらストームで撃つ)
(触らぬ神に祟りなしってね)

 すぐさま方向性を決め、相手の様子を見た。相手の鉄甲の放熱管から白い蒸気が排出される。頭の中で警鐘が鳴る。
 そして、獣が地を蹴った。

「っ!」

 相手が動き始めるの合わせてこちらも後ろに待避する。しかし、相手の動きが予想外に速い。鉄甲を地面に付け、四肢全部を使って前傾姿勢で走ってくる様はまるで……。

(猫と言うよりゴリラ)
(確かに、見える……)

 主にゴリラの歩行手段とされているナックルウォーキング――この場合はランニングだが、これが冗談ではなく意外にも速い。下手をすれば追い付かれかねないほど。

(……次の曲がり角で仕掛ける)
(わかった)

 体を斜めにしながらビルの角を曲がり、そのまま後ろを向いたまま飛び続ける。右手のストームを真横に倒し、その縁を左手で押さえる。後ろを向いたまま飛ぶ場合、腰の位置にブースターの噴射口が来るため、こうやって撃つしかないのだ。
 飛びながら、角から相手が現れるの待つ。
 はたして、相手は現れた。
 黒い弾丸のような速度で跳んで来た相手は、勢いのまま反対側のビルの壁に着地する。それに狙いをつけたところで、もうそこに相手の姿はない。既に地面を疾走している。
 速い、こちらが予測している速度より遥かに。
 ダメ元でストームの引き金を引く。銃口からあらん限りの弾が吐き出されるが、どれもコンクリートの壁やアスファルトを削るだけにしかならない。

(くっ!)

 反転し、スピードをあげる。このままでは本当に追い付かれかねない。
 だが、一瞬でも相手から目を離したのはまずかった。

(ジャミング……レールアクション!)

 振り向いた時には手遅れだった。辺りを警戒するが、一向に攻めてくる気配がない。そこで相手の意図に気付いた。
 相手はレールアクションを使って路地に入ったのだろう。そこから考えられるのは、奇襲以外にない。こちらも路地に入ってしまうのも一つの手だが、その場合、路地での戦闘も考えられる。あんなに狭い路地では翼を広げることが出来ない。同じ場所でも起動力は相手が上。確実に負ける。
 ならばと、私はあえて空中で待機した。地面に足を付き、壁を背にした方が相手が攻めてくる方向が限られるが、こちらの回避方向も限られる。また、翼を使う関係上、左右から来た時に備えると、後ろに隙間が出来、結果的に地面からの攻撃にしか備えられない。
 空中であった方が、360゜どこへでも回避が効く。またそれは相手も同じだった。

(どこから、来る……)

 神経を研ぎ澄まし、空気の流れを感じとる。全てが止まったような時間。耳に入ってくるのは、僅かな風の音だけ。静止した空気は動くものを拒むように佇んでいる。
 そんな空気が今、動いた。

*1

 レールアクションによって相手が斜め上に出現する。二人の息が完全に合い、後ろに待避した。タイミングは完璧だった。そのはずだった。

(っ!?)

 相手が振り降ろした右腕。その鋼の腕(かいな)は私の右足を捕えていた。右足が振り子のように振られ、体が前に倒れる。倒れた拍子に相手の腕に頭を打ち付けてしまう。
 だが、そこまで勢いがなかったにしろ、一瞬だけ完全な隙を見せてしまった。

「ぐぁっ!?」

 真っ正面から左手で体を掴まれる。手は大きく、私の腕までガッチリと握っていた。腕からブースターが噴射される。私は成す術もないまま一緒になって回転し、その勢いを殺さぬままにビルの壁に叩きつけられた。
 あまりの勢いにビルの壁にひびが入る。壁と手に挟まれた私は、その衝撃を一身に受けていた。
 意識が飛びかける。目の前がチカチカして、体が異様に重い。

(樹羽っ、大丈夫!?)
(結構……しんどい……)

 頭の中で情報が行き来する。残りのHPは僅か。今の衝撃でアイオロスは大破寸前。相手はいつでもこちらを倒せる距離。腕も動かせない。
 状況は最悪だ。
 しかし、まだ手は――いや、足は残されている。足はまだ、正常に動く。
 あと、それを使ってこの状況をどうひっくり返すかだ。
 その時、頭の中に一つの単語が明滅した。それを基軸に反撃までの方程式を組み立てる。迅速に、正確に。

(シリア、これから私が言うことをよく聞いて、それを実際にやって)
(……わかった)

 自信無さげにシリアの返事が聞こえる。たとえ自信が無かろうとも、やってもらわなければ困るのだ。
 シリアに反撃の手順を話す。全て話し終えた所でシリアは短く

(やってみる)

 と答えた。かなり手短に話したが、シリアならやってくれるはずだ。
 体の内で、何かが起動する。それは相手へのジャミングと言う形で相手に知らせた。
 それに気付いた相手は右腕を動かした。大きく振りかぶり、そして……

(え……?)

 振りかぶる腕が、止まった。

(今だよ樹羽!)

 何だかよくわからないが、チャンスだ。私は動く左足で相手の左腕を思いきり蹴飛ばした。鉄甲に覆われていない、相手の素体の腕を。

「痛っつ……」

 相手の手の力が僅かに緩む。その瞬間、私の背にあったアイオロス、そしてたった今相手を蹴った足のノトスが消える。それにより、壁と手の間に僅かな隙間が生まれる。そして私の体は羽になったように重力を失った。
 次に重力が戻った時には、相手の背後に周り込んでいた。レールアクション、成功だ。
 レールアクションは瞬間移動ではない。相手をすり抜けることは出来ないから、掴まれていた場合、レールアクションは失敗に終わる。だから相手の拘束を緩め、壁と手の間に隙間を作ると言う作業を同時に行う必要があった。
 レールアクションの発動から実際の移動までの時間をシリアに計算してもらい、こちらが拘束している手を緩めたど同時に移動出来るようにしたのだ。さすがシリア、時間も正確だった。
 体よく私は相手の後ろに回り込んだ。そして、まだ終わりではない。
 私がシリアに指示したレールアクションは、ただのレールアクションではない。私の、エウクランテの固有RAだ。
 私の真下に、鳥型ビークルである『プレステイル』が出現する。ボレアスを基軸にノトスを頭と尾に見立て、エウロスとゼピュロスが足となり、アイオロスが翼となる、まさにエウクランテの全ての武装を使ったビークル。それがプレステイルだ。
 アイオロスについている取っ手を握り、腕を引いて体を固定する。後は、レールに乗って突撃するだけだ。
 『グライドオンプレステイル』、長いがこれがエウクランテの固有RAの名前。そしてこのレールアクションの終わりは、相手に突撃するまでなのである。
 つまりアイオロスが死んでいようとも、十分攻撃が可能なのだ。

(いけぇっ!)

 プレステイルに乗り、相手へと突撃する。当たる寸前でバリアが相手の体を覆うが、ダメージは計りしれないものだ。衝撃で土埃が舞う。
 相手のHPが大幅に減り、役目を終えた鳥型ビークルは、光に包まれて消えた。同時にプレステイルに使われていた武装が戻る。戻ったばかりのノトスで相手を蹴りつけ、後ろに跳躍。まだだ、まだまだ終わらせない。
 現れたストームを握り、相手に向かって引き金を引き絞る。フルオートで吐き出された弾は相手へと吸い込まれていった。
 数秒で弾切れになる。はたして、土埃がはれたそこには鉄甲で体を守っている相手の姿があった。HPは、いい感じに削れている。残り一撃か、そこらだ。

「……先輩、勝負しませんか?」

 その時、朱野くんが言った。口元をニヤッとさせながら。

「勝負?」
「ラスト一撃、どっちが勝つか、勝負ですよ」

 それは提案だった。残り時間はあと僅か。互いのHPは残り一撃加えたら終了。言っていることはわかる。だがしかし、

「悪いけど、それに応じることは出来ない。でも」

 シリアに固有RAの発動を指示する。シリアは何も言わずに静かにレールアクションを起動させた。
 再びノトスとアイオロスが消え、プレステイルが姿を現す。

「悪くない」

 プレステイルはふわりと上昇する。朱野くんはニヤリと笑うと、構えを取った。








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