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えむえむえす ~My marriage story~

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ウサギのナミダ
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必殺技は男の浪漫



7月31日(日)

 私は華凛との約束通り、シリアと二人でゲームセンターに来ていた。最初は榊くんを誘おうかと思ったが、どうせなら新しい人と戦ってみようと言うシリアの助言もあり、今に至ると言うわけだ。

「今日も空いてる」
「なら、座って待ってないとね」

 この筐体は一人でもお金と神姫カードを入れればアーケードモードで遊ぶことが出来る。対戦を待っている時はこのモードで自主トレしながら待ち、挑む側は乱入と言う形でバトルすることが出来る。
 だが私はアーケードではあまり戦ったことがない。一度戦う度に疲れてしまい、いざ対戦しようと思っても、フルパワーで戦えないのだ。燃費のすこぶる悪い昔のエンジンのようだ。
 ともあれ、そんな具合で対戦待ちをしていた私だったが、対戦相手は思いの他簡単に現れた。

「あれ? 奏萩先輩、奇遇ですね」

 そう話かけてきたのは、一昨日再会した朱野くんだった。今日は肩に神姫を乗せている。マオチャオ型だ。なんだか、だるーんと伸びているが大丈夫だろうか?

「対戦待ちですか? よかったら対戦していただいても?」
「喜んで」

 彼の神姫の具合が心配だが、とにかく彼は筐体の反対側へと回った。
 筐体の上を見ると、案の定シリアがマオチャオのことを心配している。

「大丈夫かな……なんだか、疲れてるように見えるけど」
「ベストの状態じゃないみたい。けど私たちはいつも通り戦うだけ」
「そう、だよね。あの子には悪いけど、バトルはバトル。全力でやらせてもらおうか!」

 シリアの士気が高まったところで私はヘッドギアをつけた。シリアも筐体の中へ。マイクテス、OK。

「いけるね?」
『もちろん』

 短いやり取りで互いの士気を高め合う。そして、私はボタンをゆっくり押し込んだ。



 来た。開店から待つこと5時間、やっと奏萩先輩が姿を現した。奏萩先輩がこのゲーセンでバトルしていると知って、朝から張り込んでいた甲斐があったと言うものだ。

「ますた~、ハオはもう帰りたいのだ~……帰ってマタタビジェルをたらふく飲みたいのだ~」

 肩口の神姫、ハオがだらしなくそんなことを言っている。マオチャオ型は基本的に気分屋だが、今回ばかりは自分が付き合わせている。
 だが、構っている暇はない。奏萩先輩が対戦待ちの体制に入る。その瞬間、すぐさま行動を起こす。物陰から身を出し、何くわぬ顔で奏萩先輩に近付く。

「あれ? 奏萩先輩、奇遇ですね」

 奇遇でも偶然でもなくおもいっきり張り込んでいたわけだが、そんなことは言われなければわかるようなことではない。

「対戦待ちですか? よかったら対戦していただいても?」
「喜んで」

 その短い返事に内心でガッツポーズをきめる。今ならアーケードで軽くハイスコアを叩きだせそうだった。
 筐体の反対側へ行き、ハオを筐体の上に下ろす。が、据え置き人形よろしく自立せず座りこんでしまった。

「ますた~、わたしはもうやる気ゼロなのだ~。はやく帰ってマタタビジェルが飲みたいのだ~!」

 マタタビジェルとは、マオチャオが大好物とする神姫専用飲料のこと。個体にもよるが、大抵のマオチャオは臭いだけで酔い、一口でも飲めばそのまま眠ってしまうほど強い酒のような物だ。
 だが家のハオは水感覚でそれを飲むことが出来る。マタタビジェルは決して高くはないが、安くもなかった。

「わかった、家に帰ったら飲んでもいい」
「3本」
「1本」
「3」
「……妥協して2!」
「……わかったのだ」

 なんとか納得してもらい、筐体の中へ。まぁ、なんだかんだ言ってハオはバトルになると元気になるからな。その点は問題ない。

(いきますよ先輩! 今日、この日をどれ程望んだことか!)

 好きな先輩とバトル。そうすれば、自然にもっとお近づきになれる。
 期待と喜びに胸が一杯になりながらボタンを押した。これから始まるバトルの舞台、それはこちらから指定してある。言わばホームグラウンドバトル。好きな先輩相手でも負ける気などない。

(さぁ、バトルと行きましょうか!)



 樹羽たちがバトルを始めていることなど露とも思っていなかった俺は焦っていた。いや、戸惑っていた。

「おいおい、どういうことだよ……」

 俺は今、自室の窓から外を眺めていた。ありきたりな風景を眺めながら、さて夏休みに出た宿題でもやろうかと思っていた矢先のことである。

 外に白い粒が舞っていたのだ。

 すぐさま窓からその粒を手にとってみた。冷たかった。

(今、真夏だぞ……そんなことが……)

 すぐにテレビをつけ、天気予報を確認する。この地域は今日は晴れのはずだった。事実今映っている予報には、依然として晴れマークがさんさんと輝いている。だが窓の外には、白い粒が重力に従って真下に落ちていた。

「マスター、どうしたのー?」

 シンリーが俺の近くまでやって来て、同じ窓の外を眺めた。すると、彼女は思いの外ため息をついた。

「なんだ、ただの雪じゃん。もっとネタになりそうなことで驚いてよ」

 そう言って、彼女は再びクレイドルへ戻ろうとした。俺はそれを止める。

「待てよ、ただの雪ってなんだよ。今は夏だぞ!?」
「それがどうしたの?」

 シンリーはまるでそれが当たり前であるかのようにあしらった。

「お前、何言って……」
「マスターこそ、なんでこんなことで慌てふためいてるの?」

 俺はさらに混乱した。シンリーはこの状況を異常だと感じていない。ついにシンリーが壊れたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。窓の外を歩く人は皆、何くわぬ顔で雪の降る道を歩いている。
 シンリーだけではない。俺以外の皆はこの状況をいつものことだと思っている。

「なんだよ、なんなんだよ!!」

 まるで俺だけが取り残されたようだ。みんなにとってこの雪は普通のことで、それを異常だと思う俺が異端だとでも言うのか?
 その時、俺の携帯から厳かな着メロが流れ出した。ベートーベンの曲のオーケストラバージョンだ。ディスプレイを確認すると、見慣れたクラスメイトの名前が表示されていた。俺は落ち着いて通話のボタンにタッチする。

「もしもし……」
『あ、東雲く~ん? 突然なんだけど~外の雪どう思う~?』

 電話の先から聞こえてきたのは、教室でいつも聞いていたゆったりとした声だった。俺はその声に若干戸惑いながら答えた。彼女が俺に連絡してくることなど希だからだ。

「外の雪か、綺麗だな。ちょっとどころの騒ぎではなくフライング気味だが」
『あ、やっとまともな事言ってくれる人がいた~』

 ゆったりとした安堵が携帯越しの俺にまで伝わった。察するところ、このクラスメイト――霧雨愛理(きりさめあいり)も異変に気付いているようだ。いや、気付かない方がおかしいのだが。

「霧雨、お前も変だと思うんだな?」
『うん~、スクープの良いネタにしようと思ったら、お母さんに普通だ~って言われちゃって~、今クラスのみんなに電話してるところなの~』

 で、俺のところにお鉢が回ってきたわけか。

「他の奴も、この雪をなんとも思ってないのか?」
『そだよ~、それがどうしたの、だって~』

 どうやら他の奴もシンリーと同じ状態らしい。異変に気付いているのは、今のところ俺と霧雨だけのようだ。もしかしたら樹羽も気付いているかもしれない。

『あ、でも佑奈ちゃんは少し違和感持ってたよ~』
「あー、委員長か」

 佑奈ちゃんこと、空向佑奈(からむきゆうな)は俺たちのクラス委員長だ。あいつも違和感を持っていた? 法則性がさっぱりわからんぞ。

『私に言われても困るよ~。ただ……』
「ただ?」
『この雪に違和感を持ってる人って~、華凛ちゃんに関係してる人ばっかりな気がする~』
「はぁ?」

 それこそ意味がわからない。確かに霧雨や委員長は秋已と仲が良いかもしれんが、俺はどうなんだ。俺とあいつは単なるクラスメイトだぞ。それに何故そんな理論に行き着く。

『えぇ~知らないの~? 華凛ちゃん、東雲くんのこと……』

 そこまでしか聞こえなかった。突然電話の向こうでガタンッという大きい物音がした後、霧雨の声が聞こえなくなったのだ。

「おい霧雨!? 大丈夫か!?」

 呼び掛け、しばらくすると霧雨が照れながら電話に出た。

『あはは~、なんか携帯落としちゃった~』

 どうやら特に問題ないようだ。だが、俺はこの後絶望することになる。
 いつもと変わらない、彼女が発したセリフによって。

『で、私なんで東雲くんに電話したんだっけ~?』

 最初、意味がわからなかった。その質問の意味を理解するのに二秒ほど要して、俺はようやく喋ることが出来た。

「何でって、お前から雪のことについて聞いてきたんだろ?」
『雪~? そう言えば降ってるね~』

 俺の中で嫌な予感が膨れ上がった。それはたぶん、この上ない事実なのだろう。確認などしたくないが、しなければならない。

「霧雨、夏に降る雪ってどう思う?」
『ん~? 別にあってもいいんじゃない~?』
「っ!」

 頭をハンマーで殴られたような気がした。さっきまで同じようにこの異常事態を認識していたクラスメイトが今、このおかしな現象に巻き込まれたのだ。
 もはや彼女の中で、この雪は別にあってもおかしくない存在なのだろう。

「……悪い、もう切るな」
『~? ばいば~い』

 電話を切り、独り立ち尽くす。よく見知った世界なのに、今では独りになってしまったような気分だった。

(樹羽なら、樹羽なら気付いてるはずだ!)

 意味もなく、そう思った。電話番号など知らない。小学生時代に僅か二週間かそこらしか一緒にいなかった俺は、彼女の家の場所はおろか、電話番号すら知らなかった。
 樹羽じゃなくてもいい。誰かに会いたかった。この異常を異常だと言える存在に。足は部屋の扉へと向かい、そのまま玄関に向かって走り出した。部屋を出る時にシンリーが何か言っていたような気がしたが無視した。
 靴を履き、玄関を開ける。雪は晴れた空から降っていた。雲一つない青空から白い氷の結晶が降りてきている。それは地面に落ちると、最初からなかったように消え去る。水跡すら残らない。

(誰かっ、誰でもいい! この雪に疑問を持ってくれ!)

 誰もこの青空から降る雪を気にも止めない。ある人はそれが始めからないように道を歩いている。
 俺は走りだしていた。行き先なんてわからない。ただこの状況を良しとしない人に出会いたかった。
 しかし、数分走ったところで、急激な睡魔に襲われた。頭に霞がかかったようにぼんやりし、足から力が抜ける。どうにかアスファルトに手をついたが、その間にも意識は朦朧としていく。
 おそらく、この睡魔に負け意識を失えば、俺もこの雪に疑問を持たなくなるのだろう。それはこの世界に飲み込まれるのと同義だ。

(俺も、霧雨のようになるのか……?)

 そうなれば、この雪に疑問を持たなくて済むのだろうか?

(そうなれば……悩まずに済むのか……?)

 あぁ、それも、いいのかもしれない……な――



「ん、あれ?」

 俺は気付けば地面に倒れていた。貧血でも起こしたのだろうか? まったく、俺も秋已のこと笑えないな。

「早く家に帰らねぇと」

 だが俺はなんでこんな場所にいたんだ? まあ、考えても仕方ない。俺は今来た道を引き返した。
 空からは、冷たい雪が降り続けていた。






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