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『マッドサイエンキャット』-2/3



寝心地の悪さを感じて目を覚ますと、私は祭りの【みこし】のように担がれていた。
成句に「御輿を担ぐ」とあるようにヨイショされているわけではなく、ハチマキとフンドシを締めた益荒男達が肩に乗せて運ぶあの【みこし】のように、忍者二人の肩の上に乗せられていた。
手足を縛られて、口には猿ぐつわをかまされている。
右腕と右足がそれぞれ黒い忍者、白い忍者の肩に乗っていて、二人は「えっさ」「ほいさ」と言いながら早足で進んでいる。
二人が歩くのに合わせて振動が伝わってきて痛い。
私達はどこかの民家と民家の隙間を通っていた。
人一人が通れるくらいの幅だが、この道と呼ばない道を使っているのは恐らく猫くらいのものだろう。
長い間雨風にさらされ続けてきたような箒やバケツを、ホノカみこしは避けていった。
両側のそそり立つ壁だけではどんな家だかは分からないけど、少なくとも私の家の近くではないようだった。
ずいぶんと長い間、意識を失っていたらしい。
「フゴー!」
「やべ、姉さ」「んが起きた」
あんたたちこんなことして、タダじゃおかないかんね! と言いたいところだけど「フゴフゴ」としか喋れないので、代わりに二人の上で暴れた。
海鳥のくちばしに挟まれて逃げ出そうとあがく魚よろしく。
でも残念ながら私は魚と違って、逃げ出しても海の中に飛び込んで泳いでいけるわけではなかった。
思いの外あっさりと、そして薄情にも、忍者たちは暴れる私を捨てた。
そして落ちた私は海ではなくコンクリートの上に叩きつけられた。
手足を縛られていたため全身でその衝撃を受け止めた。
「ンゴッ」
こういう時だけは、人間とくらべて身体が小さく軽い神姫でよかったと思う。
これが体重の重い人間だったら結構深刻なダメージになってるはずだ。
神姫に生まれたおかげで痛い思いをせずに済んだ。
髪は普通の飛鳥型のオカッパと違って長いぶんだけ汚れてしまうけど、それくらいは大目に見よう。
良かった良かった。
さて、屈辱的な格好で地べたの上に転がされたおかげで煮えたぎっているこの怒り、どうしてくれようか。
「ひええ、姉さんが決算前」「の室長みたいな顔してるぅ」
私から離れて抱き合う二人に、眼で「猿ぐつわを取れ」と訴えた。
恐る恐る近づいた二人は二人で猿ぐつわを取った。
随分あっさり取ってくれたので「手足を縛ってるのも外してよ」と言ってみたのだが、忍者二人は首を横に振った。
首を振る向きも回数もタイミングも、左右反転しない鏡のようにまったく同じだ。
「納得のいく説明が欲しいわ。あんた達は今何をやっていて、どこに向かっていたのかしら」
「言ったら姉さん、怒」「るじゃないスか」
「怒らない。怒らないから正直に言いなさい」
「えー絶対それ嘘っスよね。そう言う」「人って約束やぶって怒るじゃないスか」
「あら、『魔法少女セイブドマイスター』の言うことが信じられない? あなた達、『大魔法少女』が嘘ついたの見たことある?」
勝手にアリベの名前を出したことを心の中で詫びつつ、私にできる限りの笑顔を作った。
それが功を奏したのか単にアリベがすごいのか、忍者二人は考える間を置かずに首を横に振った。
「アリベを信用するなら私も信用してくれたっていいんじゃない? さ、怖がらずに話してみてよ」
「じゃあ言うスけど、室長の命令スか」「らね。悪いのは全部あの迷彩巨乳スよ」
この二人は室長への忠誠心があるんだかないんだかはっきりしない。
強い神姫の言葉に流されてるだけで、実は尊敬の念なんてものは持ち合わせがないのかもしれない。
誰かを尊敬するほど殊勝な性格をしているようにも思えないし。
「まず姉さんを研究室に」「拉致するじゃないスか」
「うん」
「そしたら姉さんのこと好き勝」「手に改造できるじゃないスか」
「そうね」
「まず洗脳して何でも言うこ」「と聞かせるようにするんスよ」
「へえ」
「んで小汚い巫女服を脱がして」「魔法少女に変身させるんスよ」
「なるほど」
「巷で話題の魔法少女を召使いとか」「性奴隷にできるってすごくないスか」
「コロス」
「ほら怒ったじ」「ゃないスか!」
奴隷扱いされて怒らない神姫がいるとでも思ってるのか、こいつらは。
っていうかさっき室長の命令だって言ってたくせに、私を拉致する以外は全部自分達の趣味でしょ。
怒る気持ちも勿論大きいけれど、それ以上に私は呆れた。
「あんたらね、言っとくけど今の時点でも犯罪だからね。さらに私を傷つけてみなさいな。あんたらにも大切なマスターがいるんでしょ、そのマスターをブタ箱に住ませたいの?」
「でも自分ら、室長に命令される以前に『魔法少女セイブドマイスターホノカ』のファンなんすよ」
「そ、そうなの? ――いやいや、だから何だってのよ」
口から出かかった「嬉しい♡ありがとう♡」の言葉をすんでのところで飲み込んだ。
まさか自分にファンができるなんて夢にも思ってなかったものだから(妄想はしてたけど)、どういう反応を返せばよいのか困る。
私から距離を置きつつも近寄ろうとする二人を見てると、なんだかこっ恥ずかしくなってきた。
いや恥ずかしさというよりは、なんとも言いがたいむず痒さを感じる。
「だから自分ら、真面目に姉さんに仲間になって欲しいんスよ。拉致しなきゃいけないくらい本気なんスよ。だから姉さんも本気で考えてくれないスか」
忍者二人は人肌を恋しがる捨て犬のような、思いつめたような表情で私を見つめてきた。
手足を縛られて転がされているはずなのに、私の中では私にもよく分からない変化が起こりつつあった。
話を聞いてみるくらいならいいんじゃないだろうか。
よくよく思い返してみると、私にはこいつら清水研を嫌悪するほどの理由はないのかもしれない。
ギンがハルを研究室に引きこもうとした時はギンの挑発的な態度が許せなかったけれど、バトルに負けて思いの外あっさり引き下がったところを見ると、フェアな勧誘だったとの見方もできる。
ギンの挑発的な態度も戦略の内なのだろう。
さっきのゴクラクなんて、私に情報と土産を持ってきてくれただけで、他に被った実害といえばちょっと安らぎの時間を妨害された程度のものだ。
機関砲の弾を数発消費してまで怒るようなことじゃない。
そしてこの忍者二人(名前なんだっけ?)は私のファンだと言ってくれている。
ファンだから拉致しようとする理屈は倫理的に間違っていても、私には二人の気持ちを正面から受け止める義務がある、と思う。
たとえそれが、ファンができたことに舞い上がってしまっていて冷静さを欠いたための義務感だとしても、私はそれに従いたい。
「二人の気持ち、とっても嬉しいわ」
紛れも無い本心から出た言葉だった。
「気持ちはちゃんと受け止める。私だって魔法少女である前に、あなた達と同じ神姫なんだもの。私達は――ううん、どんな神姫だって対等の存在よ。強くても弱くても立つステージは同じなの。もしそこに違いがあるとすれば、手を繋いだ人数が何より尊いものになる。そうでしょ?」
忍者二人は黙って頷いた。
頷いて、うつむいたまま頭を上げなかった。
「だからこの拘束を解いてくれても、私は逃げたりしない。仲間になってほしいと言ってくれた二人と同じ目線に立って話を聞きたいの。分かってくれるわよね」
私と忍者の間に短くない沈黙が漂った。
傍にあるのだろう道路から時折、車やバイクが通る音がした。
私は我慢強く待ち続ける。
二人がきっと分かってくれることを信じて。
黒い忍者と白い忍者はお互いの目を見て「分かっ」「たっス」と言ってくれた。
私の言葉で心を動かしてくれた、そう思っていいんだろうか。
不本意な知名度に頼った部分があっても、気持ちを伝えることができて、そして伝わったことを実感できた。
今までの無名でありふれた神姫だった私が成長した証。
胸が震えるほどの感動を覚えると同時に、ハルと【あの人】の顔が思い浮かんだ。
近くて遠い存在だったアルトレーネ、気高い戦乙女のハルヴァヤと、そのハルを育てたマスター。
二人に一歩近づけたような気がして、顔が緩みそうになるのを我慢しながら忍者の言葉の続きを聞いた。
「無理矢理姉さんを仲間にしたってダメなことは分かってたんス。でもそうでもしないと姉さん、話も聞いてくれないだろうなって思って……ごめんなないっス姉さん、すぐに拘束を解いて」「姉さんを犯すっス」
今、あり得ない言葉を聞いたような気がした。
「シロカゲ!? なに言い出すんスか!」
「もう嫌なんスよ!」
なんかいきなり、二人で一つの文章をしゃべる決まり(?)を無視した白いほうの忍者がキレた。
私の頭の中で「オカス」という単語が、今まで大切に培ってきた常識的な部分にぶつかってきた。
単語の意味がよく分からないけど、たぶんそれは女の子の一生のうちで一度だって向けられてよい単語ではないはずだ。
「自分らいつも一緒じゃないスか! だからクロカゲと一緒のこと考えてると思われるんスけど、クロカゲって微妙に真面目なんスもん! 自分もうちょっとはっちゃけたいっス!」
「お、落ち着くっスよシロカゲ。そ、そうだ、ちょっと疲れてるんスよ、たぶん」
「そうやっていつもイイ子ぶって! クロカゲは姉さんのこと犯したくないんスか!」
「そ、それは……犯したくないって言ったら嘘になるスけど」
民家と民家に挟まれた、人や猫の気配どころかゴキブリの姿もない死角で、両手両足を縛られた私の目の前で今、とんでもない会話が繰り広げられている。
一歩近づけたと思っていたハルとあの人の姿があっという間に見えないところまで遠ざかって、その空白を埋めるように、汚された自分の姿が這い寄ってきた。
その私はボロボロの巫女装束を着て、ドロドロに黒い影を全身にまとわりつかせて、輝きを失った目で何かを訴えかけてきた。
汚い泥を吐き出しながらそいつは、声にならない声で言った。

オ マ エ モ ケ ガ レ テ シ マ エ

本気で怖くなってきて手足を必死に動かした。
しかし固く縛られた紐は緩みそうもない。
本当に逃げられないことを今更のように実感して、ちょっと前まで呑気に説教を垂れていた自分を恨んだ。
どうしよう、本当に泣きそう。
子供のように泣き叫んだら同情を誘えるかな……。
いや、落ち着けセイブドマイスター、まだ忍者二人は私そっちのけで言い合いを続けている。
この隙に何か打開策を練らないと。
拘束をほどくのは諦めるとして、二人を穏便に説得できる材料が欲しい。
冷静に、何か、何かないの――そうだ! 私は心と体を持っているとはいえ、武装神姫は広義では『おもちゃ』に属するんだ!
犯すも犯されるも、対象年齢が七歳以上の武装神姫にそんな卑猥な機能があるはずないじゃない。
そりゃ、世の中の神姫オーナーのほとんどは男性だから神姫が【そういう目】で見られるのも仕方のないことだと思うし、広い世の中には乙女の壁を突破されて(あるいは自発的に突破して)しまった神姫もいるかもしれないけど、少なくとも私はムラムラすることはないわけで、夜中にあの人のことを考えて眠れなくなっても、自分を慰めようとか変な考えは少しも持ち合わせちゃいない。たぶん。
もし普通に生活している神姫が変な気を起こす時があるとすれば、それは、以前ハルが勝手にインストールさせられたトラウマパッチのような、公式ではあり得ないような怪しげなものを使ってしまった時くらいのものだ。
そういえばアダルトパッチなんてものも無料配布されていた。
詳しい説明を見たわけではないけど、神姫でも快感を得られるようになるんだとか。
反響がいっぱいあるほど効果が安全確実なものだとしても、そんなものが無料配布されてることが私は恐ろしい。
今はまだ知る人ぞ知るパッチでも、これが多くの変態オーナーに知られることになったら、その人数だけ間違った方向に手を出される神姫が増えてしまうことになる。
普段は神姫センターで腕を競い合っている神姫でも夜になればあんなことやこんなことをしているかもしれないと思うと、ゾッとせずにはいられない。
まだ言い争っているこの忍者二人はどうだろう。
もし二人があのパッチ配布サイトを知ってたら、たぶん動けない私に……いや、悪い想像をするのはよくない。
私やハルだってレイがいなければパッチ配布サイトの存在を知ることは一生なかったわけだし、忍者二人だって知らないに決まってる。
二人の言葉遣いからまだ精神的に未成熟な感じがするし、うん、きっとそうだ。
私のことを犯すって言ったのも、胸やお尻を触るとか可愛らしいレベルなのよきっと。
だったら好きなだけ触らせてあげようと思う。
いや本当、減るもんじゃないし、それくらい安いもんだ。
拘束はいつか解かれるんだから、セイブドマイスターで脳天ブチ抜くのはその後でいいじゃない。
その可愛らしいであろう忍者はというと、白いほうがさっきよりも興奮して黒いほうに詰め寄っていた。
「アダルトパッチ使おうって言ったのはクロカゲじゃないスか! 姉さんにアヘ顔ダブルピースさせるって決めたじゃないスか!」
もうダメだ。
私の純潔は風前の灯だ。
「待ちなさいよ! なによアヘ顔ダブルピースって、バカじゃないの!? そんなエロ同人みたいなことできるわけないじゃない!」
白いのをなだめようとしながら、黒いほうが「いや姉さん、それがマジなんすよ」と言った。
「ヤバイっスよ、アダルトパッチ。研究室の下っ端神姫に試したスけど、リアルでアヘ顔が見れたスもん。強力すぎてそいつ、ダブルピースする前にフリーズしちゃったっスけど、姉さんの根性ならたぶん大丈夫スよ」
「アンタら、もう絶対コナミに通報するからね。ゴクラク含めた全員、廃棄処分を覚悟しときなさいよ」
「ち、違うんスよ姉さん! 実験は下っ端」「が試したいって言うからやったんスよ!」
忍者の喋り方が二人で一文章の喋り方に戻った。
「姉さんだって病みつきになること請け合いっスよ! 普通に」「神姫やってたら絶対に味わえない快感スよ! ヘブン状態スよ!」
「あんたらも自分で試したの? この変態」
「え? やだなぁ姉さん、あんな怪しげなパ」「ッチを自分に使うわけないじゃないスか」
「誰かー!! 誰か助けてー!! 変態に襲われるー!!」
慌てた忍者二人が飛びかかってきた。
黒いほうは暴れる私の背中に乗って押さえつけ、白いほうは私の口を塞ぎながら辺りを見回した。
「な、なにをガチで助け求めてんスか姉さ」「ん。警察とかに聞かれたらヤバイですって」
「んー! ん゙―っ!!」ガチで警察呼びたいのよバカ共。
この際人でも猫でもいいからなんとか叫んで呼ぼうと足掻いた。
無理に暴れ過ぎたのか、景色がグニャリと歪んで一瞬だけ体の感覚が無くなった。
何故か忍者二人も頭を押さえていた。
しかし二人はすぐに感覚を取り戻して、よりいっそう押さえつける手に力を込めてきた。
「もう仕方ないっス。姉さんがそこまで嫌がるのな」「ら、もうこの場でヤっちまうしかないっス」
押さえつけられた首は振ることすらできない。
それでも黒い忍者を跳ね除けようと全身を使って足掻こうとすると、忍者二人は私の耳元に顔を近づけてボソリと呟いた。
「どうせこの後で廃棄処分されるなら、今」「ここで姉さんのこと潰してもいいんスからね」
動くことも話すこともできない私にこの言葉はとても効果的だった。
二人の声があまりに真に迫っていたこともあって、私は足掻くのをやめるしかなかった。
ただひたすら怖かった。
自暴自棄になった相手に命を握られたことがたまらなく怖かった。
黒い忍者が背中を突き破ってCSCを壊し、白い忍者が今にも私の首を引き千切るんじゃないか、その可能性が僅かにあるだけで、私の体と心は屈服してしまった。
アスファルトにひとつふたつと、涙が落ちた。
嗚咽する声が白い忍者の手の隙間から漏れた。
死にたくない。
死にたくない。
「よく分かってるじゃないスか姉さん、そうっス、静かにしててほしいんスよ。自分らも姉さんに危害とか加」「えたくないんスよ。そのまま大人しくしててくれたら自分ら、姉さんのこと精一杯気持よくさせるっスから」
私の背にまたがった黒い忍者が乱暴に袴をめくり上げて尻を掴んだ。
片手で荒々しく揉まる屈辱的な仕打ちに、しかし私はただ情けなく泣き続けるしかなかった。
「じゃあそろそろ」「アレ、使うっスよ」
私の頭を掴むように口を押さえていた手が外れ、その手に髪を引っ張り上げられて無理矢理上を向かされた。
「あうっ!?」
白い忍者が私の眼の奥の恐怖を覗きこんで楽しむかのように顔を近づけてきた。
目や口が釣り上がるように歪み、狂気を表現した芸術作品のようになっている。
「これがアダルトパ」「ッチっスよ姉さん」
目の前に差し出されたそれは、針のない注射器のような形をしていた。
針があるべき場所には電極のようなものが付いている。
「ちょっと痺れるのは最初だけみたいっスよ。それから先は何やっ」「ても気持ちいいだけっスから安心していいス。早く欲しいっスか?」
そう聞かれても、私はもう憎まれ口すらたたけなくなっていた。
鈍い銀色に光る注射器から目を離せなかった。
私が何も言わないのが気に食わないのか、白い忍者はより強く髪を引っ張り、私は海老反りのような格好になった。
片手で尻をまさぐっていた黒い忍者がもう片方の手を私の胸に伸ばし、気遣いのない強さで巫女服の上から掴んできた。
「痛っ! も、もうやめて……誰にも言わないから」
「なに言ってんスか、楽しいのはこれからじゃないスか。二十」「分もすれば姉さんのほうからおねだりするようになるっスよ」
注射器の先端を額に押し当てられ、私はきつく目を瞑った。
いっそ注射器ではなく拳銃で頭のコアを撃ちぬいて欲しかった。
殺されるわけではないのに、私は楽に死ねることを祈っていた。
額に更に強く押し付けられて金属質な軽い動作音がした瞬間、頭の中に何かが根を張るように情報が流れてきた。
異物に侵入される怖気は一瞬だった。
私の意識よりもっと深い部分に張り巡らされた情報の根はすぐに溶け込み、私の一部になった。
それと同時に、掴まれている髪の根本を始点に、未だ乱暴に弄られている左胸、黒い忍者が乗っている腰、痛いくらい強く指を食い込まされている尻から、痛みとは違った熱のような感覚が溢れてきた。
「んあっ!? あ、やだっ……!」
「フヒッ! この即効性ヤバイっすよ。どうすか姉さん、生まれて初めての快感は」
あっという間に足の指先まで回った熱は反響するように発生源に戻ってきて、新たな熱を増幅させた。
両胸を強く引っ張られ、そこから発生した痺れが生き物のように体の中で跳ねまわった。
体が二度三度と痙攣して、目がくらむほどの痺れが僅かに引いた頃に今度は胸を押し潰され、また痙攣した。
今まで体感したことのないあまりに強すぎる感覚は我慢できないほど苦しくて、でもそれは言葉で言い表すと間違いなく『快感』だった。
必死になって歯を食いしばった。
しかし体中を這い回る耐え難い痺れと、私の声とは思えない声が、口を無理に開かせた。
私達の姿を表から隠す民家の壁と壁の間に、抑えきれなかった声が高く響いた。
獣のような声だなと、されるがままになりながら思った。
恥ずかしさは不思議となかった。
私の体に指か食い込む度に快感が増幅され、理性が塗りつぶされていった。
壁に響いた獣の声に応えるように、私も声を上げ続けた。
忍者二人は私が一際高く声を上げる場所を重点的に責めるようになっていた。
二人がかりで私の逃げ場をなくし、どこかへ追い詰めていった。
余すところ無く甘い痺れを掘り起こされ、抵抗することすら忘れた私はもう何も考えていなかった。
自分の体が自分のものでないような錯覚の中で、縛られた手足だけがもどかしかった。
気がつくと私は服を脱がされ、あられもない姿になっていた。
「自分らもとろけそうっスよ――姉さんは」「なんでそんなにエロい声出せるんスか」
二つの舌が両脚の付け根を外側からなぞるように這い、内側を舐められた時、今まで受け止めて溜まっていた痺れが、すべて一瞬のうちに逆流した。
「――――――ぁ!!?」
まともな声は出なかった。
暴力的な快感の波に飲まれ、とても耐え切れず私は意識を手放した。
しかし波は逃げることも許してはくれず、それ自身によって再び目を覚まし、また耐え難い快感に襲われた。
跳ね上がった腰が戻らないまま、全身をこわばらせて波が引いていくのを待つしかなかった。
そこに再び人間で言うところの秘所を舐められた。
さっきの激痛にも似た感覚が再び私を襲い、今度は自分でも驚くほどの叫声が上がった。
長い間下唇を噛み締め、やっとその波から解放された時、自分がその余韻を深く味わっていることに気付いてしまった。
「どうだったスか姉さん、今」「のが初イキってやつっスけど」
首を動かして二人のほうを見るもの億劫で、「うるさい、ばか」と呟くので精一杯だった。
二人の顔を見なくてもニヤニヤしてるのが分かった。
「姉さんかわいいなー。キスしていいっスか」
「あ! シロカゲずるいっス! 自分も姉さんの唇欲しいっス!」
二人が手を止めても、気だるさを伴った余韻はなかなか引かなかった。
私にベッタリとくっついたまま言い合いをする二人の体のどこかに触れられる度に、その場所に弱い電気が走って震えた。
何度かのもどかしい痙攣の後、私はさっきの絶頂を再び体が欲していることが信じられなかった。
体の許容値をまったく度外視したとんでもない要求に、しかし同意してしまう私がいた。
一度でも欲を意識してしまったら、強い痺れが途切れたことが我慢できないほどに苦しかった。
縛られた手がまるで個別に意思を持ったかのように暴れ回り、自身の体に襲いかかろうとした。
でも自分の手では駄目だった。
自分の意思ではどうにもならない、私を苛め抜く手が欲しかった。
「クロカゲは下の唇のほうがいいっスよ。そっちのほうが姉さん感じてくれるっスよ」
「嫌っス! 自分だって姉さんとチューしたいっス!」
「じゃあ後でやればいいじゃないスか。まず自分が味見するっス」
「だからシロカゲの唾液がついたさくらんぼが嫌だって言ってるんスよ! 自分が先に味見するっス!」
「それなら自分だってクロカゲと間接キスとか嫌っスよ! つーかクロカゲ、この前自分のカフェオレヂェリー勝手に飲んだじゃないスか! あの貸しを今返してもらうっス」
「うぐっ!? カ、カフェオレヂェリーは今は関係ないじゃないスか!」
「いーや関係ありありっスね!」
「ないっスよ!」
「あるっス!」
「ないっス!」
「……は……早く……」
頭がおかしくなっていることは分かってる。
でも、耐えられない。
この苦しみと切なさから解放されたい。
その一心で、私はついに言ってしまった。
「早く触ってよっ! も、もうだめなの、我慢できないのっ!」
忍者二人は言い争った姿勢のまま私のほうを見て固まった。
しかしすぐに下卑た笑みを作り、「じゃあシロカゲが上の唇で」「クロカゲが下の唇っスね」とすぐに分担した。
白い忍者の顔が私の顔に近づいてきた。
鼻の穴を大きく広げて、触手を伸ばすような舌なめずりをした。
私はその汚い舌から目を離すことができなかった。
「あれだけ嫌がってたのに適応するの」「早すぎっスよ姉さん。じゃあ遠慮なく」
忍者の突き出された唇がゆっくりと近づいてくる間、私は【あの人】やハル、それに何故かマスターの姿を見ていた。
しかし黒いほうが私の秘所に吸い付き、三人の幻は今までで一番強い決壊と共に消えていった。
「今すごくいい顔してるっスよ姉さん。グッチョグチョでもう完全に堕ちた顔っスね」
息を吐きかけるように白い忍者がささやいた。
最後まで私に残っていた僅かな何かが、涙となって流れ落ちていった。
忍者と私の鼻先が触れるほどまで近づいた、その時。




「ジャスト一分にゃ。イイ淫夢、見れたかにゃ」




聞こえた言葉に叩き起こされるように、私は勢い良く跳ね起きた。
ちゃんと二本の足でアスファルトの上に立っている。
手も足も縛られていない。
気だるさもなく自由に動く。
まわりを見回したが、相変わらず民家と民家の間は影になっていて薄暗かった。
忍者二人はというと、
「えっ……うおっ!? な、なんスかコレ」「!? なんで自分ら縛られてるんスか!?」
さっきまでの私のようにそれぞれ手足を縛られ、転がされていた。
しかもご丁寧なことに、紐より強力そうな結束バンドで縛ってある。
「ね、姉さんがやったんスかこれ!? でもだっ」「て、さっきまで姉さんアヘ顔寸前だったじゃないスか!」
「アヘ顔言うな」
私の体からはさっきまでの変な感覚が綺麗サッパリ消えていた。
いや、最初からそんなものはなかったと言ったほうがいいくらいだ。
額に手を当てて探ってみたが、特に何かをされたような形跡はなかった。
頭の中も体もスッキリしている。
強いて言うなら、忍者二人への殺意だけが混じりっけなくあるくらいだ。
「オマエタチはワガハイが作った幻覚を見てたんにゃよ」
私と忍者二人から少し離れたところに、そのマオチャオは立っていた。
緑色のショートカットヘアに同じ色の大きな目、白をベースに橙色の模様が描かれた丸っこい武装。
両手の大きな爪は省略されていて、代わりに忍者が持っていたものと同じ注射器が二つ握られている。
注射器を除けばごくごく普通のマオチャオだった。
バカっぽいところも含めて。
「にゃーっにゃっにゃ!」とマオチャオはいきなり笑い出した。
「SOS信号をキャッチしてみれば、『魔法少女セイブドマイスターホノカ』の貞操のピンチときたもんにゃ。丁度近くにいたワガハイのナイスタイミングっぷりはもはや【運♡命】と呼ぶべきかもしれないにゃ。どうにゃセイブドマイスター、ワガハイをアシストキャラに設定してみないかにゃ。今なら期間限定でマオチャオもう一匹とアルトレーネもセットでついてくるんにゃが、どうにゃ?」
状況が唐突すぎて混乱した私はとりあえず愛想笑いをしておくことにした。
「は、はは……」
必要以上に顔が引きつった理由は私にもよく分からなかった。










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