第十一話<弁慶参上>
「良い感じだな」
「はい、体が軽いですよ~!」
前回の戦いで新たなボディを手に入れた十兵衛はとびきりの笑顔で答えた。
今日俺達は神姫センターで開かれた大会に出場。
いやぁなんというか優勝してしまったのだ。
新しい素体に慣れようと出た大会だったため、勝敗は求めてはいなかったんだが…まぁ勝てたならもちろん嬉しいものである。
「じゃあ今日の賞金でなんか新しいパーツ買うか?」
おかげで財布はほっくほく。湯気が出そうだぜ!なんて。
「本当ですか!?やったぁ~!!」
そんな幸せ絶頂な時にそれは現われた。
しかも思いっきり真後ろから…。
「あぶなぁ~い!!」
ゴン!!!
「ぐお!!」
「マスター!?」
背中に凄まじい衝撃が走る。
「い、いってぇぇ…」
「マスター!マスター!」
思わず俺は床に転がりのた打ち回った。
そんな目の前に小さな人影。
目の焦点を合わせて何とか影の元を見る。
「は、ハウリン…?」
そのハウリンは鎖をぶら下げた首輪をつけて、白いノーショルダーのセーターに赤いプリーツスカートという井出達…そして手には巨大な塊を持ってそこに立っていた。
「む…ハウリン違う…」
「だ、誰…?」
頭の上から十兵衛の声がする。
うずくまっているため、これ以上は頭が上がらないから十兵衛が見えない。
「あ…いた…」
「へ?」
「…倒す…」
びしぃっと指を指して犬型神姫は言う。
「「え!?」」
驚いた俺と十兵衛の声が被る。一体なんだこのハウリンは。
「…千空…この人達うるさい」
ちそら…??誰だそれ…いや待て…はてどこかで…。
「べ、弁慶…君って奴は…」
「…?…倒す…違う?」
「神姫関係無いリアルファイトで倒してどうするんだよ~。試合で倒すって意味だよ」
「…そうか…ごめん」
「いてててて…」
俺はそんなやり取りを聞きながらやっと起き上がった。しっかしどこかで聞いた覚えのある声色だな…。こう、一、二年ぶりくらいの。
「あ、大丈夫…?ごめん」
「あのなぁ…お前…って!!」
「うおぁ!?」
「マスター?」
「…千空?」
「お、お前…ち…千空…?」
「う、うん…そうだよ…兄さん」
そう、そこには俺の可愛い弟がいた。
「兄さん??マスター?」
十兵衛が困惑した表情でこちらを向く。
「え、あぁ…その…紹介しよう…」
まさか神姫センターで会うとは…。
「【凪 千空(なぎ ちそら)】俺の弟だ」
「お、弟さん…??」
「あぁ…」
「【妹】さんの間違い…ではないですよね…?」
ガーーーーーン…。
そんな音がセンター内に響いた…気がした…。
言っちゃったよ…。
横を見ると
「orz」
まさしくそのまんまのポーズでうなだれている千空がいた。
そう、この【可愛い】弟というのは比喩でもなんでもない。本当に可愛いとしか言い様が無いのだ。
ぱっと見、女にしか見えない。ショートボブの髪にパッチリとした目にきめ細かいすべすべの肌…。
しっかし…しばらく見ないうちにまた女らしくなって…。
今のお前ならどこぞの女学園で全校生徒からお姉様といわれるくらいの存在にだってなれるよ…。
がんばれエルダー候補…。
「千空…どんまい…」
犬型神姫に励まされ、肩をトントンと叩かれる千空。
「うぅ、有難う弁慶…」
はぁ…よりにもよって千空が一番気にしていることを…。
「十兵衛…とりあえず謝っとけ…うん…」
「あ、はい…ご、ごめんなさい…」
状況を察し、頭を下げる十兵衛。
しかし
「千空泣かした…許さない…」
弁慶と呼ばれたハウリンが言う。
「え、そ…その」
「…う゛~…」
うなる弁慶。
「あの…その…」
たじろぐ十兵衛
「…倒す…」
またもやびしぃっと指を指して言い放った。
「いいよ弁慶」
千空が制す。
「…千空?でも…」
「いいよ…慣れてるから…orz」
「で、一体どうしてここに?」
「まぁ見ての通りなんだけど、神姫を始めたんだ」
「みたいだな。どれくらい?」
「まだ三ヶ月かな…サードの中間くらい」
「へぇ…なんだしばらくそっちに帰ってなかったから知らなかったぜ」
「しばらくって言っても一年ちょいでしょ?」
「まぁな」
「で、推薦でこっちの高校に受かったんだ。今日はその手続きに来てたんだ」
「へぇ…どこよ?」
「私立黒葉学園」
「おぉ!!」
私立黒葉学園といえばこの辺じゃ一番でかい学園だ。なんといってもその面積が半端ない。
そりゃあ小中高大すべてを内包しているわけだから当たり前と言えば当たり前である。
「さすがだな弟よ…お兄ちゃんは嬉しいよ…」
「兄さん…泣かないでよ…」
「いやいや嬉しいよ!!」
「千空…この人変…」
「あははは」
「あ、そういえば自己紹介してないな…俺は凪千晶だ。千空の兄です。よろしく」
「…あ、うん…弁慶…」
と自分を指差して弁慶は言った。
「私は十兵衛です。その…よろしくお願いします!」
「……今日のところは勘弁する」
「こら、弁慶?」
「う……うん、よろしく…」
「って!!弁慶!早く帰るよ!終電なくなっちゃう!!」
「え…まだ仇が…」
「勝手に殺さないでよ…」
「…ごめん…」
「じゃあ、今日はもう帰るよ」
「そ、そうか。わかったよ」
「あ、たまには帰ってきてよ?」
千空は笑顔でで言う。く、可愛い…待て落ち着け!こいつは男…こいつは男…。
「マスタ~?」
「…」
「マスター!!」
「ほえぁ!?」
「もう千空さん達帰っちゃいましたよ?」
「え!?」
いかんいかん惚けてしまった…。家に帰って頭を冷やそう…。
「マスタ~?」
「なんでもないなんでもない…」
と、自分に言い聞かせつつ帰路についたのだった。
「はい、体が軽いですよ~!」
前回の戦いで新たなボディを手に入れた十兵衛はとびきりの笑顔で答えた。
今日俺達は神姫センターで開かれた大会に出場。
いやぁなんというか優勝してしまったのだ。
新しい素体に慣れようと出た大会だったため、勝敗は求めてはいなかったんだが…まぁ勝てたならもちろん嬉しいものである。
「じゃあ今日の賞金でなんか新しいパーツ買うか?」
おかげで財布はほっくほく。湯気が出そうだぜ!なんて。
「本当ですか!?やったぁ~!!」
そんな幸せ絶頂な時にそれは現われた。
しかも思いっきり真後ろから…。
「あぶなぁ~い!!」
ゴン!!!
「ぐお!!」
「マスター!?」
背中に凄まじい衝撃が走る。
「い、いってぇぇ…」
「マスター!マスター!」
思わず俺は床に転がりのた打ち回った。
そんな目の前に小さな人影。
目の焦点を合わせて何とか影の元を見る。
「は、ハウリン…?」
そのハウリンは鎖をぶら下げた首輪をつけて、白いノーショルダーのセーターに赤いプリーツスカートという井出達…そして手には巨大な塊を持ってそこに立っていた。
「む…ハウリン違う…」
「だ、誰…?」
頭の上から十兵衛の声がする。
うずくまっているため、これ以上は頭が上がらないから十兵衛が見えない。
「あ…いた…」
「へ?」
「…倒す…」
びしぃっと指を指して犬型神姫は言う。
「「え!?」」
驚いた俺と十兵衛の声が被る。一体なんだこのハウリンは。
「…千空…この人達うるさい」
ちそら…??誰だそれ…いや待て…はてどこかで…。
「べ、弁慶…君って奴は…」
「…?…倒す…違う?」
「神姫関係無いリアルファイトで倒してどうするんだよ~。試合で倒すって意味だよ」
「…そうか…ごめん」
「いてててて…」
俺はそんなやり取りを聞きながらやっと起き上がった。しっかしどこかで聞いた覚えのある声色だな…。こう、一、二年ぶりくらいの。
「あ、大丈夫…?ごめん」
「あのなぁ…お前…って!!」
「うおぁ!?」
「マスター?」
「…千空?」
「お、お前…ち…千空…?」
「う、うん…そうだよ…兄さん」
そう、そこには俺の可愛い弟がいた。
「兄さん??マスター?」
十兵衛が困惑した表情でこちらを向く。
「え、あぁ…その…紹介しよう…」
まさか神姫センターで会うとは…。
「【凪 千空(なぎ ちそら)】俺の弟だ」
「お、弟さん…??」
「あぁ…」
「【妹】さんの間違い…ではないですよね…?」
ガーーーーーン…。
そんな音がセンター内に響いた…気がした…。
言っちゃったよ…。
横を見ると
「orz」
まさしくそのまんまのポーズでうなだれている千空がいた。
そう、この【可愛い】弟というのは比喩でもなんでもない。本当に可愛いとしか言い様が無いのだ。
ぱっと見、女にしか見えない。ショートボブの髪にパッチリとした目にきめ細かいすべすべの肌…。
しっかし…しばらく見ないうちにまた女らしくなって…。
今のお前ならどこぞの女学園で全校生徒からお姉様といわれるくらいの存在にだってなれるよ…。
がんばれエルダー候補…。
「千空…どんまい…」
犬型神姫に励まされ、肩をトントンと叩かれる千空。
「うぅ、有難う弁慶…」
はぁ…よりにもよって千空が一番気にしていることを…。
「十兵衛…とりあえず謝っとけ…うん…」
「あ、はい…ご、ごめんなさい…」
状況を察し、頭を下げる十兵衛。
しかし
「千空泣かした…許さない…」
弁慶と呼ばれたハウリンが言う。
「え、そ…その」
「…う゛~…」
うなる弁慶。
「あの…その…」
たじろぐ十兵衛
「…倒す…」
またもやびしぃっと指を指して言い放った。
「いいよ弁慶」
千空が制す。
「…千空?でも…」
「いいよ…慣れてるから…orz」
「で、一体どうしてここに?」
「まぁ見ての通りなんだけど、神姫を始めたんだ」
「みたいだな。どれくらい?」
「まだ三ヶ月かな…サードの中間くらい」
「へぇ…なんだしばらくそっちに帰ってなかったから知らなかったぜ」
「しばらくって言っても一年ちょいでしょ?」
「まぁな」
「で、推薦でこっちの高校に受かったんだ。今日はその手続きに来てたんだ」
「へぇ…どこよ?」
「私立黒葉学園」
「おぉ!!」
私立黒葉学園といえばこの辺じゃ一番でかい学園だ。なんといってもその面積が半端ない。
そりゃあ小中高大すべてを内包しているわけだから当たり前と言えば当たり前である。
「さすがだな弟よ…お兄ちゃんは嬉しいよ…」
「兄さん…泣かないでよ…」
「いやいや嬉しいよ!!」
「千空…この人変…」
「あははは」
「あ、そういえば自己紹介してないな…俺は凪千晶だ。千空の兄です。よろしく」
「…あ、うん…弁慶…」
と自分を指差して弁慶は言った。
「私は十兵衛です。その…よろしくお願いします!」
「……今日のところは勘弁する」
「こら、弁慶?」
「う……うん、よろしく…」
「って!!弁慶!早く帰るよ!終電なくなっちゃう!!」
「え…まだ仇が…」
「勝手に殺さないでよ…」
「…ごめん…」
「じゃあ、今日はもう帰るよ」
「そ、そうか。わかったよ」
「あ、たまには帰ってきてよ?」
千空は笑顔でで言う。く、可愛い…待て落ち着け!こいつは男…こいつは男…。
「マスタ~?」
「…」
「マスター!!」
「ほえぁ!?」
「もう千空さん達帰っちゃいましたよ?」
「え!?」
いかんいかん惚けてしまった…。家に帰って頭を冷やそう…。
「マスタ~?」
「なんでもないなんでもない…」
と、自分に言い聞かせつつ帰路についたのだった。
「四月が楽しみだねっ。弁慶!」
「…?…千空が言うなら」
「よ~し!どんどん強くなっていこぉ~!」
「…お~」
「…?…千空が言うなら」
「よ~し!どんどん強くなっていこぉ~!」
「…お~」
そして話は分岐していく…
兄と弟。暗と明。十兵衛と弁慶。そんな二人がかみ合ったりかみ合わなかったりするそれぞれの話がまた始まり、そして新たに始まるのだ。
兄と弟。暗と明。十兵衛と弁慶。そんな二人がかみ合ったりかみ合わなかったりするそれぞれの話がまた始まり、そして新たに始まるのだ。