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テスト開始二日目、黒野白太の眼には布団を敷いて眠っている見知らぬ女性が映った。警察を呼ぼうかと考え携帯電話を手に取ったところでそう言えばとアルバイトの一環でイシュタルが人間サイズになった事を思い出す。
何故かデジャブを覚えつつもそう言えば人間サイズの神姫のスリープモードの解除はどうやるのだろうと考え出す。
普段通り背中辺りにあるスイッチを押せばいいのだろうか、とりあえず何時もの通り起動させようと思って、そこで気付いた。
「(待て待て。眠っている相手の背中をまさぐるとか僕は変態か。)」
今のイシュタルは人間サイズだ、眠る女性の背中をまさぐる中学三年生、そう書くと非常に不味いような文になる。
「(いや、でも眼の前に居るのは人間サイズの神姫だ。そしてそのマスターである僕は神姫を起動させているだけなんだ…。)」
等と脳内で必死に自分自身に対する言い訳をしつつもパジャマ越しにイシュタルの背中に手を這わせていく。
「(いやぁ、それにしても素晴らしいうなじ。滑らかに描かれる曲線が実に良い。それに肌も柔らかくて…)…アンバラー!」
奇声を上げて再び自分を殴る黒野白太、頬肉が切れたらしく口の中に鉄の味が広がった。
一発では物足りないと思い後で二発自分を殴り終えると、その時イシュタルが眠たげに眼を開けて奇声を発した自分のマスターを見上げていた。
「…朝から何をやっているんだ、マスター。」
「おはよう、イシュタル。自分で起きられるんだね。」
「…タイマーはちゃんとあるからな。マスターが起きるのが少し早いだけだ。それと、おはよう。」
「うん、僕が何をやっているかは詳しく聞かないで。と言うか聞かれても僕は絶対に話さない。」
「…そうか。色々あるんだな。なら私も聞かな「うわっ!」
寝惚け眼であるが黒野白太の懊悩を察したイシュタルはそれ以上は問い質さず起き上った。
が、両足を立たせた途端、バランスが崩れて尻餅を搗きそうになる、普段とは異なる体の所為だろう。
後ろから倒れた彼女に真っ先に反応し抱き止めた黒野白太であったがその時に彼は天国と地獄の意味を理解した。
無防備な寝惚け顔。着崩れたパジャマから見える小振りな谷間。両手から伝わってくる人肌と同じ温もり。柔らかくて軽い感触。
これが普段の神姫サイズなら可愛らしい人形で済むのだろうが人間サイズとなるとそうはいかない。
「ふぁっ。ありがとう、マスタ-。」
「(ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああ可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ襲っちゃ駄目だ。)」
人としての尊厳だとか朝から襲ったら学校に遅刻するだとか理屈や言い訳を並べて何とか自分自信を保つ事が出来た。
そっとイシュタルを立ててから、やや前屈み気味になりながらも引き攣った営業スマイルを見せる。
「まだその身体に慣れていなさそうだから朝食は僕が作るよ。」
「え、でも…。」
「その素体は借り物なんだから傷付ける訳にはいかないでしょ。ほら、その間イシュタルは顔を洗って着替える!」
「こら、そんなに強く押すな。」
イシュタルを強引に洗面所に押し込んでから黒野白太はさっさと台所にまで移動する。
猛る情欲はそのままに心は熱く頭は冷たくしながらも冷蔵庫の中身を確認し今日彼女が作る予定だっただろう朝食のメニューを予測する。そもそも彼女に料理を教えたのは彼である、イシュタルが何を作ろうとしたのか知るのは難しい事では無い。
頭の中で調理方法の段取りと素材の量を取り決めまな板を眼の前に置き包丁を握った黒野白太は、想う。
「(店長…あんたは何て罪深いものを創りだしたのですか…。)」
心に深い哀しみを背負った少年はただただ無想のまま包丁を振るった。黒野白太は後に語る。「この俺も哀しみを背負う事が出来たわ。」と。
かくして二度目の覚醒を得た黒野白太であったがまぁそんなもの現実に何か役立つかと聞かれれば答えはノーである。
朝食を食べ終わり食器の選択や見嗜みを整えそのまま学校に行き授業を受ける。
「(ええっと、確かここにy=2x+4を代入してっと。)」
普段通り詰まらない日常風景でありイシュタルのお陰で普段よりも授業で出された内容の理解が捗ったくらいしか変化は無い。
今では友達も先輩も後輩も居らず且つての部活仲間とは廊下で擦れ違っても視線を合わせるだけで素通りする。
それは、黒野白太が学校ぐるみで苛められているわけでも、特別視されているわけでも無い。
ただ学校内では無個性で何処にでも居て何処にも行けない良い子であり路傍の石ころと同じような存在だからだ。
そんな彼が学校で何かを、ラブコメや戦闘なんて、起こすはずも無くただただ何も起こらず当たり前に放課後になった。
普段は放課後になったらそのまま家に帰らず予習と復習を済ませるのだが今日はそのまま家に帰る事にした。
勉強もイシュタルとしていた方が楽しく効率良く進む事は昨日の勉強からは明らかだ、それなら早く帰った方がいい。
何時もとは違う行動を起こした黒野白太に対し驚くクラスメイトは誰も居らずそれこそRPGのNPC並みの無関心を装っている。
「(イシュタルにべったりだなー、僕。イシュタルが居なかったらどーなっていたんだろ。)」
自分を嘲笑しつつも帰路に着いた黒野白太はマンションの部屋に見知らぬ女性が居てもそれはイシュタルであると直ぐに気付く事が出来た。
「ただいまー。」
「お帰り。今日は早いんだな。」
「いつもは予習と復習をしてから帰ってくるんだけどね。でもイシュタルとやった方が楽しいし捗るから今日はやらずに帰って来た。」
「そうか。マスターにそう言ってもらえるのなら神姫冥利に尽きるな。」
「まだ夕食作るまでには時間があるでしょ? 先に宿題を終わらせちゃおうよ。」
「分かった。じゃあ私は辞書やプリンターを用意をしているから、マスターは支度を済ませていてくれ。」
「はいはーい。」
イシュタルとの勉強は楽しく捗るがそれは同時に理性と倫理を踏み躙る諸刃の剣。
勿論、黒野白太はそれに気付いており長時間の勉強は自分の正気値が限りなく零にまで削られるかもしれない。
だが対策は万全である、我慢出来なくなればそれを発散すればいいだけ、ピンチになれば賢者に覚醒すればいいだけだ。
それは困ったら取り合えず変身すればいいという某週刊少年漫画雑誌によくある理屈と同じである。
「一つ目の式をA=B、二つ目の式をC=Dとする。ならばA-C=B-C、ここまではいいな。」
「うん。」
「そしてC=DだからA-C=B-Dとなりxかyのどちらかを消す事が出来る。これが連立方程式における加減法の理屈だ。」
「成程、よく分かった。数学の先生は公式しか教えてくれないからさ。」
「分からないものを分からないままにするマスターにも問題がある。教師とはちゃんとコミュニケーションを取っておけ。」
宿題を終わらせ食事を終えて(動物性蛋白質の多い料理だった)予習と復習を開始し、早二時間。
「GHQによる財閥解体、当時の天皇の人間宣言…うん、この辺りも漫画を読むみたいに覚えた方がいいね。」
「戦争の動向をそんな感覚で覚えていいものやら…。」
「戦争と言っても、もう昔の話だよ。僕達は知識としてしか知覚出来ない。それなら長く記憶出来る方法を優先した方がいい。」
そろそろ黒野白太はムラムラし始め無意識的にも勉強の合間にイシュタルの胸やら首筋やら腋へと眼を遣ってしまう。
頭の中では家庭教師プレイだとか巫女服だとかシスター服だとかトイレに連れ込もうかなとかR-18的な事ばかり考えている。
「(駄目だな。自分が何を言っているか分からなくなってきた。)イシュタルー、そろそろ休憩入れない?」
「ん、もう疲れたのか?」
「夕食食べてから二時間、ぶっ通しで勉強してるからさ。ちょっと喉が渇いてきちゃって。」
「人間サイズになっても疲れや渇きというのは分からないな。」
「まぁ、不必要ではないけれど、不便な機能には違いないからね。」
「じゃあ五分ほど休息を入れようか。その間、私は新しい問題作りでもしているから。」
「五分は短いよ。せめて十分。休息というのはね、誰にも邪魔されず自由で何と言うか救われていなくちゃいけないんですよ。」
「その理屈は良く分からないが、勉学が必要なのはマスターだからな。君が望む通りにしよう。」
「うん、じゃあ十分後に勉強再開ね。」
勉強机から立ち上がり真っ先に浴室に向かう。風呂に入る為ではない、そこに隠してある悟りの書を取りに行く為だ。
浴室に着いた黒野白太は掃除のときに使うスリッパを履いて壁掛け式の鏡を取り外す。
敢えて人目に触れ易く且つ水場という悟りの書を隠し難い場所に隠す事で心理的な盲点を突く、そう目論んで浴室に隠していた。
そして悟りの書を手に入れた後はトイレで超黒野白太となる、そのつもりだったのだが、現実はそう簡単では無かった。
「なん…だと…。」
エロ本は失われていた。
定位置に置き忘れたというのは絶対に有り得ない、それならばと、思い至る結論は一つしかあり得ない。
ふらふらと脚は支えを失った木の葉のように、その瞳はドブ川のような絶望に染めながらも、黒野白太は部屋に戻る。
イシュタルはパソコンの前で何か問題文を作っているようで直ぐ近くでプリンターが忙しなく働いている。
数歩歩くと、彼女は彼に気付いた。
「ん、どうしたんだ、マスター。」
「あのさ、イシュタル…浴室の鏡の裏にあった本、知らない?」
「あぁ、あの如何わしい本か。安心しろ、あんなところに置けば長くは持たないと思ってベッドの下に戻しておいた。」
「ありがとうございます、イシュタルさん。」
「どういたしまして。しかしマスター、君は無節操だな。少し前は妹物だったというのに今回は金髪物か?」
「最近は金髪がマイムーブメントなんです。少女臭とかメアリーとか騎士王とかハスターとかティロ☆とか…って、問題はそこじゃない!」
「明らかにおかしい物が混ざっている気がするが、一体どこに不満があるんだ? 別に私が本を捨てたわけじゃないだろう?」
「不満は、そりゃ無いけど、いや、やっぱり何でもない。」
イシュタルの眼が通った悟りに書で賢者になれるはずがない、なんて男の意地を堂々と言えるはずもなく。
「じゃあそろそろ再開しようか。」
「は? まだ五分も経っていないだろう。」
「いいんだ、もう、いいんだ。」
「?」
ただ心が折れた。
この後に黒野白太は自分の手で悟りの書を処分した、空高く立ち上った煙は星が浮かぶ夜空へと飛んで行ったと言う。
…。
…。
…。
テスト開始三日目、無理を強いて悟りの書を自らの手で捨ててしまった黒野白太の正気値はこの日を契機に激減した。
朝、イシュタルの寝顔に見惚れてしまったり、エプロン姿を見て裸エプロン似合いそうだなと妄想してみたり、料理の出来を褒めると見せてきた誇らしげな笑みにトキめいたり、調味料を取ろうとして偶然にも手を重ねてしまい必要以上に意識してみたり。学校に行けばイシュタルとは切り離された詰まらない日常生活を送れるのだが、黒野白太が此の時ほど学校が恋しく思えた時は無い。
マンションに着けばYシャツとハーフパンツ、ノーブラで筋力トレーニングをしており、眼のやり場に困った。
その後、汗は掻いていないからという理由でそのままの格好で本日の予習と復習を始めようと言ってきたので余計に深刻化した。
先の運動で温まった所為かイシュタルの吐く息は生温かく素体全体に赤味が浮き出している。
Yシャツにハーフパンツと非常に軽装なものだから余計にその健康的な褐色が目立ち無駄の無い流線美が浮き出る。
ちらりと見えるヘソの穴や鎖骨の窪み、控え目な谷間、ぬらぬらと軟体の生き物のように蠢く唇に、ふわふわとした良い匂い。
意識し出すと妄想は止め処なく溢れ出し常識や倫理を犯し尽くしてちりちりと焼けるような焦れに襲われる。
「(あばばばばばっばばばばっばばっばばばば)ばばばっばばっばばば。」
「マスター、どうした、眼が死んでいるぞ。それに鼻から血が出ている。」
「(あばばばっばばばっばっばっばばばっばばっばばばばばっばあ)あばばっばばっばばっばばばっばばばぱぱあ。」
「駄目だな、これは。…とぅっ。」
「ぱうぁっ!」
ドム!という効果音と共にイシュタルの拳が張り詰めたビニールを殴った時の様にめりこむ。
殴られた黒野白太は椅子から転がり落ちその場で蹲って潰された蛙の断末魔の様な呻き声を出した。
「どうだ、少しは落ち着いたか。」
「うおぉっおおぉおぉお……………御蔭様で。」
「先程から、いや、そう言えばテストを始めてから奇妙だったな、奇声を上げたり自分自身を傷付けたり。どうしたんだ、一体?」
「言えません。こればかりは。人間としての尊厳に賭けても言えません。」
「そうか。なら私は君が正直になるまで殴り続けるとしよう。」
「ごめんなさい、話しますからシャドーボクシングするの止めて下さい。」
「…随分と軽い尊厳だな。」
仁王立ちをするイシュタルの前で何故か正座し上半身をもじもじと蠢かせながらも出来る限り眼を合わせようとしない黒野白太。
「あの、ほら、僕ってボッチじゃないですか。」
「何だ突然。そんな当たり前な事を。」
「趣味は神姫バトルだけで休日は神姫センターかネット対戦、今まで誰かの家に行ったり誰かをここに招いたりした事が無い。」
「あぁ、そうだった。」
「その神姫バトルの方でも変な事を言ってるから顔見知りの神姫プレイヤーには嫌われていて。」
「マスターにその自覚が会った事に今私は驚いているが。」
「九割の友達はチャット仲間。彼女が出来る出来ないの以前に周りに女の影も無い。」
「長い。もっと手短に言え。」
「女性経験が無いものだから人間サイズになったイシュタルを見ているとムラムラして来るんです。」
「なんだ、そんな事か。」
「はい?」
「逆に尋ねたいのだが、何故マスターは私を襲わないんだ?」
「それは、その、イシュタルが嫌がると思って。」
「構わない。むしろ襲われたかったな。私から襲ってもよかったが夜這いとは男の方からだと思ってしなかった。」
「あれ、イシュタルって僕の事、嫌いだったよね。」
「嫌いだ。しかし君は私のマスターだ。神姫とはマスターに尽くすものだろう?」
「流石に僕でも無理矢理は嫌だよ…。」
「言い方が不味かったな。私は割り切って君に尽くしているわけじゃない。嬉しいから君に尽くしている。私にとってマスターは唯一で代わりが利かない。マスターの何もかもが私にとっては掛け替えの無いものだ。だから聖人のように慈悲深い愚者であっても、悪魔のように狡猾な賢者であっても、マスターは善い、マスターが愛おしい。マスターが私を愛していても。いなくとも。」
何でも無い事の様に容赦し当然の事の様に肯定し酔って歌うように語る、イシュタル。
「全く、本当に、そんな下らない、見当違いな事に悩んでいるとはな。君らしいと言えば君らしいが。」
「く、下らないって…。」
「ほら、他に君が私を襲わない理由を並べてみせろ。その一つ一つを論破しよう。別に、その前に襲ってきてもいいぞ。」
挑発するように舌を出しながら笑って左手でシャツの裾を掴み、右手の親指をハーフパンツのセンターに挿し入れた。
シャツを捲って滑らかな腹筋と乳房の下半分が、ハーフパンツを下ろして太腿の付け根の筋が見え始める。
そこで手を戻したイシュタルの意図を否が応でも理解する、理解出来たからこそ魅了されてしまわないように眼を逸らした。
「さぁ、何時まで眼を逸らしている。朝までこうしているつもりか? 私は別に構わないぞ。」
「あの、その、ほら、僕だって人間相手でダークチューナー卒業したいから…。」
「君は自分が人間相手に、ソープ以外で、童貞卒業が出来ると思っているのか?」
「ぐはぁ!」
黒野白太、吐血。
「自分がどういう人間かは君自身が知っているだろう。十四年間生きていて女性経験は皆無。そんな君を好む女性は、まぁ、居ないとは言い切れないのかもしれないが、望みは薄いな。」
「事実だけど心が痛い。」
「ただ快楽を求めているのであれば私を抱く事を勧めるよ。御金は要らないし素体の返却時間まで君が望む事をしよう。」
「でも、神姫を襲うなんて人としてのモラルと良識が…。」
「君が良識やモラルを騙るのか? 自分がエゴイストである事を自覚しておきながら。だとしたら何て笑い草だ! だがそうだな、敢えて君の御膳に乗ろう。モラルや良識なんてものは所詮は自分を殺す為の言い訳だ。人はそういうものなのだろう? 他人の不幸に嘲笑し、絶望に歓喜し、凌辱に渇望し、暴力に倒錯する。普通である事こそが最も楽に生きる術であると知りながら普通でない事を望む自分を肯定している。この世の全ての異常とは遍く人が望んで欲して止まないものだ。だらこそ世界からは不幸は、絶望は、凌辱は、暴力は、異常は絶えない。現実でも空想でもだ。それを否定するなどとは自分を偽っているに他ならないよ。」
「そ、それは…。」
反論に淀んだ彼に彼女は寄り添ってその耳元で囁き掛ける。
「それに、だ。偶には楽しい事も必要だろう? 勝ったり負けたり、そんな事の繰り返しだけでは、息が詰まる。私は満足出来ない。だから私を犯してくれ、マスター。代わりの利かない君に嬲られると言うのは、代わりの利かない愉悦だから。」
「…。」
黒野白太がイシュタルの両肩に手を置いた。
肩を触れる力は強く指先が柔らかな素材の素体にめり込んでYシャツに皺が出来る。
イシュタルは怯える事も迷う事も無く嬉しそうに微笑みを湛え無抵抗のまま黒野白太の次のアクションを待っている。
けれども黒野白太はそれ以上は何もしなかった、ただ、そっと、肩から手を離しただけで、謝った。
「それでも僕はイシュタルを襲えない。…襲いたくない。」
「ふぅん。理由を聞いてもいいか?」
「何となく、だよ。理由も理屈も無い。けれど、嫌だ。」
「そうか。嫌なら仕方がないな。」
衣服を整えながら立ち上がり背を向けた彼女に、彼は俯きながらも申し訳無さそうな声を出す。
「ごめんなさい。こんな、行き詰ったマスターで。」
「全くだ。据え膳食わぬは男の恥と言うだろう。君は本当に素直じゃない。」
自分が素直じゃない事は常々承知している黒野白太であったが此の時ほどそんな自分の性格の面倒臭さを意識した事は無い。
罪悪感に囚われる彼に、彼女は救いの手を差し伸べるように、言葉を掛ける。
「そんなに自分が悪いと思っているのなら、罪滅ぼしと思って私の願いを一つ、聞いてくれないか。」
「何? 出来る事なら、するけど。」
「ここに頭を置いてくれ。後は分かるだろう?」
彼が顔を上げて見るとイシュタルが正座を崩した座り方をしていて、手には耳掻き棒、もう片手で自分の太股を叩いている。
黒野白太は気恥ずかしさが湧き上がったが性処理をするよりはマシだと決めつけて彼女の思惑通りにした。
太股の上に頬から筆舌し難い柔らかな感傷が伝わって来て、息をするとふわふわとした良い匂いが飛び込んでくる。
そういったものの処理で一杯一杯になっているのだが、もうその時に今まで苦しめられてきた情欲が消え失せている事に彼は気付いていない。
「さてと。では好きなようにさせてもらうが…動くなよ?」
「あ、うん、お願い。」
「私がこうしたいと頼んだのだろう。何を言っているんだマスターは。」
イシュタルが耳掻き棒を黒野白太の耳の中へと入れ込む。
長い間耳の掃除をしていなかったのか耳垢はかなりあって掬った耳垢をティッシュの一キレに置く。
その上に粉状になったドライタイプのようでへばり付いたものを取るのに大雑把な手癖が出てしまえば耳垢は耳の奥に落下してしまう。しかし、イシュタルはデジタルな感覚を持つ武装神姫である所為か、針に糸を通すような正確さで削り取っていく。
黒野白太の方も震え一つ起こさない御蔭で、彼女は粉状の耳垢一つ零す事なく一欠片ずつをティッシュに運び込む。
時計の針だけが音を刻む、静かな時間が流れた。
イシュタルは最後に耳掻き棒の裏、綿棒になっている部分で殻を擦る、そうしてからもう一度耳の中を見た。
もうこちら側の耳の中には耳垢は見えない、それを確認し満足した彼女は黒野白太の上になっている側頭部に手を置いた。
「こっちは終わったぞ。身体の位置を変えてくれ、マスター。」
「……。」
「マスター?」
反応が無い、おかしいと思ったイシュタルは身乗り出して黒野白太の顔を見る、彼は眠っていた。何時から眠っていたかは分からないが穏やかで静かで幼い年相応の寝顔だった。
「全く、仕方がない、マスターだ。」
その割には先程肩に手を掛けられた時とはまた違った意味で嬉しそうに笑うイシュタルであった。
…。
…。
…。
テスト開始最終日、イシュタルは元々の素体に戻り、そこには黒野白太も同伴していた。
店長の部屋には前に来た時に無かったもの、人間サイズのアーンヴァル型素体が隅で三角育座りをしながらも眠っている。
初めは驚いた黒野白太であったがストラーフ型だけで無かった事を思い出しそれ以上の感想は抱かなかった。
笑顔で二人を迎えた店長は直ぐにイシュタルを戻し、人間サイズのストラーフ型素体はアーンヴァル型の真横で三角座りさせる。
ノートパソコンを閉じ、コードと一緒に纏めて片付けた店長は机の中から紙袋を取り出して黒野白太に手渡した。
「お疲れ様。はい、これがテストに協力してくれた分のお金。」
「ひーふーみー…はい、確かに十五万二千円有りますね。」
「興味本位で聞くけどそのお金はどう使うの? やっぱり新しい神姫とか?」
「十万程は貯金します。高校に上がったら免許取りたいですし。」
「趣味は神姫しか無いって言ってたじゃないか。」
「遠征する為ですよ。強い神姫マスターと戦う為です。」
「じゃあ、残りの五万二千円は?」
「近い内に行う遠征のお金ですね。」
「なんだか騙された気がするけど、まぁいいや。」
「あ、そうそう、店長。一つ聞きたいんですけど。イシュタルをけしかけてきたのは、貴方ですか?」
「おや?」
店長の瓶底眼鏡の奥がきらりと光る。
「それは一体どういう事かな、白太君?」
「惚けないで下さいよ。貴方がイシュタルに何か吹き込んだ事は分かっているんです。」
「ま僕自身の名誉の為に言わせてもらえば、僕は検査の時にイシュタルにあるものを渡しただけだよ。」
「それがあの香水ですか。」
「気付いていたんだ。まぁ、当然か。それで何時からイシュタルが香水を付けている事に気付いていたの?」
「情けない話ですけど昨日の夜ですよ。膝枕された時に、ようやく気付いたんです。」
「でも僕はちょっと質のいい香水を送っただけ、相談されただけさ。白太君を嵌めようとしたのはイシュタルの意思だよ?」
「共犯じゃなくて単独犯というわけですか。イシュタル、何であんな事したの?」
「愉しめると思っていたからだ。理由は正直に答えていたよ。それと、そうだな。後付けだがこんな理由はどうだ? 『誘惑する私が悪い。この素体に性欲処理の機能を付けた店長が悪い。神姫を犯す事を悪だと決めつける世間が悪い。だからマスター、君は何も悪くない。』 君の中に僅かにでも残った道徳やモラルの否定をし赦しあう為だと。」
「悪魔だ。ここに悪魔が居る。」
「だが、その結末は悪く無かっただろう?」
「………まぁね。」
黒野白太の右肩に戻ってきたイシュタルもチェシャ猫のように笑っていた。




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