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『大魔法少女』-3/3



「二年前のあの日は、空が晴れることはもう二度とないんじゃないかなって思ってしまうくらい、黒い雲に押し潰されてた。なのに雨が全然降ってこなくて、町の外れのゲームセンターに向かっていた時から胸騒ぎがしてたの。そのゲームセンターには何度か来たことがあって、私の覚えてる限りじゃあまり流行ってなかったのだけど、店の外には自転車やバイク、車がたくさん停まってた。中に入ると――


(割愛)


『こいつらのこと、頼む』
それが最後の言葉だった。火の中に飛び込んでいって帰ってくることはなかった。残された私達にできることは、名前も知らないゼルノグラード型がどこかで無事でいることを祈るだけ。力なんて、勝利なんて、正義を貫き通すひとつの手段でしかないことを教えてくれた彼女への、それが精一杯だった」


◆――――◆


アリベの魔法少女としての覚悟は、私なんかが真似ていいものじゃない。
同情なんて筋違いもいいところなのに、濡れた眼はいくら拭っても視界をぼやけさせた。
どうして正しかったアリベたちがそんな目に遭わなくちゃいけなかったのか、それは今、私が怒り狂うことでも嘆き悲しむことでもない。
「もう二度とあんなことにはならない。私がさせない。だからホノカちゃん」
優しく差し出されたアリベの手が聖者のもののように思えた。
こんなにも幸福を約束してくれるものなんて見たことがなかった。
「あなたの世界が救われるよう、私にも手伝わさせて」
惹きつけられるように私は手を握ろうとした。
何が現実で何が作り話かなんて、些細なことだった。
指と指が触れ合った、その瞬間。
何かに気づいたアリベが私の手を力強く握って引っ張った。
つんのめった私と入れ違うように緑色の魔方陣が展開され、強烈にぶつかった音がした。
「邪魔してんじゃあねェですゥゥゥゥッ!」
みっともなく転ぶ私の背後、口汚い乱入者は打ち出した拳を引くと、流れるように魔方陣の裏側へと回り込んだ。
「ですぅっ!」
反応し切れないアリベに繰り出されるボディーブロー。
折れ曲がるアリベの体を横殴りの雨のようなラッシュが襲った。
「ですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですですDEATHウゥッ!」
頭頂からつま先までメチャクチャに繰り出されたラッシュはしかし一発一発がとんでもない威力で、アリベのLPはひとたまりもなく底をついた。
『ホノカ飛べ!』
呆然としていたところを筐体の外から叫んだハルの声で我に返り、ストライカーを急発進させて飛び上がった。
突然乱入してきた、真っ赤なチャイナドレスのイカレたマリーセレス、レイのパンチが空を殴った。
「逃げるなですぅ! お姉様に飛行させやがったトンチキがッ!」
私に向かってブンブンと振り回される両手にはメリケンサックがついていた。
火器が当たり前、そうでなくても槍や剣などを持ち込むべきバトルでメリケンサックはいくらなんでもナンセンスだ。
でもそれ以上に信じられないことに、レイは他に何の武装も身につけていなかった。
ライトアーマーだって少しは防具だのブースターだの持っているというのに、レイはチャイナドレスと頭のお団子、メリケンサックの他には何も持っていない。
ならば、さっきアリベを沈めたラッシュはどう説明すればいいのか。
一発一発が小型のパイルバンカーくらいあるように見えたし、しかもマシンガンの連射くらいの速度で繰り出されていた。
《ホノカ、落ち着いて聞いてくれ》
ハルが今度はヘッドホンから呼びかけてくる。
私はレイから距離を取りながら聞いた。
《もう分かってると思うが、レイは身体を限界までチューンナップされている。ミサイルくらいなら掴んで投げ返してしまうほどだ。ハッキリ言うが遠距離特化系のあなたとはかなり相性が悪い。だから私の準備が整うまで待て。私ももうすぐ乱入するから》
「必要ないわ。アリベの敵は私が討つ」
《何の用意もなしに勝てる相手じゃないぞ! 冷静になれホノカ!》
「私はとっても冷静よ、こんなに冷めた気分は初めてってくらい。これから何をすればいいのか、道案内があるみたいにハッキリと分かる――魔法少女が歩む道で通せん坊するコイツを、もう二度と私とアリベの前に現れられなくなるよう究極的にブチのめしてやるわ」
私を追いかけてくるレイに向き直った。
「ねえ。さっきお姉様に飛行がどうとか言ってたけど、何のことよ」
「しらばっくれてんじゃあねぇですっ! 飛べないはずのお姉様がぁ、この前飛んでたのはおまえのせいに決まってるですぅ!」
「飛べないはずの、ね。ねえハル、ハルが飛行形態になった時のアレって、知ってるのは」
《ホノカと主人しかいないはずだ。どうしてレイが……》
豪胆な性格のようでいて実は恥ずかしがり屋なハルが、少し前まで飛べなかったことを無闇に吹聴するはずがない。
それがレイのような、知られたらどう利用されたものか分かったものじゃない相手ならば尚更だ。
「そう、あんたも知ってたのね。じゃあ分かるでしょ、ハルは飛ぶのがすんご~~~~く下手くそだった。生まれつき才能がなかったのよね、ああ何て可哀想なハル。だから私がトレーニングしてあげたのよ」
「お姉様を侮辱しやがったなぁああああこのクソビッチがっ! 才能ありまくりのお姉様が普通に飛べないわけがねーですっ! あれはただウイルスのせいで――はっ!?」
バカだ。
こいつは本物のバカだ。
誘導した私がドン引きしてしまうくらいのバカだ。
CSCにまで潤滑剤が染みこんでそうなほどのバカだ。
こいつ実は嘘をついてるんじゃないか? って疑ってしまうほどのバカだ。
もし仮に……いや、飛鳥型ホノカさんはとてもお利口さんで状況を簡単には鵜呑みにしないわけだけど、それでも仮に……レイが私が推測したとおりのバカだったとしたらの話だけど、セイブドマイスターに装弾してある分とリロード一回分くらいの弾を撃つだけで、簡単に勝ててしまえそうだ。
「なにをブツブツ言ってやがるですぅ! い、言っとくけどぉ、さっきのレイが言ったことは間違いですぅ。だからぁ、気にしないで忘れるですぅ。分かったら返事するですぅ!」
返事代わりの一発、銃声を轟かせた。
どう回避するかの様子見だった腹部を狙った銃弾は、パンチではたき落とされて床にめり込んでしまった。
「普通、手に当たれば肘まで吹き飛ぶってのにね」
弾いた右腕はさすがに痺れたらしく力が入っていないように見える。
それ以上のダメージを受けた様子はない。
すぐに回復されるだろう。
でもそれ以上に恐ろしいのが過敏すぎる反応だ。
マズルから発射された後で間に合う弾速じゃない。
レイは明らかに私がトリガーに指をかけた時から構えていた。
「それで終わりならぁ、今度はこっちから行くですぅ!」
前言撤回、普通の神姫を相手にしてる感覚じゃ殺られる。
あれは基本的なスペックだけなら超人クラスだ、と頭に刻み込んだ。



「でぇーすらぁっ!」
片膝を上げて、杭を打ち込むように床に向けて真っ直ぐ下ろされる足。
震脚。
鉄山靠と並ぶ、八極拳の有名所であって実用性がよく分からない技術。
レイの乱暴に床を踏みつけるだけの動作は震脚というより地団駄に近かった。
赤いチャイナドレスから繰り出された振動はステージを揺るがし、飛んでいても空気から振動が伝わってくるほどだった。
レイの足を起点として、床に雷が走るようにヒビが走る。
床の破片が飛散し、レイは破片をパンチのラッシュで飛ばしてきた。
破片がパンチでさらに細かく砕かれ、ショットガンを数発連射したような攻撃が狙いもつけられず広範囲に広がった。
躱すこともできず、全身で受けるしかなかった。
魔法少女仕様の巫女服がズタズタに引き裂かれ、ヘッドホンが弾かれて飛んでいってしまう。
ごっそりとLPを削られるだけじゃなく、衝撃で四肢の感覚までが一瞬麻痺させられた。
ストライカーの制御が緩み、高度が下がってしまう。
そこにレイが走ってきた。
「くたばれですぅ!」
もう一度震脚のために足を上げた。
今度は本当に踏み込むためだ。
落下する私にタイミングを合わせている。
次の一撃を食らったらヤバい。
姿勢を立て直すと同時にセイブドマイスターのレバーを切り替えて照準を合わせた。
「舐めるなぁ!」
フルオートで弾をばら撒いた。
ろくすっぽ構えもしないで撃ったものだから反動でバレルが暴れてしまう。
それでも近距離まで迫っていたレイの足止めにはなった。
この距離、この弾数は防げないと判断したのか、溜めていた拳を大きく引いて体をねじり、背中から床に倒れるようにして弾の軌道に対する体の面積を最小にしてのけた。
残っていた【七発】すべてが掠りもせずレイの脇を逸れていく。
銃を持つ手を伸ばせば届きそうな距離でこの芸当、本当に超人だ。
一瞬だけ私とのレベルの差に気が遠くなりそうになる。
でもレベルの差があるのは今まで戦ってきた誰だって同じだ、そう自分を鼓舞して再び高く昇った。
一発一発リロードしながら、眼下では起き上がったレイがまた震脚の構えを取っていた。
でも、もう何もさせない。
ここから私の反撃だ。
セイブドマイスターのバレルの状態が【予定通りあと一連射】であることを確認して、レイに話しかけた。
「あんたさ、はじめに私の弾を拳で弾いたじゃない。あれ、連続じゃできないんでしょ?」
「なんだとですぅ」
構えていた震脚の動作が止まる。
「だってさっきは避けたじゃない。確実に全部弾けるんだったらそうすればいいのに、あんな博打みたいな避け方するなんて、できないって証拠でしょ」
「なんだとぅ、レイをコケにしやがってェェ――――ッ! このボケナスッ! おまえのへっぽこ銃なんてレイにとっちゃ蝿とか蛾とか、そんなん同然ですぅ!」
小さな神姫にとって蝿とか蛾が結構な脅威なのは置いといて、思惑通りレイは挑発に乗ってきた。
「もっぺん連射やってみろですぅ! 今度は【七発】全部弾いてやるですぅ!」
まさかとは思ってたけど、さっきの連射の弾数まで数えてたとは、いやはや神姫の能力ってものが恐ろしくなってくる。
レイのお望み通り、今度はしっかりと狙って【七発】連射した。
「うおおおおっ……」
両手のメリケンサックが鈍く光る。
その光が、ブレた。
「ですですですですですですですゥゥ――――!!」
ちょっとは当たらないかなって頭の隅っこで期待していたんだけど、レイは見事その場から猛烈なラッシュを繰り出し、一歩も動かず無傷で凌いでみせた。
観客から混乱混じりの歓声が飛んでくる。
装備品がチャイナドレスとメリケンサックだけの神姫が成していい芸当じゃない。
「ど、どうですっ。楽勝でさばいてやったですっ。レイの実力を思い知ったかですぅ」
「スゴイわねーカッコいいわねー」
全然余裕だと言わんばかりにファイティングポーズ。
でもそのポーズは無理が祟ったせいで、さっきまでと比べて力の入り具合が半減している。
目論見通りの最大のチャンスだ。
「し、しまったあ! 今ので弾撃ち尽くしちゃった! どうしよう、もう一発も残ってないわ!」
「ザマアみやがれですぅ。大人しく降りてきてきたら、今なら顔面ヘコませるだけで勘弁してやるですう」
「なんてことよ、じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうわ……でも顔面がヘコむのはあんたの方よ!」
セイブドマイスターのバレルを上段に構えてレイめがけて飛んだ。
もう弾がない私に残された最後の攻撃手段、一応スナイパーでもある身でありながらの最悪の技、長いバレルで殴る。
勿論、折れ曲がらないような強さで振らなきゃいけない。
ムカつく顔面だろうとヘコませる気なんてなく、どこでもいいから触れればいい。
「くらえぇぇええい!」
我ながら気が抜けすぎてるな。
ほとんど力を入れずに振り下ろしたバレルは片手で軽々と受け止められた。
そして。
「ぅう熱っっちゃぁあああああああああっ!?」
レイの右の掌から焼け焦げた鉄板の上にカルビを置いたような音がした。
それもそのはず、バレルは今、連射を繰り返したことで陽炎が立つほど加熱されている。
セイブドマイスターは元々、単発でチマチマと撃つことしか考えておらず、冷却は私が高速飛行する時の空気との接触で十分だった。
だからマスターがフルオート機能を持たせるだけ持たせて放熱を考えていなかったのは明らかに設計ミス(と、私が気づいたのもつい最近なんだけど)と言える。
今度はそれを利用したのだ。
肉弾戦のみに頼る上に頭が残念なレイなら、絶対に知らない事だとは容易に想像がついた。
「手が焼けてんじゃあねえかっ! な、なにしやがったテメェ――ッ!?」
どれだけ素体そのものの防御力が底上げされていても、メリケンサック以外にグローブすら嵌めていない手では熱までは防ぎきれない。
あまりの熱さに手に息を吹きかけたり振ったりしてる今、完全に無防備になった。
セイブドマイスターをレイに向けて、【残しておいた一発】を発射した。
これまたレイの哀れなおつむを利用させてもらった。
連射した弾数を言い当てられた時はドキッとしたけど、その前の試しの一発のことはすっかり忘れてくれていた。
私のセイブドマイスターの装弾数は七発じゃない、八発だ。
炸裂音と共に胸に大穴を空けて吹き飛んでいくレイの顔は、最後まで混乱に陥ったままだった。


◆――――◆


「あなたたちのバトルを妨害してしまったことは、このレイの知人として私からも謝らせてくれ。すまなかった」
深々と頭を下げるハルの副腕はレイの後頭部を鷲掴み、額で床を磨いている。
そんな二人を(ハルは何一つ悪くないけど)『大魔法少女』アリベは渋い顔ひとつせず許した。
バトル中の筐体が乱入し放題なのをいいことに奇襲を仕掛けるなんて神姫として最低の行為なのに、身を呈して私を守ってくれた正義の味方は「もう終わったことだよ。全部水に流そうよ」と朗らかに言ってのけた。
肩に乗せた使い魔のゲットセットは少しゴネたけど、最後はやはりアリベの言うことを聞く。
「それに、今日はとってもいい日だもん。私と同じ魔法少女に出会えたんだから。ね、ホノカちゃん」
「は、はは……」



演技が過ぎて自分のことをストライクウィッチーズの一員だと信じて疑わなかった私は、筐体から出るなり囲まれたアリベの信者に目を覚まさせられた。
前方を埋め尽くすほどの神姫や人の注目を集めるのなんて生まれて初めてだし、肩を貸しているアリベと並んで違和感のない格好をしていたのだ、私は。
さらに、さらに。
あのアリベに庇われ、しかも不意打ちとはいえアリベを瞬殺した極悪チャイナを撃退したとあらば、『セイブドマイスター』ホノカさんが皆の目にどう映るかは明らかだった。
「魔法少女だ! 第二の魔法少女だ!」
「アリベの仲間なの!? ライバルなの!? どんなポジションなの!?」
「綺麗な黒髪……ハァハァ」
「か弱い飛鳥型がこんなゴツい機関砲で戦うなんて」
「すごいわよね~。カワイイわよね~。ギャップ萌えってやつ?」
「サ、サインいいかにゃ。『グレートキャットのカグラへ』って書いて欲しいのにゃ」
有名な神姫に憧れたりはする。
この神姫センターで一目置かれる存在として『セイブドマイスター』の名が挙がるような妄想も、しなかったといえば大嘘になる。
でも。
でも!
こんな形で有名になりたくなかったっ!!



「ホノカちゃん、偉そうなことを言うようだけど、魔法少女の道は苦しいことで溢れているわ。私も今まで独りぼっちだったから、辛かった……寂しかった……それも、もう終わる。私はもう独りじゃない。ホノカちゃんが一緒に戦ってくれる。傍にいてくれる。こんな幸せな気持ち、はじめて……もう何も怖くない――!」
不用意に死亡フラグを口にしたアリベは「じゃあ、私は他に戦わないといけないところがあるから」と去っていってしまった。
すれ違い様、私の耳元に一言を残して。
「また付き合ってね。【魔法少女ごっこ】」


◆――――◆


レイに吐かせたウェブサイトを見てみると、確かに『トラウマパッチ』とそのアンインストーラが無料で公開されていた。
他にも神姫用の、好き好んで使ういたくなさそうな名前のパッチが十数は公開されている。
名前だけで判断するならばどれも違法とは(ギリギリ)呼べないものみたいだけど、ハルに使われた『トラウマパッチ』のように直接AIに関わるレベルのものを無料配布するだなんて、作者は技術力が凄まじい代わりに頭のネジが飛んでいるのかもしれない。
ウェブサイトをひと通り見ても、管理人や作者の連絡先らしきものはなかった。
代わりにあるのは、ページのタイトルとしてはいかがなものかと思う「 自 己 責 任 」というデカデカとした文字だけだった。
ウェブサイトは黒で塗りつぶされた背景に赤文字で書かれている。
飾り気がなく、淡々と悪質なものを無料配布するちょっと怖い造り。
推測だけど、ここは作者の制作物を第三者にテストさせるためのサイトじゃないだろうか。
今回はハルが、レイのせいで『トラウマパッチ』の実験台にさせられた、ということだ。
当たらずといえども遠からずだと思う。
各パッチの欄にコメントフォームがあって、大多数は苦情。
でも投稿されたコメントをいくつか読む限り、パッチは確実に機能していて、むしろ「まさか本当にここまでの効果があるとは思わなかった」を口汚く書かれたものばかりだ。
「この『アダルトパッチ』っていうのだけは絶賛されてるわね。どんな変態オーナーが使うのかしら」
アンインストーラをダウンロードして、後はクレイドルで寝るだけというところまできて、ハルは躊躇った。
「このアンインストーラ、使うのは少し怖いな。症状が悪化したりしないだろうか」
「コメントにアンインストールできないって苦情はないし大丈夫よ。心配なら私が先に試してみようか?」
「そ、そんなわけにはいかない。すごいなホノカは、こういう事態には詳しいのか」
「詳しくはないんだけど、知り合いの飛鳥型がこういうことに巻き込まれたことがあってね」
カシヨが複数のマオチャオに拉致されて悪質なプログラムの実験台にさせられた挙句、身体が破損して全取替えする羽目になったのは、一年くらい前のことだった。
一目置かれるほどの実力者であるはずのカシヨを捕まえ、好き勝手してしまうマオチャオとは、この町のマオチャオ達のリーダーのような存在らしい。
噂は神姫センターでちょくちょく耳にすることがあるけど、この町のマオチャオ達はどこかおかしい。
普段は自由気ままな猫らしく振る舞ってはいるが、リーダーが号令をかければ夜の闇に隠れて集会を開き、悪事に手を染めているのだとかいないとか。
私はそのリーダーこそ、このウェブサイトとパッチを作った張本人ではないかと睨んでいるのだ。
でも確証があるわけではないから、ハルにはまだ言えない。
「この手のヤツって作るべきものはちゃんと作ってるから、ハルは安心して眠っていいわよ。目が覚めたら普通に空を飛べるようになってるって思えば、熟睡できるんじゃないかしら」
「そうだな。いつまでも恐れているわけにもいかない。ではすまないが、私は一眠りするよ。結果は明日連絡する」


◆――――◆


「レイには途中で逃げられちゃったから、結局なにが目的だったのか分からなかったのよね。ハルを飛べなくしてバトルの戦力を下げるのが目的? ――ベタ惚れのレイがそんなことするわけないか。それにレイ程度の頭であのサイトを見つけて、パッチをハルにこっそりインストールすることなんて無理よねえ。神様は知ってる? この町のマオチャオ達のリーダーのこと」
「ああ、よく知っているとも。君の次の対戦相手の『マッドサイエンキャット』だ」
読みかけだった漫画を読むためにわざわざ午前零時を過ぎてやってくる奴がいるだろうか。
また乗ってきたらしい空飛ぶクレイドルの上にうつ伏せに寝転がって、隣に人間サイズの漫画を広げている。
やはり私のほうを見向きもしない。
「次のって……え?」
「おいおい、まさか名が売れて今の君のことを忘れたわけじゃないだろうな。僕の助けのおかげで大魔法少女をサレンダーさせることができたといっても、君はあと五人の神姫を倒さなきゃいけないんだからな」
「わ、分かってるわよ。でも、その、マッドサイエン……ティスト?」
「マッドサイエン『キャット』だ。一部では『厄病猫』と呼ばれているらしいぜ。なぁに、心配しなくても、単純な戦闘力は『13km』や『大魔法少女』と違って君よりも数ランクは下だ。良かったな、今度は相手との実力差に悩む必要がないぞ。君は実に運がいいな」
楽勝楽勝、と神様は言うけれども、このひねくれたオールベルンが楽に勝てる相手を選ぶはずがなかった。
むしろ単純に高い戦闘力を持っていたほうが分かりやすいくらいだ(勝てるかどうかは別として)。
神様の言う言葉を信じるとして、『マッドサイエンキャット』が私より戦闘力で劣るのならば、それ以外の部分でギンやアリベに匹敵することになる。
今までは私が相手に合わせた策を練っていたのだけれど、次は立場が逆転する、ということだろうか。
この町のほぼすべてのマオチャオを従えてしまうマオチャオ……いったいどんな神姫なんだろう。
きっと尋常ならざる存在感を溢れさせていて、すれ違うだけでその存在に気付いてしまうようなマオチャオだ。
まかり間違っても、アリベのファンクラブ会員だったり私にサインをねだってくるような神姫ではないだろう。
「頭が良くてカリスマ性のあるマオチャオねえ。ちょっと想像つかないわ」
「戦ってみれば分かるさ。武装神姫とは剣を交えて分かり合うものだろう」
「ハルならともかく、あんたが言っても説得力ないわねえ」
この時の私は、まあランクが低い相手なら遠く離れて数発狙えば安全に倒せるだろう、くらい簡単に考えていた。
ギンやアリベの時と違って心に余裕のようなものすらあった。
しかしこの余裕も長くは続いてくれなかった。
まさかセイブドマイスターが盗まれるだなんて、この時の私には知る由もない。




二人目
『大魔法少女』
蝶型シュメッターリング
アリベ

および

『爆裂チャイナガール』
テンタクルス型マリーセレス
レイ

撃破完了!













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