あのゲームセンター内を湧き立たせた試合から幾日。
あんなことがあっても僕たちの日常はつつがなく続いていく。
僕の学校は冬服から夏服に衣替えしたとか期末試験があったとか軽いイベントはあったけど、一番のイベントは、
あんなことがあっても僕たちの日常はつつがなく続いていく。
僕の学校は冬服から夏服に衣替えしたとか期末試験があったとか軽いイベントはあったけど、一番のイベントは、
宮本さんとイスカがフランスに旅立ってしまったことだ。
急遽、日本でやり残していたことを全てキャンセルして行ってしまった。
別にそんなに急ぐ必要はないのでは、と思うのだけどシオンに対して未練が残ってるからさっさと準備して日本を出てしまったのだ。
未練があるのは主にイスカらしいけど。
別にそんなに急ぐ必要はないのでは、と思うのだけどシオンに対して未練が残ってるからさっさと準備して日本を出てしまったのだ。
未練があるのは主にイスカらしいけど。
「ずっと見てて、飽きないの?」
朝のHRが始まる時間ちょっと前。
僕は教室に自分の椅子に座り、机に頬杖を突いている状態。
目線は机に。
座っているシオンに聞いている。
僕は教室に自分の椅子に座り、机に頬杖を突いている状態。
目線は机に。
座っているシオンに聞いている。
「これは姉さんが出してくれた手紙ですよ。飽きることなんてありません」
あ、そうですか。それは悪いことを聞いてしまいましたね。
思う存分にらめっこしててください。
そう思ってから、顔は窓の向こうの真っ青の空に向く。
ここの教室は3階だから空が見渡しやすいな。
思う存分にらめっこしててください。
そう思ってから、顔は窓の向こうの真っ青の空に向く。
ここの教室は3階だから空が見渡しやすいな。
昨日、僕たちに手紙が来た。差出人は宮本さんだ。
日付は旅立つ前だし、日本製の便箋なので、おそらく旅立つ前にポストに出したのだろう。
手紙の内容は宮本さんから色々、シオンに対することの謝罪とかお礼の言葉とかそんな風なのがつらつらと書かれていた。
じつのところ、書いてあったことがかなりの長文で覚えきれないので、ここでは割愛している。
日付は旅立つ前だし、日本製の便箋なので、おそらく旅立つ前にポストに出したのだろう。
手紙の内容は宮本さんから色々、シオンに対することの謝罪とかお礼の言葉とかそんな風なのがつらつらと書かれていた。
じつのところ、書いてあったことがかなりの長文で覚えきれないので、ここでは割愛している。
だが、その便箋の入った封筒にはもう一つサイズが一回り以上違う用紙が入っていた。
シオンが持つのにちょうどいい大きさの用紙なので、おそらく神姫同士、イスカお姉さんからの手紙なのだろう。
シオンが持つのにちょうどいい大きさの用紙なので、おそらく神姫同士、イスカお姉さんからの手紙なのだろう。
「ねえ、それ見せてよ」
僕が昨日からお願いしてても。
「ダメです。『マスターさんにはぜったい見せるな』って書いてありますから。これは私だけに宛てた手紙なんですよ」
これなんだから。
僕の神姫なんだから、マスターの僕にそういうのは見せてほしいのだけれどな。
と、そう思考してたら僕の顔にそれが出ていたのか、シオンが言葉を詰まらせた。
僕の神姫なんだから、マスターの僕にそういうのは見せてほしいのだけれどな。
と、そう思考してたら僕の顔にそれが出ていたのか、シオンが言葉を詰まらせた。
「でも、螢斗さんがどうしても見たかったら反故にしても……」
「こら。お姉さんとの約束は守らないとね」
「あ、螢斗さん。ありがとうございます」
「こら。お姉さんとの約束は守らないとね」
「あ、螢斗さん。ありがとうございます」
シオンは優しいから僕が命令したら見せちゃうんだろうな。
でも、別に僕がマスター権限を行使するほどイスカお姉さんの手紙を見たいわけではない。
無理に読みたいわけでもなし、シオンに嫌がれるかもと思うと僕のちっぽけな度胸はなくなってしまうのだ。
第一、神姫サイズの手紙なんて極細い文字でびっしりと文章が書かれているんだろう。そうに違いない。
でも、別に僕がマスター権限を行使するほどイスカお姉さんの手紙を見たいわけではない。
無理に読みたいわけでもなし、シオンに嫌がれるかもと思うと僕のちっぽけな度胸はなくなってしまうのだ。
第一、神姫サイズの手紙なんて極細い文字でびっしりと文章が書かれているんだろう。そうに違いない。
ふと、気付くとHR1分前に教室のドアが思いっきり開く音がした。
そして、数秒後。
そして、数秒後。
「ぜぇはぁ…………おは……よ……はぁはぁ……」
「おはよう。淳平」
「はぁはぁ、明日から夏休みという興奮で眠れなくて……な」
「おはよう。淳平」
「はぁはぁ、明日から夏休みという興奮で眠れなくて……な」
聞いてもいないのに、言い訳のようにそう言って僕の隣の机に身を投げ出した。
遅刻寸前だったのを全力疾走と気合いでカバーしたらしい。
淳平が言った通り明日から夏休み。
それで今日は登校した後、HRと終業式だけで終わるから遅刻はしたくなかったみたいだ。
最後くらいは遅刻しないでいよう、という良い心がけではある。
……いつも遅刻しなかったらもっと良いのだけど。
遅刻寸前だったのを全力疾走と気合いでカバーしたらしい。
淳平が言った通り明日から夏休み。
それで今日は登校した後、HRと終業式だけで終わるから遅刻はしたくなかったみたいだ。
最後くらいは遅刻しないでいよう、という良い心がけではある。
……いつも遅刻しなかったらもっと良いのだけど。
「すいません。マスターがお見苦しいところを」
淳平に押し潰される前に胸ポケットから飛び出したミスズが机に降り立って、いつもの通り申し訳なさそうにしている。
「毎日大変そうだね。ミスズ」
「ええ。でも、私のマスターですから……マスターは優しいところもあって好きですし」
「ええ。でも、私のマスターですから……マスターは優しいところもあって好きですし」
ミスズはそう言うと顔を赤くさせて、そっぽを向く。
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。
でも神姫のミスズは淳平が大好きだから、こんな風にフォローしてしまうのだろうな。迷惑が掛かっててもだ。
良かったね淳平、ミスズがこんな神姫で育っていて。
そう思って淳平を見ると、
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。
でも神姫のミスズは淳平が大好きだから、こんな風にフォローしてしまうのだろうな。迷惑が掛かっててもだ。
良かったね淳平、ミスズがこんな神姫で育っていて。
そう思って淳平を見ると、
「……zzZ」
寝るの早!?
淳平は机に突っ伏して寝息をかいていた。
淳平は机に突っ伏して寝息をかいていた。
「さすがです。ミスズさん! 武装神姫の鑑です」
突然、僕の机にいたシオンはミスズの言ったことに感動したのか、拳を握りしめている。
ミスズの顔色は元に戻り、シオンの大声に驚いている。
ミスズの顔色は元に戻り、シオンの大声に驚いている。
「シオンがそれを言うの? あなたの方がよっぽどマスター思いだわ」
「いいえ、私なんてまだまだ。私も真の武装神姫を目指して今日もひたむき走り続けているんです!」
「いいえ、私なんてまだまだ。私も真の武装神姫を目指して今日もひたむき走り続けているんです!」
なんかシオンが熱い。
これが本当のアーティルのあるべき姿なんだろう。
イスカと戦ってから、情熱さとか闘魂とかそういう暑苦しいのがシオンに生まれていた。
まあ、シオンが元気でいてくれるなら僕は良いけどな。
これが本当のアーティルのあるべき姿なんだろう。
イスカと戦ってから、情熱さとか闘魂とかそういう暑苦しいのがシオンに生まれていた。
まあ、シオンが元気でいてくれるなら僕は良いけどな。
そういえば、ミスズが前に僕に対して「人間の鑑です」なんていう似たようなことを言った覚えがある。
あれから、数か月か。
懐かしいな。
シオンが僕のもとに来てから、色々なことがあって、イスカとも戦って、こうしてシオンは僕の武装神姫でいてくれる。
その現実がたまらなく嬉しかった。
あれから、数か月か。
懐かしいな。
シオンが僕のもとに来てから、色々なことがあって、イスカとも戦って、こうしてシオンは僕の武装神姫でいてくれる。
その現実がたまらなく嬉しかった。
僕が思いをはせている中、教室は本鈴も鳴り終わり、先生が来るのを待っていた時だ。
一陣の風が教室に入ってきて、なんとシオンの傍にあったイスカお姉さんからの手紙が飛ばされてしまった。
そして、それは窓の向こうへ。
一陣の風が教室に入ってきて、なんとシオンの傍にあったイスカお姉さんからの手紙が飛ばされてしまった。
そして、それは窓の向こうへ。
「あ、シオン! 手紙が!?」
僕の視界に小さいけど“一行の文章”が、見えてからひらひらと校庭の方に落ちていく手紙。
あんな紙切れが草むらに入ったら見つけ出せる自信がないぞ。
幸い、この下はコンクリートの地面しかないから、風で飛ばされるとか誰かに拾われない限り、手紙はここの教室の真下にある。
あんな紙切れが草むらに入ったら見つけ出せる自信がないぞ。
幸い、この下はコンクリートの地面しかないから、風で飛ばされるとか誰かに拾われない限り、手紙はここの教室の真下にある。
「大変です! 螢斗さん!」
「わかってる!」
「わかってる!」
椅子をひっくり返しながら、シオンを胸ポケットに入れて教室のドアに駆ける。
後ろからはミスズの焦る声。
後ろからはミスズの焦る声。
「HRがすぐにあるんですよ!?」
「終業式には戻るから、淳平起こして代返お願い!」
「終業式には戻るから、淳平起こして代返お願い!」
そう簡潔に言うと、扉を出て廊下を走り階段へダッシュ。
HRが始まってる時間に廊下を走るなんて、普段僕はしないのだけど緊急事態だからしょうがないのだ。
HRが始まってる時間に廊下を走るなんて、普段僕はしないのだけど緊急事態だからしょうがないのだ。
「螢斗さん」
「はぁはぁ……何?」
「はぁはぁ……何?」
走りながらもポケットにいるシオンに答える。
結構、運動不足の僕に全力疾走は無理があるのだけど、シオンの呼びかけは無視できない。
シオンは呼んで、一呼吸置いてから。
結構、運動不足の僕に全力疾走は無理があるのだけど、シオンの呼びかけは無視できない。
シオンは呼んで、一呼吸置いてから。
「私も螢斗さんとずっと家族でいますから」
「……ああ、もちろんだよ!」
「……ああ、もちろんだよ!」
その言葉はイスカお姉さんの手紙にあった言葉で――。
――――
『 離れてても、私たちはずっと家族だ。 愛する妹へ 姉イスカより 』
――――
Fin