「ホントにやるのー。戦えるようになったんだろうねー?」
「はい! 大丈夫です」
「はい! 大丈夫です」
暇を見つけてもらって、今日はゲームセンターに霧静さんとアリエに来てもらった。 イスカと戦う前にアリエと戦っておく。
あの熱を持った赤い大剣状態をちゃんと克服できているかどうかのチェックをしておかないと安心はできないからだ。
あの熱を持った赤い大剣状態をちゃんと克服できているかどうかのチェックをしておかないと安心はできないからだ。
「ごめんね、この前来れなくて。シオンちゃんの勝ったバトルを見てみたかったのだけど、どうしても用事が外せなくて」
「ううん、そんなことないって。そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」
「ううん、そんなことないって。そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」
霧静さんが申し訳なさそうにしている。
真剣にシオンを思ってくれている。
そんな優しさがありがたい。
真剣にシオンを思ってくれている。
そんな優しさがありがたい。
「バトルの前に霧静さんとアリエにお願いがあるんだ」
普通にバトルするだけじゃなくて、これを言っておかないといけない。
「うん、なにかな?」
「あの『ヒート・カートリッジ』だったかな? アレを使ってバトルしてほしいんだけど」
「えー、アレかー。制限時間があるけどいいかなー?」
「あの『ヒート・カートリッジ』だったかな? アレを使ってバトルしてほしいんだけど」
「えー、アレかー。制限時間があるけどいいかなー?」
使うの制限があるのか。それは誤算だけどまあいいだろう。
勝ち負けが問題じゃないし、アレを出されてちゃんと立っていられるのかが問題なんだ。
勝ち負けが問題じゃないし、アレを出されてちゃんと立っていられるのかが問題なんだ。
「うん、それでもいい。でも、本気でお願いするよ」
「もちろんだよー。あははー」
「もちろんだよー。あははー」
何が楽しいのかアリエは笑う。
いっつも笑顔だね、アリエは。
いっつも笑顔だね、アリエは。
「嬉しそうだね。アリエ」
オーナーの霧静さんもアリエが上機嫌なのが不思議らしいが、
「うん、そだよー。前は変に終わっちゃったからねー。もう一回、私の闘争本能に火をつけたんだからさー、生きて帰れると思わないでね――」
「……うん。でも、もうバトルの準備しましょうね」
「――私はまだ力を隠し持っているんだから、それを出すのはシオンの実力次第だー。この前より強くなっているのだとしたら、私も全力を持ってお相手していただくよー。私の前で5分間立っていられたら褒美を……って、あれ~~?」
霧静さんはアリエが調子にノる前に、早口で何か言っているアリエを手で持って、向こうのブースに連れて行ってしまった。
僕はそれを横目で見送った後、シオンを見てみる。
僕はそれを横目で見送った後、シオンを見てみる。
「アリエさんに勝てるでしょうか? 自信がないです」
「僕としては赤い大剣を見て、シオンが立っていられるかどうか心配だよ」
「それは……多分、大丈夫ですよ。はい」
「僕としては赤い大剣を見て、シオンが立っていられるかどうか心配だよ」
「それは……多分、大丈夫ですよ。はい」
どこから来るのか、小さい身体に自信が溢れている。
前回ではトラウマを引き起こしたのに、なぜかそっちの方は心配してないのかシオンにそんな素振りはない。
前回ではトラウマを引き起こしたのに、なぜかそっちの方は心配してないのかシオンにそんな素振りはない。
僕の杞憂だったのだろうか。
……いや、まだ安心はできない。
やるのと仮想でイメージするのとはわけが違うんだから。
……いや、まだ安心はできない。
やるのと仮想でイメージするのとはわけが違うんだから。
――――
前回と同じように廃墟街のステージだ。
今度は最初から隠れて進むとか不意をつく作戦とかではない。
真っ向からぶつかれるように広い場所で両者は対面させている。
今度は最初から隠れて進むとか不意をつく作戦とかではない。
真っ向からぶつかれるように広い場所で両者は対面させている。
「よっし、じゃ行くぞー!」
「お願いします!」
「お願いします!」
アリエは前と同じ兵隊のようなアーマーをつけて、エレメンティアを両手で持ち構えている。
対するシオンは両手にぺネトレートクロ―・烈、そしてファイティングポーズを取り、武道家のように気迫を発し続けていつでも動ける態勢。
対するシオンは両手にぺネトレートクロ―・烈、そしてファイティングポーズを取り、武道家のように気迫を発し続けていつでも動ける態勢。
「『エレメンティア・ヒートカートリッジ』セット! いくよー!」
エレメンティアに赤いカードを差し込むと、たちまち刀身は真っ赤になる。
剣の周りはゆらゆらと蜃気楼現象のように空気が歪んで見える。
あれが発動した。
それで、肝心のシオンはどんな様子だ?
剣の周りはゆらゆらと蜃気楼現象のように空気が歪んで見える。
あれが発動した。
それで、肝心のシオンはどんな様子だ?
「……すぅ……はぁ……」
呼吸をしている。
いや、それは当り前なのだけどあれは深呼吸に近い。
顔は真っ直ぐ向き、目はちゃんとあの赤い大剣を見据えている。
いや、それは当り前なのだけどあれは深呼吸に近い。
顔は真っ直ぐ向き、目はちゃんとあの赤い大剣を見据えている。
「へー、あれから随分と頑張ってきたんだねー。前と違って闘気ってゆーのかな? そういうのが違うねー」
「はい、ありがとうございます」
「はい、ありがとうございます」
本当にあれすらも克服しているらしい。
すごい成長ぶりだ。
あの時の戦いからシオンはリミッターが外れたのか? いやはや、凄いとしか言いようがない。
すごい成長ぶりだ。
あの時の戦いからシオンはリミッターが外れたのか? いやはや、凄いとしか言いようがない。
「ふ、それじゃ、いくよーん。今度は本気で立ち向かうから来なさーい」
「行きます!」
「行きます!」
そして両者はぶつかり合った。
「せりゃー!!」
「はぁー!!」
「はぁー!!」
シオンは駆けて右のナックルで殴りかかる、アリエは上げた大剣を振り下ろした。
ガンっ! 打ち合った瞬間、周りの地面、場の建物が振動し出した。
ギギギッとナックル対大剣の押し合いが続くが、アリエは振り下ろしと両手で、と諸々の力はあっちの方が上だ。
そうなるとシオンが押され気味になるのだが、シオンは左腕を肩まで上げ、左のナックルもエレメンティアに叩きつける。
もう一回ガンッと響くと、両手と両手。それでやっと両者は拮抗しだした。
シオンは下から上なのになんで互角なんだろうか?
ガンっ! 打ち合った瞬間、周りの地面、場の建物が振動し出した。
ギギギッとナックル対大剣の押し合いが続くが、アリエは振り下ろしと両手で、と諸々の力はあっちの方が上だ。
そうなるとシオンが押され気味になるのだが、シオンは左腕を肩まで上げ、左のナックルもエレメンティアに叩きつける。
もう一回ガンッと響くと、両手と両手。それでやっと両者は拮抗しだした。
シオンは下から上なのになんで互角なんだろうか?
……あ、そうか。
普通、ゼルノグラードは火器型特性だから、大剣は使いづらいものなんだ。
武装神姫で得手不得手があるはずなんだから、あの差もわかる気がする。
でも、ゼルノグラードが大剣を使って強いという事はアリエ自身かなりの練習量をしてきたんだろう。それが試合からはわかる。
武装神姫で得手不得手があるはずなんだから、あの差もわかる気がする。
でも、ゼルノグラードが大剣を使って強いという事はアリエ自身かなりの練習量をしてきたんだろう。それが試合からはわかる。
「ぬぅーー!」
「くぅーー!」
「くぅーー!」
二人とも押し合いから武器を引き離さず、そのままの状態が続くが。
シュ~ッと。
煙がペネトレート・烈の先から出てくる
刃が熱を持っているから、ナックルが焼きついてきてるんだ。
シュ~ッと。
煙がペネトレート・烈の先から出てくる
刃が熱を持っているから、ナックルが焼きついてきてるんだ。
「はあはあ、ここまで持ちこたえるとはやるねー。シーちゃん」
「はあはあ、アリエさんもものすごいです。大剣をそんなにまで使いこなして」
「努力の結晶ってやつだねー。でも、この大剣はそんじょそこらの大剣とはわけが違うのさー。不思議に思わないかなー? このエレメンティアにはトリガーがあるのになんで引かないのかってさー」
「はあはあ、アリエさんもものすごいです。大剣をそんなにまで使いこなして」
「努力の結晶ってやつだねー。でも、この大剣はそんじょそこらの大剣とはわけが違うのさー。不思議に思わないかなー? このエレメンティアにはトリガーがあるのになんで引かないのかってさー」
あの大剣にはトリガーがある。
だがそれを使ってないということ。
話しで聞いたゲームでは確かあれは…………マズイ!
だがそれを使ってないということ。
話しで聞いたゲームでは確かあれは…………マズイ!
『シオン、後退して!』
「もう遅いよー! 燃えろ、ドッカーン!」
「もう遅いよー! 燃えろ、ドッカーン!」
僕がシオンに命令してエレメンティアからナックルを離そうとして逃げる瞬間、アリエがそう言うと大剣の引き金を引いた。
擬音を口から出した時、剣からも擬音の通り剣先から爆発が起きた。
擬音を口から出した時、剣からも擬音の通り剣先から爆発が起きた。
「くっ!?」
シオンが灰色の煙に包まれた。
爆発の衝撃はどうなった。
――シオンは無事か。
爆発の衝撃はどうなった。
――シオンは無事か。
「へー、これを耐えきるかー。さすが熱血型」
間合いを離したアリエが口元は笑っているが、本気で驚いている。
「……ガードできてなかったら危なかったです。それと熱血型ではなくて私は山猫型です……はぁはぁ」
アリエが言ったことに律義に訂正させてからも、シオンは息を荒くさせている。
どうやらシオンは腕をとっさに交差させて、身を守ったらしい。
その証拠に両腕は煤こけたみたいに、黒くなっている。
だけど、使っていたナックルのぺネトレート・烈はどこかに吹っ飛んでいったのか、シオンの手元にはなくなっていた。武器はあれだけではないけど、なくなったのは痛いな。
どうやらシオンは腕をとっさに交差させて、身を守ったらしい。
その証拠に両腕は煤こけたみたいに、黒くなっている。
だけど、使っていたナックルのぺネトレート・烈はどこかに吹っ飛んでいったのか、シオンの手元にはなくなっていた。武器はあれだけではないけど、なくなったのは痛いな。
「今から説明するとねー、この剣はカートリッジに入ったエネルギーを剣に流し込むと“属性”を付加することができるんだー。
そしてそのエネルギーを使い切る前にトリガーを引くとそのエネルギーを爆発させることが出来るんだー。それがこのエレメンティアの力さね」
そしてそのエネルギーを使い切る前にトリガーを引くとそのエネルギーを爆発させることが出来るんだー。それがこのエレメンティアの力さね」
アリエは自慢げにそう話している。
エレメンティアについて話してても陽気さが表れている。というか話したくてうずうずしてたみたいだ。
自慢したくてたまらなかったといった感じに見える。
だけど、その話を聞くとファンタジーにあるみたいな魔力を使う魔法剣みたいだ、と僕は思った。
さすがはあの店長さん。武装神姫にそんな力を与えるとは侮れないお人だ。
でも、シオンはその爆発のエネルギーをガードしきった。
すごい威力なはずなのに、ガードしきれるとはシオンってそんなに頑丈だったのか。知らなかった。
エレメンティアについて話してても陽気さが表れている。というか話したくてうずうずしてたみたいだ。
自慢したくてたまらなかったといった感じに見える。
だけど、その話を聞くとファンタジーにあるみたいな魔力を使う魔法剣みたいだ、と僕は思った。
さすがはあの店長さん。武装神姫にそんな力を与えるとは侮れないお人だ。
でも、シオンはその爆発のエネルギーをガードしきった。
すごい威力なはずなのに、ガードしきれるとはシオンってそんなに頑丈だったのか。知らなかった。
「でも、その大剣の事をそんなに話していいんですか。一応私は今、敵なんですけど」
「あははー。この力って有限だからねー。あんま万能ではないんよー。これって長所であり短所だからさー、黙っててもアドバンテージにすらならないんだよねー」
「あははー。この力って有限だからねー。あんま万能ではないんよー。これって長所であり短所だからさー、黙っててもアドバンテージにすらならないんだよねー」
特殊能力を持った剣ではあるけど、欠点も多くあるらしい。
火器型であるのだから、大剣使いとしての能力がつきずらいんだな。
火器型であるのだから、大剣使いとしての能力がつきずらいんだな。
「毎日素振りを千回し続けた結果、火器型でありながら私は大剣を少しは使いこなせるようになったのさー」
「……それ程の回数。素振りをするとは、すごいですね」
「嘘だよーん」
「そんな!?」
「……それ程の回数。素振りをするとは、すごいですね」
「嘘だよーん」
「そんな!?」
変なコントが起きているが、このままアリエとの話しが引き延ばせたら……。
話が伸びているおかげで、シオンの息切れも治まってきている。
霧静さんが気付いていたらアウトだけど、どうだろうか。
話が伸びているおかげで、シオンの息切れも治まってきている。
霧静さんが気付いていたらアウトだけど、どうだろうか。
「そのまま使うだけでは相手の方は倒せないんですか?」
「いや、ダメだねー。なんていうのかな、やっぱ私って現実問題、火器型ゼルノグラードじゃん? 大剣の特性値ってあんまないんよー。最初の頃の使いづらさっていったらもう死にたくなるねー」
「いや、ダメだねー。なんていうのかな、やっぱ私って現実問題、火器型ゼルノグラードじゃん? 大剣の特性値ってあんまないんよー。最初の頃の使いづらさっていったらもう死にたくなるねー」
もう少し。
「それだけで死んではダメですよ。ちゃんと前を向いて生きなくてはいけません」
「いや、例え話しっしょー。本気にしないでよーもう。面白いなー、シーちゃんはー。あははー」
「いや、例え話しっしょー。本気にしないでよーもう。面白いなー、シーちゃんはー。あははー」
よしそこで、フェリスファングを取り出して――
「あー!! いけないなー。そんなもの取りだしたらー」
「く、」
「く、」
カンッカラカラと。
フェリスガンが手から弾き飛ばされ、後ろに滑って行った。
なんでだ? アリエは近接武器のエレメンティアしか使わないはずなのに。
フェリスガンが手から弾き飛ばされ、後ろに滑って行った。
なんでだ? アリエは近接武器のエレメンティアしか使わないはずなのに。
「言ってなかったっけー? 重・軽火器の類は一切使えないってー。でもさ武装の種類には投擲武装っていうものがあるのを忘れてはいけないよねー」
左手を前に出したダーツの矢を投げたような態勢のアリエ。
そしてシオンの後ろにはフェリスガンと一本の『フルストゥ・クレイン』が。
くそ、投擲武装を持っている可能性もあったのに、あの間延びした態度ですっかり油断していた。
戦闘中、アリエはもうちょっと緊張感持った喋り方をしてほしいよな。どうして、二人は気にしないのか。不思議に思うが。
そしてシオンの後ろにはフェリスガンと一本の『フルストゥ・クレイン』が。
くそ、投擲武装を持っている可能性もあったのに、あの間延びした態度ですっかり油断していた。
戦闘中、アリエはもうちょっと緊張感持った喋り方をしてほしいよな。どうして、二人は気にしないのか。不思議に思うが。
……そんなことより、結構絶対絶命の危機的状況だよな、これは。
フェリスガンはシオンの後ろに、ぺネトレートクロー・烈もどこかにいった。
どうするか?
フェリスガンはシオンの後ろに、ぺネトレートクロー・烈もどこかにいった。
どうするか?
「こっちの隙をうかがっていたんだねー。まあ、私もリミちんに言われなかったら引っかかっていたけどー、あははー」
霧静さんにはやっぱり気付かれてたみたいだ。
霧静さんもかなりの実力者。いや、なんで僕がこんな偉そうなんだよ。僕より武装神姫のオーナー歴は先輩なんだから当たり前じゃないか。
霧静さんもかなりの実力者。いや、なんで僕がこんな偉そうなんだよ。僕より武装神姫のオーナー歴は先輩なんだから当たり前じゃないか。
アホなこと考えてないで、実際どうしようか? あちらはまだアレを持ってそうだからな。
背面キャノンのバリスティックブレイズは却下だ。動きが大きいから遠距離からでしか通用しないし、その前にやられてしまう。
それ以外ならこっちの武器はあとナイフしか…………あ、それ以外もあった。
背面キャノンのバリスティックブレイズは却下だ。動きが大きいから遠距離からでしか通用しないし、その前にやられてしまう。
それ以外ならこっちの武器はあとナイフしか…………あ、それ以外もあった。
『シオン、僕の言うとおりにして作戦は………で……………あれを』
「え、……あ……はい。わかりました」
「え、……あ……はい。わかりました」
作戦を伝え終わると、シオンは僕の言ったことが伝わったようで、頷いてくれた。
「まだ、なにか企んでるー? でももう無駄だよー。ほら」
手元には青いカートリッジが転送されていた。
別の属性付加のパーツか。
アリエはそれをエレメンティアに差し込もうとしている。
でもそれが来るのは――こっちは予測済みだ。
別の属性付加のパーツか。
アリエはそれをエレメンティアに差し込もうとしている。
でもそれが来るのは――こっちは予測済みだ。
「ふっ!」
瞬間で身体を前傾にさせて駆けだすシオン。
駆けだすと同時に手に持つは一振りのナイフ。
それを先ほどのアリエと同じように投擲。
エレメンティアに入れようとしていた青い付加パーツに向かって真っ直ぐ。
あのパーツは差し込むのに若干の猶予があるからそのタイミングを待っていたんだ。
「アタっ!」
駆けだすと同時に手に持つは一振りのナイフ。
それを先ほどのアリエと同じように投擲。
エレメンティアに入れようとしていた青い付加パーツに向かって真っ直ぐ。
あのパーツは差し込むのに若干の猶予があるからそのタイミングを待っていたんだ。
「アタっ!」
パーツに当たれば良いと思ったが、手元にも当たったのか、手を押さえ悶え始めたアリエ。
これは好機だ、いけシオン。
……あれだ。あれを出すんだ。
これは好機だ、いけシオン。
……あれだ。あれを出すんだ。
「いっけぇ! てりゃー!」
近くで沈み込んでから渾身の――右アッパー。
格闘技を題材にした小説を見て、編み出したこの技。
名付けるとしたら『ライジング・アッパー』
これを使わせるとは、アリエ恐るべしだ。
この技は膝ジョイントをバネにしてから、腰・肩・手に力を移動させ神姫の拳に全威力を乗せた必殺のアッパー。
本来はナックルの武器系統を装備して、その上から殴るのが本来の使い方なのだけど威力は十二分にあったみたいだ。
それがアリエの顎にクリーンヒット。
格闘技を題材にした小説を見て、編み出したこの技。
名付けるとしたら『ライジング・アッパー』
これを使わせるとは、アリエ恐るべしだ。
この技は膝ジョイントをバネにしてから、腰・肩・手に力を移動させ神姫の拳に全威力を乗せた必殺のアッパー。
本来はナックルの武器系統を装備して、その上から殴るのが本来の使い方なのだけど威力は十二分にあったみたいだ。
それがアリエの顎にクリーンヒット。
「グハッ」
浮き上がりその後倒れたアリエの傍に瞬時に寄り、近くにあったナイフを拾う。
ナイフが近くにあるのも計算通りだ、本当に。
それをアリエの首元にシオンはスッと軽く押し当てた。
神姫のノーマルな拳ぐらいでへばるような武装神姫たちじゃないだろうからだ。
ナイフが近くにあるのも計算通りだ、本当に。
それをアリエの首元にシオンはスッと軽く押し当てた。
神姫のノーマルな拳ぐらいでへばるような武装神姫たちじゃないだろうからだ。
「どうです? 降参しますか?」
「いたぁー。手加減してよ、もぅー。降参でーす」
「いたぁー。手加減してよ、もぅー。降参でーす」
やった、終わった。僕もなんか疲れたなー。
――――
「痛ったー、なんでただの拳だけであんな痛いのさー」
バトルが終わると霧静さんとその肩に乗ってアリエも向こうから来た。
アリエは顎を手に当てて、顔をしかめている。
アリエは顎を手に当てて、顔をしかめている。
「す、すいません。アリエさん」
「謝る必要はないよ、シオン。これは真剣なバトルだったんだからさ」
「そうよシオンちゃん。最後の最後で油断してたアリエも私も悪いから」
「へーい、すんませーん」
「謝る必要はないよ、シオン。これは真剣なバトルだったんだからさ」
「そうよシオンちゃん。最後の最後で油断してたアリエも私も悪いから」
「へーい、すんませーん」
オーナーの霧静さんにそう言われて、すごすごとアリエは黙ったようだ。
実際にバーチャルじゃなかったら、どのくらいの威力があったんだろうか。
アマチュアのボクサーぐらいのパンチ力があったらいいな。僕たちが必死に考えた必殺技だったんだから。
実際にバーチャルじゃなかったら、どのくらいの威力があったんだろうか。
アマチュアのボクサーぐらいのパンチ力があったらいいな。僕たちが必死に考えた必殺技だったんだから。
「でも、本当に見違えちゃったな。シオンちゃんすごく強くなったね」
「ありがとうございます。螢斗さんとの鍛錬のおかげで戦えるようになりました」
「ありがとうございます。螢斗さんとの鍛錬のおかげで戦えるようになりました」
いや、ちょっとしたきっかけで出来るようになったんだから、そんなに持ち上げることはないのでは、とシオンに言おうとしたのだけど場の雰囲気が勝手に進み言い出しづらくなってしまった。
「はー、前にもこんな風に負けたことあったよねー。あの頃はエレメンティアをろくに扱えてない若い私だったねー、うん」
「若いって……そんなに経ってないからね。前に使った戦法があるけど今日は準備不足だったみたい」
「若いって……そんなに経ってないからね。前に使った戦法があるけど今日は準備不足だったみたい」
霧静さんもアリエも自分の戦い方を考えて、勝ったり負けたりしてきてるみたいだ。 強く思えても、色々な積み重ねが必要なんだな。
と、僕が思ってたら、アリエがふっと思い出したように手を叩く。
と、僕が思ってたら、アリエがふっと思い出したように手を叩く。
「そうそう。とりあえずさー、これで赤い大剣の状態は克服できてたから、これで因縁の相手と戦えるんだねー。私にも勝ったんだから、必ず勝ってよねー」
「お姉ちゃんと……」
「お姉ちゃんと……」
アリエが言ったことを聞くとシオンは顔が暗くなる。
僕が無理矢理決めてしまったけど、シオンにはやはり辛いことだったのだろうか。 ――いや、そうだよね。
実の姉ではないとしても、元は家族の一人だったんだから、家族と戦いたいなんて誰も思わないよ。
僕が無理矢理決めてしまったけど、シオンにはやはり辛いことだったのだろうか。 ――いや、そうだよね。
実の姉ではないとしても、元は家族の一人だったんだから、家族と戦いたいなんて誰も思わないよ。
「怖い?」
姉と戦わせるなんて僕はなんてひどい奴なんだろうか。
戦えるようにはなったんだから、シオンが望むならこのままでも……。
そう思い、シオンの目を見つめ言葉を発しようとした。
けど。
戦えるようにはなったんだから、シオンが望むならこのままでも……。
そう思い、シオンの目を見つめ言葉を発しようとした。
けど。
「大丈夫ですよ。私は螢斗さんの物ですから。螢斗さんの思うがままに」
「シオン……」
「シオン……」
それを聞いたら、僕の涙腺が緩くなってしまったが……気合いで我慢した。そんなところを霧静さんやアリエに見られたくなかったからだ。
僕を安心させるよう少し演技が入ったような口調。
自分にも言い聞かせるみたいなそんな感じ。
もう、戦う事から逃げることはないと思える瞳をしている。
姉と戦う決意も一緒にそこから感じられた。
僕を安心させるよう少し演技が入ったような口調。
自分にも言い聞かせるみたいなそんな感じ。
もう、戦う事から逃げることはないと思える瞳をしている。
姉と戦う決意も一緒にそこから感じられた。
「うわー。ケートんの物とか言ってるよー。大胆発言だねー」
「長倉くんはシオンちゃんにすごい思われてるんだね。……それに比べてこっちは……はぁ」
「こっち見てため息とか、ひっどぉー! それが自分の神姫に対する態度かー」
「長倉くんはシオンちゃんにすごい思われてるんだね。……それに比べてこっちは……はぁ」
「こっち見てため息とか、ひっどぉー! それが自分の神姫に対する態度かー」
僕たちの横では、別の戦いが勃発しようとしていた。
それでも二人はすごく仲が良さそうに見える。
神姫と人には色々な関係があるんだなと僕は場違いにも思ってしまった。
それでも二人はすごく仲が良さそうに見える。
神姫と人には色々な関係があるんだなと僕は場違いにも思ってしまった。