…ですから、ライドシステムの特徴は神姫と心を通わすことによって実現する究極の一体感にあります。神姫との関係はどちらかが与えるというものではなくお互いに与えあうものであるべきです。その実現例であるライドオンシステムの初お披露目の舞台に立ち会えたことに無上の喜びを感じます。神姫と人との関係は今まさに完成されたといえるでしょう。では、ここに、神姫と人との融和の象徴である第一回神姫Fバトルの開催を宣言します。人と神姫の輝かしい未来への一歩を、皆様盛大な拍手でお迎えください。
-某MMS管理機構役員によるFバトルの開会宣言。この2週間後、再三の注意にもかかわらずライドシステムの搭載を拒んだ神姫がイリーガル指定を受ける初の事例が起こった。
-某MMS管理機構役員によるFバトルの開会宣言。この2週間後、再三の注意にもかかわらずライドシステムの搭載を拒んだ神姫がイリーガル指定を受ける初の事例が起こった。
連続神姫ラジオ
浸食機械
浸食機械
3:巨獣不倒
エントランスに少ないながらも人が残っていた。ほとんどの人はうなだれて無気力だったり不安そうな表情を浮かべている。それは彼らに付きそう神姫も同じだった。中にはお互い笑みを浮かべている組み合わせもあるがそんな彼らの表情もどこかうつろに感じられた。
「皆さん、不安なんですね」
不安そうな表情で声をかけてくるプルミエと同じ感想を僕も感じた。だからこそガラス張りの喫茶スペースにどっかり居座りカツ丼をかっくらっている大きな男の人と、その傍らでジェリカンを豪快に傾けているストラーフはこの空間の中で強烈な印象を放っていた。
「うむ、腹もいっぱいになったところで、行くか」
『わかった、マスター。反撃開始だな』
立ち上がり、施設の奥に向かっていく二人に興味を引かれて僕たちは彼らの後を追うことにした。
「あのストラーフ、どこか異常があるんでしょうか、声が」
僕は頷く。彼女の声は電子ノイズがかかったようなかなり異質な声だった。そんなことを考えていると件の声が曲がり角の向こうから聞こえてくる。
「どうしてお前はマスターと一緒におるんや!!うちはマスターに捨てられたっちゅうのに!!あんなにマスターに尽くしたのに、いっぱい愛してもらったのに!」
「ふん、甘えたことを言うな。神姫がマスターに尽くすのは当然だ」
『お前はマスターにとって結局それだけの存在にしかなれなかったんだよ。ただのオモチャにしか』
「たわけが!ナマ言うなや!」
僕らが角を曲がりきったところで見たのは牙をむきだしたティグリースに切り伏せられたストラーフの姿だった。その動きはマスターなしの神姫では考えられないほど力強い。ティグリースはとどめを刺そうと刃を振り上げる。僕は…
「危ない」
と叫び飛び出した。でも、刃が振り下ろされる事はなかった。男の拳が唸り、ティグリースは壁まで吹き飛ばされて動きを止めた。
「ふん、つまらん相手だ。ハーデス、行くぞ」
『ああ、了解だマスター』
「お前達もつまらん邪魔をするなよ」
僕たちの方を見ようともせず声をかけると男は何事もなかったかのように歩き出した。ハーデスと呼ばれたストラーフもよろよろ立ち上がりついて行く。なおも彼らを追いかけようと歩みを進める僕らに吹き飛ばされたティグリースが話しかけてきた。
「今の…見た?ハハッ、あいつ…人のことさんざん言っておきながら自分だって怪我してもマスターにかまってもらえないじゃないか。お前だってオモチャだよ。くくっ、マスターに呪いあれ、神姫に恨みあれ」
不気味な言葉をつぶやき続けるティグリースをその場に残して僕は先に進む。修理する技術は僕にはないし、プルミエとこの島を出るためにも彼らが何をしようとしているのかを知ることの方が大事だからだ。彼らとは少し先の薄暗い廊下で再会した。
『電子ロックのようだな。私ではこれをクラッキングするのは無理だ』
「ふん、では仕方あるまい」
二人は筐体ルームとプレートが下がった部屋の前で話をしていたがおもむろに男は扉を殴りつけ始めた。轟音が響き、重い鉄の扉がへこむが開く様子はない。
「おいおい、一体何をやってるんだあいつは」
「どうやらライドオン筐体のところに行きたいらしいですわね。それにしても無茶苦茶ですわ」
突然後ろから声が聞こえた。僕が驚いて振り返るとそこには犀型神姫ディアドラをつれた男が立っていた。
「でも現状で最も有効そうな手ですわね」
「だな。ルート、お前あの扉破れるか?」
「難しいですわね」
ディアドラが肩をすくめて答える
「マスターに増設していただいた管制機器のメモリをすべて使えば失敗する方が難しいですわ」
「上等、それじゃあ行くか」
二人が男の方に歩いていく。何事か短く話した後ルートと呼ばれた神姫がケーブルを伸ばし扉のコンソールに接続した。少し迷ったが僕は彼らに声をかけることにした。
「何をしているのかだと?」
ハーデスのマスターが答える
「決まってるさ」
ルートのマスターがにやりと笑って振り向く
「俺たちはライド筐体を確保して神姫ライドする」
「そうすればルート達は全力で戦えるようになる」
『あのいけ好かないコンパニオン神姫は人の来るところにいてやる義理はないとほざいた』
「つまり現状あいつの元にたどり着ける可能性があるのはあたし達神姫だけ」
プルミエがあっと声を上げる
「もちろんライド筐体もあいつらの手に落ちている可能性はあるさ」
「だが成功すればハーデスと共に奴らをたたきのめす事ができる」
ルートの方からピンという音が聞こえた。扉が開き向こうから明かりが漏れ出す。
「つまり、俺たちは反撃にでるのさ」
エントランスに少ないながらも人が残っていた。ほとんどの人はうなだれて無気力だったり不安そうな表情を浮かべている。それは彼らに付きそう神姫も同じだった。中にはお互い笑みを浮かべている組み合わせもあるがそんな彼らの表情もどこかうつろに感じられた。
「皆さん、不安なんですね」
不安そうな表情で声をかけてくるプルミエと同じ感想を僕も感じた。だからこそガラス張りの喫茶スペースにどっかり居座りカツ丼をかっくらっている大きな男の人と、その傍らでジェリカンを豪快に傾けているストラーフはこの空間の中で強烈な印象を放っていた。
「うむ、腹もいっぱいになったところで、行くか」
『わかった、マスター。反撃開始だな』
立ち上がり、施設の奥に向かっていく二人に興味を引かれて僕たちは彼らの後を追うことにした。
「あのストラーフ、どこか異常があるんでしょうか、声が」
僕は頷く。彼女の声は電子ノイズがかかったようなかなり異質な声だった。そんなことを考えていると件の声が曲がり角の向こうから聞こえてくる。
「どうしてお前はマスターと一緒におるんや!!うちはマスターに捨てられたっちゅうのに!!あんなにマスターに尽くしたのに、いっぱい愛してもらったのに!」
「ふん、甘えたことを言うな。神姫がマスターに尽くすのは当然だ」
『お前はマスターにとって結局それだけの存在にしかなれなかったんだよ。ただのオモチャにしか』
「たわけが!ナマ言うなや!」
僕らが角を曲がりきったところで見たのは牙をむきだしたティグリースに切り伏せられたストラーフの姿だった。その動きはマスターなしの神姫では考えられないほど力強い。ティグリースはとどめを刺そうと刃を振り上げる。僕は…
「危ない」
と叫び飛び出した。でも、刃が振り下ろされる事はなかった。男の拳が唸り、ティグリースは壁まで吹き飛ばされて動きを止めた。
「ふん、つまらん相手だ。ハーデス、行くぞ」
『ああ、了解だマスター』
「お前達もつまらん邪魔をするなよ」
僕たちの方を見ようともせず声をかけると男は何事もなかったかのように歩き出した。ハーデスと呼ばれたストラーフもよろよろ立ち上がりついて行く。なおも彼らを追いかけようと歩みを進める僕らに吹き飛ばされたティグリースが話しかけてきた。
「今の…見た?ハハッ、あいつ…人のことさんざん言っておきながら自分だって怪我してもマスターにかまってもらえないじゃないか。お前だってオモチャだよ。くくっ、マスターに呪いあれ、神姫に恨みあれ」
不気味な言葉をつぶやき続けるティグリースをその場に残して僕は先に進む。修理する技術は僕にはないし、プルミエとこの島を出るためにも彼らが何をしようとしているのかを知ることの方が大事だからだ。彼らとは少し先の薄暗い廊下で再会した。
『電子ロックのようだな。私ではこれをクラッキングするのは無理だ』
「ふん、では仕方あるまい」
二人は筐体ルームとプレートが下がった部屋の前で話をしていたがおもむろに男は扉を殴りつけ始めた。轟音が響き、重い鉄の扉がへこむが開く様子はない。
「おいおい、一体何をやってるんだあいつは」
「どうやらライドオン筐体のところに行きたいらしいですわね。それにしても無茶苦茶ですわ」
突然後ろから声が聞こえた。僕が驚いて振り返るとそこには犀型神姫ディアドラをつれた男が立っていた。
「でも現状で最も有効そうな手ですわね」
「だな。ルート、お前あの扉破れるか?」
「難しいですわね」
ディアドラが肩をすくめて答える
「マスターに増設していただいた管制機器のメモリをすべて使えば失敗する方が難しいですわ」
「上等、それじゃあ行くか」
二人が男の方に歩いていく。何事か短く話した後ルートと呼ばれた神姫がケーブルを伸ばし扉のコンソールに接続した。少し迷ったが僕は彼らに声をかけることにした。
「何をしているのかだと?」
ハーデスのマスターが答える
「決まってるさ」
ルートのマスターがにやりと笑って振り向く
「俺たちはライド筐体を確保して神姫ライドする」
「そうすればルート達は全力で戦えるようになる」
『あのいけ好かないコンパニオン神姫は人の来るところにいてやる義理はないとほざいた』
「つまり現状あいつの元にたどり着ける可能性があるのはあたし達神姫だけ」
プルミエがあっと声を上げる
「もちろんライド筐体もあいつらの手に落ちている可能性はあるさ」
「だが成功すればハーデスと共に奴らをたたきのめす事ができる」
ルートの方からピンという音が聞こえた。扉が開き向こうから明かりが漏れ出す。
「つまり、俺たちは反撃にでるのさ」