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ウサギのナミダ
アスカ・シンカロン
引きこもりと神姫
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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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浸食機械
引きこもりと神姫
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白濁!? 阪高神姫部
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戦うことを忘れた武装神姫
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

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双子神姫
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犬子さんの土下座ライフ。
狛犬はうりん劇場
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
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ホワイトファング・ハウリングソウル
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「ただいまー」
「あ、おかえりなさい」

 家に帰ってきて、部屋に入るとシオンが出迎えてきてくれた。
 ああ、いいな。ただいまが言えるって。
 別に家を空ける父さんが嫌いなわけではないけど、もう少し家にいてくれたら嬉しいのになと思う。仕事なのだから、しょうがない。
 第一、僕がちゃんと暮らしているから安心して仕事ができるのだ。僕がわがままを言ったらいけない。

「特に何もなかったかい?」
「はい、異常はないですよ」

 異常なんておおげさな。と思うけど、神姫にとって留守を任されるのは大変な任務らしい。淳平に聞くと、家を空けるなら一緒に行くことは多いらしいけど、バイト先とかに持っていけないらしいから。
 今度は学校にも連れて行って、ミスズとかにも会わせてみようかな。神姫にも友達は必要だし。
 でも、その前に大事な話しをしよう。これからの為にも。

「あー、シオン。ちょっとこっちに来て」
「? ……螢斗さん、どうしましたか」

 不思議そうに僕の傍に来てくれる。
 僕もその場に座って紙袋にあるものを取り出す。持つと意外とズッシリと重い。
 部屋のテーブルにそれを置く。正面に『武装神姫』と書かれたロゴがはっきりと見える。

「これが何かわかるよね?」
「……もしかして……」

 僕がちょっと大きいぐらいであるケースの留め具を外すと、中からはパステルピンクのアーマー一式とハンドガンと数本のバレル。
 これが、アーティル型の公式装備らしい。各神姫には専用と呼べるような一式装備が発売されていて、それを元に、色々な、別の装備を取り付けていって、自分だけの武装神姫を創るみたいだ。

「これは……どうして……」
「ごめん、嘘ついた。今日、アルバイトじゃなくって、実は……シオンの前のオーナー宮本 凛奈さんと会ってきたんだ。それで、これを預かった」

 テーブルの上で狼狽しているシオンにそう告げる。これは自分が使っていた装備だとわかったらしい。
 バトルの恐怖と共にあった戦うための装備。いまそれが目の前にある。

「……でも、螢斗さんには、凛奈さんと会う意味なんか……」
「意味はあるよ。シオンを知る為に会ってきたんだ」
「わたしを……」

 目線を同じにして、顔を下げているシオンの頭を撫でる。これが多分一番落ち着くと思う。僕にとっても、シオンにとっても。

「色々聞いたよ。シオンのお姉さん、イスカのこと。なんで家出することになったのかとか。そして、バトルのこととか」

 シオンの肩が『バトル』の部分でピクッと動く。

「シオンは時々、物思いにふけってる時があるよね。ずっと外の方を向いて、遠い目をしててさ。多分、前にいた所を思い出してるんだろうなって」
「……自分でもわからないですけど、そうなのかもしれないです。螢斗さんってそういうの鋭いですよね」
「うん。一人で暮らすようになって、しっかりし続けようとしてて、他人を見てたらいつのまにかそういうのに敏感になってた。そうして出来ることを見つけるんだ。僕が出来ることをね」
「だけど、結局、私に何をしてほしいんですか? バトルですか? 武装神姫のクセに戦えない神姫だってわからせたいんですか?」

 シオンの慟哭。目元を隠し、涙を流す。

「違うよ」
「でも、これじゃあ……」

「後悔させないためかな」

「えっ?」

 泣きながらも、顔を上げるシオン。もう一回「ごめん」と謝りながら、ハンカチで目元を拭う。ほんと、よく泣くよな。

「宮本さんはいずれ、日本を離れるんだって。外国の方で仕事を習うために。気軽に日本には帰れなくなるから。だから、いなくなったシオンを気にして探し続けてたんだ」
「……それじゃ、お姉ちゃんも」
「一緒に行くことになるね。今すぐに、行ってしまうってわけじゃないけど。このままお姉さんに嫌われたままでいいのかな」

 シオンにそう語りかける。
 このままなにもせず、時間が忘れさせてくれるまでいることもできる。だけど、これはシオンが本当の意味で、“武装神姫”になるための必要なことだと思う。    自分勝手だと思えるけど、このままなんて悲しいじゃないか。僕にはシオンを拾った責任がある。

「神姫バトルをしてみないか」
「……」

 シオンは僕に背を向けて、窓の方、夜の外を見ている。どんな感情が中で渦巻いているのかはわからない。

「イスカお姉さんに、シオンを認めさせるためにも。戦えないからって僕はシオンを蔑まない。僕も一緒に戦うさ」

「ここに置いておくよ」と言って部屋のドアに向かう。
 傍にいても仕方がない。今は一人で整理させる時間が必要だ。
 言いたいことを全部言ったのはいいけど、来た当時の、また塞ぎ込んだ状態に戻ってしまうかもしれない。
 さっきも思った通り、なにも出来ず終わるかもしれない。このままバトルができないかもしれない。

(でもさ、重い後悔を残したまま、今を過ごすのは良くないよな。父さん)

 今はどこかの飛行機に乗って、空を飛んでいる父親の顔を思い出しながら、僕はリビングに降りていった。


――――


 螢斗さんは部屋から出て行った。
 ドアの方に私は振り返る。
 目の前には、私の使っていた武装。たいして使えていなかった私の装備。前マスター凛奈さんが揃えてくれた物だ。
 中にある銃を手に取る。

『フェリス・ファング』

 これに色々、バレルを組み替えて、武器を転送しなくとも装備をその場で変えられる利点がある。バレルはそのままリアのユニットに取り付けていれば、銃器として扱う事ができる。
 私のデータ上にはそうなっていて、覚えているけれど、ちゃんと使えなきゃ意味がない。ちゃんと弾を当てたことも、組み替えられたこともない。
 トレーニングの時はしっかりできるのに、本番でできなきゃいけないのに。

 これを持つとあの頃の出来事が思い出された。


 <……わたしはイスカ。お前のお姉ちゃん>
 <……マスター。この子私の名前を呼んでくれたぞ。嬉しいな>

 <……何をやってる。相手をしっかり見て撃つんだ>
 <……ほらほら、初めてのバトルだったんだから、泣くな>


 私にも前マスター凛奈さんに対しても無口で無愛想だったけど、ものすごく優しくて、私にとっては大好きなお姉ちゃん。 
 だけど。

 <……お前はなにもできない、玩具なんだな>

 どんなバトルでも、恐怖感に捕らわれて何も出来ずに終わる。
 ある日、筐体の空間から前マスター凛奈さんのもとに帰った時、赤い瞳で睨まれてそう告げられた記憶のメモリ。
 武装神姫は戦うための玩具。そうお姉ちゃんにも教わって、トレーニングも欠かさなかった。
 だけど、どうしても抜け出せない。勝てない。腕も足も震える。銃口が定まらない。当たらない。指示にも満足に動けない。そして負ける。
 前マスター凛奈さんは怒りはしなかったけど、ただ「次、頑張ってみよう」との探り探りのような言葉。
 凛奈さんも嫌いではない。もちろん、尊敬しているから。
 お姉ちゃんともバトルなんかしないで、ただ一緒にいられれば良かった。無表情な顔で、でも声は優しくて名前を呼んでいてくれたら良かった。

 <……ただの人形>

 そう呟かれて、苦しかった。
 機械人形の私たちの口から、直接「人形」と呼ばれる苦しさは並大抵ではない。
 私は何も言い返せず、お姉ちゃんはそのまま会話もしてくれなくて、前マスター凛奈さんもお姉ちゃんを、それと私をどう扱っていいか、戸惑っていた。
 だから、逃げ出した。

 窓から外に飛び出して。走って、走って、走って。野良猫に標的にされ追いかけられて、そして……。

「……螢斗さん」

 フェリス・ファングのグリップを握りしめて、今のマスターの名前を呟く。
 助けてくれたのに失礼にも警戒していた私に優しくしてくれて。
 素性もわからない神姫の私に新しい居場所をくれた人。

 <一人ぼっちは寂しいと思うけどな>

 キズのあるクレイドルの中にずっといたら、声が聞こえた。拾ってくれた人が出した声だとはわかってはいたけど。
 私のCSCの中にその言葉が染み込んだ。
 寂しかった。ぬくもりが欲しかった。
 人形の私が大層な考えなのかもしれないけど、ただ飢えていたんだ。 
 そう思ったら、声の主に話しかけていた。

 そして今、私はこうして、此処にいる。
 マスターは私の抱えている物も背負い込もうとしている。
 とても優しい人。
 この人になら、私は全てを賭けられる。拾ってくれた恩も傍にいてくれる恩も私はまだ返せていない。だったら、私はもう一度………。

「よし」

 濡れていた目元を腕で拭う。肘の関節を伸ばし、手首のジョイントを固定し、トリガーに指をかける。それを確認して、銃口を前方に向ける。
 目を瞑り、バトルでの情景を鮮明に思い出す。
 少し腕が震えてくる。
 だけど、清算するためにも、私は克服しなきゃいけない。
 前マスター凛奈さんの為に、お姉ちゃんの為に。そして、螢斗さんの、マスターの為に。

「っ!」

 指に力を込め、トリガーを引く。瞬間、カチっと音がする。
 もちろん、弾が入っていないのはわかってる。
 これで、
 私の脳内で仮想の相手に当てるイメージをする。
 これを本番でする。やってみせる。


―――― 


「ねぇ、本当に大丈夫?」
「はい、なんとかやってみせます」

 休日の日。昼ごろの時間帯、ゲームセンターの前には突っ立っている僕と、服の胸ポケットには、妙に意気込んだシオンがいる。

 話しをしたあの日、塞ぎ込んでたらどうしようとか嫌われたらどうしようとか考えながら、オドオドと自室に戻ってみたら。

『今度、バトルをしに行きませんか』

 と、開口一番言われた。
 唖然として生返事で了承し言い返すと、「よかったです」ともらし持っていた銃を持ち撃つような練習をし続けていた。

 よくはわからないけど、スッキリした顔立ちになっていたから、自分の中で整理がついたんだろう。
 僕の独り善がりじゃなかったんだ、よかったよかった。とホッとしたのも束の間。
 淳平に今度の休日、神姫と一緒にゲームセンターに来てくれるように連絡をして頼んだ。
 いきなり、見知らぬ人とバトルをしかけても、僕が対処できないし、淳平の方が神姫バトルは先輩なんだから、良い先生になれるだろう。
 特にミスズに期待しよう。そうしよう。
 そして、今はその淳平たちを待ってはいるんだけど……。

「お友達の方に何かあったんでしょうか」
「いや、今日は休みの日だし、寝坊だよ、多分。今はお昼だけどね」

 心配している様子のシオンに言い聞かせる。
 淳平のことだから、朝起きれないと思って昼に待ち合わせにしたのに、こんなに待たされるとは。
 朝はミスズと母親の、二人がかりで起こすらしいが、それでも起こすのに苦労するらしい。
 母親は昼にはもういないとすると、ミスズだけで一体どんな状況になっているやら。 
 すると、ヴゥーヴゥーっとズボンから携帯のメール着信振動。

 ――ミスズです。マスターは今から支度をし始めたので、中で待っててください。ご迷惑をおかけします――

 ……案の定これだ。嫌になっちゃうよね。まったく。
 ミスズが淳平の携帯を操作してメールをうっているんだろう。自分のマスターのフォローをする神姫。泣けてくる。

「シオン、中に入ろう」
「でも、まだ、お友達が」
「遅れるから、中で待っててってメールが来たからさ。心配する必要はないよ」
「そうですか。よかったです、お友達の方に何もなくて」

(シオンはいい子だなー……)
 と、心の中で、シオンをべた褒めしつつ、両開きのドアを潜る。
 見回してみると、前に来た時よりも、人が幾分か多い気がする。休日ということもあり、学生くらいの年代の人が多い。
 前回、来た時に見ていなかった案内板を見てみる。
 広く使われている一階は神姫の専用バトルスペースになっていて、二階や三階には普通のゲームセンター通りのメダルゲームやアーケードゲームがあるみたい。
 ここは、この街で神姫バトルが一番流行っているらしいから、神姫バトルを前面に押し出した結果なんだろう。

 ……それで、どうしようか。

 いきなり、暇そうな神姫オーナーに『バトルしようぜ!』とか僕には無理だぞ。 中で待つぐらいなら、他の人の神姫バトルとかを見てたらいいのだけど、今は誰もやってない。
 お昼時でご飯だからなのかな。休憩所にも人がいるけど、バトルする雰囲気は出してない。
 暇つぶしの為に、いっそのこと、二階のゲームでもするか。……いやいや、ここに来た目的は神姫バトルなんだからシオンの前でうつつをぬかせないよ。
 ああ、どうしよう。僕は行き場を失っている。これがあるから、淳平を呼んだのに。くそう、恨むぞ、淳平。
 そして、僕がちょっと挙動不審に陥りかけていると。ポケットから上を見上げて僕に向こうを促した。

「螢斗さん。あの方に話しかけてみては」
「うーん、うん? 誰のこと?」

 指の指す方、奥の方に顔を向けると、僕と同じようなちょっと挙動不審になっている少女が神姫と話していた。
 遠目から見て、同い年ぐらいに見える。黒く肩までの髪に赤いリボンをアクセントにしている可愛らしいと思える子だ。
 そして僕と同じように挙動不審に見えると言う事は。

(仲間だーー!!)

 おもわず脳内で叫んだ。
 よかった、僕たちは一人と一体じゃなかった。

「あの人にバトル申し込ませてもらおうか」
「……そうですね」

 焦りが出てこないよう口にする。
 そう例えば、高校入学式の日、自分のクラス。見知らぬ人たち。元の中学の友達がいない中、クラスでは緊張している自分。偶然その隣が自分と同じような緊張感を生みだしている気がして、話しかけて意気投合する、そんなきっかけを醸し出すんだ。

(…………よし、行くぞ!)

「こ、こんにちわ。バ、バトルできますか?」

 うわ、すごくどもってしまった。
 恥ずかしいけどしょうがない。即行でこのままいこうと開き直る。
 けど。

「え! あ、は、はい。できます……よ」

 顔を赤面させながら、相手の方もどもった。
(仲間だーー!!)

 僕はなぜかむせび泣いた。希望はここにあった。
 無人島の中、一人で生きてきて心細かったけど同じように難船して漂流してきた人を見つけたぐらいの感動だ。
 さっきから僕のテンションがおかしい。けど気にしない!

「螢斗さん、よかったですね」
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか!?」
「あー、リミちん泣かしたー。いーけないんだー、いけないんだー」

 シオンの嬉しそうな声と、目の前の彼女の戸惑った声と、茶化すような神姫の声が同時に聞こえた。








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