ライドが町にやってきた
「ゲームセンターに行きましょう!マスター!」
「やぶから棒に胸元で騒ぐな」
「やぶから棒に胸元で騒ぐな」
この場合は胸元から神姫と表現するのだろうか
大学からの帰り道、駅を出まして左に曲がり、さて自転車置き場に向かいましょうかと思った矢先のことである
大学からの帰り道、駅を出まして左に曲がり、さて自転車置き場に向かいましょうかと思った矢先のことである
「『あの』ライドシステム付き筐体が入荷したらしいです」
「………あぁ『あの』新発明か」
「………あぁ『あの』新発明か」
神姫ライドシステム
それは今まで神姫だけが戦ってたフィールドに、マスターも共に降り立てるという画期的なシステム
もっとも神姫バトルだけでなく、医療現場でのリハビリなどといった場面での使用も実践されており、
その知名度はにわかに上がってきている
それは今まで神姫だけが戦ってたフィールドに、マスターも共に降り立てるという画期的なシステム
もっとも神姫バトルだけでなく、医療現場でのリハビリなどといった場面での使用も実践されており、
その知名度はにわかに上がってきている
「………フィーア、俺は神姫バトルからは身を引いたんだ」
俺は胸元の相棒――フィーアと名付けたアーンヴァル型MMS――に嘆息交じりで答えた
その昔、俺も足蹴無くゲーセンに通って多少は名を馳せたマスターではある
だが俺はとある事情から神姫バトルの世界から身を引いた…いや、逃げたと表現されるのだろうか
その時の傷はだいぶ癒えたとはいえ、未だに神姫バトルをやる気にはなれずにいた
その昔、俺も足蹴無くゲーセンに通って多少は名を馳せたマスターではある
だが俺はとある事情から神姫バトルの世界から身を引いた…いや、逃げたと表現されるのだろうか
その時の傷はだいぶ癒えたとはいえ、未だに神姫バトルをやる気にはなれずにいた
「うーっ…でもマスターも興味はありますよね。最近いきつけの掲示板でも話題になってますし」
「―――まぁ神姫と一体になるってのは興味がないわけでもないが…」
「―――まぁ神姫と一体になるってのは興味がないわけでもないが…」
むしろ全国の神姫のマスターにとって何より興味を惹かれる内容ではないだろうか
かく言う俺もその一人ではある
かく言う俺もその一人ではある
「バトルして下さいとは言いません。せめてライドシステムだけでも体感しに行きましょう!」
「……………」
「マスター!」
「……………」
「マスター!」
俺は歩きながらしばし考えた後、気づけば市営の自転車置き場に着いていることに気づく
いつもの場所に止めてある自転車に近づき、鍵を外す
と、器用にも胸ポケットから飛び降りた相棒がサドルの上に降り立った
アーンヴァル型特有の長い髪、色はデフォルトカラーでもあるブロンド
彼女の動きにあわせて揺れるそれは、ほのかに紅くなりつつある日の光を受けて、
よりいっそう輝きを振りまいている
すとんと軽い音をたてて着地したその身体は、人形故の計算された美しさの中に、
どこか温かみを覚える風韻気を纏っていた
いつもの場所に止めてある自転車に近づき、鍵を外す
と、器用にも胸ポケットから飛び降りた相棒がサドルの上に降り立った
アーンヴァル型特有の長い髪、色はデフォルトカラーでもあるブロンド
彼女の動きにあわせて揺れるそれは、ほのかに紅くなりつつある日の光を受けて、
よりいっそう輝きを振りまいている
すとんと軽い音をたてて着地したその身体は、人形故の計算された美しさの中に、
どこか温かみを覚える風韻気を纏っていた
「マスターがゲームセンターに行ってくれると言うまで、私はここから動きません!」
もっとも、その流麗な髪も見事な脚線美も、安物のママチャリのサドルの上であぐらをかいていては台無しなのだが
「…………よっと」
「わわっ、マスター横暴っ わひゃあっ!」
「わわっ、マスター横暴っ わひゃあっ!」
俺はフィーアをひょいとつまみ上げ、胸ポケットに落とす
体制を崩して胸ポケットにはまり込む形になった彼女が体制を立て直す前に自転車に乗り込み、駅前の道へと風を切って漕ぎ出した
少し走って、胸元でごそごそやってたフィーアがようやく顔を出す
体制を崩して胸ポケットにはまり込む形になった彼女が体制を立て直す前に自転車に乗り込み、駅前の道へと風を切って漕ぎ出した
少し走って、胸元でごそごそやってたフィーアがようやく顔を出す
「酷いですマスター!暴力反対ですよ!」
俺は胸元からの平和主義を訴える声を無視して、自転車をこぎ続ける
だがしばらくもしないうちに俺は自転車を漕ぐ足を止めた
だがしばらくもしないうちに俺は自転車を漕ぐ足を止めた
「なぁフィーア」
「何ですかマスター?」
「何ですかマスター?」
不機嫌な声が返ってくる
「ゲーセンってどっちだっけ…?」
「………はぁ、次の信号を左折して、その二つ先の交差点を右折、少し行くと右手に見えますよ」
「了解」
「………はぁ、次の信号を左折して、その二つ先の交差点を右折、少し行くと右手に見えますよ」
「了解」
言われたとおり、次の信号で自転車を左に向ける。
「道順くらい覚えられないんですか…?」
胸元から呆れたような声が聞こえてきた
「暫くぶりなんでな、流石に忘れた」
「とか言いながら、通ってたころもしょっちゅう私に道、聞いてましたよね」
「………そんな昔のことも忘れた、記憶に無い」
「はぁ…」
「とか言いながら、通ってたころもしょっちゅう私に道、聞いてましたよね」
「………そんな昔のことも忘れた、記憶に無い」
「はぁ…」
胸元から心底呆れたようなため息が聞こえたきた