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えむえむえす ~My marriage story~

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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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仲良し四姉妹(笑)と美咲さん



こんにちは、美咲です。本日もまたテーブルの上を磨いています。ただ、いつもと状況が違います。

「よくもまあ、そんな無意味なことに熱中できるよねぇ。竹田君、君の神姫はどこか故障してるんじゃないかね?」

先生の同僚であるご友人がいらっしゃっています。この方はタチバナさんと言う方で、柄は悪いですが女性です。常に口にタバコをくわえ、けだるそうに半眼をしています。残念美人です。

「私の美咲さんを馬鹿にするとは、いくらあなたでも許しませんよタチバナさん」

なにやら黒いオーラを出しながら先生は言います。タチバナさんは冗談だよ、と軽く言いましたが、冷や汗が首筋を通ったのを私は目撃しました。

「全く……それで、本日はなんのご用なんですか?」

煎れたての紅茶をタチバナさんの目の前に置きながら、先生は尋ねました。あ、いい香り。

「いやぁ実はね、私んとこの部門で新製品の試作品を作ったんだが、データとる為の職員が軒並み休暇中でさ。で、竹田君の美咲さんに白羽の矢、もとい、指名しに来たってわけさ」

紅茶に砂糖とミルクをドバドバ入れながらタチバナさんは言いました。ああ、折角の香りが……。
データ採取の職員とは神姫のことで、捨てられたりしたマスター無しの神姫を、神姫の保健所と言える神姫管理センターから引き取ってこられた神姫達が勤めています。その神姫達のマスターはタチバナさんで、人間の職員のように給料や休暇を与えられています。彼女達はその給料や休暇を、主にバトルやおしゃれに割り振っているそうです。

「あなた専属の神姫がいるでしょう。ホムンクルスまで、まさか休暇中というわけでもないでしょうに」

「ああ、あの子は今修理中。いやぁ、こないだのバトルでボッコボコにされてさぁ。やっぱ五十位以上は鬼だね。うん、鬼強だよ」

ホムンクルスというのはタチバナさんの神姫で、ジュビジータイプの子です。性格は派手好きで自意識過剰で自信過剰で自己中心的でポジティブでハッタリ屋です。そんなだから、『ドンキホーテ』などという二つ名で呼ばれています。が、実力はファーストリーグで活躍するほどです。正直タチが悪いです。

「で、今ホムンクルスが動けないから、美咲さんに頼みにきたってわけさ」

そう言ってタチバナさんは私の頭をぐりぐり撫でます。いたたたた首がもげますもげます!

「なぁ頼むよぉ竹田君ー。こないだの件、これでチャラにしてやるからさぁ」

こないだの件とは、あのチンピラ騒動のことです。警察への根回しを、タチバナさんが行ったのです。

「……仕方ないですね。あなたにはなるべく借りを残しておきたくありませんし。引き受けましょう」

「サンキュー♪ やっぱ持つべきものは友だな、うん」

というわけで、私は新製品のテストをすることになりました。
それにしてもタチバナさん、紅茶が飲めないなら飲めないと仰ってください。そんな、「苦ッ不味ッ!」なんて言いながら飲むものだから、先生が落ち込んでるじゃないですか。






「ここにくるのも久しぶりだねぇ。最近はファーストリーグ御用達の大型テーマパークに入り浸ってるから、こういうコンクリートの箱みたいな場所は久々だよ」

タチバナさんは懐かしげに、神姫センターの中を見渡します。平日と言うこともあってか、昼間でも人はあまりいません。

「さて、対戦相手を探しましょうか。まあ、見つかるといいですが」

そう言って、先生はカウンターに対戦待ちの手続きをしに行きました。私とタチバナさんは待ち合い席にて待機です。

「あたしは……寝るか。始まりそうだったら起こしてねぇ」

ずっこけました。意見しようかと見上げたその先、椅子に座りながら鼻提灯を膨らますタチバナさん。早い……。

「うぇぇぇぇん……お姉ちゃぁぁぁん……」

手持ち無沙汰になった私の耳に、下のほうから女の子の声が聞こえてきました。テーブルから身を乗り出して見てみると、アルトアイネスタイプの子が体育座りで泣いていました。私はその子の前に降り立ちます。

「どうしたんですか?」

私が声をかけると、アルトアイネスの子が泣き腫らした顔でこちらを見上げます。

「……お姉ちゃん、誰?」

「私は美咲と申します。あなたのお名前は?」

「……ネム」

小さく、呟くようにネムさんは言いました。私はネムさんの頭を優しく撫でてあげます。

「ネムさん、どうして泣いていたんですか?」

「……お姉ちゃん達と、はぐれちゃったの……」

どうやら迷子のようです。しかし保護欲をそそられますねこの子。


一方その頃。

「うにゃー、ネムぅ、何処にゃー?」

紅と黒の渋い塗装を施された装甲を纏ったマオチャオが一体、青年の肩の上で水夫のように手でサンバイザーを作り辺りを見回す。

「どこだーネムー!」

そのマオチャオの隣では、素体姿のアークが同じように辺りを見回す。

「まぁったく、にゃぁにが『俺に任せな』にゃ。これだからピーピー女は頭ん中もピーピーなんだにゃー」

「んだとこの[ピー]猫! [ピー]から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせた後[ピー]してやんぞ?」

「おーおーできるもんならやってみぃにゃ。ピーしかいえにゃー低能ひよこ女にやられるほどあっちは衰えてにゃーよ」

「おうおういい度胸だぶっ[ピー]!」

もはや一触即発である。その二人を肩に乗せる青年は、慣れた様子でうんざりしていた。

「お前たち、喧嘩するよりもする事があるだろう」
「おおそうだ、こんなピーピー女なんか構ってる暇にゃーよ」

「こっちこそ[ピー]猫なんざ相手してる暇じゃねぇ!」

青年の言葉に、二人は慌てて本来の目的を思い出す。そして、二人同時に息を吸った。

「「ネムー! って真似すんな(にゃ)!」」

見事なハモリであった。


「ネムさん、どうやら近くでお姉ちゃんが探してるみたいですよ」

ネムさんの名前を呼ぶ声が聞こえました。ネムさんは表情を明るくして喜んでいます。

「では、下にいるのは危ないので、テーブルに乗りましょう」

幸い、タチバナさんの持ってきた試作品は、『リテルゴルロケット』という加速推進装置です。これは、機動力の低い重装備でも高速移動、及び回避を可能とすべく開発された小型の高出力ブースターだそうです。その分燃費も悪いそうですが。私はそれを腰に装備し、飛翔体勢に入ります。

「仰角よし、高度計算よし、重量計算よし、推進力制御よし……行きます!」

そうして私は、リテルゴルロケットに点火しました。
私は確かに、推進力制御をしました。したんです。それにも関わらずリテルゴルロケットは積載燃料を全て推進力へ変換しました。それが何を意味するか。ゴルフで例えるならば、ドライバーでのフルスイング。野球で例えるならフルスイングのジャストミート。

ゴッッ!

「ぎゃんっ!?」

景色が無数の線になったかと思うと、タチバナさんの悲鳴が聞こえました。そして私の頭も痛いです。どうやら、タチバナさんの額に当たったようです。神姫がぶつかったとは思えないほど鈍く重い音だったんですが、タチバナさんは大丈夫なんでしょうか。
クラクラする頭でなんとかテーブルに降り立ち、タチバナさんの座っていた辺りを見ました。……あ、ひっくり返って痙攣しながら失神してます。

「うわぁぁぁぁぁん! ごわがっだよぉぉぉぉぉ!」

ネムさんも泣き出してしまいました。

「ご、ごめんなさい! 怪我はありませんか? もう大丈夫ですよ!」

泣き止まないネムさんを必死になって宥めます。それにしてもこの子、物凄く母性をくすぐられます。


一方その頃。

「にゃ……」

「な、なんだあの[ピー]!?」

待ち合い席のテーブルの上、彼女達にとって目に入れても痛くない可愛い妹が泣いている。そしてその隣には、抱きしめるようにあやすフブキがいる。

「あの[ピー]、俺の可愛い妹に何してやがる! あいつか、あいつがネムを泣かせたのか!? 絶対許さねぇ[ピー]からランチャー突っ込んで[ピー]した後[ピー]して吹き飛ばしてやるぁ!!」

「アホ言えにゃー! んなもんじゃずぇんっずぇん足りにゃーよ! 手足を先からゆっくりじっくり磨り潰すとか、頭をヤスリで時間を掛けて削るとか、そんな今まで生きてきた事を後悔するような、そんな地獄の苦しみをきゃつに味あわせてからじゃなきゃ楽にしちゃいけにゃー!」

青年の肩の上で散々わめき散らす二人。その二人は青年が止める前に、テーブルの上へと跳躍した。

「オラそこの[ピー]! ネムから離れやがれ! ぶっ[ピー]ぞ!」

ネムさんを必死にあやしていると、テレビ等でよく聞く放送禁止用語を修正する高い音を時折口から発するアークタイプが私に怒鳴り付けてきました。彼女のことはよく知っています。この神姫センター内のランキングの第二位、マリネさんです。
あのピー音は彼女のマスター曰く「あまりにも口汚いから、高い金払ってPTA御用達の言語矯正プログラムを入れた」そうです。あのピーの下は酷いことになっていそうです。

「あ、マリネさん、こんにちは」

「こんにちは、じゃにゃーよ! おみゃーさん、さっさとネムから離れるにゃ!」

っと、今度は紅と黒の塗装を施した装甲を身につけたマオチャオタイプが来ました。彼女はアルマといい、この神姫センターのランキングのなんと第一位です。彼女たちは、ローカルではありますが『夕闇の旋風』という二つ名で呼ばれています。セカンドリーグでの順位もなかなかの位置に在籍しているほどです。

「あ、これはこれはアルマさん、こんにちは」

「「いいから離れろ!」」

お二方とも、妙にピリピリしてますね。ここはおとなしく従ったほうがよさそうです。私がネムさんから離れるのと同時、二人はネムさんの肩を抱きました。

「ネム、大丈夫かにゃ? 怪我してないにゃ? おーよしよし、もう大丈夫だにゃー」

「悪かったな。俺がもっとしっかりしてりゃあ、お前をこんな目に合わせることもなかった……」

よしよし、と、二人ともネムさんの頭と背中を優しく撫でます。微笑ましい光景です。
ふ、と唐突に二人は手を止めてこちらを見ました。目が合いました。ん、こちらに来る?

「おうおうこの[ピー]がぁ。人の妹をよくも泣かしてくれたな。[ピー]を[ピー]してぐちゃぐちゃにかき回して[ピー]で[ピー][ピー][ピー]すんぞオルァ!」

「ヤスリで指先から削られるのと、このあちしのドリルでお腹の中身をゴアジュースにされるの、どっちがいいにゃ?」

「え、えぇ!?」

お二方は般若もかくやと言った恐ろしい表情で私を睨み付けてきます。言い放った内容はもっと恐ろしいですが。
……あれ? も、もしかして私、こ、殺される!?

「やめるのです二人とも! そんなことをしたら、一番困るのはマスターなのですよ!」

と、テーブルの上に一人のアルトレーネが降り立ちました。おかげでなんとか私は一命を取り留めたようです。

「うるせぇ黙れ牛丼が。てめぇはそうやって乳揺らしてマスターに媚へつらってればいいんだよ」

「あちしに命令するなよ。長女だからって調子にのるのはいかんにゃー牛丼」

「あなたたちはどうやら、触れてはいけない琴線にふれてしまったのです。体と泣き別れする準備はできましたか?」

止めに入ったはずのアルトレーネタイプが……あ、彼女の紹介を忘れていました。彼女はイールさんです。アルトレーネの標準装備をアルマさんと同じように紅と黒に塗られています。いつぞやのチンピラなぞ足元にも及ばないほど、渋く格好良い塗装です。そして、腰の左右と後ろに三本、背に二本、二の腕にそれぞれ一本ずつ、計七本の細剣を携えています。……合体はしませんが。
そのイールさんが腰に差した剣の柄に手を掛けます。それはもう、殺る気マンマンといった体です。

「ミイラ盗りがミイラになってる……」

テーブルの傍に立つ青年、彼女達のマスターであるケイイチさんが呆れたため息を吐きました。しかし、私以外、その呟きを聞いた者はいないようです。

「覚悟決めろよ[ピー]。ランク外のてめぇが二位の俺に勝てると思うなよ。そして[ピー]猫もついでに軽く捻って、俺が頂点に立つ!」

「はん、格下が笑わせてくれるにゃね。おみゃー達があちしに勝つなんて、天地がひっくり返ってぺこりんこしたってありえにゃーよ」

「言いましたね二人とも。言っておきますがあなたたちは既に私の間合いに入っているのです。気が付いたら首のない自分の体を眺めていた、という珍妙な体験をさせてあげます」

もはや殺気が目視できるほど空気を支配しています。なんというか、下手に止めに入ったら逆にこっちが危なさそうです。ケイイチさんが三人を止めようと口を開きました。

「お前たち、いい加減に」

「「「あぁ?」」」


「……しなくていいです。ごめんなさい」

ケイイチさん撃沈。もう駄目です、おしまいです……。
と思ったまさにその時。

「うぅ、ひっく……うえぇぇぇん……」

聞こえた泣き声にみんなで振り返ると、ボロボロと大きな涙を流しながらネムさんが泣いていました。

「ボク、お姉ちゃん達がケンカするのは、やだよぅ……」

グサッ。なにやらそんな音が聞こえたので三人を振り返ると、三人揃って胸に矢でも刺さったかのようなポーズをしていました。どうやら先ほどのグサッという音は、三人の心に罪悪感が突き刺さった音のようです。
……何故私はそんな擬音が聞こえたんでしょうか。

「な、なーにを言ってんだネム! 俺たちがケンカなんかするわけないだろ! な、[ピー]……じゃなかったアルマ姉ちゃん!」

「そ、そーだにゃ! 見るにゃネム。あちし達はみぃんな仲良しこよしだぁ。ケンカなんかするわけにゃーよ。なあイール姉!」

「そうなのです! 私達は仲良しなのです! さっきのはそう、かるぅいスキンシップというものなのです! だから安心して下さいネム! ネムも含めて私達は仲良し四姉妹なのです!」

なっかよし、なっかよし、とよくわからないリズムで肩を組んでコサック風のステップを踏む三人。それを見て笑顔を見せるネムさん。これは、この神姫センターのもはや名物、『仲良し(笑)四姉妹』です。
ちなみに、先ほどのように、誰かに因縁をふっかける→次女と三女が姉妹喧嘩→長女が止めに入るも三つ巴に→四女が泣き出したら和解、という一連の流れが、月に一回以上発生します。

「ところでフブキさんよぉ」

三女・マリネさんがニコニコと私に近づいてきます。なんだかその笑顔が怖いです。

「ネムを泣かせてくれた分の落とし前はどう付けてくれるんだ?」

ネムさんに気付かれないためか、かなりの小声で私にそう告げました。顔は眉間に皺を寄せた、子供なら軽く泣き出しそうな表情です。

「いや、その、えっと……」

「特に意見がねぇならこっちで決めんぞ。バトルで決着つける。で、負けたら負けたほうのマスターが腹踊りでどうだ?」

「ちょっと待てお前には一切の損失がねぇぞそれ! 損するの相手と俺だけじゃねぇか!」

ケイイチさんがすかさずツッコみました。マリネさんはやや不機嫌そうにケイイチさんを睨み付けると、こちらに視線を戻しました。

「俺が勝ったら、二度とネムに近づくんじゃねぇ。お前が勝ったら何でも言うこと聞いてやる。これでどうだ[ピー]」

「どうだ、って言われましても……」

「いいんじゃないですか? 対戦相手も見つからなかったことですし」

私が困っていると、いつの間にか戻ってきた先生がそう言いました。

「ようし、そうと決まればさっさと準備しな。ああ、言っとくがこっちは二人で行かせてもらうぜ。てめぇみたいな[ピー]をこれ以上ネムに近付かせるわけにはいかねぇからな」

酷い言われようです。それにしても、ハンディキャップマッチですか。ナンバーワンツー相手に一人は……普通に無理ですね。敗北確定です。

「お待ちなさい!」

途方に暮れていると、上空から声が聞こえてきました。一瞬後には、エルスさんが私の前にシュタッと降り立ちました。

「お姉様の危機を察し、エルス、ここに見参!」

「いやー、せっかくの休日で遊びに来てみたら、エルスが「お姉様の危機!」とか言って飛び出したから、何事かと思いましたよ」

エルスさんとそのマスターであるカエデさんがやってきました。正直、ちょっと嬉しいです。

「はん、これで数は互角か。まあ、ランク外が何匹束になったって、俺が負けるなんてありえねぇがな」

「言いましたね万年二位。後悔しますよ!」

「んだとこの[ピー]! 誰が万年二位だ[ピー]! こんな[ピー]猫なんざ、その気になりゃあスクラップにもできるんだよぉ!」

「ほほぅ、大量の武器がなきゃビビって戦えもしにゃーへっぴりがよく言うにゃー」

「[ピー]猫が、上等だ。表に出──」

……延々と話が進まないので、以下略です。結果的に、私達がそれぞれ筐体のブースに着いたのは一時間後でした。

「それでは美咲さん、今回の新装備を」

「あ、それなんですが先生。このリテルゴルロケット、推力制御できずに全ての燃料を一度に点火してしまったので、燃料尽きました」

私は腰に装備されていたそれを外し目の前に置く。

「なんと……失敗作というわけですか。わかりました。そのデータは後ほど抽出させてもらいます。では今回は通常装備でいきましょう」

「はい先生」

そうして私はポットに納められました。私の武装データは先生のカードに記憶されているので、素体状態でもフィールドではフル装備です。

「待ちくたびれたぜ」

「さて、狩るとしますかにゃ」

フィールドに降り立てば、相手は既に準備を終えていました。アルマさんは対戦前に見た装備でしたが、マリネさんは違いました。背面にX状に改造されたフレームに、イーダタイプの車輪を備え、後方にはイーダタイプのエンジンを二機搭載し、後輪も二つに増設されています。そして、最も目を引くのは銃器の類です。これでもか、とてんこ盛りに様々な武装が装備されています。それが彼女の特徴であり、第二位という位置にいる理由です。大艦巨砲、濃密弾幕、圧倒的火力。その力押しで数々の強者を撃破してきたのです。
ちなみに、積載重量の関係で自力での歩行は不可能だそうで、フル装備の時は常時トライク……いや、四輪なのでトライクではないですね。むしろ戦車のほうがしっくりきます。フル装備の時は常時タンクモードになっています。

「お姉様、私とお姉様のコンビネーションならば、あのツートップと言えども負けはしませんよ!」

「だと、いいんですが……」

相手はツートップ。こちらはランク外。イーブンになったところで、その実力差は大きなものです。それに、これはあくまで噂なのですが、「夕闇の旋風は、タッグバトルでは未だ負け知らず」「タッグバトルだけで見るなら50連勝は行ってる」だそうです。真偽は確かではありませんが。

「美咲さん、大丈夫です。エルスさんと上手く連携が取れるように指示を出しますから」

「先生の足を引っ張らないように頑張りますね」

先生とカエデさんがそうおっしゃいました。先生はとても賢い方です。きっと、実力の差を埋めてくれるに違いありません。
そして、フィールドは都市に決定され、ジャッジが試合開始の合図を鳴らしました。






「美咲さん、まず相手に一度奇襲攻撃を仕掛けてください。当てても当てなくても構いません。相手に奇襲を警戒させる為の攻撃ですから」

「はい、わかりました」

先生の指示に従い、私は相手に奇襲を仕掛ける準備をします。エルスさんは上空に昇っていき囮になるそうです。
陰から陰へ、相手に発見されないよう注意深く進みます。レーダーは搭載していないので、五感を頼りに探します。地面に耳を当て、気を集中させます。……北北東の方角、距離約四十の地点にマリネさんの移動音を感知しました。私はそちらに向かって、再びビルの陰を移動します。
暫く進むと、突然砲撃音が聞こえてきました。どうやら、エルスさんとマリネさんが接触したようです。これは急がなければ!

「おらおらおら! 落ちろ[ピー]が! ちょろちょろしてんじゃねぇこの[ピー]! [ピー]にぶちこんで[ピー]てやるぁ!」

案の定、上空を舞うエルスさんに向かって、マリネさんが前進しながら砲撃していました。エルスさんは飛んでくる弾を避けてはいますが、弾幕と呼ぶに値する量に余裕を無くしているようです。

「美咲さん、急いであげてください」

「はい」

私は、先生お手製の投てき武器『刺針手裏剣』を指の間に挟みます。これは、針のような形状をした手裏剣で、軽量かつかさばらないもののためかなりの量を携帯できます。そして、電磁波を帯びているので、突き刺されば相手のレーダーや管制系統を撹乱できます。攻撃力は低いですが。
私は機を見計らってビルの陰からマリネさんを狙い、手裏剣を放ちます。画して、放った四本のうち一本は、装甲の隙間から見えていたマリネさんの素体に刺さりました。

「痛っ! って、なんじゃこりゃあ!?」

突然、マリネさんは蛇行しはじめました。どうやら電磁波が効いている模様です。

「作戦成功ですね美咲さん。では、一旦退いてエルスさんと合流してください」

先生からの指示に答えようとしたその時、私の耳が微かに、モーターの回転するような音を聞きました。直感的に身をよじった瞬間、私の張りついていた壁からドリルが飛び出してきました。

「ちぃ、いい勘してるにゃー。こいつを避けた奴はおみゃーで七十五人目くらいだにゃ」

「多いですね意外と」

私は体勢を整えつつ、元々居た場所を確認します。そこには、右手にドリル、左手にレーザーソーを装備したアルマさんがいました。壁が丸くくりぬかれていて、左手のレーザーソーで切り取った事がうかがえます。

「まあでも、最終的にはみぃんな倒れちまうけどにゃー」

「では、私が最後まで立っていた一人目になりますね」

「おみゃーじゃ無理にゃー」

余裕があるように見せましたが、どうやら虚栄であることを見抜かれたようです。不敵な笑みを浮かべたアルマさんが、両手の得物を回転させ襲い掛かってきました。私も長刀苦無で対応します。
右手のドリルはコンクリートを穿ち、左手のレーザーソーは電柱を融解させ真っ二つにします。どちらも直撃すれば即死クラスです。長刀苦無で捌けてはいますが、正直冷や汗がでそうです。

「にゃー、なかなかやるにゃー。だけど、“腕だけ”じゃあちし達には勝てにゃーよ」

「!? 美咲さんそちらは不味いです! すぐに右方向へ逃げてください!」

アルマさんが言い終わるのと同時に、先生の切羽詰まった声が聞こえました。私は反射的に右へ跳びます。瞬間、アルマさんも同様にこちらに跳びました。そして、私達の元居た場所に飛来するミサイル群。

「外した! [ピー]猫! てめぇしっかり押さえてろっての! この役立たずの[ピー]がぁ!」

「こやつかなりいい勘してるにゃー! あちし悪くにゃー!」

飛来したミサイルの後に、マリネさんがやってきました。どうやら先ほどのミサイルはマリネさんのもののようです。エルスさんは囮に失敗したのでしょうか。
……いや、私には、初めからこういう布陣だった気がしてなりません。

「ちくしょう、今ので落とせなかったのなんて久々だぜ。あん? ……オーケーわかった。聞いてたな、いくぞ[ピー]猫!」

「あちしに指図してんじゃにゃーよピーピー女!」

どうやら、彼女達のマスターさんから指示があったようです。

「先生!」

「どうくるかわかりません。とにかくエルスさんとの合流を急いでください」

「はい!」

私は先生の指示に従うべく、アルマさんから距離をとります。が、アルマさんも同様に私から離れていきます。

「……不味い。相手の狙いはエルスさんです! 急いでください美咲さん!」

「はい!」

私は急いで、エルスさんのいる方角へ走ります。ビルの角を二つ曲がったところで、こちらに向かっていたエルスさんを発見しました。

「あ、お姉様!」

エルスさんはこちらを発見すると、笑顔で向かってきました。私は周囲を警戒しましたが、相手の姿も気配も感知しませんでした。

「合流しましたか。では、次の……」

「お、お姉様!」

先生の指示を遮るように、エルスさんが叫んで私の後方を指差しました。何事かと振り返ると、少々離れた位置にアルマさんとマリネさんがいました。ただ、アルマさんはマリネさんの上にうつ伏せに乗っかっているように見えます。

「み、美咲さん、回避を!」

「え?」

先生の慌てた様子の声に一瞬気を取られてしまいました。そして、その一瞬でよくわからない事が起きました。
アルマさんが光ったと思ったら、急激に視界が回転し、気が付いたら上空を見上げていました。何を言っているのかわからないと思いますが、私も何をされたのかわかりません。
ただ確実に解ることは、薄れゆく意識の中で聴いたファンファーレによりアルマさんとマリネさんのチームが勝利した、ということだけでした。






「……いやぁ、あっさりとした完敗、ですね」

「……不甲斐なくて申し訳ありません」

頭を地面に擦り付けて土下座致します。先生は慌てて私を起こしました。

「いやいや、私の判断ミスですよ美咲さん。まさか相手の計略がそこまで及んでいるとは露知らず。……今回の戦いは、全て相手の手のひらの上で踊らされていた気がしますね」

それは私も感じました。最初の奇襲から、退避、合流まで。まるで全て読まれて、その上で向こうにとって都合がよい形で動かされていた気がしてなりません。

「さぁー、約束だぜ[ピー]! 俺が勝ったんだ、二度とネムには近づかねぇと誓いな!」

私の目の前に、素体状態のマリネさんが現れました。腕を組んでやたらと尊大な態度です。

「まあ、それが約束ですからね。仕方ありません」

私がそう告げた時、ネムさんがトコトコと私に近付いてきて、抱きついてきました。

「やだよぉ……」

私の腕に抱きついたまま、目に涙を浮かべています。ああ、小動物オーラが、オーラが!

「ね、ネム!?」

「ど、どうしたにゃネム?」

ですが、ここで抱き締めたらきっと、あそこでうろたえにうろたえているお二方にスクラップにされてしまいそうなので、必死に耐えます。

「美咲さん、すごく優しい人だから、ボク、美咲さんともっと仲良くなりたい!」

ああでも、でも、この小動物オーラが、守ってオーラが、母性をくすぐるんです。

「だ、だけどそいつは、お前を泣かせた悪いやつでな?」

「そうにゃそうにゃ!」

さらに、アルトアイネスは新型のスモール素体仕様なので、初期型の私よりも低身長で頭のてっぺんが見えるんですよ。

「でも、謝ってくれたし、よしよししてくれたもん。優しいもん」

ここに顎をのせて後ろから抱き締めてあげたいですね。そして歌の一つでも歌ってあげながらよしよししてあげたりして。

「でもだな、ネム! そいつは変人でだな……」

あとはそう、膝枕とか、腕枕とか。そして優しく頭を撫でて上げながら子守唄を歌ってあげて、眠ったらその寝顔にキスしたりしたり、ね!

「もう……そんなイジワルなことしか言わないお姉ちゃん達なんて、大っきらい!」

「がふぁ!(吐オイル)」

「げぶにゃ!(吐冷却水)」

ああ……もう、限界です……この子を抱き締めてあげられるなら、死んでも悔いはありません!

「ま、まあ、仕方ねぇな! ネムがそこまで言うんだったら、そのフブキもそんな悪いやつじゃねえし、仲良くしてやってもいいかもな」

「そ、そうにゃー。ネムがそうしたいなら、あちしもかまわにゃーよ」

「本当! わぁい! ねえねえ美咲お姉ちゃん、ボクと、仲良くしてくれる?」

「はいもちろん喜んで!」

ダキッギューッスリスリスリスリスリスリ!

「や、あん! 美咲お姉ちゃん、くすぐったいよぉ〜」

「「ってなにさらしてんだてめぇ(おみゃー)!!」」


──後ほどエルスさんから聞いた話では、お二方に蹴り飛ばされた私は見たことないような輝かんばかりの満面の笑みで綺麗な放物線を描いてゴミ箱にボッシュートされたそうです──






……そして帰りの車の中。私はいつもの神姫用座席ではなく、先生の正面、ダッシュボードの上で土下座しております。

「……あのー、美咲さん?」

「まことに申し訳ありませんでした! 私としたことが、斯様に取り乱すは心身ともに未熟故の事! 如何様な罰でもお受け致します!」

「いや、私は別に怒ってなどはいないんですが……」

うーん、と、先生は困ったような声を上げました。私としたことが、先生にまたご迷惑を!? これはもはや……。

「先生、古度の数々の失態、我が死を持って償います故、来世にてお許しいただければ幸いです。お世話になりました」

「ち ょ っ と 待 っ て く だ さ い !」

ウィンドウを開け投身自殺を謀る私を、先生は片手で引き留めました。放してください。私はもう死んだほうが良いのです。

「なんでそんなに取り乱しているんですか全く……」

「いえ、あの、その……言わなければダメですか?」

「ええ、まあ」

私は、私の胸の内に湧いた罪を、先生に吐露致します。

「……あのアルトアイネスタイプ、ネムさんへの母性愛が、先生への忠義を、ほんの一時、微かに上回りました。それは私にとっては最大の罪です。先生以上の存在などあってはならないのに、あの子への気持ちが大きく膨らんでしまいました。それはもはや、万死に値します」

申し訳なさと不義を働いたという罪悪感と私自身への嫌悪から、先生の顔を見ることができません。ですから、先生がどんな表情をしているのかもわかりません。
自分の主への忠義より他を優先した私を、神姫を、快く思う人などいないでしょう。先生もきっと、お怒りに違いありません。と、そういった旨の考えも一緒にお伝えしました。

「はぁ、成る程、成る程。つまり、私が、美咲さんがあのネムさんを可愛がったことを怒っていると、そう思っているわけですね」

「……はい」

私の視界には、自分の膝しか見えません。先生のお声がとても冷たく聞こえ、胸が冷えるのを感じました。私は、一体どうなるのでしょうか……。叶わぬことではありますが、できることなら、お許しを頂きたいです……。

「……よし、では、さすがに私も怒ります。覚悟してください」

先生が動いたので、何か来ると思い、目を瞑って身を堅くします。どんな罰でも甘んじて受けるつもりではありますが、恐ろしいものは恐ろしいです。


ビシッ!と、ちょっと強めのデコピンをされました。痛くはありませんでしたが、予想外の出来事に目をぱちくりとさせて先生を見上げました。うわ、見たことのない怒り顔です……。

「私は悲しいです。その程度のことに腹を立てるような器量の小さい人間だと、美咲さんに思われていたのですね。悲しいを通り越して、泣きそうです。マジ泣きしますよ」

いや、あの、怒り顔で泣きますよって言われましても……。

「……怒って、いないのですか?」

「美咲さんが信用してくれませんでした。死にます」

「うわわわわ! すみません先生! 信じます! 先生は私をお許しくださいました!」

「許すも何も、怒ってすらいないのに……もうダメです。自分の神姫の信用を失いました。死にます」

「わあぁぁぁぁ! わかりました! 先生がお怒りでないことは十分わかりました! 先生の寛大さを信用せず、自分勝手に自らを罰していた不躾だった私をどうかお許しください!」

「はい、いいですよ」

途端、先生はケロッと笑顔になりました。まるでさっきまで首すら括りそうだった雰囲気が嘘のようです。……いや、たぶんあれは嘘ではありませんでした。

「いいですか美咲さん、心して聞いてください」

「はい」

笑顔をやめ、真剣な表情をする先生。私も思わず居直ります。

「私はね、美咲さん、あなたを心より愛しています。ですが、それは独占欲でも支配欲でもありません。一個性を持った一人の神姫として、家族として、人生のよきパートナーとして、私はあなたを愛しています。ですから、あなたが何を考え、どういった行動をとり、何を成しても、私は全て受け入れます。たとえ世界の全てを敵に回したとしても、世界そのものを破滅に導くことであっても、私は、私だけは、あなたを愛しつづけます。それだけは信じてください」

「……はい」

先生の、裏のないお言葉に、私は嬉しさに顔が熱くなるのを感じます。同時に恥ずかしくもなりました。自分一人で勝手に責め立て落ち込んでいた自分が、いかに狭量で矮小であるかを思い知ったからです。

「はい、では、仲直りも終わったところで、ケーキでも買って帰りましょう」

「はい先生! ……あれ?」

ここで私は、喉まで何かが出かかったかのようなもどかしさを感じました。何かを忘れているような……。

「先生、何か忘れている気がします」

「ん、忘れ物でもしましたか? いや、そんなはずは……」






「「あ、タチバナさん……」」






「たぁ〜けだくぅ〜ん。神姫を使って気絶させた挙げ句放置とは、とんだ特殊なプレイに出たものだねぇ。残念ながら私にはそんな趣味はないんだがぁ?」

「「すみませんでした」」

本日三度目の土下座は、額に大きなバッテンを張りつけ、マンガ風青筋を立てた笑顔のタチバナさんに向かって行いました。




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