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クラブハンド・フォートブラッグ
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浸食機械
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デュアル・マインド
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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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引きこもりと神姫
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おまかせ♪ホーリーベル
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

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犬子さんの土下座ライフ。
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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妄想神姫
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  ゴーストタウン…武装神姫バトルサービスではワリとポピュラーなステージである。
その、ゴーストタウンが見るも無残な瓦礫の山へと変わっていた。

そして、その瓦礫の中を駆ける6つの影。
ハウリン、マオチャオ、アーンヴァル…まったく同タイプの神姫同士がバトル
フィールドを飛び回る。
もっとも片方はほぼノーマル、片方は標準武装ゼロという極端な組み合わせだが。

「動かんほうが宜しおすえ?」
呟き、三角跳びに瓦礫を蹴って黒い神姫が舞い上がる。
D-フォースのガンナー、タイプハウリンのD-ブラスター。
空中から放たれるバヨネットビームライフルの高速連射はまさに雨の如く、対戦者を
フィールドに繋ぎ止める。
「エエ娘どす」
防御に気を取られた対戦者の眼前に着地したブラスターのバヨネットがハウリンを
貫いたのは、その2秒後であった。

マオチャオには勝算があった。
相手のマオチャオタイプはマオチャオタイプとは思えない大型装備をしていたからだ。
元来マオチャオタイプは敏捷性をウリにした近接戦闘に優れるタイプ。
あんな取り回しの悪く重い大型装備では、その特徴を殺しているも同じ。
敏捷性で掻き回せば勝てる。妥当とすら言える戦略だった。
だが、その戦略は打ち砕かれる事になる。
そのマオチャオタイプ…D-バンカーの移動速度は彼女の予想を遥かに超えていたのだ。
通常ならば対応も出来たかもしれない。だが、彼女は油断していた。
バンカーの腕の機構から放たれた圧縮空気の衝撃波…しかしそれは攻撃の為でなく。
相手は衝撃波に「乗って」高速移動をかけてきたのだ。
そして、そのムチャな方法に呆気に取られていたのが運の尽き。
「重武装タイプが遅いなんて…誰が決めたネ?」
背後を取ったバンカーのその台詞が聞こえた時、マオチャオの胸はバンカーの必殺技に
よって装甲ごと大穴を空けられていた。

「二人ともお元気ですわねぇ…」
D-フォースの一機、D-ブレイザーは上空からその戦闘を眺めていた。
「でも…美しくありませんわ」
敗れた神姫達の残骸を見て憮然とつぶやく。
その彼女の元へ高速で近づく機影が一つ。対戦者のアーンヴァルであろう。
「ごきげんよう。残念ながら後は貴方一人ですわー…降参なさいませんこと?」
「なっ!?こんな短時間に?」
慌てて彼女が友軍機の反応を追う…その横顔が焦燥に歪むのを見つめながら、ブレイザー
は威嚇の一撃を彼女の頬へ放った。
「余所見しないで下さいなー。寂しいですわー」
世間話のような抑揚の無い口調でそう告げる。
「っ!…なら、私が貴方を倒します!」
表情に決意の色を浮かべ、ライトセイバーを抜いてこちらへ飛び来るアーンヴァル。
せめて一矢という事だろうか。ブレイザーは扇子を口元へ当て考えるそぶりを見せる。
「強い心をお持ちで。でも無理ですわね」
ブレイザーが両腕を上げれば爆発が周囲を揺らす。
バランスを崩したアーンヴァルへ一瞬で間合いを詰め、その顎に手を掛けて囁く。
「ましてや近接戦闘などと」
至近距離での爆発に吹き飛ばされるアーンヴァル。
そして追い討ちを掛けるようにブレイザーの腰部にマウントされたマシーンズが迫る。
その飛行軌跡は高熱の帯となり、アーンヴァルを球状に包み込む。
「私、敗者の方の骸を晒すような無粋な戦いは嫌いですの…」
「…ですから、欠片も残さず焼き尽くして差し上げますわ」
マシーンズが円球結界を解いた時、其処には何も残っていなかった。




  電光掲示板がバトル終了を告げる。
ざわめくギャラリーの皆様、泰然と微笑むバカ姉貴。
ども、ホビーショップエルゴです。
冒頭見て何事かと思った方、オレも悪い夢だと思いたい。
とりあえず締め切り明けのバカ姉貴がふらっと三時過ぎに現れてはや2時間。
その間に対戦者を屠りまくり、今やすっかりお客さんもギャラリーと化してこの化け物
神姫軍団を打ち破る勇者の登場を待っている。
「そろそろ満足したろう。帰れ」
「まだ食い足りないな。他に挑戦者はいないのか?」
鬱陶しいほどに好調である。締め切り明けがそんなに嬉しいか。
「他のお客さんが遊べないだろうが!」
「私は誰の挑戦でも受けるぞ?」
「アンタに挑むヤツなんぞもう居ないわ!」
ギャラリーから苦情でも出ればまだ手段もあるのだが、あまりの無茶苦茶ぶりに逆に
支持を得てしまっている。ええい、性質悪い。
「おい、そこな少年、ジュースを買って来い」
「小学生をパシらせるな!少年も素直に買いに行くなっ!」
「えー、シショーのメーレーだしー」
このアマ小学生まで手懐けてやがる。っていうかオレの店なのにアウェイな雰囲気。
…この年代の子供って強いのスキだからなー。
このままではあの人外に憧れる子供というかつての俺のような失敗者を出してしまう。
なんとかせねば…

「…盛況だな」
その時である。
場に不似合いな落ち着いた声にそちらを見れば、旧い友人が立っていた。
地走 達人。警視庁の警部さんで姉貴とも面識がある。
「よぉ、たっちゃん。このバカを威力業務妨害でしょっぴいてくれ」
「気分で身内を前科持ちにするな。特に違法性も無いだろう」
たっちゃんが突っ込みつつこちらに歩いてくるのを見て姉貴も腰を上げる。
久しぶりにラウンジで話でもしようという事だろう、姉貴に促されて俺達が続いた。

「秋奈先輩もお元気そうで。いい加減犯罪からは足を洗って貰えましたか?」
たっちゃんが尋ねる。そう、この二人同じ高校の出身だったりするのだ。
まぁ、地元だしね。
「必要悪だよ地走の。ムシは好かんだろうし、理解を得ようとは思わんがね」
しっかり奢らせたジュースを飲みながら姉貴が答える。
「…一定の理解は示しているつもりですが。恩義もありますし」
恩義と言う言葉に姉貴の眉がぴくりと上がる。
「最後を看取っただけの事だ。不甲斐なさしか感じんよ」
「それでも…感謝しています」

…たっちゃんも以前は神姫を連れていた。
兄妹の様に仲が良く、たっちゃんがMMS犯罪担当になってからは共に現場に赴き、
直伝の剣術で事件解決に貢献していたのを良く覚えてる。
なんというか、いいコンビだった。
だが、神姫を爆弾代わりに使う爆弾魔の起こしたテロ事件の際、彼女は帰らぬ人と
なってしまった。
珍しく警備側に雇われていた姉貴の神姫がその最後の言葉を聞き、主へと遺品…刀と腕
を届ける事になったのも何かの運命だろうか。
あの時の事は良く覚えてるが…言葉にはしづらい。
結論から言えば腕はたっちゃん家の墓に。刀は俺に処分を任された。
それ以来、たっちゃんは神姫を買っていない。
…たまにうちに来る辺り、色々と思う所はあるんだろうけど。

「そうだ地走の、対戦者が居なくて退屈していた所だ。お前、私と勝負しないか?」
「…俺は神姫を連れていませんよ」
「相変わらずか。…吹っ切れてはいないようだな」
「アイツは…特別でしたから」
二人の遣り取りがどこか遠くに聞こえる錯覚に陥る。
D-フォースの連中を探せば、筐体脇でこちらを見ていた。
主の話に割り込まない為の配慮か。こういう所はワリと出来た連中ではある。
「惰弱な事だな」
切り捨てるようにそう呟き、姉貴が席を立つ。もう一暴れする気らしい。
たっちゃんはといえば黙って姉貴の言葉を聞いているようだった。
「悪いね。思いやりの無い姉で」
「いや…それも一面の事実だ。今日も刀を処分したって話を確かめる為に来たような
  物だしな。未練だな」
自嘲の笑み。なんというか、こっちの胸も痛む。
「…いい人だよ。たっちゃんトコと同じハウリンタイプ。まぁ、性格はゼンゼン違う
  ケドね」
「っていうか、ウチの生徒さんだから下に居るぞ。会ってみる?」
たっちゃんが考え込み、頭を振る。
「…やめておこう。そのコに余計な物を背負わせたくは無い」
「…考えすぎだと思うけどね。ま、俺がでしゃばる話でもねぇし」
立ち上がる。今日は静香ちゃんがバイトに入ってくれてるし、ジェニーも居るから
店番は大丈夫だと思うけど…様子見とかないとな。
「たっちゃんもうしばらく居る?」
「ああ…久しぶりに試合を見ていくよ」
軽く手を上げるたっちゃんに頷き、俺は階下に降りた。




  下の事は心配するまでも無かった。
ジェニーレジ打ち、静香ちゃん接客、ココちゃんは商品モデルという鉄壁の布陣。
つか、いつもより売れてねぇ?
有能すぎて居場所が無いんですが。
「あ、店長。おねーさん落ち着きました?」
「いや、絶好調で連勝記録更新中。悪いね、店番頼んじゃって。でも、アレから
  目を離すと怖いんだよなぁ」
嘆息交じりに答える。
「まさか店長にあんなステキなおねーさんが居たなんてね。私も戦ってみたいくらい」
ステキのイントネーションがおかしいのはまぁ、あの姉だからだろう。
しかし物好きだな静香ちゃん。
「返す言葉も無いけど…アレと戦いたいってのは流石にお勧めしないよ?」
「でもあんなベタな悪役そういませんよ?」
目が輝いてらっしゃる。ショーマンシップってヤツか。
ちらりと視線を移せばココちゃんが視線で必死に「止めて」と訴えていた。
最初は学校帰りの静香ちゃんにアレを止めて貰おうかとも思ったけど…そんな感じで
思い止まって店番をして貰っているのだ。ココちゃんの為にも。
だが、ココちゃん…その仕事、もしかして普通にバトル出てた方が良かったんじゃね?
俺達の奇妙なアイコンタクトを知ってか知らずか。
何か静香ちゃんの笑顔がいつにも増して輝いていた。

しかし実際困った。
あのバカ姉貴を止めたいのはやまやまだがジェニーは公式のバトルには参加できない。
となると腕の立つ常連に運命を託すしか無いんだが、社会人組はまだ来れる時間じゃ
ないし…
となるともっとも可能性が高いのはねここちゃんとゆきのんのコンビか。
時間的にもそろそろだし…
その時、ジャストタイミングで自動ドアが開く。
ドアの向こうには風見家の面々と…凪君と十兵衛ちゃん。
思わずガッツポーズを取るオレ。神は居た。




「というワケでアレを何とかしてくれないか?」
「よっぽどお姉さんが苦手なんですね…」
オレの深い溜息にすかさず美砂ちゃんが突っ込む。
「苦手っつーかなんつーか…子供には悪影響だと思うんだ」
「まぁ、話を聞く限り色んな意味でスゴイ人ですね」
凪君も唸りながら同意してくれる。
「…姉貴は姉貴だから成り立ってるのであって。アレに妙な憧れを抱くのはヤバい」
「腕も意気も認めちゃいるがね。ま、色々あるのよ血が繋がってると」
んー。ナンか二人がニヤニヤしているのが居心地悪いぞ。
「ま、店長にはお世話になってるしね…ねここ、どうする?」
「んー、店長さんはお姉さんが嫌いなの?」
「…勝てないんだよなぁ。苦手じゃある。でも、嫌っちゃいないよ」
あの人は…ある意味じゃ、オレの目の前に現れた最初のヒーローだもんなぁ。
「それじゃね、だったら何でお姉さんを止めたいの?」
難しい質問だな…でも、ねここちゃんは真顔なワケで。茶化した答えも出来ないか。
「あの人は、強いんだ…良くも悪くも。あの人だから出来てる事がある。」
「力を前提に物を考える事とかな。全面的に間違ってるとは言わないけど…
  認められないワケよ。ソレは、オレの主義に反する」
「ぶつかれるモンならそうしたいけど、そうもいかない。だから、頼めないか?
「オレの代わりに、正義をぶつけてくれ」
思わず真顔でねここちゃんを見つめる。
「でも、ねここは店長さんの正義をちゃんと解ってないかも…」
おずおずと呟くねここちゃん。
「それは、気にしなくていい。オレはねここちゃんを信じてるし」
「ねここちゃんの気持ちをバトルでぶつけてやって欲しいんだ。それが一番だと思う」
「…うん、ねここ解ったの!まっかせて☆」
「ねここが行くなら私も行くしかないですね」
ねここちゃんとゆきのんが立ち上がる。頼りにしてます、娘さんがた。
「十兵衛はどうだ?」
話を聞いていた凪君が十兵衛ちゃんに尋ねる。
「店長さんの頼みですし、今の話に思う所もありましたし」
「…それに、あの人達凄く強いです。正直、少し戦ってみたいかな」
それを聞いて凪君が頷く。
「オーケー、十兵衛が決めたなら俺は全力でサポートするよ」
こちらはこちらで相変わらずだ。今度はオレが美砂ちゃんとニヤニヤする。さて。
「そいじゃ、頼んどいてなんだが姉貴のD-フォースは掛け値無しのバケモンだ…皆、
  くれぐれも気をつけてくれ。頼む」
『了解!』
出陣の合図とばかりに皆が声を張り上げた。




「退屈ダネー」
バンカーが脚をプラプラさせながら呟く。
「そらまぁ、いい加減挑戦者も減ってますよってに。仕方あらしまへんえ」
「無駄口が多いですわー。静かに待ちませんこと?」
元はゴーストタウンステージであった瓦礫の山。その頂点に立つ三機は三者三様に
呟いていた。
『お前たち、次の挑戦者が来たぞ』
姉貴の声と共にバトルステージに新たな挑戦者が現れる。
十兵衛ちゃん、ねここちゃん、ゆきのん。ヴァーチャル空間に現れた三人が
D-フォースと対峙する。
『喜べ、今度は愚弟のお墨付きだ』
「夏はんの?そらまた…」「なっちの紹介なら楽しめそうネ」「あらまぁ」
三人がそれぞれに声を漏らせば、空間に新たな機影が現れた。
「誰か一人退いて。私が出る」
D-フォースリーダー、ベルセルク。彼女が興味を持つ神姫が挑戦者の中に居た。
ソレを見つけた瞬間、彼女もバトルフィールドに飛び込んだようだ。
「ほんならウチが出ましょ。もう給金分は働きましたよって」
入れ替わりにブラスターがステージアウトする。
『ステージの破壊も大分進んだな。リスタートするか?』
「必要ない」「そうネー、どうせまたハカイするネ」「ですわねー」
『そちらは?』
「このままで大丈夫なの!」
姉貴の問いにねここちゃんが答え、二人が頷く。
『では、バトルスタートだ』
電子空間にポリゴンで描かれたカウントが流れる…3、2、1
『スタート!』
電子ブザーが鳴り響き、戦端は切って開かれた。




  先制したのは十兵衛…いや銃兵衛ちゃんの射撃だ。
狙いはベルセルク。
だが、ベルセルクは伏すほどに身を屈め脚部の加速ユニットで地を駆ける。
原理としてはリニアなアレと同じ。その瞬発力はシャレにならない。
サポートに向かうねここちゃんとゆきのん。
が、更にその二人の間を割るようにバンカーの拳が迫る。
両サイドに回避する二人。
いかん、計算づくだ。
ゆきのんの前にブレイザーが舞い降りる。
結果3人は分断される形になってしまった。


「ベルは一騎打ちがお望みだからネ。行かせナイヨ」
「同じマオチャオ同士、私と戦うイイネ」
バンカーが風を造り、脚部でソレを捉えてねここちゃんに迫る。
「なら、アナタを倒して行くしかないの!」
シューティングスターを切り離し、跳び上がったねここちゃんが分身を生む。
「オウ、分身攻撃!?ナルホド、流石ダネ」
ねここちゃんの機動性と分身による幻惑に笑みすら浮かべるバンカー。
…楽しんでるなぁ。
「ドレが正解か判らないネー。纏めて行くヨ?」
腕、足、背中。各部に積まれた砲口が顔を覗かせる。
ミサイルパーティー。バンカーの射撃技…というか爆撃技だ。
一斉に発射されたミサイルが周囲を揺らす中、バンカーの目はしっかりとソレを
捉えていた。
ミサイルを回避するねここちゃんの姿を。
「マボロシは避けないからネ!」
落下するねここちゃん、跳び上がるバンカー。
「コネコチャンの負けダネ。バイバイ?」
バンカーのアームシリンダーが動く。必殺の一撃を放つ為に。
だが、ねここちゃんの目もまだ諦めてはいない!
「ねここは、こんなトコで負けないの!」
ねここちゃんの爪が眩い光を放つ。
「サドンインパクトッ!」
「ねここフィンガァァッッ!」
雷と風。渦巻く二つのエネルギーが空中で炸裂した。


「ねここ!?今そちらへ行きます!」
爆発を目撃し、ねここちゃんに合流しようと駆け出すゆきのん。
「貴女の相手は私ですわー」
ブレイザーの腕から放たれたレーザーが、その足元を抉る。
「邪魔をするなら容赦はしませんよ」
「容赦などしている余裕が御有りですか。なら、こちらも答えねばなりませんねー」
ブレイザーの腰部からマシーンズが分離する。
熱と炎を操るブレイザーのマシーンズ…装備は高圧レーザーと熱切断ブレードだが
装甲と一体化したブレードの破壊力と他のマシーンズをブッちぎった凶悪なスラスター
の機動性でその戦闘力は並みの神姫を上回る。
その射撃と斬撃を織り交ぜた多重攻撃を向こうに、ゆきのんもまた高機動射撃戦を得意
とするスタイルの本領発揮か、巧みな応戦を見せる。
「マシーンズだけで止められない相手も久しぶりですわね」
滑空するブレイザーがゆきのん目掛けて迫った。


加速して迫るベルセルクが剣を抜き放つ。
通常、大剣はそのサイズから帯剣時の取り回しがやっかいで機動戦を仕掛けるタイプの
近接戦闘では敬遠されがちだ。
だが、ベルセルクの剣は多節剣。鞘を身体に巻き付けるように装備する事で己の機動性
を殺さず、なお自分の身の丈の2倍以上と言う巨大剣を可能としているのだ。
もっともこんなトンデモ剣を使うには相当の修練と技量が必要なのだが。
その巨剣は加速の勢いを乗せてやすやすと銃兵衛ちゃんのレーザーライフルを切り裂いた。
「貴女と一度戦ってみたかった」
呟き、返す刃で斬り上げるベルセルク。十兵衛ちゃんが刀を抜いてソレを受ける。
「私を知ってるんですか!?」
「エルゴには何度か来てる。貴女の剣技も見た」
鍔迫り合いの状態で睨み合う二人。
「でも、今は違う。体捌きも技量も別物。不調?」
「アレは私であって私でないというか…」
要領を得ない、といった表情で首を傾げるベルセルク。身体を押す反動で一度身を引く。
「…本気を出して。でないとあと数分持たない」
剣のロックを解除する。再び節ごとに分れた刃は、怒涛の如く十兵衛に襲い掛かった。


砂煙を切り裂きゆきのんに迫る赤い神姫。
はじかれるようにバックステップで避けたその空間をブレイザーのブレードが斬った。
すげぇな、ゆきのんの反応速度。経験ってヤツだろうか。
「賢明ですわ。受ければ受けたパーツごと貴女を切り裂きましたのに」
マシーンズを従え悠然と虚空に佇むブレイザー。
「でも、遅かれ早かれ貴女は私に裂かれる運命ですわ…私の戦闘スタイルは高機動の
  近接戦闘。同じ高機動戦闘なら間合いを制した者の勝ちです」
瞬間、掻き消える様にブレイザーがその姿を消す。
いや、消えたのでは無い。ゆきのん目掛けて迫っていた。
恐ろしい事に完全空戦仕様のブレイザーはそのマシーンズ以上の加速スピードを
持っている。
だが、真に恐ろしいのはその加速のキレ。静止状態から一瞬にしてトップまで持っていく
その異様な飛行能力は姉貴のこさえたシステムでも屈指の完成度だろう。
実際、オレがアレと戦った時も光学系のセンサーは何の役にも立たなかった。
ゆきのんも紙一重で避けるのがやっとと言う状態だ。マズい。
「賢明な貴女なら勝機が無い事にもお気づきでしょう?このまま装甲を斬り剥がされて
  無様に負けるよりも、降参なされては?」
「出来ませんね。ねここに申し訳が立たない!」
散発的ではある物の、ゆきのんの正確な射撃はブレイザーの動きを上手く制限してみせて
いる。確かにこのままではジリ貧だが、現状では紙一重の攻防が続いている感じだ。
「友達思いですわねぇ。それが貴女の正義ですか?」
ブレイザーの刃が徐々にゆきのんの装甲を捉えるようになってきている。
「そういうのは良く解りませんね。ただ、好きな人を守りたい…それだけです」
ゆきのんの威嚇射撃とバックステップ。多少の距離を空けて二人が対峙する。
「それもまた正義ですわー…その正義、打ち砕いて差し上げます」
「どうでしょうね。打ち砕かれるのは貴女かも知れませんよ」
ジリジリとお互いが間合いを計っている。緊張感。
「…お出来になるなら?その顔、すぐに絶望に歪めて差し上げます。楽しみですわ」
「出来ますとも。いえ、是が非でもそうします!」
先に動いたのはゆきのん。大地へ向けられた蓬莱壱式が火を噴き、土煙を上げる。
「目晦ましですか?つまらない手ですわねー」
土煙を物ともせずに迫るブレイザー。STR-6ミニガンを上空に放るゆきのん。
「何を企んでいるのか存じませんが…無駄ですわ!」
周囲の空気すら紅く染め、迫るブレイザーの刃がゆきのんの左腕を切り裂く。
「…かかりましたね?」
ゆきのんが小さく笑い、放り投げたSTR-6ミニガンをへ視線を向ける。
「な…!?」
ゆきのんの胴を裂きながら、思わず反射的に後ろを向くブレイザー。

瞬間。

ゆきのんが己の身で庇うように持っていた蓬莱壱式を素早く構え、至近距離で発射した。
「ほら、かかった」
浅くだが胴を裂かれ、左腕を断たれ…さらには爆風に巻き込まれて吹き飛ばされながらも
ゆきのんが呟いた。
逆方向に吹き飛ばされながら、瓦礫に打ち付けられるブレイザー。
その胸には大きな風穴が空いていた。
「…全て注意力を奪うための布石ですか。嘘つきですわねぇ…」
微笑みながら、ブレイザーが呟く。
「…勝つ為にはこれしかないと思いましたので」
立ち上がるゆきのん。その装甲はほぼ全壊し、蓬莱壱式もその砲口が弾け飛んで使い物
にならなくなっている。
「私も甘いですわ…貴女は、こういう捨て身の戦いはなさらない方だと思いましたのに」
「…そうしてでも、守りたい物があるんです」
微笑むゆきのん。ブレイザーも納得したように頷いた。
「いい勝負でしたわ。今度はティータイムでもご一緒したいですわね」
ゆきのんに微笑み、光の粒子と変わったブレイザーはステージから消えた。
「それもいいかも知れませんね」
呟くゆきのんは背を向け、駆け出した。ねここちゃんの元へ。


雷を纏った無数の刃が十兵衛ちゃんを切り裂き、吹き飛ばす。
「きゃぁぁぁぁっ」
地面へと倒れ伏した十兵衛ちゃん、迫り来るベルセルク。
『十兵衛!』
凪君が思わず声を上げる。
「さよなら」
呟き大上段から振り下ろされた剣。
しかし、霧と共に刀で往なし、十兵衛ちゃんが膝立ちで構える。
「…我が名は十兵衛…刻め…」
立ち上がる勢いで迫る刀をスウェーで避け、ベルセルクが剣を構え直す。
「…D-フォースリーダー、D-ベルセルク。貴女との勝負を望む」
「承知。ならば、いざ尋常に…

『勝負!』

切り結ぶ二つの刃が無数の軌跡を生む。
打ち合い、受け流し、ある物は避け、ある物は跳び。
スピードと鋭さの真・十兵衛ちゃん、リーチとパワーに優れ、無駄な動きを排した剣技
のベルセルク。
真・十兵衛ちゃんの攻撃はベルセルクを捉えるがその技に致命傷を与える事が出来ず。
ベルセルクの攻撃もまた真・十兵衛ちゃんの反応速度と剣技に巧みに受け流される。
二人の達人クラスの剣士の動きは見る者を圧倒していた。
誰も声を上げる事も出来ず、その行く末を見守っている。
両者とも、二の太刀いらずの剣豪である。こうして切り結ぶ事自体が稀な程の。
二人は笑っていた。全力を賭して戦える剣士との邂逅。
それは両者共に望んでいた事なのかも知れない。
「流石。予測よりもさらに速い」
ベルセルクが横薙ぎの一撃を放つ。
「御主もな。幾度打っても受け流される…初めてだ」
避けるには大きすぎるベルセルクの剣。しかしそれすらも身を屈め、刀で流すように
剣の軌跡を変える事で回避する真・十兵衛ちゃん。
身を屈めた姿勢のままベルセルクの足元を薙げば、ベルセルクも背中のハルバートを
地面に突き立て、ポールダンスの様に身体を浮かせて回避、すぐさま攻撃に転ずる。
二人の剣士の戦いはどちらもこの均衡を崩す事が出来ず、果てなく続くかと思われた。
だが、俺も含め…こちらのチーム全員に一種の焦りがあった。
リミットの存在。
こうしている間にも真・十兵衛ちゃんの限界は刻一刻と迫っている。
持久戦は絶望的、さりとて決定打は打てず。
もし、冷却状態に入ってしまえば次に真・十兵衛ちゃんになるまで持ち応えるのは
恐らく不可能だろう。
つまり、今なんとかしないと勝利は無いのだ。

  その時、二人目掛けて何かが飛んできた。
お互いにソレを回避し、距離を取る。
飛んできたのは爆発に吹き飛ばされたねここちゃんだった。
「あ!十兵衛ちゃん、合流出来たのっ♪」
ぱぁ、と笑顔を見せて真・十兵衛ちゃんに駆け寄るねここちゃん。うむ、萌え。
「アリャ。悪いねベル、こっち来チャッタヨ」
バンカーが後を追う様に其の場に現れる。
「問題無い」
剣を構えなおすベルセルク。二人はD-フォースに挟まれるカタチになっている。
「無事か、ねここ」
「うん、大丈夫なのっ」
背中合わせに立ち、お互いの相手を警戒する二人。
「あのコ風使いなの。凄く強いよ」
「こっちは雷使いの剣士だ。かなりの使い手だな…リミットも近い、気をつけろ」
ねここちゃんがハッとした表情を浮かべる。
現状を悟ったのだろう。つまりは、長期戦は出来ないという事に。
「風…雷…」
何事か考えているねここちゃん。其処に美砂ちゃんの声が飛ぶ。
『ねここ、来るよ!気をつけて!』
ベルセルクとバンカー、二人が距離を詰めて挟み撃ちを掛ける。
「纏めてベルに斬られるいいネ!」
バンカーが巨大な衝撃波を放つ。
まともに受ければまず吹き飛ばされる大きさだ。
バランスを崩した先には剣を構えたベルセルク…連携技で止めを刺しに来たか!
「この勝負、私達の勝ち」
剣を、紫電が走る。これでは受け流しても雷撃によるダメージを受けてしまう。
明らかに決めにきている。
瞬間、ねここちゃんが顔を上げた。
「十兵衛ちゃん、考えがあるの!お願い!」
ぐるりと反転する。
ベルセルクとねここちゃん、真・十兵衛ちゃんとバンカーが向き合う形に。
そうか!
真・十兵衛ちゃんもソレを察したのか、駆け出す。
「風ならば斬れる!」
飛び来る巨大衝撃波を一刀の元に両断する真・十兵衛ちゃん。
「イッ!?」
驚くバンカー目掛けてさらに加速する。
「もう時間も無いのでな…覚悟!」
トップスピードですれ違いざまに装甲の無い腹部を両断する。
「アリャ…負けチャッタネ…」
驚きから帰って来れないのか、呆然と呟きつつ消えるバンカー。
その姿を見届けて、限界を迎えた十兵衛ちゃんが倒れ込んだ。

一方、ベルセルクの剣とねここちゃんの爪も激しい戦いを繰り広げていた。
「雷には…雷なのっ!」
左のねここフィンガーッ!?ベルセルクの剣を右で止め、左で打ち上げ、バランスを崩す。
「はいぱぁ、ねここフィンガァーッ!」
雷龍剣から奪った雷で膨れ上がったねここフィンガーが、ベルセルクを襲う!
「くッ」
すかさず背中のプラチナハルバートを抜いたベルセルクが、ソレを避雷針にしてはいぱぁ
ねここフィンガーを受け流す。
「ぐ…」
それでも受け切れなかったのか、ダメージを受けるベルセルク。
その威力に押され、足元の地面を抉りながら後ろに弾かれつつも、次の雷を剣へと
チャージしている。
「見事。でも、これが最後」
ベルセルクが剣を突き出す。それは、彼女の必殺技。
「雷鳴斬…ッ!」
限界まで溜め、膨れ上がった雷を電磁誘導で打ち出す必殺の技。
下手なビーム兵器を遥かに凌駕するその威力は、神姫を消し飛ばす事も可能…
そして、今その射線上にはねここちゃんと倒れた十兵衛ちゃんが居る!
「十兵衛ちゃん!」
駆け出すねここちゃん。そして、画面は白い光に包まれた。




『ねここ…』『十兵衛…』
美砂ちゃんも凪君も、祈るように画面を見詰めている。

光が収まった時、その場に立っていたのはベルセルクだった。
その右腕が煙を上げ、自身も剣を支えの様にして立って居る。
衝撃と過電圧にシステムの方が音を上げたのだろう。

そしてねここちゃん達は…居た。少し離れた場所。
十兵衛ちゃんを抱えたゆきのんと、そのゆきのんに体当たりでどかされたねここちゃんが
膝をついている。
両者の無事を確認し、歓声が上がった。

そして両者の目が合う。
二人を庇うように立ち、ファイティングポーズを取るねここちゃん。
「ゆきにゃん…その腕」
「先程の戦いで少し。…大丈夫、勝ちましたよ」
心配げなねここちゃんの声に、優しく答えるゆきのん。
「やっぱりゆきにゃんはスゴイの。でも、怪我してるから…十兵衛ちゃんをお願い」
「…はい」
そんな二人の遣り取りを見ていたベルセルクが首を振る。
「私達の負け」
「え…?」
ベルセルクの呟きに、思わず聞き返すねここちゃん。
「バンカーとブレイザーがステージアウト」
「私も右腕を損傷して動かない。システム自体も損傷。バトルの続行は危険」
僅かに笑みを浮かべ、ベルセルクが続ける。
「貴方達は損傷はあるけど3機とも無事。状況で考えるなら、貴方達の勝ち」
「とても楽しかった。再戦を希望」
そういうと、ベルセルクはゆっくりと背中を向けた。
「ボス、回収を要請」
『気は済んだのか』
「今回はこれで充分…ボスは?」
『いい勝負だった。満足したよ』
ベルセルクが下を向き、笑みを浮かべる。
その身体は徐々に光の粒子となり、ステージ上から消えた。




『試合終了!勝者、チャレンジャーズ!』
勝者を告げるアナウンスが響く。場内を埋め尽くさんばかりの喝采が響いた。

ブースを離れた姉貴とD-フォースが、一つ伸びをして出口へ向かう。
「気は済んだかバカ姉貴」「ああ、良い気分だ。いい選手がいるじゃないか」
「そりゃ、ウチのお客さんだからな」
「お前が誇らしげに言う事か?」
いつもの遣り取りを交わす俺達。美砂ちゃん達、凪君達もそちらへやって来て。
「おめでとう、挑戦者諸君。良い試合だったよ」
「あ、こちらこそ。お強いんですね」
「君達もな。再戦を期待している」
お互いの健闘を讃える両者。
んで、神姫達も盛り上がっている。
「良い試合だった。ありがとう」「こちらこそ…また、お願いします」
お互いに頭を下げるベルセルクと十兵衛ちゃん。
「素敵でしたわ」
ゆきのんの頬にキスするブレイザー。ってオイ。
「なっ!?なっ!?」
ゆきのんもパニくっている。
「親愛の挨拶ですわー。今度はお茶会でもしましょう、雪乃さん」
いけしゃあしゃあと言い放つ。
「うん、バトルが終わればみんな仲良しだねっ☆」
ウインクしながらシメるねここちゃん。良いトコ持って行くなぁ。
「なっちー、今日のワタシどうだったね?惚れ直しタカ?」
バンカーが俺の肩に乗りつつ話し掛けて来る。
「いや、俺ねここちゃん萌えだし」
サクッと受け流したら肩からズリ落ちてしまった。あ、白くなっとる。
「ね、ねここ!次こそはワタシと決着つけるネッ!?」
ねここちゃんを指差し宣戦布告するバンカー。やめなさい、みっともない。
「うん、また戦おうねっ!」
ライバル宣言をプラスにとったのか爽やかな笑みを浮かべるねここちゃん。
すでに負けた雰囲気でたじろいでいるバン子さん哀れ。
「ふふ、ほんならウチは先に帰りますよってに。次はウチとも戦っておくれやす」
一人遣り取りを見守っていたブラスターが全員に声を掛け背を向ける。
「ご苦労。給料は口座に振り込んでおく」「なんだ、今日も仕事か?」
「神姫一人生きていくのも大変なんどすえ?」
俺達のやりとりに当事者以外は首を傾げている。
「ウチはD-ブラスター。今回は皆さんとは戦えへんかったけど、今後とも宜しゅう」
微笑みながら優雅に一礼し、さっさと跳び去ってしまう。途中、俺の肩に乗って。
「…夏はんも偶には遊びに来てぇな?」
小声で囁いてもう一跳び。その姿は見えなくなる。…ううむ。
「D-フォースでも一匹狼。でも、戦闘力は最強」
ベルセルクがねここちゃん達にブラスターの事を説明している。
「…アイツは自活してんだよ。D-フォースもバイトの一つ」
俺も当たり障りない補足をしておいたり。
「変わった人なんですね…」「けど、大丈夫なんです?」
美砂ちゃんと凪君が交互に感想を述べる。
「ま、アイツはしっかりしてるから」
「ああ、そこらの人間よりもな」
俺と姉貴の呟きに、なんとなく納得したようだった。




  姉貴と風見家&凪家のバトルに触発されたのか、その日のバトルは大盛況だった。
社会人組もその話を伝え聞き、希望もあってサブモニターでエキシビジョンとして
その映像を流す羽目になった程である。
で、当事者達はといえば…店が掃けたら俺の奢りで焼肉という話になっているので
ラウンジで話に花を咲かせている。
…まぁ、頼んだのは俺だし静香ちゃんにも店手伝って貰ったし仕方あるまい。むぅ。
もちろん姉貴に折半させる事にした。
直後、姉貴に「ハレ晴れユカイの刑」を言い渡されたD-フォースの面々がちょっとだけ
気の毒。
もしかしてブラスターが先帰ったのってコレ見越してたのか?

お客さんもまばらになって来たので少し早めに端のモップ掛けに勤しむオレ。
「夏彦」
呼ばれて振り向けばたっちゃんが居た。
「おお、たっちゃん。どうだった?」
「ああ、やはり良い物だな。久しぶりに心が躍ったよ」
やっぱ、たっちゃんもこっちの人だなぁ。
「たっちゃんもさ、もっかいやってみねぇ?案外、いいリハビリになるかもよ」
モップ掛けしつつ聞いてみる。
「…どうかな。とりあえず、アイツの墓参りにでも行ってみるよ」
苦笑しつつ答えるたっちゃん。…真面目だからなぁ。
「そか…」
それ以上は言わずに仕事に戻る。
たっちゃんも頷いて去っていった。
お?途中、立ち止まって十兵衛ちゃんに声を掛けている。
「ちょっといいかな?」
「はい?」
急に話し掛けられて驚いたか、十兵衛ちゃんと凪君がきょとんとしている。
横の姉貴がたっちゃんについて軽く説明してるようだ。
しかし姉貴「神姫剣術の達人」って語弊無いか。
「…常に相手の斬撃の線と、受ける刀の部位を意識。刃の線と線を直角に当てる事。
  受けるよりは相手の線を斬るつもりで相対する」
「お節介とは思うが。それを直せば君は更に強くなる。覚醒せずとも」
…たっちゃん、十兵衛ちゃんのシステムに気付いたんか。つか、相変わらずお節介だ。
言ってから恥ずかしくなったのか、咳払いして慌ててその場を去っていく。
こんな時までちゃんと会釈していくのがらしいっちゃらしい。
階段を降りるたっちゃんを見送りつつ、姉貴と目が合ってなんとなく笑いあうのだった。




  シャッターを閉めて鍵を掛ける。
このメンツならばという事でジェニーさんもいつものボディではなくジェネシスボディだ。
武装は外してるけど。
よっぽど普通の格好で外出するのが嬉しいのか大はしゃぎである。
とりあえず、持ち金足るよな?
不安げに目を細めるオレにジェニーが声を掛ける。
「マスター!置いて行っちゃいますよーっ!」
そっちを見ればすっかり冬めいてイルミネーションに飾られた商店街の中、皆がこちらを
向いていた。
ああ、なんかコレって…いいな。
「オレが居なきゃ金出すのが居ないだろーがっ」
自分でもどうかと思う主張をしながら、賑やかな晩メシに向けて歩き出した。







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