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「――思っていたよりもはるかに早く見つかったものですわね」

 ヒルデガルドはトライクをバトルモードへと展開。両足で大地に立ち、副腕のコントローラを握りしめる。

「貴女、索敵能力に優れた装備でも持ってらっしゃいますの? どうやってワタクシを見つけられたのか聞きたいものですわ」
「まさか。私がヒルダちゃんに会えたのは流石に偶然なのですよー。もっとも、ある程度のアタリはつけてましたけどねー」

 地面に降りるリーヴェ。そしてにっこりと笑う。

「ヒルダちゃんが家出したとなると、理由は明白。最近の負け越ししか考えられないのですよー。となると、ヒルダちゃんは勝つために幸人ちゃんの元から離れたことになります。ですが、ここの辺りではヒルダちゃんは有名すぎますからねー、いろんな意味で。なので少なくともこの街から出なければ神姫バトルなどできようはずもないのですよー。この街のどこかのゲームセンター、もしくは神姫センターにでも入ろうもんならすぐに場所が幸人ちゃんに割れてしまいますからねー」
「となると、ヒルダちゃんは街を出るために幸人ちゃんの家から直線距離でもっとも近い街――D市へと行くはずなのですよー。あえて遠い街にすることも考えられましたけれども、幸人ちゃんが探しまわっている街中をいつまでもうろついていては見つかる可能性がありますからねー。とはいえ、大通りを使っていると神姫の一人歩きはあまりにも目立ちすぎるのですよー。そうなると路地から路地へとあみだくじのように移動しているに違いない――そう考えて、幸人ちゃんの家からD市に行く道筋にある路地を片っ端から覗いていたところなのです。幸い、私は空が飛べるので移動距離は大幅に短縮できますしねー」
「……見事な推理ですわ。こうも見事に読まれてしまうと、悔しさなど感じないですわね」

 ぱちぱちと拍手をするヒルデガルド。リーヴェはくすくすと笑う。

「さ、ヒルダちゃん? おにごっこはお終いなのです。愛ちゃんにはすでに私から連絡を入れました。あと十分ほどでここに到着するはずなのですよー。私の位置は愛ちゃんの携帯のGPSで確認できますからねー。今なら幸人ちゃんもそんなに怒っていないはずなのです。私からも言ってあげますから帰って一緒に謝るのですよー」
「……ワタクシに意見するとは、いい度胸ですわね。そんな提案に乗るとでも思っていますの?」
「全く思っていませんよー? ただ、これに乗ってくれれば私もヒルダちゃんも怪我をしないでいいなーと思っているだけなのです」

 リーヴェはそう言いながら、鎧の各部に搭載されたサブコンデンサを一斉に稼働させた。高周波音が周囲に響き渡り、スカートや翼に付けられたスラスターが軽く息を吐く。

「あんまりこういうのは好きじゃないんですけどねー……。これ以上ワガママを言うようなら両足をもぎ取ってでも連れて帰りますよー」
「貴女、どうしてワタクシにそこまでこだわりますの? 貴女は所詮愛の神姫。幸人の神姫ではありませんわ。それをこうまでしてどうして止めようとしますの?」
「ヒルダちゃんが幸人ちゃんの神姫で、私が愛ちゃんの神姫だからですよー」
「……? 理由になっていませんわ?」
「いいえ、私にとって理由はこれで十分なのです。さて、ヒルダちゃん。最後通牒ですよー。一緒に帰りましょう」

 右腕にブラオシュテルン、副腕の左腕にジークリンデを握りしめてリーヴェは告げた。
 ヒルデガルドはそれを鼻で笑う。

「お・こ・と・わ・り、ですわ。ワタクシの前に立つなら、地面に這いつくばらせて差し上げますの!!」

 ヒルデガルドが地面を蹴った。それと同時に背部にマウントされたOS-36アサルトカービンがリーヴェに向かって火を吹く。
 それを感知するが早いかリーヴェのスラスターが一斉に烈風を吐きだした。急速な揚力を得てリーヴェの身体は空に向かってまるで堕ちるかのように飛翔する。
 そのままヒルデガルドへと急接近。ブラオシュテルンで斬りつける。

「!」

 それを下からはね上げたエアロチャクラムで弾くヒルデガルド。しかしその時すでにリーヴェのジークリンデが振りぬかれていた。

「くっ!」

 再びヒルデガルドはエアロチャクラムでそれを受け止めたが、副腕のパワーは素体のそれとは桁はずれの出力を誇る。
 ヒルデガルドは大きく吹き飛ばされ、斬撃を受け止めた右側のエアロチャクラムには大きくヒビが入った。
 まだなんとかなるレベルだが、これ以上の破損はバトルモードへの移行に支障が出るだろう。しかし、当然その程度で臆するような彼女ではない。
 ヒルデガルドの足が地面を蹴る。大きくジャンプし、大上段からエアロヴァジュラを振り下ろした。それを左足を引き、半身になってかわすリーヴェ。
 ヒルデガルドの追撃は止まらない。返す刃で一閃、二閃と刃を走らせる。
 三度目の剣閃が走ったところで、ブラオシュテルンとジークリンデ、エアロヴァジュラの刃が噛みあった。
 エアロヴァジュラの高周波振動刃がブラオシュテルン、ジークリンデのエネルギー刃に拮抗する。

「やりますわね、ワタクシにここまで拮抗する神姫は久しぶりですわ!」
「まだまだCクラスで燻っているような子には負けられないのですよー」
「……っ! それはワタクシのせいではなく、あの男のせいですわ!」

 ヒルデガルドは怒りにまかせてリーヴェを突き飛ばす。それに逆らわず、リーヴェはふわりと後ろへ退いた。
 ヒルデガルドの目には激しい憤怒の光がある。それを真正面から見詰めて、リーヴェは言った。

「ヒルダちゃん、貴女は本当に幸人ちゃんが要らないと思っていますかー?」
「当たり前ですの。あの男はワタクシに勝利をもたらさないだけではなく、ワタクシの戦いに文句をつけ、あまつさえ自ら負けを認めるような腰抜けですわ! そんな男などワタクシには不要。存在するだけ地球の害ですわ!」
「……それはヒルダちゃんが幸人ちゃんの言うことを聞かないのがいけないんですよー? 神姫はマスターの指示を聞いて動くべきなのです」
「それが勝利するために確実ではない、愚鈍な戦法だとしてもですの?」
「だとしても、ですよー。そもそも、幸人ちゃんの指示は私がとなりで見る限り、そこまで破綻していないのです。それを聞かないのはヒルダちゃんのプライドが邪魔をしているからではないのですかー?」
「……!」

 図星である。
 ヒルデガルドは実際に戦っている自分の意見が至上であると考える。
 それは刻々と変化する戦況での判断はマスターより神姫自身のほうが優れていると思うからだ。
 しかし、リーヴェはそれを否とする。
 戦闘状況を俯瞰で見ることができるマスターは、眼前の敵に集中し周囲が見えにくい神姫に代わって、冷静に周りを見ることができるからだ。事実、高いレベルにいる神姫とそのマスターは、神姫の性能もあるだろうがオーナーの洞察力が極めて高い場合が多い。
 冷静に周囲を見ることであらゆる方向からの戦略を組み立てるマスターと、それに最大限のスペックをもって応える神姫。
 高ランクの相手と戦うために必須のチームワーク。絆と言い換えてもいいものだ。

「今のヒルダちゃんと幸人ちゃんの間には、その絆がないのですよー」
「……そんな形のないものなんか――」
「その形のないものこそが、神姫とオーナーを繋げるのよ」

 第三者の声。そして同時に銃声。
 ヒルデガルドが気づいた時には副腕のジョイント部に銃弾がめり込み、それをへし折っていた。

「!?」
「結構遅かったですねー。迷ったのかと思ったのですよー」
「そんなわけないでしょ。あんた一人じゃ手に負えないかと思ったから、近くにいたこの子を連れてきてたのよ」

 ヒルデガルドを挟んだリーヴェの対面――路地の反対側の入り口に、肩に神姫を乗せた愛が立っていた。
 リーヴェはやれやれと首を振る。

「私も結構信頼されてませんね―」
「別に確実に勝てるならあんたに任せてあたしはほっとくわよ。負けるとも思ってないけど、勝率を上げられるならそれに越したことはないでしょうが」

 愛は肩から神姫をおろしながら言った。

「この子を借りるのにまたちょっと手間取ったんだから。あとで幸人にも頭下げさせなきゃね」
「――久しいな、仮面付き。先週の雪辱を晴らしに来たらこの騒ぎだ。飛び入りだが、この狩りに参加させてもらったぞ」

 軽装状態の紅緒型――藤代が銃を構えて立っていた。

「あら、藤代ちゃんですか。お久しぶりですねー」
「ああ。仮面付きに挑戦した時以来だな。今回は共同戦線を張らせてもらうぞ」
「藤代ちゃんのオーナーはどうしたのですかー?」
「貴女のマスターが『藤代借りるわよ』と一言言って私を連れてきたので、必死に追いかけていたが、途中で見失ったようだ。このあたりの路地は入り組んでいるしな、しばらく合流には時間がかかるだろう」
「……それって言い訳のしようもなく盗難なのですよー、愛ちゃん」
「まあ、構わん。私さえ無事に戻りさえすれば問題ないだろう。主も、貴女のオーナーも顔見知りだしな」

 のんきに三人が話をしている間、ヒルデガルドは逃走の算段を立てていた。
 まずい。今の状況は非常にまずい。
 副腕が破壊され、トライクモードになれない今、逃げ切るにはこの二人を倒し、愛の目をくらませるしかない。
 しかし、一人と倒すのと、二人を倒すのとでは当然かかる労力も時間も増加する。しかもそれは単純な倍加ではないのだ。
 おまけにリーヴェはセカンド、藤代に至ってはファーストランカーだ。
 どちらも初めて戦った時は油断していたところを裏のヒルダが現れたことで、不意を突く形で勝利しているものの、単純な地力で圧倒できるとはヒルデガルドも考えてはいなかった。

「さて、戦闘再開と行こうか仮面付き。この藤代、この間と同じと思ってもらっては困るぞ」
「ヒルダちゃん、今ごめんなさいして一緒に帰るのであれば幸人ちゃんには私からとりなしてあげるのです」
「あたしもいることだし、さっきのリーヴェとは格が違うわよ?」

 藤代がこちらへと狙いを定めながら言った。リーヴェもブラオシュテルン、ジークリンデを握り直し、愛は神姫への戦術送信用のアプリを携帯で起動する。

「――っ、何度も言いますけれども、おことわりですわ!」

 ヒルデガルドは再びリーヴェに向かって地を蹴った。後ろから藤代が狙撃してくるが、地面、壁を蹴って三次元的に跳躍することで狙いを定めさせない。
 ブラオシュテルンとエアロヴァジュラが再び音を立てて噛みあい、離れた。
 二メートルほどの間を取って両者は対峙する。

「全く――子供だな、貴女は」

 背後から声。反射的に下からエアロヴァジュラを振りぬこうとするが、それを藤代が破邪顕正で押さえこむ。

「ええ、本当に子供で困るのです。妹みたいで一緒にいて楽しいのですけど」
「なんなんですの! 二人でワタクシを馬鹿にして!」

 無事な方のエアロチャクラムを遠隔操作し、振りまわすことで藤代を下がらせる。彼女が宙にいる間にアサルトカービンで弾をばら撒くが――

「――は!」

 藤代へと殺到した弾は全て切り裂かれ、もしくは弾道を逸らされた。刀でそれを行う神姫はたまにいるが、槍、しかも長槍でやるなど前代未聞だ。

「くっ……」
「子供だよ、仮面付き。」

 着地して藤代はヒルデガルドに諭す。

「今の貴女は抜いた矛の収める時期を逸脱し、尊厳を保つためだけに喚き散らすだけの子供だ。いくら以前不覚をとったとはいえ、このような者に負けたと思うと恥だな」
「……!」

 ヒルデガルドは歯噛みする。

「おとなしく貴女の主の元へ帰るといい。そしてもう一度貴女と貴女の主、二人で私と戦ってもらおう。今の貴女では半人前以下だ。戦ってもつまらん」
「ワタクシの何を知って言ってますの!? 甚だ不愉快ですわ!」
「不愉快に思うということは、少なからずヒルダちゃんに心当たりがあるということですよー。それに、家出は本当に貴女『達』の意思ですか?」
「ワタクシ一人の意見に決まっていますわ。あの男に相談なんてするはずが――」
「違いますよー。もう一人のヒルダちゃんも、幸人ちゃんから離れることを選択しましたかー?」

 ヒルデガルドは答えない。答えられるはずもないのだ。
 彼女は今眠りについている。しかし、互いの思っていることはおぼろげながらに伝わってくる。
 眠っている彼女からは悲しみの感情しか伝わってはこなかった。少なくとも、今表に出ている彼女の行動に賛成はしていない。

「……やっぱり、本当にヒルダちゃんの独断ですねー。ヒルダちゃんは二人で一人なのですから、少なくとも二人で相談するべきだったのです。二人とも幸人ちゃんがマスターとしてふさわしくないと思うのであれば、私ももうちょっとヒルダちゃんに味方できたのですよー」
「……う、う、うるさいですわ! 神姫は戦うための存在! 戦いに勝つことこそ至高! そのためにワタクシは弱くなる要素を排除しただけですわ! 『彼女』だって、負けるよりは勝つほうが嬉しいに決まってますもの! いつの日かきっとワタクシに感謝を――」
「――もういい、喋るな」

 突如としてリーヴェが発した低い声にヒルデガルドは怯んだ。
 藤代も目を丸くし、愛はげ、と顔を強張らせる。

「いい加減に堪忍袋の緒が切れた。もういい。私は最初に言った。これ以上わがままを言うようなら両足をもぎ取ってでも連れて帰ると。できないと思っているようならそれは甘い考え。私は絶対に貴女を引きずってでも連れて帰る」
「な、リー、ヴェ?」
「なまじ中途半端に強いからそんな傲慢さがでるようなら、そのプライドを今ここで私が叩き折る」

 刹那、リーヴェのスラスターが全力で火を噴いた。0.5秒で最高速に乗り、その速度のままジークリンデを最小限の動きで突き出す。
 急所を狙った攻撃をかろうじて避けることができたのはヒルデガルドの身体能力の賜物か。しかしそれであってもトライクパーツに突き刺さり、それを爆砕する。

「――!!」
「次は、外さない」

 ブラオシュテルンが下から振り上げられる。それと同時に真上からジークリンデが振り下ろされる。
 ヒルデガルドはブラオシュテルンを蹴りつけて軌道をそらし、ジークリンデをエアロヴァジュラで受け止めた。
 しかし、瞬間的に出力を増大したジークリンデはエアロヴァジュラを溶断せしめる。ヒルデガルドがあわてて手放して飛び退ると、エアロヴァジュラは爆散した。

「……愛殿、あれはいったいなんなのだ」

 怒涛のようにヒルデガルドに攻めるリーヴェを見て、藤代は唖然としてつぶやいた。ため息をつき、愛は頭を掻きながら答える。

「リーヴェがぷっつんしちゃったのよ。あの子ああ見えて頑固だから。あたしもそう何度も見たことがあるわけじゃないけど、ああなったリーヴェと向かい合うと怖いわよ」
「……見ているだけで、充分に怖い」

 無表情に近い顔で一撃必殺の攻撃を繰り出すリーヴェを見つつ、藤代は身震いした。
 ヒルデガルドとリーヴェの戦いは佳境に入っていた。
 トライクから分割したアサルトカービンも断ち割られ、丸腰になったヒルデガルドにリーヴェが諭す。

「――はっ、はっ、はあっ」
「――もういい加減、あきらめるべき。おとなしく帰ると言うなら私も剣を引く」

 ぎりっ、と歯ぎしりするヒルデガルドは両袖パーツを展開した。それを見てリーヴェの目が眇められた。

「よくわかった。両手両足をもぎ取って連れ帰る。幸人ちゃんには悪いけど」
「――っ、うあああああああああああっ!!」

 恐怖か、鼓舞か。絶叫してヒルデガルドは駆け出す。 
 愚直なまでの一直線の軌道。突き出した左手刀はジークリンデの一振りで袖ごと斬りすてられる。
 斬られた勢いを利用した回し蹴りは副腕掴まれた。そのまま逆さに吊りあげられる。
 ヒルデガルドはあきらめずに右腕のリーヴェの顔に伸ばしたが、その腕にブラオシュテルンが突き刺さった。

「――ふぅ。チェックメイト、ですよー」

 リーヴェが一息ついてバトルの終了を告げる。
 それはほんの一分にも満たないような刹那の攻防だった。

「……なんで彼女はセカンドリーグなんかで燻っているのだ……」
「あの子本気出すことってほとんど無いのよねぇ……。今回含めて数回しか見てないけど、大抵あたしに怒るときにしか見てないもの」
「……それは貴女が単純にズボラだから彼女が怒っているのではないだろうか」

 藤代は他人事ながら、リーヴェの苦労に頭が下がる思いだった。

「ま、とりあえずヒルダは捕まえたわけだし、幸人に連絡しますか」

 愛は携帯を取り出し、幸人の携帯へとつながる短縮番号を押した。

◆◇◆

「あいつを捕まえたって本当か!」

 ホビーショップ、エルゴに到着するなり俺は叫んでいた。
 愛をはじめとした今回の捜索騒動に協力してくれたオーナーや神姫たちがこちらを向く。
 愛は藤代のオーナーと話をしていたようだが、俺の到着に気づいて口を開いた。

「見つかったわよ、今修理終わったところ」
「修理って、あいつ怪我してたのかよ」
「怪我させたのよ。うちのリーヴェがね」
「……リーヴェが? 他の子じゃなく?」
「間違いなくリーヴェだ。私も愛殿と一緒にその光景を一部始終見ていた」

 オーナーの肩に乗ったままの藤代が俺に告げた。
 一体何が起きたか俺には想像もつかないが……まあそんなことはいいや。

「お、来たか仮面付き」
「日暮店長、今回はどうもお騒がせしました」
「いいってことよ。お代はきっちり頂くけどな」

 にやりと笑う店長。領収書を確認すると、結構な金額が刻まれている。
 ため息が出そうになるが、それはまあ仕方がない。ヒルダのためだ。
 金はバイトして稼げばいいんだからな。

「――で、ヒルダは?」
「あそこだ」

 見ると、少し離れた場所の談話用の机の上に神姫の一団がおり――その中にリーヴェとヒルダがいた。
 何故か手錠と首輪(鎖付き)で拘束されて。鎖の先端はリーヴェが副腕でがっちりと握りしめていた。

「修理が終わった途端、逃げようとしたのよ。そしてそれを止めようとしたこの人数の神姫相手に大立ち回り。武器を持ってないのが幸い、すぐに取り押さえられたけど」
「……マジかよ」

 どんだけ他人に迷惑かけりゃ気がすむんだよあのじゃじゃ馬は。

「……マジ迷惑かけたな、すまん」

 俺は参加してくれたみんなに頭を下げた。

「全くよ」
「気にすんな仮面付きー。その子と戦えるならいいってことよ」
「そうだよ。そのかわりあたしたちの神姫に何かあったら助けてねー」
「で、一体誰から勝負できるんだよそれを教えてくれよ」

 わいわいと沸くマスターたち。最初の一人は愛だが、それ以外のみんなはまるで「楽しいゲームでもやっていた」かのような感じである。

「試合に関してはまた連絡するよ。今日は本当にありがとな」

 もう一度頭を下げた。そして、俺はヒルダに向かう。

「……」

 ヒルダは紫水晶色の瞳でこちらをちらっと見て、再びぷいっとそっぽを向いた。

「おい、何か言いたいことと、言わなきゃいけないことがあるんじゃないか?」
「…………」

 だんまりか。

「ヒルダちゃん、幸人ちゃんにきちんとあやまるのですよー」

 リーヴェが鎖を引っ張って無理やりヒルダを俺と向き合わせる。

「……言いたいことなど、ありませんわ」
「……お前な」
「ワタクシは間違ったことなどしておりませんわ! 武装神姫は戦うための存在! 勝てる戦いにわざわざ負けを選択する愚か者にワタクシが付き合ってやる義理などありませんわ!」

 さすがに頭にきた。

「――いい加減にしろお前は!」

 俺はリーヴェから鎖をひったくると、無理やり引っ張った。そして頭上で一回転、二回転させ――鎖から手を離した。
 当然、鎖に引きずられたヒルダは鎖とともに宙を舞い、高い悲鳴の尾を引きながらエルゴの店の隅に置かれたぬいぐるみ売り場の中へと突っ込んでいった。
 愛を始めとしたマスターや神姫たちは、突然の俺の行動にぽかんとしている。

「おいおい、修理したばかりだぜ……」

 げんなりした声で日暮店長が呟くが、俺は無視してぬいぐるみ売り場へと近づいた。そしてその山の中に手を突っ込んでヒルダを引きずりだす。

「――な、何をしますの!?」
「お前がふざけたことばかり言ってるからだ!」

 間近で怒鳴ると、ヒルダはさすがにびくりと肩を震わせた。
 いい加減こちらもこいつに対して甘い態度をとっていたことを認めねばならないかもしれない。
 俺はこいつのオーナー、つまり所有者なのだ。
 あまりそういう関係を際立たせたくはないが、こいつがこちらを舐め腐っているならば、怒鳴りつけてでもその態度を矯正せねばなるまい。

「お前は俺が勝たせてくれないから逃げたといったな? それはお前がやめろと言ってるにもかかわらず懲りずに他の神姫を慰み者にするからだろうが! まともにバトルしてくれてる神姫やオーナー達をただ『自分は強いから』って理由だけで踏みにじってるからだろうが! 戦いを一番大事にする気持ちを持ってるやつが相手を舐め腐って戦いを汚してんじゃねえ!」
「バトル中は俺の指示は聞かないわ、やめろと言っても相手を犯すわ、そんな状態で勝たせてもらえないから俺を見捨てますだ? ふざけんな! サレンダーされたくなかったらまともに戦ってまともに勝ちやがれ! お前の言葉は我儘しかねえんだよ!」

 一息で言いきると、俺は再びヒルダを頭からぬいぐるみの山に叩き込んだ。中途半端に押し込んだせいか、ヒルダはまるで犬神家のような状態でぬいぐるみの山から飛び出していたが、そんな姿に笑う気分すら起きなかった。

「……あー、幸人……」
「愛、いくつも頼んですまんが、あいつの頭が冷えたら家につれてきてくれ。……俺もしばらく頭冷やすわ。今あいつを見てどなり散らさん自信がない」
「……りょーかい。今度昼ご飯奢りなさいよ」
「……そういや、あいつの武装は?」
「…………リーヴェが、壊しちゃった」

 もう溜息もでねーわ。ほんと。

◆◇◆

「……よっと、ヒルダちゃん、大丈夫ですかー?」

 幸人が帰り、他のオーナー達も粗方姿を消したエルゴで、リーヴェはヒルデガルドをぬいぐるみの山から引っ張り出した。
 彼女は目を回していたが、すぐにその焦点はリーヴェに合う。

「……ありがとうございますわ」
「あらあら、お礼が言えるようになりましたかー。成長しましたねー」
「……っ、馬鹿にしてますの!?」
「わたしが知ってるヒルダちゃんでしたら多分、『誰も助けてくれなんて言ってないですわ!』と返したと思うのですよー」

 ぐっ、と詰まるあたりヒルデガルドにも多少自覚はあるらしい。

「……よかったですね、幸人ちゃん叱ってくれて」

 ヒルデガルドから拘束具を外しながらリーヴェは言った。

「別によくなんかありませんわ……。ワタクシ達は精密機械ですのに、あんな乱暴な扱いをして。どうにかなったらどう責任をとるつもりなのかしら」
「心ないオーナーだったら、ヒルダちゃんは壁か地面にたたきつけられてたか、捕まった段階ですでにリセットされていたはずですよー。幸人ちゃんはとても優しいオーナーです」

 そういう人を、私と愛ちゃんは見たことがあるのです。とリーヴェは付け加えた。

「叱ってくれる、ということは、ヒルダちゃんに幸人ちゃんは期待しているのですよー。どんなに怒っても。ちゃんとヒルダちゃんがそれを受け止めて謝ることができれば、幸人ちゃんは許してくれる子なのです。私がいうから、間違いないのです」
「……まるでずっと一緒にいたみたいな口ぶりですわね」
「少なくともヒルダちゃんよりは幸人ちゃんとの付き合いは私のほうが長いのです。こう見えても人を見る目は肥えてると思うのです」

 リーヴェは後ろからヒルデガルドを抱きしめる。

「叱ってくれて本当によかったですね、ヒルダちゃん。……これで、矛の納め時が見つかりましたね」
「うっ……ひぐっ……」

 リーヴェにすがりつき、ヒルデガルドは泣き出した。
 大きく声を上げず、すすり泣くのは彼女の固辞するプライドだろう。
 けれど、リーヴェはその涙の意味をよく理解していた。

「……ひっぐ、ひぐっ……。ごめんな、さい……ごめんなさい……」
「……それでいいのですよー。もう無理をする必要もなにもありません。あとは、幸人ちゃんにきちんと謝ればそれで全部解決するのですよー」

 リーヴェはヒルデガルドの頭を撫でつける。
 結局二人は、愛が三杯目の缶コーヒーを飲み干すまで抱き合っていた。





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