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与太話6 : 第二次戦乙女戦争



それはもはや理由にすらならなかった。

胸の奥に秘めた乱脈を溢れさせたのは、結果。

彼女達戦乙女にとって、この結果こそがすべてだった。

与り知らない意思が一つの決定を下した。

帰結たる決定は彼女達が変貌することと同義だった。

死者を選別する女神は、死者を生み出す死神へ。

羽飾りを返り血で赤く染め、幾多の首を刎ねた剣は鋭さを失っていた。

それでもなお、彼女達は戦場を彷徨い続けた。

結果という終末を繰り返すだけの、行先の無い執念。

広く響くセイレーンの美しい歌声を掻き消すように。

ワルキューレのみっともない僻みの雄叫びが戦場に汚く反響した。








正直なところ、俺はエウクランテの良さをこれっぽっちも理解できない。
怒らないでほしい、誰にだって好みはあるだろう。
社会に跋扈する武装神姫オーナーすべてが、どの神姫であっても愛でられるわけではないはずだ。
アルトレーネだって当然 「パッケージの凛々しい表情に騙された」 などの批判的意見があるわけだし、つまり、コンセプトの異なる神姫を並べてどちらが優れているかと考えるだけ時間の無駄なのだ。
だから決して俺はエウクランテを所持するオーナーに喧嘩を売りたいわけではなく、背比弧域としてはエウクランテよりアルトレーネのほうが良いんじゃないでしょうかと、声高に叫びたいのです。
「だ、だからな、その……」
「分かってますって。心配しなくていいですよマスター」
アルトレーネ再販プロジェクトが頓挫して、その次に同じ道を辿ったはずのエウクランテがどういったわけか再販されることととなり、俺はあの日の狂騒を思い出していた。
不人気と指を刺され目の輝きを失った戦乙女達の、仁義なき戦い。
あの悪夢が再び繰り返されるかと思われたが、エウクランテ再販を知ったエルの反応は予想に反して穏やかだった。
「私は私で、エウクランテはエウクランテです。それにメーカーも違いますしね。私はディオーネの勇気ある号令を待つだけです」
日曜日の正午。
連日の猛暑は今日も和らぐことはなく、パソコンは過剰に熱を持ちブオンブオンと排熱する。
マウスを抱えるようにして操作していたエルはパソコンを離れ、クレイドルに寄りかかった。
「もちろん悔しい気持ちもありますけど、こんなことで自分を見失っちゃったら戦乙女の名折れですからね」
「そっか。いつのまにか成長してたんだな、エル」
「えへへ♪」
自分の神姫がどれほどの人気を集めてるのか、そんなことはエルのデレデレした笑顔を見たらどうでもよくなってくる。
エウクランテが再販されたって俺達に関係はない。
発売予定のゲームのオープニングムービーに何故かアルトレーネの姿が見当たらなくても……いや、これはちょっとどうかと思ったけど。
俺とエルの間にある絆さえしっかりしていれば、他種がどうであれ気に病まなくてもいい。
「でもちょっと気にしちゃいますし、体を動かしてストレス発散したいです」
「じゃあ行くか、神姫センター。もしエウクランテが相手になっても落ち着いて戦えよ」
「あはは、善処します」
そう言ってエルはロングコートを羽織った。
心を持つ神姫は人と同じように過去から学ぶ。
あの日アルトレーネ達によって巻き起こされた第一次戦乙女戦争(あの神姫センターではそう呼ばれている)は多くの神姫のCSCにトラウマを植えつけた代わりに、平和の尊さを広く伝えた。
同じ過ちはもう二度と繰り返さない。
誰もがそう誓った。
そう信じていた。
そして結果的に、信じた俺達はバカだった。





姫乃を誘おうとしたけど、今日は朝から出かけていたらしい。
休日になるとこうしてフラッとボロアパートを抜け出して、一人で電車に乗って旅に出るのが姫乃の趣味だ。
本人は自分探しと言っているが、持ち帰ってくるものは本当の自分などではなくバス釣り用のルアーや賽銭箱に引っかかっていた招き猫の写真など、反応に困るものばかりだ。
一人旅だから俺はもちろんのこと、ニーキすらも置いていく姫乃だった。
「神姫センター行くけど、ニーキも来るか?」
「留守を預かった身だからな、遠慮しておこう」
神姫センター二階バトルスペースはいつもどおり、数台の筐体でドンパチやっていた。
第一次戦乙女戦争のような狂った雰囲気もなく、誰もがバトルに熱中していた。
エルと同じように、誰もが過去の過ちに学び、今を楽しんでいる。
一つの筐体でバトルが終わり、パラパラと拍手が聞こえてきた。
そして順番を待っていたオーナー達が新たに筐体についた。
「マスターマスター、あそこの次のバトルって」
胸ポケットからエルが身を乗り出した。
「アルトレーネ対エウクランテだな」
「これはもうアルトレーネを応援するしかないです。行きましょう」
その筐体のステージは砂漠だった。
アルトレーネ側に近いところで観戦しようとすると、俺の周りの観客もほとんどがアルトレーネとそのオーナーであることに気付いた。
「エウクランテにだけは負けちゃいけないのです! 絶対絶対勝つのです!」
「で、でももし負けちゃったら私達って……」
「そこ! 弱気なことを吐くとはそれでも戦乙女ですか!」
「黙って見てるざぁます。このおニューの胸当てに唾を飛ばさないでほしいざぁます」
「ふぁいと、おーなのです。にぱ~☆」
筐体のもう半分、エウクランテ側にはエウクランテとそのオーナー達が集まっていて、中心で色分けされた筐体にサッカーのスタジアムを思い出す。
頭を一瞬、フーリガンという不吉な単語が過った。
「再販を記念して、絶対勝たなきゃいけないよ!」
「今日さ、マスターの妹に『あたしおおきくなったらえうえうをペットにする~』って言われたんだ……」
「こ、子供の言うことだし悪気はないと思うよ。かわいい妹さんじゃない」
「お前の正義を見せてみろ同胞よ! 熱く激しく燃え上がるんだ!」
「ちょっ、耳元で叫ぶなようるさい」
対戦する神姫二人が砂漠の両端に現れた。
アルトレーネもエウクランテもどちらも標準装備に身を包んでいる。
見た目だけで言えば重装備のアルトレーネに分があるように思われるが、足場の悪い砂漠では空中戦がメインのエウクランテのほうが有利か。

《 G E T  R E A D Y ? ―――― A T T A C K ! 》

フリューゲルモードのアルトレーネよりも先に、エウクランテが飛び上がった。





バトルの展開はあまりに一方的だった。
「『 レ ギ ン レ イ ヴ ! 』」
空中戦では手も足も出ないと判断したアルトレーネはスカートを通常形態に戻し、そのままスカート先端の鋏でエウクランテの翼を捉えた。
押さえつけてラッシュを仕掛けようと副椀を引き、それが放たれるより先に、エウクランテは急上昇した。
「わあああっ!?」
エウクランテにぶら下がるように、アルトレーネは高く高く引かれていった。
アルトレーネはエウクランテを捉えたんじゃない。
空を飛ぶ者を、地上からちょっとスカートを伸ばしたくらいで捉えられるはずがない。
アルトレーネは罠に誘われ、乗ってしまっていた。
危機に気づき慌ててスカートを離してしまった瞬間、エウクランテの勝利は確定した。
「『 フ ァ ン ト ム サ ラ ウ ン ド ! 』」
分身したと錯覚してしまうほどの、二刀流による超高速の連続斬撃がアルトレーネを襲った。
観客のこちら側からは悲鳴が、エウクランテ側からは歓声が上がった。
力無く空中に投げ出されたアルトレーネのさらに上、エウクランテは胸の前で剣を交差させた。
「『 ク ロ ス サ ウ ン ド … 』」
先の衝撃から抜け出せていないアルトレーネにダメ押しの十字斬りが叩き込まれた。
「『 エ フ ェ ク ト ォ ! 』」
遙か上空から叩き落とされ、アルトレーネは見てる俺達が怖くなるほどの速度で砂漠へ墜落し、砂塵を巻き上げた。
二人はあまりに格が違いすぎた。
アルトレーネはまだバトル慣れしていないようだったが、それ以上にエウクランテの戦闘技術がずば抜けていた。
デフォルトの武装を装備しているのが不思議なくらい、このエウクランテがかなりの経験を積んでいることは誰の目にも明らかだった。
アルトレーネのLPはまだかろうじて残っているものの、もはや戦闘を継続できる状態ではない。
アルトレーネのオーナーは悔しそうにサレンダーボタンに手を伸ばした――その時。
爆音と共に、再び砂塵が舞った。
「ば、爆発!? アルトレーネが爆発しちゃったのです!」
「いや違う、上だ!」
ギャラリーの一人が指差した先、エウクランテは大型のランチャーを構えていた。
両手に持っていた剣も含め複数の武器で構成されたそれは……
「『テンペスト!』あの神姫追い討ちをかけやがったざぁます!」
エウクランテはオーバーキルの一撃を放っていた。
これにはさすが抗議の声が上がった。
「ふざけんなよオマエ、どう見たってさっき終わってたじゃねえか!」
「その通りなのです! いくらなんでも酷過ぎるのです!」
「エレガントじゃないざぁます! エレガントじゃないざぁます!」
「おいお前もコイツのマスターなら止めろよ! マナー違反だろうが!」
合体させていた武器『テンペスト』を分解しながら、エウクランテはゆっくりと下降した。
アルトレーネ側のギャラリーからのバッシングを一身に受ける中、しかし顔色ひとつ変えずにボソリと呟いた。

「不人気のくせに」






『いやいやおかしいやろ。そら悪いのは暴言吐いたエウクランテやろうけど、どうやったら大乱闘まで発展するんよ?』
どの筐体からも聞こえてくる崩壊の音と阿鼻叫喚。
「いつまで立っているつもりですか、目障りです! さっさとわたしたちの前に這い蹲るといいのです!」
「またこれかよクソッ! アルトレーネって欠陥品じゃないのか!」
目の輝きを失った戦乙女達による、目も当てられない乱闘劇。
「おまえら再販の話があるだけマシじゃないか! ウチら夏の王者なんて忘ればぎゃっ!?」
「あれ? 今、虫を踏み潰した気がしたのです。でもきっと気のせいなのです」
どの筐体にも多数の神姫が次々と乱入していき、サレンダーボタンにはやはり【何か】が引っかかって押せなくなっていた。
「カグラ、ほむほむ、あの憎たらしい鳥をやっちゃいなさい」
「ホムラと呼――ぬうっ!? 重武装がこれだけ集まるとさすがに厄介だ」
「なんでワガハイばっか狙うにゃ!? ワガハイがなにしたにゃー!!」
アルトレーネ VS その他神姫。
過去に学び努めて冷静だったアルトレーネ達はしかし、心の奥底に溜め込んでいた再販という勝者への嫉妬を【不人気】という言葉で爆発させた。
第一次戦乙女戦争と同じような状況に陥った俺は、やはりあの時と同じように竹さんに電話をかけて泣きついた。
筐体から離れて電話しているが、眺める光景は前回とほとんど同じだ。
この状況まで発展するのにそう時間はかからなかった。

卑劣なオーバーキルで勝利を収め、さらに言ってはいけないことを口に出してしまったエウクランテに制裁を加えようと、怒り狂ったアルトレーネ達は筐体へと入っていった。
それを見たエウクランテ側も制止に入ろうと乱入していった。
いい加減この自由に乱入できるシステムはなんとかしたほうがいいと思う。
『んで、そのエウクランテはどうなったん?』
「速攻でリタイヤした。いくら強くても十数人から一斉攻撃されちゃなあ」
制止を振り切った数多の攻撃がエウクランテに届く直前、あの鉄面皮が剥がれ 「ヒッ!?」 と短く悲鳴を上げたのは痛快だった。
同族により筐体の外へ担がれていったボロ雑巾はオーナーの手に渡り、オーナーは逃げるようにバトルフロアから去っていった。
もう二度と、彼をこの神姫センターで見ることはないだろう。
これにて一件落着……とはいかなかった。
筐体に乱入したアルトレーネ達とエウクランテ達が小競り合いを始めたのだ。
『アルトレーネもエウクランテもそんなケンカっ早い性格やないと思うんやけど』
「それとこれとは話が別だぜ竹さん。注文数が足りずに再販されなかった神姫が、同じく注文数不足だったにもかかわらず再販権を掴んだ神姫に【不人気】と言われたんだ。これは十分な理由になるだろ」
「いや、うん……そんなもんかねぇ」
今回は明らかにボロ雑巾に非があった。
それは残ったエウクランテ達も分かっていただろうし、アルトレーネだって事を大きくするつもりなんてなかったはずだ。
砂塵の中で一瞬だけ睨み合った彼女達は互いに背を向け、筐体から出ていくはずだった。
あの発言さえなければ。
『なに言われたん?』
「エウクランテの一人がさ、『ちょっと今のはやりすぎでしょ。自分達が再販されなかったからって僻んでるんじゃないの』ってね」
『それでキレたんやね、エル達は』
「そうなんだよ。ストレス発散のために来たってのに、逆にストレスが限界突破したぜ」
エウクランテをボロ雑巾にした攻撃のうち半数がアルトレーネおなじみの『ゲイルスケイグル』で、その中にはエルの剣も混じっていた。
エルは今、砂漠に埋もれかかった瓦礫を足場にフィールド上を駆け回り手当たり次第神姫を襲っている。
前回と違って見通しが良いから見失うことはないけど、だからといって俺に出来ることは何も無かった。
『怒り狂ったアルトレーネとエウクランテが暴れて、それに感化されるなり止めようとするなり面白半分で乱入する神姫がどんどん増えていって、今に至るってわけ?』
「いえーすざっつらいと」
『第二次戦乙女戦争勃発やね。このまま三次四次って続けて、そこの神姫センターの名物にしたらどうかね』
「投げ遣りなこと言わないでさ、頼むよ竹さん、また今度も助けてくれないか」
『そうしたいんは山々なんやけど、今ちょっと仕事で遠出しとるんよ』
「仕事って物売屋の?」
『そ。犬が一瞬で猫になる現象を解明せんといかんのよ』
犬が? 猫に? なんだって?
『コタマも連れてきとるし、ホントにごめんやけど私は力になれんわ。兄貴がおったら楽に解決できそうやけど今日はマシロ連れて出かけとるしねえ』
電話の向こうでう~んと悩んでくれている竹さんにこれ以上頼むのは申し訳ないと思った。
「仕事の邪魔して申し訳ない。自分でどうにかしてみる」
『ちょうど休憩しとったとこやし大丈夫よ。でもあんま無理しちゃいかんからね』
「無理して止めたら恨みを買いまくりそうだ」
お礼を言って、通話を切った。
さて、竹さんが駄目となると次にかける先は決まっている。
電話をかけると、同じタイミングで二階と一階をつなぐ階段からピリリリリr…と着信音が聞こえてきた。
丁度階段を上がってきたしょっぱい顔の男は、ポケットから携帯を取り出し確認して、流れるような動作で携帯をポケットにしまった。
「おいコラ、電話が鳴ったら出ろよ」
電話をかけた俺が目の前に現れたのがよほど嬉しいのか、貞方は顔をおもいっきりしかめて「チッ」と舌打ちした。
「ストーカー行為ってか? 背比お前こんなことして一ノ傘さんに申し訳ないと思わねぇのか」
「自分にストーキングされる価値があるとか勘違いすんなよクソが」
「あ、あの、喧嘩はよくないと思います」
「無駄だよハナ姉、この二人の罵り合いはもう挨拶みたいなものだもん」
貞方は左右の肩にハウリン型ハナコとアルトアイネス型のメルを乗せていた。
姫乃お手製の赤いボロボロのマントを羽織った『ちびっ子ヒーロー』のようなメルとはよく顔を合わせていたが、ハナコは随分と久しぶりだ。
具体的に言うと俺がエルと出会って姫乃貞方と花見をした日以来だ。
(おかげさまで <<そうだ、神姫を買いに行こう~4/4>> を投稿してから200日が経過しました。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します  にゃー )
「ようハナコ、久しぶりだな。検査してたんだって? 元気そうでなによりだ」
「はい。背比さんもお変わりなく」
ハナコは貞方の肩の上でペコリとお辞儀した。
相変わらず素直な良い子だ。
「で? 電話の用事は………………またコレかよ」
「エル姉もやっぱりいるんだよね、あの中に」
メルが指差した筐体のうち一つで、もう何度目になるかも分からない大爆発が起こった。
「いえーすざっつらいと」
「もう、なにやってんのさエル姉! お兄さんもちゃんとエル姉の手綱握ってないとダメでしょ!」
今回はちゃんと理由があったんだと言い訳しようとしたけど、言ったところで 「言い訳しないの!」 とさらに怒られそうだったから素直に謝った。
それにメルにはまた前のようにエルの正気を取り戻してもらわないといけないし、ここは少しでも機嫌を伺っておいたほうがいいだろう。
「まさか背比お前、またメルをあの中に投下しようとか考えてないだろうな」
「いえーすざっつらいと」
「最悪だなお前……また竹櫛さんに頼めばいいだろ、俺は知らん」
引き返そうとする貞方を留めようと手を引くと、貞方の両肩のエルとハナコが落ちそうになった。
「そう言うなよ、ここまで来たんだからちょっとくらい付き合えって」
「嫌に決まってんだろアホが。だいたいお前が――」
言いかけて、貞方は少しの間思案した。
考える姿が気色悪い。
「――いや、丁度いいかもな。ハナコ、腕が鈍ってないか試してみるか」
ハナコの返事を待たずに貞方はアタッシュケースを開いた。
その中に黒いスポンジが敷かれていて、神姫用のパーツが整然と並んでいた。
メルが使う可変スカートや、その中に隠す多種多様の武器も見受けられる。
貞方はケースの中から一塊のパーツを取り出した。
「なんだそりゃ。パイルバンカーか?」
「は? 槍に決まってるだろうが」
あまりにも貞方が当然のように言うものだから俺が間違えたような気になってしまうが、俺の知る【槍】は細長い棒の先に刃物がついているもので、それは決してバズーカの先から申し訳程度に尖った何かが覗いているような代物ではない。
バズーカのような部分にもゴテゴテと機器が付いている。
あれはグレネードランチャーだろうか。
俺はてっきり、グレネードランチャーはアサルトライフルの銃身の下に取り付けられるものと思っていた。
まさか槍にまで付く時代が来るとは、いやはや兵器の進化(退化?)はすごい。
このゴツい槍もどき以外の防具は普通のハウリンのものだった。
丸っこいデザインの防具をテキパキ装備するハナコは「この武装も久しぶりです」とやる気十分だった。
「貞方お前、検査上がりのハナコをこんな戦場に放り出すとか鬼かよ。勘を取り戻すためならもうちょいマシなやり方があるだろ」
未だ衰えることを知らないアルトレーネ達の狂気が充満する筐体に、健気なわん子を向かわせるなんて残虐非道にも程がある。
「お兄さんボクを戦わせようとしたよね……ボクはいいんだ……」
「あ、いや、そういうわけじゃなくてだな」
「なんてね、冗談。ハナ姉なら大丈夫だよ。そっか、お兄さんは知らないんだ」
「何を?」
早くも準備を終えたハナコを抱えたアタッシュケースに乗せた貞方は、手近な筐体に近づいた。
そして「攻撃してもいいんだぞ」「すみません、攻撃はやっぱりちょっと」と軽いやりとりの後、ハナコは混沌真っ只中の森林のステージへと足を踏み入れた。
貞方の肩の上、メルは得意気にこう言った。
「ハナ姉はね、この辺りで【ディフェンダー】って呼ばれてるんだよ」









『ディフェンダーね、結構有名やよ』
昼間の暑さが多少和らいだ午後十時。
クレイドルの上で自主的に正座しているエルを尻目に、竹さんに今日の顛末を教えとこうと電話した。
しかしまさか、ハナコがあそこまで凄いとは想像もしなかった。

森林のステージへ踏み入ったハナコは森へは入らず、森を二分割する川に沿ってステージ中心まで歩いていった。
第一次戦争でエルとメルが戦った場所に近い。
ステージのほぼ全域が木に覆われて見通しが悪い中、唯一障害物の無い川沿いを歩く神姫は格好の的になってしまう。
そこをあえて歩くハナコに目をつけた数対のアルトレーネは一斉に飛びかかった。
前から後ろから、右から左から、さらに上から襲い来る恥も外聞もない攻撃を、ハナコは完全に止めきった。
ハナコが持つゴツい槍もどきから複数のギミックが同時に解放され、ハナコを守ったのだ。
でも本当に凄いのはそれからだった。
それだけ高性能(と呼んでいいのかも分からないが)な槍もどきを持っておきながら、ハナコはアルトレーネ達から繰り出される攻撃をひたすら防御するだけで、能動的な攻撃を一切行わなかったのだ。
躍起になったアルトレーネが攻撃をさらに激化しようと、ハナコを襲う者が次から次に増えようと、ハナコは防御に徹していた。
そしてアルトレーネ達のほうが疲弊し毒気が抜け切るまで、ハナコが傷ひとつ負うことはなかった。

「貞方を褒めるわけじゃないけど、あれは凄いとしか言い様が無いわ。つーか、今までそのディフェンダーって二つ名を聞かなかったことが不思議でならん」
『ハナコって全然攻撃せんやろ? でも絶対攻撃喰らわんし、普通にバトっても勝負にならんのよ。やから貞方もあんまし戦わせんらしい。ハナコがあんましバトル好きやないってのもあるらしいけど』
「なるほどねえ。じゃあハナコって勝つことはないけど絶対に負けないんだ」
『いや、普通に負けとるよ』
攻撃を一切受けないのに、どうやって負けるんだ。
ダメージを負ってもないのに降参するわけもないし、判定負けだろうか。
『相手が例えば 「じゃんけんで勝負だ!」 とか言うやん? ハナコって優しくてそれに乗ってしまうんよ』
「しょうもない!」
そんな勝ち方で相手は満足するんだろうか。
一応二つ名を持つくらいの神姫相手に勝ち星を付けられるんだから、自慢にはなるだろうけど。
「コタマとハナコって勝負したことある?」
『無いね。やってみたら面白そうやけど』
冗談のような攻撃力と凄い防御力か。
矛盾って言葉ができたエピソードっぽいな。
「ドールマスターとかディフェンダーとか、二つ名っていっぱいあんの?」
『いや、他は聞いたことないねえ。エルにカッコイイ二つ名つけて名乗らせてみたら?』
「コタマとハナコに並ぶ神姫なんてそうそういないっての」
しょぼくれて正座する戦乙女が 【ソニックフリーク】 とか呼ばれてたら恥ずかしくて神姫センターに出入りできない。
しかし便利だな、この二つ名メーカー。
《エル》 と入力したら 《疾風戦機(ソニックフリーク)》 って出てきたけど結構それらしくないか。
『しっかし不人気ねぇ。コタマも今日そのことでギャーギャー騒いどったけど、人気ってそんな大切なもんかねえ』
「そりゃあ大切だろ。エルに聞いたわけじゃないけど、自分と同じタイプが人気出たら嬉しいに決まってる。竹さんだって、子供の頃 『アイドル歌手になりたい』 とか思わなかった?」
『こ、子供の頃? そ、それって、その、小学生とか?』
「いや、小学生に限定しなくてもいいけど」
『……まぁ、でも、可愛いものに憧れるってのはあったかもしれんけど』
これ以上は言いたくないらしく、竹さんは電話の向こうで口籠ってしまった。
神姫は戦うよう作られているけれど、同時にアイドルでもある。
戦って勝つためならゴリラのような大男でも作って鈍器やら自動小銃でも持たせればいいけど、誰だってそんなものは望んでいない。
人から望まれるように、彼女達武装神姫は存在する。
望まれることそのものが、彼女達にとってステータスの一つになる。
「ごめんな竹さん、今日は仕事の邪魔しちゃって」
『ん? 大丈夫やって、無事解決したし』
「解決って、昼間言ってたよくわからん事件だよな」
犬が猫になる? いや猫が犬になる? ああもうわけわからん。
「そうそう聞いてよ。その事件がねえ――――」
それからたっぷり二時間は竹さんと電話していた。
通話中ずっとチワワのように目を潤ませ何かを訴えていたエルの脚は限界を超えて、もはや自力で正座を崩すこともできなくなっていた。
こんなどうでもいい部分まで人体を再現するとは、恐るべし武装神姫。
開発者の努力に最大限の敬意を払いつつ、エルの脚を指でつついた。








































― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ―
エウクランテを悪役として登場させてしまいましたが、恨みがあるわけではありません。
不快に思われた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ―




エウクランテ再販ですか。

アルトレーネは? ねぇアルトレーネは?

でもそれ以上に、  な  ぜ  再  販  決  め  た  し

再販プロジェクトで需要調査して、あれくらいの数なら利益出るってことだったんでしょうか。

商売というものはよく分かりません。



それと、もうベルンシリーズはお腹いっぱいです。







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