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 第九話 「ボヌールからの挑戦状 後編」




 高速道路を二体の神姫が駆け抜ける。
 「ハハハ! 無駄だよお嬢さん!」
 片や車の上を飛び移り、片や車の間を縫って走る。
 「くっ……!」
 車の屋根から屋根へ飛び移る雅の後を、ソレイユの放ったボウガンの弾痕が追ってゆく。
 「しつこい……!」
 「落ち着け!」
 雅をオペレートしている間にも、
 「きゃあっ!」
 「それそれです~」
 川岸で戦っているメリーを見るのも手一杯になってしまう。
 やはり、二体の神姫を同時に指揮するのは無理がある。だが、アンリは全くタイプの違う神姫を使っているのだ。もしや、本当に……。
 「……メリー! 一旦離脱だ!」
 「ダメですっ! 追いつかれる!」
 通常のマリーセレスの武装に加え、アルトアイネスのレッグパーツを装備したノワールは、機動力が上がっていた。
 それに加え、マリーセレス装備の高い防御力でこちらの攻撃をことごとく弾く。
 「それそれそれそれ! あっははははは!」
 後退しようとするメリーに対して、執拗に触手と短剣の連打を加えてくる。この距離で重くて隙のあるスプーンを振り回すことは出来ず、素手で対応しなければならない。
 「あはは! 楽しいですう!」
 「く……ああ!」
 一方、ソレイユも仕掛けてくる。
 急加速すると前方の雅との距離を一気に詰め、二本のナイフで斬りかかる。
 「!」
 だが、雅の反応も速い。それよりも速く振り返ると、右手の箸でナイフを受け止める。
 「ふっ……流石、といったところかな?」
 ギチギチと音を立ててぶつかり合う二人。少しずつ雅が押されていく。
 「調子に……乗るんじゃないわよっ!」
 しかし、雅が巴投げの要領で相手を投げ飛ばすと、ソレイユは意外と簡単に吹っ飛んだ。
 「くおっ……!やるね」
 前のバスに着地して体勢を立て直したソレイユは、また突っ込んでくる。
 「……? ……夏叫乱!」
 一瞬訝しげな顔をした雅だったが、すぐに姿勢を変えると右腿の長筒を構えて、撃つ。
 砲弾が看板に当たり、爆風が吹き荒れるが、ソレイユは寸前でかわして無傷。
 「はは、僕の武装の前では無駄さ! 僕に傷を付けたこと、後悔させてやる!」
 そして、メリーの方は。
 「てやあっ!」
 至近距離で蹴りを加えたが、相手のスカートに防がれた。
 「おっと! ですう」
 「くっ!」
 メリーの右足を触手で捕らえると、そのまま逆さ吊りの状態にする。
 「ああっ!」
 「むふふ~。このまま遊んであげたいのもやまやまですけどー、さっさと終わりにしてやるです」
 言うなりノワールはメリーをスイングして投げ上げると、触手のユニットを展開し、内部の砲口を露わにした。
 「まずっ……!」


 「バッカル……コーン!」


 砲口から大量のエネルギー弾が放たれる。
 「きゃあああっ! ……あ……」
 逃げ場の無い空中でまともに攻撃を浴びたメリーは、体中からぶすぶすと煙を噴き上げながら、川に落下した。
 ざぶんと飛沫を上げて、メリーの姿が見えなくなる。
 「ふふ~ん。ボロ雑巾にしてやったです。さーって、ソレイユはどうしてるですかね」



 「オメガスターロォードッ!」
 ソレイユも大技を使ってきた。雷光を身に纏い、ブースターを吹かして高速接近する。
 「うわっちち!」
 間一髪で身をひねってそれをかわす雅。
 このバトルの前までに調整は充分やったつもりだったが、アンリの神姫達はそれに匹敵しようかというところだ。これが新型の性能なのか。
 「フフ、どうデスか、ワタシの神姫は?」
 筐体の向こう側でにやついているアンリがそう呼びかけてきた。
 「アナタの旧型神姫デハ、O.P.Fに注文したワタシの完璧な神姫達には勝てまセン。何事も全てを決めるノハ、素質、そして才能なのデス」
 「……にゃろう」
 くそっ。考えろ。次の手を打て。
 だが、どうする、どうする、と頭が叫び、焦りが思考力を奪う。
 ギャラリーも、見ろ、彼ってあの『双姫主』じゃないか?などと話している。
 実際、本当にそうじゃないかと思ってしまう。
 悔しいが、一瞬だけ俺の中で勝つ望みがぐらついた。
 外部モニターの前で固唾を呑んで見守る健五やギャラリー。その視線の先にいる雅の動きに少しずつ余裕が無くなっていく。
 一方で、アンリや神姫達には焦りが全く見られない。涼しい顔で戦闘を続けている。
 このままだと、そのうちノワールがやってきて挟み撃ちに……と思ったところである事が目に付いた。


 何故、アンリはあんなにも落ち着いていられる?


 あいつが本当に『双姫主』なのだとしたら、二体の神姫に指示を送るのは訳も無いだろうが、それでも今のアンリはむしろ不自然なくらいに……。
 ふと、ソレイユの姿が目に入った。
 アーンヴァルの大容量ブースターを生かした加速で急接近し、すれ違いざまに切りつける。
 そういや、直也が言ってたプロキシマの動きって……。それに、ノワールの方は……。
 まさか。いや、それは。
 落ち着くのは、俺の方か。
 俺はインカムをつまむと、雅に通信と、サイドボードからの装備を送る。煙玉だ。
 「雅、一旦離脱してメリーと合流しろ。そこから北に二百だ」
 「え!? でもこいつは」
 「いいから行け。体勢を立て直すぞ」
 「? ……分かったわよ」
 こちらに向かってくるソレイユの目の前でぼふん、と煙玉を地面に投げつけ、退却する。
 白煙が晴れると、雅の姿は無かった。
 「むっ……」






 メリーは川下まで流されていた。
 緑色に濁った水面に、白と青のボディが浮かんでいる。
 「雅、引き上げられそうか?」
 「うん」
 メリーが引っかかっている丸太を箸で引き寄せ、脇を抱えて助け起こす。
 砂利の上に寝かせられたメリーは、少しして目を覚ました。
 「……ぐ、げほっ……えほっ、えほっ」
 「気がついたか?」
 「あ、アキラさん……と」
 目を細めて、隣の雅を睨むメリー。
 「……よりによってあなたに助けられるなんて、不覚ですね」
 「何よ? せっかく助けたのにそれ?」
 「おい、二人とも止せ。今はそんな場合じゃねえ」
 「アキラさん?」
 「良く聞け。確証はねえが、もしかしたら勝つ方法が分かったかもしれねえんだ」
 「ホント?」
 「だがな、それにはお前ら二人が協力しなきゃならねえ。やってくれるか?」
 俺の言葉に二人が顔を見合わせる。
 「……勝つ方法、って?」
 「それはな……」





 「……ってわけだ」
 「え、それじゃあ……始めから?」
 「ああ、そうだったんだよ。だからその後は応えてやれ。あいつらの望み通りに」
 にやっと笑う俺。
 対して二人は、剣呑な目つきでにらみ合った。
 「……私と……雅さんが?」
 「ああ。二人でやるんだ」
 すると、すっと雅が立ち上がった。
 「手ぇ貸しなさいよ、メリー」
 「……」
 「あんな奴らに負けられないでしょ。ほら」
 「嫌です。あなたと手を組むのは」
 「まだ駄々こねて……!」
 「でも」
 その瞳に、強い光を。


 「負けるのはもっと嫌です」


 ほんの、本当にほんの少しだけ、メリーの口元が緩んだ。
 「これで貸し借り無しですよ、先輩」
 「……ふん」
 雅は普段の気むずかしい顔で、だけどがっしりとメリーの手を取る。
 「こんなのも久しぶりかしらね……。じゃあ、行くわよ」
 「はい」
 二人が強い想いを携え、そして駆けてゆく。



 ※※※




 健五ははらはらしながらモニターを見ていた。
 どうしたんだろう。輝さんは何をしてるんだ?
 それに、アンリさんも様子が変だ。
 どうして……。どうしてさっきからアンリさんはほとんど何もしてないんだ?
 でも、この二人の試合は、見ていて惹かれるものがある。
 その時、画面の中で雅とメリーが動いた。
 ああ、負けないで、輝さん。



 ※※※







 交差点の傍で、ソレイユは苛立っていた。
 顔に傷を付けられた上に、自慢の技までかわされた。
 何故だ。自分は、マスターの期待を背負った、完璧なカスタムが施された新型のはずだ。過去の神姫など寄せ付けない力があるはずだ。
 許せない。
 いくら美しいものであっても、もう一人のスプーン型の方も、彼女を仕留め損ねたノワール共々、僕の誇りを傷つけるものは全て。
 その時、レーダーに反応があった。
 振り返ると、太陽を背にして、小さな影が飛びかかってくる。
 来たね!」
 ライフルを構え、狙いを付ける。空中なら避けられまい。
 そうだ。最後に勝つのは才能だ。それを分からせてやる。
 「くらえ!」
 だが、放った弾丸は、その小さな体に不釣り合いな大きさのスプーンに弾かれた。
 「なっ!?」


 「あなたの相手は私です」


 光量を調節した瞳が捉えたのは、白と青のスプーン型だった。
 振り下ろされるスプーンを前に防御姿勢をとるが、加速によって増したその重みにあっけなく吹き飛ばされる。すさまじい破壊力だ。
 「ぐおっ!」
 大きく飛ばされたソレイユは足下から火花を散らしながらも、ぎりぎり壁際で踏みとどまった。
 しかし青い神姫はその隙を逃さず、スプーンを引きずるようにしながら恐るべき速度で迫る。
 慌ててナイフを取り出すも、繰り出されるスプーンの質量を受け止めることは出来ない。
 「ぐあああっ!」
 容赦の無い青い神姫はそのまま、ソレイユの背に文字通り馬乗りになった。
 「これが……鍵!」
 そして、スプーンの先端をパージして現れたフォークを、ソレイユの背部ユニットに突き立てた。




 「な、スプーンさんじゃないですう!?」
 ノワールは突然現れた神姫が自分の狙いの神姫ではないことに、ひどくうろたえた。
 「せあっ!」
 しかもこの赤い神姫は、驚くべきことに片手の箸だけでこちらの攻めを全て捌いている。
 その技は、美しくすらあった。
 「こ、このっ!」
 いくら武器を振り回しても、当たらない。当たらない。
 「つ、強いですう」
 「雅、隙間を叩け!」
 「そのつもり!」
 そして赤い神姫は壁を駆け上がり、すさまじい速さで側面に回り込むと、僅かな隙を見逃さず、スプーン型が破壊した触手の隙間、その先のユニット本体に、箸を突き刺した。



 「ぐおおおっ!」
 「くきゃあああああ!」



 二人のユニットが破壊され、ノイズが奔ったかと思うと消える。
 「馬鹿な……!」
 「でえああああーっ!」
 飛び上がったメリーがスプーンをそのまま思い切り振り抜く。
 「ぬうあっ!」
 飛ばされたソレイユは標識や信号機を破壊しながら、地面に落下した。
 その先には、
 「はっ、ソレイユ!」
 「来たわね……!」
 ノワールと雅が戦っていた。
 ノワールが気を取られている隙に、背中へと蹴りを入れる。
 「ふにゅ!」
 妙な声を上げて地面に倒れ伏したノワールに、雅が箸を突きつける。
 メリーと雅、二人が背中合わせに立った。
 「な、な……!」
 俺の向かい側のアンリは、これまでに無く狼狽している。
 それもそうだろう。
 「へっ。アンリ、一つ言うぜ」
 「!?」

 「あんた、本当は弱いだろ」

 「なんデスと……!」
 「俺は試合中ずっと、あんたが『双姫主』なんじゃないかって思ってたんだ。だが、本当は違う。あんたは双姫主でも何でもない、ただのオーナーだ」
 ギャラリーが少しざわついた。
 「考えてみりゃ、ヒントはあちこちにあったんだ。一つはあんたの神姫達が同じ戦法を繰り返していたこと。そして発売したばかりの新型で、カスタマイズを自慢していたこと。そしてそれ以上に決定的だったのは……あんたが試合中やけに落ち着きすぎていたことさ」
思い切りびしっと言ってやった。
 「そうか……! だから何もしてないように見えたんだ!」
 「そうだ健五。そこから考えられたのは……あんたは神姫の武装とスペックに頼って、起動したての神姫を好き勝手に戦わせてただけだってことさ」
 「!」
 「それなら落ち着いていられるのだって当然だ。なにしろ指示を出してすらいないんだからな。メリーと雅を別々に狙ったのだって、特に考えがあったわけじゃなくて、ただそいつらが戦いたがった相手だから、ぐらいの理由じゃないのか?」
 「ヌ、ヌヌウ……! ソレイユ! ノワール!」
アンリの呼びかけに二体の神姫が立ち上がる。
 「才能うんぬんも結構だが、見せてやるぜ。才能を超える努力ってやつをな!」
 「ぐ……努力だとっ……! 最後に勝つのは才能だ!」
 ソレイユの言葉にメリーの目つきが鋭くなる。
 「……あなたはまだ分かってない」
 「何!?」
 「誰しもが初めから才能に恵まれているわけではないことが」
 「そして、恵まれなかったとしても諦めずに自分を磨く者の強さが」
 ゆっくりと紡ぐように、俺の相棒達が言葉を続ける。
 「確かに素質や才能はあった方がいいものです。でも、それには限界がある」
 「努力するものには、限界は無いのよ!」
 「黙れぇ! 僕は新型だ! マスターの期待を背負ったカスタム機なんだ! 旧型などに……負けるものかぁっ!」
 ソレイユの咆哮が嵐のように響く。
 「ノワール! 何をしている!行くぞ!」
 「あ、えと、はいですぅ!」
 新たな武装、大弓と斧を転送された二体が迫る。
 「メリー、仕掛けるわよ!」
 「はい、雅さん!」
 二人が跳ね、ノワールが向かってくる。しかし、
 「は!」
 迫るノワールの肩を雅が踏み越え、背中に砲撃を打ち込む。
 「きゃうう!」
 「くっ!ノワール! どけ!」
 勢い余ったノワールが飛び出してきてしまい、弓を放とうとしていたソレイユは射線を封じられてしまった。
 「てやああ!」
 その隙に、側面からメリーが攻撃を仕掛ける。ユニットを破壊された二体は、さっきのような動きは出来ていない。
 「ぐううう!」
 「な、なんという連携デスか……!」
 「ふん。連携なんてかっこいいもんじゃないわ」
 「そうですね。言うなればただの……」
 二人が、笑った。


 「「腐れ縁だ!」」


 「く……おおおっ、認めない! 認めるものかぁっ!」
 やけになったソレイユが向かって来る。
 「いざ……!」
 しかしソレイユが雅に接近するまでに、十分な時間があった。その間に、雅は一度箸を左腿のホルダーに納め、腰を落とす。
 対するメリーは宙に投げたフォークを両手首に接続し、ノワールめがけて跳躍する。
 「!?」
 「破!」
 ノワールが対応出来ない速さで、土手っ腹に蹴りを入れる。
 「ぎ……!」
 吹き飛ばされたノワールを、空中で一回転して横薙ぎを繰り出し追撃。さらに上段から爪を振り下ろす。
 そして雅が繰り出されるナイフを、体勢を低くして回避。頭上をナイフがすり抜ける。
 その、水面にしずくが落ちるような一瞬の隙を、雅は見逃さない。
 「!?」
 「必殺」
 そして、箸に手をかけた。


 『逆さ桜!』
 『グリズリー・クロス!』


 放たれた高速の居合い切りが、十字の爪痕が、二体の神姫を切り裂いた。
 「がっ……あ!」
 「ぎ……!」
 だぁんと音を立て、二体が落下した。その後を追って、メリーも着地。
 「久しぶりにしては良く出来たじゃないですか? 雅さん」
 「ふん、まあね」
 「馬鹿……な。僕達は、新型……」
 「……もう、いいですよ、ソレイユ」
 胴体からスパークをほとばしらせながら、ノワールが上目でソレイユの姿を見た。
 「わたし達は負けたんです……。もう、新型も何も関係ないですよ」
 「しかし……僕らは、マスターの」
 「いいんですよ、そんなに頑張らなくても。スプーンさん達は強かったんです。今はそれを認めましょうです。……それに、ほら」
 ノワールが、震える指先で示した先には。
 「あ……」



 「良いバトルだったぞー!」
 「頑張ったわね!」
 「もう一回見せてくれよ!」
 「凄いじゃねーか!」



 モニターの前の人々は、口々に応援の言葉を投げかけていた。
 「ほら、みんな喜んでるです。これがきっと、研ぎ澄まされた努力の美しさなんですよ。それに……負けたかもしれないですけど、それでも……無駄では無かった、です」
 「……う、ひっく、でも、僕らは……マスターに、勝利を……」
 「なら、今より努力すれば良いじゃない」
 雅とメリーが、二人に近寄った。
 「誰しもが、自分にしか無い味を持ってる。自分の持ち味を考えて、それを一心に磨いて、煮込んで蒸して……。工夫して探し出したその先に、強くなった未来の自分がいるんじゃないかしら?」
 「自分の、持ち味」
 「あなた達、起動したてなんですよね」
 しゃがみ込んだメリーは、満面の笑みをたたえていた。
 「だったら、積み上げていって下さい。オーナーとの大切な時間を。そうして強くなったなら、またお相手しますよ」
 ぽーっと、ノワールの頬が赤くなった。
 「きれい、ですぅ」
 同時にジャッジが俺の神姫達の名をコールして、勝敗は決した。
 「……トレビアンだ、ええと」
 「雅。それと、メリーよ」
 「ふふ。雅、メリーか。美しい」
 観客の歓声と、ステージに吹く紙吹雪が、祝福するように二人を包んでいた。




 「やったね、輝さん!」
 筐体から離れると、健五が近寄って来た。
 「ああ、まあな。しっかし、これは頭使うなあ」
 勝ったものの、やっぱりタッグマッチは負担が大きい。そう考えていると、
 「……見事デス、シマヅ君」
 向こうからアンリがやって来た。
 「相手を見抜く力、そして素材を生かすセンス……素晴らしいデス」
 「へ。ありがとよ。まあ、これに懲りたら、もっと神姫を大事に……」
 「つまり、キュイジーヌとオーナーの技術は同じというコト」
 「へ?」
 「シマヅ、そうか、アナタもしや、あのムッシュ島津の! フフ、なるほど。なら、このセンスにも納得がいきマス」
 「いや、そうなんだけども、じじいとバトロンのセンスとは関係な……」
 「見事デス。シマヅ君、いや、アキラ。貴方を……」
 するとアンリは立ち上がって、こんな事を言った。


 「ワタシのトモに認めます!」


 「へ?」
 「トモって……」
 「ニホンでは、強者に与える言葉をトモと読むらしいデスね。貴方は確かに強かったデス。よって、ワタシのトモに認めまショウ!」
 「……」
 「デハ、帰るとしまショウか。オ・ルヴォワール、アキラ」
 「はい、マスター。……また会うのを楽しみにしているよ」
 「じゃあねですう。……ぽーっ」
 アンリ達が帰って行った後、思わず顔を見合わせた。
 「なあ、強者と書いてトモって……」
 「ライバル、ってことじゃない?」
 「……それに、反省したのか、あいつ」
 「でも、本当に強かったよ!感動したよ!」
 なんだか釈然としなかったが、 今は健五のように素直に喜ぶべきだろうか。
 「……へっ、ありがとよ。お前らも良くやってくれたな」
 二人が俺の肩で恥ずかしそうにしている。
 「そんな、私は神姫として当然のことをしたまでで」
 「あ、あたしはあんたのために戦ったんじゃないかんね!」
 「へえへえ。そんじゃ帰りますかね。せっかくだし、なんか買って帰るかな」
 「ホント!? じゃああたし、鳩○ブレーがいい!」
 「高えよ。なんか別のにしろ」
 「何よ、甲斐性無し」
 わいわいとそんな言い合いをしながら、今日は帰った。



 ※※※





 そして次の日。
 「ばっかじゃないの!? 目玉焼きにはお醤油だっていつも言ってるでしょ!」
 「いいえ、ソースが一番です。とうとう味覚までいかれてしまったみたいですね、雅さん」
 昨日の『腐れ縁』はどこへやら、二人はいつもの調子だった。
 「おい止せよ。目玉焼きはこしょうが一番……」
 「うっさいハゲ! あんたは口出しすんじゃないの!」
 「誰がハゲだコルァ! スポーツ刈りだって言ってんだろうが!」
 こんな調子の俺たちを横目に、おやっさんと健五はまた話していた。
 「……っていう感じだったんです」
 「なるほど。いいじゃないか、ライバル」
 「?」
 「意見をぶつけ合える人間を持つのは、とても貴重なことだからね」
 この時のおやっさんの目は、どことなくさびしそうでもあった。
 「さあさ、準備しようか。健五君は掃除頼むよ」
 「あ、はい」
 「マスター、あたしもお手伝いします♪」



 「だから醤油!」
 「ソースです!」
 「こしょうだ!」
 今日も、食堂は賑やかだ。


~次回予告~
ある日食堂にやって来たのは、輝の幼なじみ!?
そして少しだけ明かされる、輝の過去とは……。
次回、 第十話 やって来た小町娘
「お久しぶり、輝はん♪」

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